悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!
18.誕生会前
「馬子にも衣装ってこういう事を言うのかね」
「? 何か言いましたか、ジーク様?」
カッコいい父上と綺麗な母上から受け継いだこの普通の顔には少し良過ぎる服を着て、思わず呟いてしまったところ、俺の着付けを手伝ってくれているメルティアに尋ねられた。
青を基調とした子供の儀礼服。記憶が戻った時に比べて引き締まった体に丁度良い感じのサイズの服で、精神年齢がおじさんの俺が見ると、少し子供が背伸びしているように見えなくもない。
「お似合いですよ、ジーク様」
「そう? なんだか、頑張って偉く見せようとしているように見えるんだけど?」
「ふふっ、それは王子様ですからね」
俺の格好を褒めてくれるメルティア。まあ、メルティアがお世辞でも褒めてくれるのなら悪い気はしない。
「そういえば、俺って母上と会場に向かえば良いんだよね?」
「はい。着替えを終えたら、陛下と王妃様がお待ちする部屋へと向かう事になっております。どこか苦しいとか問題はありませんか?」
「……うん、大丈夫だよ。それじゃあ、行こうか」
問題ないか確認してから俺たちは部屋を出る。今日は廊下に人影が少ない。皆、誕生会の準備や対応のため、そちらに行って少ないのだ。
時々すれ違う人たちもどこか慌てている、というか、そわそわとしている。色々とやる事があるのだろう。それに比べたら俺なんて悠長なものだ。最初に簡単な挨拶をすれば、後は兄上に注目がいくのだから。精々、挨拶に来た人に返すだけだろう。
しばらく廊下を歩いていると、父上と母上がいる部屋へと辿り着いた。部屋の前に立つ兵士に言って部屋へと入ると、中には父上と母上、そして、50近くの夫婦が座っていた。
男性の方は俺を見て少し驚いた様子で、女性の方はにこにこと笑みを浮かべていた。
「来たな、ジーク。この2人を覚えているか?」
俺は父上の言葉に頷く。そりゃあ、覚えていないわけがないだろう。この2人は父上の両親でこのアルフォール王国の元国王と元王妃で俺の祖父母なのだから。
「お久しぶりです、お祖父様、お祖母様。ジークレント・ヴァン・アルフォール、本日9歳になりました」
「……これがあのジークか。手紙で知っていたがこんなに変わっているとは。……まるで別人ではないか」
「ふふっ、久し振りねジーク。元気にしていたかしら?」
挨拶をするとニコニコとしていたお祖母様が俺の側に来て抱き締めてくれる。母上に似た雰囲気と匂いに少し緊張していたのが安らぐ。
「もう、お義母様ったら。私もまだじっくりと見ていないのに。それに余り強く抱きしめると、せっかく整えた服装が乱れてしまうわ」
「それもそうね。ごめんなさいね、メリセ。つい可愛い孫を見たら興奮しちゃって」
すると、母上の拗ねたような声色でお祖母様に文句を言うと、お祖母様はうふふと笑いながら俺から離れて行く。
「ふふふ、よく似合っていますよ、ジーク」
そして、お祖母様と入れ替わるように母上が抱き着いて来た……さっきお祖母様に言っていた言葉は何だったんだ?
「は、母上、恥ずかしいですよ」
「うふふ、グルディスは余りさせてくれませんからね」
嬉しそうに微笑みながら頭を撫でてくれる母上。だから恥ずかしいってば。俺が照れていると、母上と入れ替わってお祖父様が……って、なんでそんな睨んでくるの!? そういえば父上も睨んで来たよなぁ。そういう習慣でもあるのか?
「……お前は本当にジークレントなのか?」
そして、そんな事を尋ねてくる。母上、お祖母様はどういう事なのか首を傾げているが、父上は冷静に俺を見ていた。
言葉の意味からして、記憶が戻る前と比べているのだろう。まあ、自分で言うのもなんだが落ち着いた部分もある。それのせいで雰囲気が変わって別人に見えるのかも。
「勿論です、お祖父様。信じられないかもしれませんが、自分の過ちに気付いた私は、遅いかもしれませんがやり直す事を決めたのです。そのため、別人に見えるのかもしれません」
俺と睨み合うように視線を交わすお祖父様。隠居したとはいえ、まだ50半ばのお祖父様。目から放たれる目力が凄い。怖いよ。しばらく目を合わせていると、フッと柔らかく笑みを浮かべて俺から視線を外すお祖父様。
「ふっ、今はその言葉を信じるとしよう。今のお前の目は透き通っている。前のように嫉妬に濁っていない」
……お祖父様にはお見通しだったって事か。俺とお祖父様の睨み合いが終わると、パチンっと母上が手を叩く。
「お義父様も納得してくれたようですし、それでは行きましょうか、ジーク。まずは私と一緒に会場へ向かって、その後、陛下が入ってグルディスたちになるからね」
「私たちも行きましょうかね」
母上の言葉にお祖母様も頷く。少し怪しまれる場面もあったけど、ようやく会場か。どんな人たちがいるのだろう。
「? 何か言いましたか、ジーク様?」
カッコいい父上と綺麗な母上から受け継いだこの普通の顔には少し良過ぎる服を着て、思わず呟いてしまったところ、俺の着付けを手伝ってくれているメルティアに尋ねられた。
青を基調とした子供の儀礼服。記憶が戻った時に比べて引き締まった体に丁度良い感じのサイズの服で、精神年齢がおじさんの俺が見ると、少し子供が背伸びしているように見えなくもない。
「お似合いですよ、ジーク様」
「そう? なんだか、頑張って偉く見せようとしているように見えるんだけど?」
「ふふっ、それは王子様ですからね」
俺の格好を褒めてくれるメルティア。まあ、メルティアがお世辞でも褒めてくれるのなら悪い気はしない。
「そういえば、俺って母上と会場に向かえば良いんだよね?」
「はい。着替えを終えたら、陛下と王妃様がお待ちする部屋へと向かう事になっております。どこか苦しいとか問題はありませんか?」
「……うん、大丈夫だよ。それじゃあ、行こうか」
問題ないか確認してから俺たちは部屋を出る。今日は廊下に人影が少ない。皆、誕生会の準備や対応のため、そちらに行って少ないのだ。
時々すれ違う人たちもどこか慌てている、というか、そわそわとしている。色々とやる事があるのだろう。それに比べたら俺なんて悠長なものだ。最初に簡単な挨拶をすれば、後は兄上に注目がいくのだから。精々、挨拶に来た人に返すだけだろう。
しばらく廊下を歩いていると、父上と母上がいる部屋へと辿り着いた。部屋の前に立つ兵士に言って部屋へと入ると、中には父上と母上、そして、50近くの夫婦が座っていた。
男性の方は俺を見て少し驚いた様子で、女性の方はにこにこと笑みを浮かべていた。
「来たな、ジーク。この2人を覚えているか?」
俺は父上の言葉に頷く。そりゃあ、覚えていないわけがないだろう。この2人は父上の両親でこのアルフォール王国の元国王と元王妃で俺の祖父母なのだから。
「お久しぶりです、お祖父様、お祖母様。ジークレント・ヴァン・アルフォール、本日9歳になりました」
「……これがあのジークか。手紙で知っていたがこんなに変わっているとは。……まるで別人ではないか」
「ふふっ、久し振りねジーク。元気にしていたかしら?」
挨拶をするとニコニコとしていたお祖母様が俺の側に来て抱き締めてくれる。母上に似た雰囲気と匂いに少し緊張していたのが安らぐ。
「もう、お義母様ったら。私もまだじっくりと見ていないのに。それに余り強く抱きしめると、せっかく整えた服装が乱れてしまうわ」
「それもそうね。ごめんなさいね、メリセ。つい可愛い孫を見たら興奮しちゃって」
すると、母上の拗ねたような声色でお祖母様に文句を言うと、お祖母様はうふふと笑いながら俺から離れて行く。
「ふふふ、よく似合っていますよ、ジーク」
そして、お祖母様と入れ替わるように母上が抱き着いて来た……さっきお祖母様に言っていた言葉は何だったんだ?
「は、母上、恥ずかしいですよ」
「うふふ、グルディスは余りさせてくれませんからね」
嬉しそうに微笑みながら頭を撫でてくれる母上。だから恥ずかしいってば。俺が照れていると、母上と入れ替わってお祖父様が……って、なんでそんな睨んでくるの!? そういえば父上も睨んで来たよなぁ。そういう習慣でもあるのか?
「……お前は本当にジークレントなのか?」
そして、そんな事を尋ねてくる。母上、お祖母様はどういう事なのか首を傾げているが、父上は冷静に俺を見ていた。
言葉の意味からして、記憶が戻る前と比べているのだろう。まあ、自分で言うのもなんだが落ち着いた部分もある。それのせいで雰囲気が変わって別人に見えるのかも。
「勿論です、お祖父様。信じられないかもしれませんが、自分の過ちに気付いた私は、遅いかもしれませんがやり直す事を決めたのです。そのため、別人に見えるのかもしれません」
俺と睨み合うように視線を交わすお祖父様。隠居したとはいえ、まだ50半ばのお祖父様。目から放たれる目力が凄い。怖いよ。しばらく目を合わせていると、フッと柔らかく笑みを浮かべて俺から視線を外すお祖父様。
「ふっ、今はその言葉を信じるとしよう。今のお前の目は透き通っている。前のように嫉妬に濁っていない」
……お祖父様にはお見通しだったって事か。俺とお祖父様の睨み合いが終わると、パチンっと母上が手を叩く。
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