落とされた勇者 悪霊たちと最強になる

やま

12話 森へ

「……荷物はこれだけか」

 リムドーさんに訓練の内容を聞いてから、俺たちは訓練の始まりの場所で手渡された荷物を見ていた。手渡されたリュックは2つ。多分片方に万が一があった時用に分けているのだろう。中を開けて見てみると入っていたのは

 簡易テント×1
 非常食×10
 水筒(水入り)×2
 水筒(空)×2
 地図×1
 ポーション×4
 マナポーション×4
 点火用魔石×2

 だけだった。まあ3日だけなら十分な量なのだろう。食料は万が一にも1日1食にすれば2日は持つ。最悪今日は食べずに明日と最終日食べれば耐えられる。

 食料を調達出来なければ水でしのぐしか無い。水もいざとなれば魔法があるからな。それで補充すれば3日程度なら耐えられる。

 ポーションは怪我した時用だが、このチームには聖女である白川さんがいるから大抵の傷は治してもらえる。

 このチームで困るのが魔法系の職業を持つのが凛さん以外全員ってところだ。特に陽奈、白川さん、ミーリア王女は、魔法が主体だからな。剣を使える俺や、弓を使う凛さんと違って、魔力を考えながら使っていかないといけない。凛さんも魔力矢作成があるから全く使わないわけじゃ無いし。

「荷物は私と白川さんで持つよ。真ちゃんや凛ちゃんは動きやすい方が良いだろうし」

「そうだな。悪いが良いか?」

「うん、任せてよ!」

「……が、頑張ります」

 片方は快活に、もう片方は少し顔を俯かせてだが、2人とも両手に握りこぶしを作ってそう言ってくれる。俺も凛さんやミーリア王女も思わず笑みを浮かべてしまう。

 それから、森の中を進むための隊列を決める。まあ、先頭は俺で、白川さんを左右で挟む形で右側に陽奈、左側にミーリア王女、殿を凛さんにお願いする。

 白川さんは攻撃系の魔法が少ないが、補助魔法はこの中で1番だ。真ん中からみんなのサポートをして貰うのが目的だ。

 陽奈はなんでも魔法が出来るが、白川さんより攻撃寄りなため右側を、ミーリア王女は精霊魔法で左側を。そして、このチームの中で1番視野の広い凛さんには周囲の索敵をお願いしている。

 それから、それぞれの武器などを確認する。俺はミスリルで作られた鎧を着ている。服と変わらないくらい軽いのに、剣は弾くほどの強度を持つ鎧で、かなり動きやすい。

 武器は勇者のみが使えるという聖剣とやらだ。どうやら名前は無いらしいのだが、俺の鑑定では

 ーーーーーーーーーーーーーー
 聖剣ゼハード
 とあるドワーフが命を賭して
 作り上げた聖剣で、魔を切り裂く
 神の加護により勇者の職業を
 持つ者にのみ扱う事が出来る
 ーーーーーーーーーーーーーー

 と、表示されていた。この剣も訓練などで使う剣に比べてかなり軽く、石なども熱したバターを切るかのようにスッと切れてしまうのだ。手にあまり感触が残らないせいで、切ったのかもわからない。ちなみに陽奈と凛さんの武器は

 ーーーーーーーーーーーーーー
 賢者の杖
 とある賢者が命を賭して
 作り上げた杖で、魔力消費が10
 分の1、威力が倍になる
 神の加護により賢者の職業を
 持つ者にのみ扱う事が出来る
 ーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーー
 魔弓アタランテ
 とあるエルフが命を賭して
 作り上げた魔弓で、風の魔力が
 付与されている
 神の加護により魔弓師の職業を
 持つ者にのみ扱う事が出来る
 ーーーーーーーーーーーーーー

 と、なっていた。……どの人も命を賭け過ぎだろう。その分かなり強力な武器ではあるが、なんだかなぁ。それに、これらの武器が全部王国の武器庫に眠っていたのも不思議で仕方ない。もしかしたら、国が無理矢理作らせたのかも、とか考えてしまったり。これ以上はやめておこう。

 俺は荷物を2人に渡してみんなを見る。みんな少し不安そうだが、やる気には満ちている。何かあれば逃げればいいし気負う事は無いな。

「それじゃあ、行こう。みんな、無理だけはしないようにな」

 俺の言葉に頷く4人。さあ、森へと入ろう。

 ◇◇◇

「お前たち、今日の夜やるぞ」

「あ、ああ。だけど大丈夫なのか天王。周りは兵士たちが見ているって」

「それは大丈夫だ。リムドーさんは目的地にいるようだし、周りの兵士たちは皆王子が用意してくれた兵士で、協力者でもある。逆に王都から出て、リムドーさんのいない今しかチャンスはない。覚悟しろよ?」

 俺の言葉に頷くみんな。陽奈、待っていてくれ。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品