悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!
35.チョーロー
「……はぁ」
入学式を終えた翌日。学園へ登校する馬車の中、俺の前で盛大に溜息を吐くクロエ。俺もエンフィもクロエを見ていると、突然俺に抱き付いてきた。
「な、何するんだよ?」
「何って、旦那様成分を補給しているのです! これから昼休みの時間まで4時間ほど、旦那様とお会いする事が出来ないのですよ!? そんなの耐えられる訳かないのは昨日で身に染みました!」
そう叫ぶクロエは、俺の腹に顔を押し付けてぐりぐりとしてくる。その姿に俺もエンフィも苦笑いだ。この半年間で月一ぐらいであったからな。慣れたものだ。
俺はクロエの頭をゆっくり撫でて上げると、ぐりぐりと押し付けていたのをやめて、ギュッと抱きしめてくる。
しかし、今回はいつもより早かったな。ついこの前こうなったばかりだったのに。それだけ、俺と離れるのが辛いのか。それを嬉しいと思うのか、重たいと思うのかは人それぞれだが、俺は嬉しいな。
俺がゆったりと抱きつくクロエの頭を撫でていると、馬車が止まる。学園に着いたようだ。降りないといけない事がわかったクロエは、先ほど以上に力強く抱き付いてきた。
「……クロエ、学園に着いたから降りよう、な?」
俺の言葉にギュッと抱き付いていたクロエは渋々ではあるが離れてくれた。
「……昼休みは絶対に会いに行きますから」
「ああ、いつでも来てくれ」
そう言うと、笑顔に戻ったクロエはエンフィと共に教室へと向かってくれた。
俺も後を追うように自分の教室へと向かっていると、見覚えのある後ろ姿が見えた。紫髪の三つ編みをしている後ろ姿が。
「おい、何やってるんだよ?」
俺が後ろから声をかけると、ビクッと震える紫髪、もといエレネ。エレネは恐る恐る振り返って俺を見ると、安心したように息を吐く。
「なんだぁ、ジークかぁ。びっくりさせないでよ」
そう言って俺の方をバシバシと叩いてくるエレネ。昨日初めてあったはずなのに、物凄く距離感が近いなこいつ。まあ、その方が俺も話しやすいから良いのだけど。
「それで、何やってるんだよ?」
「あっ、そうそう、こっち来て!」
俺が尋ねるとエレネが何かを思い出して俺の腕を引っ張る。そして、隠れるように言ってくる。何が何だかわからないが、エレネの指示に従っていると、エレネが指を指す。その先には
「……全く、入学式の翌日から命令されるとは。その令嬢たちも令嬢ですが、しっかりと断らないあなたもあなたです」
「……ご、ごめんなさい。て、てっきり頼ってくれているものだと思って」
本を持つ男女がいた。男は昨日兄上と一緒にいた宰相の息子、メーテル・ローデンベルグとその隣には、ピンク色をした髪の少女が同じように本を持ち並んで歩いていた。これって
「ぐふふっ、まさか、こんな早くこのシーンが見られるなんて。でも、入学してから1週間以内しか見られないこのイベントシーン。これは、メーテルルートに入ったのかしら?」
エレネが全部話してくれたが、ゲームで見た事のあるシーンだった。確か、孤児院出身のヒロインが、入学早々貴族の令嬢たちに目をつけられて、パシらされるシーンだったよな。そこに、職員室に用があったメーテルと鉢合わせになる、って話だったような。
「この学園にいる以上は、貴族平民関係無いと言われたでしょう。それを、学生自ら、ましてやあなた自身が折れては意味が無いでは無いですか。別に反抗してもいいのですよ。逆にそうしなければ、この学園の理念に反しますよ。わかっているのですか?」
ああ、そうだった。出会って1日しか経っていないのに、メーテルの奴にぐちぐちと小言を言われるんだったっけな。初めて見た時、テレビを殴りそうになったのを覚えている。だけど
「ふふっ、メーテル君って優しいんですね。私のためにそんなに言ってくれて。ありがとうね」
ヒロインは礼を言うんだよな。ゲームの中だと、画面上に選択肢が出て来て選べるのだけど、その中でも確かこの答えが1番良い選択肢だったと思う。
その言葉にメーテルはやれやれといった風に首を横に振るけど、口元は笑っていた。お前チョロインかよ。いや、男だからチョーローかよ。なんかダサい。
そのまま教室まで歩いていく2人の後ろ姿を鼻息荒くして見ているエレネと、チョロすぎる攻略対象に呆れている俺。
……あれ? 今ってゲームの事について尋ねるチャンスじゃね? ここは意を決して聞いて見るか。
「……なぁ、エレ「おまえら、何をしている?」ネ」
ただ、聞こうとしたタイミングで、フレック先生に声をかけられてしまった。くそ、聞くタイミングを逃してしまった。
俺たちはそのまま誤魔化して、フレック先生と共に教室に向かう事になった。まあ、いいか。聞くタイミングなんて幾らでもある。気長に待とう。
入学式を終えた翌日。学園へ登校する馬車の中、俺の前で盛大に溜息を吐くクロエ。俺もエンフィもクロエを見ていると、突然俺に抱き付いてきた。
「な、何するんだよ?」
「何って、旦那様成分を補給しているのです! これから昼休みの時間まで4時間ほど、旦那様とお会いする事が出来ないのですよ!? そんなの耐えられる訳かないのは昨日で身に染みました!」
そう叫ぶクロエは、俺の腹に顔を押し付けてぐりぐりとしてくる。その姿に俺もエンフィも苦笑いだ。この半年間で月一ぐらいであったからな。慣れたものだ。
俺はクロエの頭をゆっくり撫でて上げると、ぐりぐりと押し付けていたのをやめて、ギュッと抱きしめてくる。
しかし、今回はいつもより早かったな。ついこの前こうなったばかりだったのに。それだけ、俺と離れるのが辛いのか。それを嬉しいと思うのか、重たいと思うのかは人それぞれだが、俺は嬉しいな。
俺がゆったりと抱きつくクロエの頭を撫でていると、馬車が止まる。学園に着いたようだ。降りないといけない事がわかったクロエは、先ほど以上に力強く抱き付いてきた。
「……クロエ、学園に着いたから降りよう、な?」
俺の言葉にギュッと抱き付いていたクロエは渋々ではあるが離れてくれた。
「……昼休みは絶対に会いに行きますから」
「ああ、いつでも来てくれ」
そう言うと、笑顔に戻ったクロエはエンフィと共に教室へと向かってくれた。
俺も後を追うように自分の教室へと向かっていると、見覚えのある後ろ姿が見えた。紫髪の三つ編みをしている後ろ姿が。
「おい、何やってるんだよ?」
俺が後ろから声をかけると、ビクッと震える紫髪、もといエレネ。エレネは恐る恐る振り返って俺を見ると、安心したように息を吐く。
「なんだぁ、ジークかぁ。びっくりさせないでよ」
そう言って俺の方をバシバシと叩いてくるエレネ。昨日初めてあったはずなのに、物凄く距離感が近いなこいつ。まあ、その方が俺も話しやすいから良いのだけど。
「それで、何やってるんだよ?」
「あっ、そうそう、こっち来て!」
俺が尋ねるとエレネが何かを思い出して俺の腕を引っ張る。そして、隠れるように言ってくる。何が何だかわからないが、エレネの指示に従っていると、エレネが指を指す。その先には
「……全く、入学式の翌日から命令されるとは。その令嬢たちも令嬢ですが、しっかりと断らないあなたもあなたです」
「……ご、ごめんなさい。て、てっきり頼ってくれているものだと思って」
本を持つ男女がいた。男は昨日兄上と一緒にいた宰相の息子、メーテル・ローデンベルグとその隣には、ピンク色をした髪の少女が同じように本を持ち並んで歩いていた。これって
「ぐふふっ、まさか、こんな早くこのシーンが見られるなんて。でも、入学してから1週間以内しか見られないこのイベントシーン。これは、メーテルルートに入ったのかしら?」
エレネが全部話してくれたが、ゲームで見た事のあるシーンだった。確か、孤児院出身のヒロインが、入学早々貴族の令嬢たちに目をつけられて、パシらされるシーンだったよな。そこに、職員室に用があったメーテルと鉢合わせになる、って話だったような。
「この学園にいる以上は、貴族平民関係無いと言われたでしょう。それを、学生自ら、ましてやあなた自身が折れては意味が無いでは無いですか。別に反抗してもいいのですよ。逆にそうしなければ、この学園の理念に反しますよ。わかっているのですか?」
ああ、そうだった。出会って1日しか経っていないのに、メーテルの奴にぐちぐちと小言を言われるんだったっけな。初めて見た時、テレビを殴りそうになったのを覚えている。だけど
「ふふっ、メーテル君って優しいんですね。私のためにそんなに言ってくれて。ありがとうね」
ヒロインは礼を言うんだよな。ゲームの中だと、画面上に選択肢が出て来て選べるのだけど、その中でも確かこの答えが1番良い選択肢だったと思う。
その言葉にメーテルはやれやれといった風に首を横に振るけど、口元は笑っていた。お前チョロインかよ。いや、男だからチョーローかよ。なんかダサい。
そのまま教室まで歩いていく2人の後ろ姿を鼻息荒くして見ているエレネと、チョロすぎる攻略対象に呆れている俺。
……あれ? 今ってゲームの事について尋ねるチャンスじゃね? ここは意を決して聞いて見るか。
「……なぁ、エレ「おまえら、何をしている?」ネ」
ただ、聞こうとしたタイミングで、フレック先生に声をかけられてしまった。くそ、聞くタイミングを逃してしまった。
俺たちはそのまま誤魔化して、フレック先生と共に教室に向かう事になった。まあ、いいか。聞くタイミングなんて幾らでもある。気長に待とう。
コメント