悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!
37.食堂
「しかし、あんな魔法があるんだな」
「ふふっ、凄いでしょ! なんてったってあの魔法は私が作ったんだから!」
俺の隣でドヤ顔をしてくる紫髪の少女、エレネ。彼女は手のひらサイズの胸を強調するように体を逸らして、ドヤ! と、ばかりにこちらを見てくる。
「確かにエレネの魔法は見た事なく凄かったが、ジーク、あなたも凄かったぞ! 流石僕のライバルだ!」
そして、エレネの隣で俺に指をさして叫ぶ男、ユータス。人を指差すな。
「ぷぷっ、ジーク君とライバルなんて、頭おかしいわね、ユータス君。その頭の中、お腹と同じで脂肪が詰まっているんじゃ無いの?」
そして、俺たちの後ろでそんな事を言いながら笑みを浮かべる少女、ユーリエ。腰まで伸ばした紺色の髪を整えながら、前を歩くユータスのお腹を突く。
「人の腹を突くな! それに、僕の頭がおかしいだと? ふざけた事を言うな!」
「ま、まぁ、2人とも落ち着いてくださいよ、ね?」
そして、睨み合う2人の間に入ってなだめようとするのがマイルだ。俺以外なら大分慣れたのか普通に話せるようになっている。
どうして、こんな濃いメンバーが集まったかと言うと、午前の授業でマイル以外、少し変わった魔法や戦い方をしたからだ。
俺は魔導書の魔法で少なからずフレック先生と戦えて、エレネは初めて見る魔法、絵画魔法というのを使った。
絵画魔法は、自身の魔力で書いたものに質量を与えて動かす事が出来るというものだ。犬を描けば犬が走り回るし、鳥を描けば空を羽ばたく。まるで生きているかのように。ただ、耐久力はあまり高く無いため、武器などは作れないらしい。
ユータスは、見かけによらず5属性魔法と、斧術を使う魔法斧師という変わった戦い方をしていた。様々な魔法を使いながら近接では斧を振り回してくるという。いそうでいない戦い方だった。普通は魔法剣士なんかだからな。
ユーリエは、これも俺は初めて見た髪魔法というものだった。自身の髪を自由自在に操る事が出来る魔法らしく、硬度も限界まですると鉄に匹敵するのだとか。その分魔力の消費は激しいし、髪が痛むとユーリエは嘆いていたが。
そんな変わった戦い方をする俺たちが自然と集まり、たまたま近くにいたマイルが巻き込まれた形だ。マイルも慣れて今では楽しそうだが。
そんな俺たちが向かっているのは食堂だった。午前全てを使って実力を確かめたからな。腹が減って仕方ない。昼休みは1時間近くあるけど、みんな早歩きで食堂に向かう。
「それで、食堂を使うのは今日が初めてだが、どっちを使うんだ?」
「ふん、そんなの決まっているだろう、レスト「勿論、民食堂の方だよ!」ラン……って、エレネ! 僕の言葉に被せてくるんじゃ無い!」
楽しそうに手を挙げてはいはい! と、主張するエレネに、自分の言葉を被せられて怒っているユータス。全くこいつらは。まだ、会って1日しか経っていないけど、仲が良すぎるだろ。
ユータスが言おうとしていたレストランというのは、貴族向けの食堂の事だ。そして、エレネが言った民食堂が、普通の前世の大学なんかにもあった普通の食堂を指す。
民食堂は、学生の年齢に合わせて安くて量が多く、味が濃い目の料理が多い。俺らぐらいの年齢の男からすれば、それはもう天国のように大盛りなのだ。勿論、少食な学生にも合わせて量は変えられるが、基本多め。
レストランの方はその日その日決まったコースメニューがあり、オードブルからデザートまで出て来る。服装は制服で構わないのだが、授業の一環としてテーブルマナーも出来なければいけない。平民からすれば敷居の高い店になる。まあ、卒業までに1回は行く事になるらしいが。
「それじゃあ、民食堂の方へ行こうか」
俺の言葉に喜ぶエレネ、ユーリエ、マイル。そして、何故だ、と俺に詰め寄るユータス。そりゃあ、俺も昼休みもそんな疲れそうなところには行きたくないからだ。
王族の暮らしにも慣れてはきたが、普通の食堂の方が落ち着く。まだ文句を言うユータスを連れて食堂へと向かうと
「お待ちしておりましたわ、旦那様!」
と、勢い良く抱きついて来る影。その後ろには苦笑いをするエンフィが立っていた。
「クロエ、待っていてくれたのか。中に入ってくれていても良かったんだぞ?」
「そんな訳には行きません。私は旦那様と一緒が良いのです」
そう言い俺の腕に抱きついて来るクロエ。午前から待ち遠しかったのか、物凄くスリスリしてくる。
「わぁ、物凄く可愛い婚約者ね! 私の名前はエレネ! よろしくね、クロエちゃん!」
「ふん、僕の名前を覚えるのを許そう。僕の名前はユータス・エヴァンゲオンだ。君の婚約者を倒す男さ」
「私はユーリエ。国一番の娼婦になる女よ」
「ぼぼ、僕はマイル・ムーアで、です!」
エレネたちの自己紹介を聞いたクロエは、エレネたちの方を笑顔で見る。でも、なんで刀出しているんだ? そして、何故抜こうとする?
「……あなたが、旦那様を倒す? 冗談はそのお腹だけにして下さい。切り落としますよ?」
クロエの恐ろしい言葉に、ユータスは自分のお腹を押さえる。やめろよ、クロエ。ユータスが可哀想じゃないか。
何とかクロエを宥めて、俺たちは食堂に入ろうとした瞬間、ガシャンッ、と大きな音がする。何かが割れた音だ。音はレストランの方から聞こえた。みんなで向かうと、そこには、座り込む女生徒と、それを見下ろす男生徒たちがいた。
……またお前か……ヒロイン。
「ふふっ、凄いでしょ! なんてったってあの魔法は私が作ったんだから!」
俺の隣でドヤ顔をしてくる紫髪の少女、エレネ。彼女は手のひらサイズの胸を強調するように体を逸らして、ドヤ! と、ばかりにこちらを見てくる。
「確かにエレネの魔法は見た事なく凄かったが、ジーク、あなたも凄かったぞ! 流石僕のライバルだ!」
そして、エレネの隣で俺に指をさして叫ぶ男、ユータス。人を指差すな。
「ぷぷっ、ジーク君とライバルなんて、頭おかしいわね、ユータス君。その頭の中、お腹と同じで脂肪が詰まっているんじゃ無いの?」
そして、俺たちの後ろでそんな事を言いながら笑みを浮かべる少女、ユーリエ。腰まで伸ばした紺色の髪を整えながら、前を歩くユータスのお腹を突く。
「人の腹を突くな! それに、僕の頭がおかしいだと? ふざけた事を言うな!」
「ま、まぁ、2人とも落ち着いてくださいよ、ね?」
そして、睨み合う2人の間に入ってなだめようとするのがマイルだ。俺以外なら大分慣れたのか普通に話せるようになっている。
どうして、こんな濃いメンバーが集まったかと言うと、午前の授業でマイル以外、少し変わった魔法や戦い方をしたからだ。
俺は魔導書の魔法で少なからずフレック先生と戦えて、エレネは初めて見る魔法、絵画魔法というのを使った。
絵画魔法は、自身の魔力で書いたものに質量を与えて動かす事が出来るというものだ。犬を描けば犬が走り回るし、鳥を描けば空を羽ばたく。まるで生きているかのように。ただ、耐久力はあまり高く無いため、武器などは作れないらしい。
ユータスは、見かけによらず5属性魔法と、斧術を使う魔法斧師という変わった戦い方をしていた。様々な魔法を使いながら近接では斧を振り回してくるという。いそうでいない戦い方だった。普通は魔法剣士なんかだからな。
ユーリエは、これも俺は初めて見た髪魔法というものだった。自身の髪を自由自在に操る事が出来る魔法らしく、硬度も限界まですると鉄に匹敵するのだとか。その分魔力の消費は激しいし、髪が痛むとユーリエは嘆いていたが。
そんな変わった戦い方をする俺たちが自然と集まり、たまたま近くにいたマイルが巻き込まれた形だ。マイルも慣れて今では楽しそうだが。
そんな俺たちが向かっているのは食堂だった。午前全てを使って実力を確かめたからな。腹が減って仕方ない。昼休みは1時間近くあるけど、みんな早歩きで食堂に向かう。
「それで、食堂を使うのは今日が初めてだが、どっちを使うんだ?」
「ふん、そんなの決まっているだろう、レスト「勿論、民食堂の方だよ!」ラン……って、エレネ! 僕の言葉に被せてくるんじゃ無い!」
楽しそうに手を挙げてはいはい! と、主張するエレネに、自分の言葉を被せられて怒っているユータス。全くこいつらは。まだ、会って1日しか経っていないけど、仲が良すぎるだろ。
ユータスが言おうとしていたレストランというのは、貴族向けの食堂の事だ。そして、エレネが言った民食堂が、普通の前世の大学なんかにもあった普通の食堂を指す。
民食堂は、学生の年齢に合わせて安くて量が多く、味が濃い目の料理が多い。俺らぐらいの年齢の男からすれば、それはもう天国のように大盛りなのだ。勿論、少食な学生にも合わせて量は変えられるが、基本多め。
レストランの方はその日その日決まったコースメニューがあり、オードブルからデザートまで出て来る。服装は制服で構わないのだが、授業の一環としてテーブルマナーも出来なければいけない。平民からすれば敷居の高い店になる。まあ、卒業までに1回は行く事になるらしいが。
「それじゃあ、民食堂の方へ行こうか」
俺の言葉に喜ぶエレネ、ユーリエ、マイル。そして、何故だ、と俺に詰め寄るユータス。そりゃあ、俺も昼休みもそんな疲れそうなところには行きたくないからだ。
王族の暮らしにも慣れてはきたが、普通の食堂の方が落ち着く。まだ文句を言うユータスを連れて食堂へと向かうと
「お待ちしておりましたわ、旦那様!」
と、勢い良く抱きついて来る影。その後ろには苦笑いをするエンフィが立っていた。
「クロエ、待っていてくれたのか。中に入ってくれていても良かったんだぞ?」
「そんな訳には行きません。私は旦那様と一緒が良いのです」
そう言い俺の腕に抱きついて来るクロエ。午前から待ち遠しかったのか、物凄くスリスリしてくる。
「わぁ、物凄く可愛い婚約者ね! 私の名前はエレネ! よろしくね、クロエちゃん!」
「ふん、僕の名前を覚えるのを許そう。僕の名前はユータス・エヴァンゲオンだ。君の婚約者を倒す男さ」
「私はユーリエ。国一番の娼婦になる女よ」
「ぼぼ、僕はマイル・ムーアで、です!」
エレネたちの自己紹介を聞いたクロエは、エレネたちの方を笑顔で見る。でも、なんで刀出しているんだ? そして、何故抜こうとする?
「……あなたが、旦那様を倒す? 冗談はそのお腹だけにして下さい。切り落としますよ?」
クロエの恐ろしい言葉に、ユータスは自分のお腹を押さえる。やめろよ、クロエ。ユータスが可哀想じゃないか。
何とかクロエを宥めて、俺たちは食堂に入ろうとした瞬間、ガシャンッ、と大きな音がする。何かが割れた音だ。音はレストランの方から聞こえた。みんなで向かうと、そこには、座り込む女生徒と、それを見下ろす男生徒たちがいた。
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