悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!
32.教室での出会い
「何をしている、お前たち」
男たちの騒いでいる声を聞きつけてやって来た兄上たち。ああ……微かにだけど思い出して来た。その上、ゲームの視点と今俺が見ている視点は違うから余計に気付くのが遅くなってしまった。
このシーン、ゲームの始まりのシーンだ。初めて学園に登校したヒロイン。ヒロインは学園にある寮に住むため必要な荷物をいくつか持って登校するのだけど、そこに貴族とぶつかる。
そのぶつかった貴族に難癖付けられているところ、兄上と他の攻略対象の誰かが現れるというところでストーリーが始まる。
「ぐ、グルディス王子!? い、いや、な、なんでも……」
「なら、彼女は連れていかせて貰うぞ。良いな?」
「は、はいぃぃ!!」
兄上は倒れた彼女の荷物を拾ってから、塔の中へと連れて行ってしまった。兄上に目をつけられた貴族の子息は顔を青くして、兄上に続くように塔の中へと入って行った。
「……まさか、義兄様が女の子を助けるなんて、失礼かもしれませんが思っても見ませんてました」
クロエの滅多に見られない驚きの表情と言葉にエンフィも頷く。確かに俺もゲームのストーリーを知らなかったら同じように思うだろう。
兄上はこの時点ではまだヒロインに恋はしていない。ただ、気になっただけだったはず。それでも、俺は微かに怒りを覚えていた。
少しでも、その気持ちをセシリアに向けてくれなかったのかと。
「……はぁ、考えても仕方ないか。クロエ、エンフィ、俺たちも行こうか」
俺の言葉に頷くクロエとエンフィ。クロエは俺の右腕に抱き付いて来るので少し歩きづらい。後ろではエンフィが苦笑いしている。
そんな俺たちを他の生徒たちは遠目で見て来る。まあ、俺は色々と有名だからな。俺たちは周りの視線を無視して塔へと入る。
塔の入り口には各クラスに入る学生名が書かれた紙が張り出されていた。クラスはAクラスからDクラスまであり、各クラス30名程度の人数になる。
ええっと、俺のクラスは……俺はDクラスか。クロエとエンフィはCクラスか。攻略対象である兄上と他のメンバーはAクラス、と。ヒロインは名前がわからないため探せないが、ゲームの中だと確か攻略対象たちと同じクラスだったため、Aクラスの何処かにいるはず。
そして、セシリアはBクラスだった。確か、隣のクラスから毎日のように兄上のところに通うんだよな。その事を兄上はどんどんと疎ましくなっていき、そして、そこに何故かヒロインが入って来てと、ややこしい事になるんだっけ。
「うー、残念です。旦那様と別のクラスになってしまうなんて」
「……こればかりは仕方ないな。まあ、隣のクラスなんだから休み時間はいつでも来れば良いじゃないか」
「そうですね。それに、昼食は一緒に食べられますしね」
「ああ。エンフィもクロエの事を頼むよ」
「はい、お任せください!」
クラスを確認した俺たちは、それぞれのクラスに移動する。今日の予定は、この後クラスに行って担任の教師との顔合わせ。その後、訓練塔での入学式、そして、クラスでの挨拶や、この後数日間の予定の説明だったっけな。
1人でぼんやりと考えながら歩いていると、自分の教室に辿り着いたようで、教室の中から声が聞こえてくる。俺は教室の扉を開けて中へと入ると、一斉に沈黙し、俺の方を見てくる。
俺は周りの視線を無視して教室の中へと入って行くと、それを追うように視線も俺を見てくる。別に何もしないんだけどな。
座席は1番前の黒板に表が貼られており、そこにどこに座るか書かれていた。Dクラスは30名のクラスになるため、縦5名の横6列の座席になっており、入り口とは反対側の窓際の席の前から3番目だった。前、後ろ、右側にクラスメイトがいる形になる。
俺は座席表の通りの場所に座ると、俺の右側の席の奴は、既に爆睡していた。茶髪の少し筋肉質の男。入学初日にこれほどの爆睡を見せるとは中々の図太さだな。
「ジジジ、ジークレント殿下!! わわわ、私はマイル・ムーアといいい、いいます! しがない男爵家のちょちょちょ、長男ですが、よよよ、よろしくお願いします!!」
そして、前の席に座るメガネをかけた俺より身長の低い少年、マイル・ムーアは、物凄く緊張した様子で俺に頭を下げてくる。そこまで緊張しなくてもいいのに。
「マイル・ムーアだな。知っているかもしれないが、ジークレント・ヴァン・アルフォールだ。これからよろしく頼むよ」
俺が手を差し出して握手をしようとしても、生まれたての子鹿のようにぶるぶると震える手で、見ているこっちが緊張してしまいそうな程だった。
物凄く緊張しているマイルの緊張をほぐそうと話しかけていると、他のクラスの奴らも次々と教室に入ってくる。そして、俺を見るとみんなギョッとして、早く自分の席に座ろうとする。別に俺より遅く来たからって何もしないよ。
もうすぐで時間になりそうだって頃に、ドタバタと走る音が聞こえてくる。みんなが入り口を見ると、勢い良く開けられる扉。勢い良く開けられた扉から入って来たのは1人の少女だった。
紫色の髪を三つ編みにしており、手には学園で配布される教材ではなく、自身で持って来たと思われる本が握られていた。
「はぁ……はぁ……ま、間に合った。本を読むのに集中し過ぎて、入学式に遅れそうになるなんて……危なかったぁ〜」
紫髪の少女は、息を整えると黒板に書かれている座席表を見て、空いている俺の後ろの席を見る。そして、席の近くまで来ると、俺をじっくりと見て来る。マイルみたいに挨拶がしたいのかと思ったけど、紫髪の少女は、何故か俺を見て首を傾げていた。そして
「あれ? 昔スチルで見たジーク殿下ってこんなに痩せていたっけ?」
と、言い出したのだ。その言葉に俺は何も言えずに、紫髪の少女を見る事しか出来なかったのだった。
男たちの騒いでいる声を聞きつけてやって来た兄上たち。ああ……微かにだけど思い出して来た。その上、ゲームの視点と今俺が見ている視点は違うから余計に気付くのが遅くなってしまった。
このシーン、ゲームの始まりのシーンだ。初めて学園に登校したヒロイン。ヒロインは学園にある寮に住むため必要な荷物をいくつか持って登校するのだけど、そこに貴族とぶつかる。
そのぶつかった貴族に難癖付けられているところ、兄上と他の攻略対象の誰かが現れるというところでストーリーが始まる。
「ぐ、グルディス王子!? い、いや、な、なんでも……」
「なら、彼女は連れていかせて貰うぞ。良いな?」
「は、はいぃぃ!!」
兄上は倒れた彼女の荷物を拾ってから、塔の中へと連れて行ってしまった。兄上に目をつけられた貴族の子息は顔を青くして、兄上に続くように塔の中へと入って行った。
「……まさか、義兄様が女の子を助けるなんて、失礼かもしれませんが思っても見ませんてました」
クロエの滅多に見られない驚きの表情と言葉にエンフィも頷く。確かに俺もゲームのストーリーを知らなかったら同じように思うだろう。
兄上はこの時点ではまだヒロインに恋はしていない。ただ、気になっただけだったはず。それでも、俺は微かに怒りを覚えていた。
少しでも、その気持ちをセシリアに向けてくれなかったのかと。
「……はぁ、考えても仕方ないか。クロエ、エンフィ、俺たちも行こうか」
俺の言葉に頷くクロエとエンフィ。クロエは俺の右腕に抱き付いて来るので少し歩きづらい。後ろではエンフィが苦笑いしている。
そんな俺たちを他の生徒たちは遠目で見て来る。まあ、俺は色々と有名だからな。俺たちは周りの視線を無視して塔へと入る。
塔の入り口には各クラスに入る学生名が書かれた紙が張り出されていた。クラスはAクラスからDクラスまであり、各クラス30名程度の人数になる。
ええっと、俺のクラスは……俺はDクラスか。クロエとエンフィはCクラスか。攻略対象である兄上と他のメンバーはAクラス、と。ヒロインは名前がわからないため探せないが、ゲームの中だと確か攻略対象たちと同じクラスだったため、Aクラスの何処かにいるはず。
そして、セシリアはBクラスだった。確か、隣のクラスから毎日のように兄上のところに通うんだよな。その事を兄上はどんどんと疎ましくなっていき、そして、そこに何故かヒロインが入って来てと、ややこしい事になるんだっけ。
「うー、残念です。旦那様と別のクラスになってしまうなんて」
「……こればかりは仕方ないな。まあ、隣のクラスなんだから休み時間はいつでも来れば良いじゃないか」
「そうですね。それに、昼食は一緒に食べられますしね」
「ああ。エンフィもクロエの事を頼むよ」
「はい、お任せください!」
クラスを確認した俺たちは、それぞれのクラスに移動する。今日の予定は、この後クラスに行って担任の教師との顔合わせ。その後、訓練塔での入学式、そして、クラスでの挨拶や、この後数日間の予定の説明だったっけな。
1人でぼんやりと考えながら歩いていると、自分の教室に辿り着いたようで、教室の中から声が聞こえてくる。俺は教室の扉を開けて中へと入ると、一斉に沈黙し、俺の方を見てくる。
俺は周りの視線を無視して教室の中へと入って行くと、それを追うように視線も俺を見てくる。別に何もしないんだけどな。
座席は1番前の黒板に表が貼られており、そこにどこに座るか書かれていた。Dクラスは30名のクラスになるため、縦5名の横6列の座席になっており、入り口とは反対側の窓際の席の前から3番目だった。前、後ろ、右側にクラスメイトがいる形になる。
俺は座席表の通りの場所に座ると、俺の右側の席の奴は、既に爆睡していた。茶髪の少し筋肉質の男。入学初日にこれほどの爆睡を見せるとは中々の図太さだな。
「ジジジ、ジークレント殿下!! わわわ、私はマイル・ムーアといいい、いいます! しがない男爵家のちょちょちょ、長男ですが、よよよ、よろしくお願いします!!」
そして、前の席に座るメガネをかけた俺より身長の低い少年、マイル・ムーアは、物凄く緊張した様子で俺に頭を下げてくる。そこまで緊張しなくてもいいのに。
「マイル・ムーアだな。知っているかもしれないが、ジークレント・ヴァン・アルフォールだ。これからよろしく頼むよ」
俺が手を差し出して握手をしようとしても、生まれたての子鹿のようにぶるぶると震える手で、見ているこっちが緊張してしまいそうな程だった。
物凄く緊張しているマイルの緊張をほぐそうと話しかけていると、他のクラスの奴らも次々と教室に入ってくる。そして、俺を見るとみんなギョッとして、早く自分の席に座ろうとする。別に俺より遅く来たからって何もしないよ。
もうすぐで時間になりそうだって頃に、ドタバタと走る音が聞こえてくる。みんなが入り口を見ると、勢い良く開けられる扉。勢い良く開けられた扉から入って来たのは1人の少女だった。
紫色の髪を三つ編みにしており、手には学園で配布される教材ではなく、自身で持って来たと思われる本が握られていた。
「はぁ……はぁ……ま、間に合った。本を読むのに集中し過ぎて、入学式に遅れそうになるなんて……危なかったぁ〜」
紫髪の少女は、息を整えると黒板に書かれている座席表を見て、空いている俺の後ろの席を見る。そして、席の近くまで来ると、俺をじっくりと見て来る。マイルみたいに挨拶がしたいのかと思ったけど、紫髪の少女は、何故か俺を見て首を傾げていた。そして
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