悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!
15.魔導書
「ねえ、メルティア。父上から頂いた金額ってどのくらいなの?」
俺が目の前のガラスの向こうにある魔導書を見ながら尋ねる。予算を聞いておかないと買えるかどうかもわからないからな。
「陛下から頂いのは20万イェンですね」
……いくらなんでも、子供の誕生日に使わせる金額じゃないぞ、それ。これだから王族は、と思うべきか、流石は王族か、と思うべきか。まあ、国がお金を使わないと民たちにお金が回らないっていうから良いのだろう。
王族だけど、そういう金銭的なところはまだ前世の感覚を引きずっているため、少し躊躇してしまうが、ここで使わなかったら何か申し訳ない気がしたので、俺は魔導書を探す。俺に合った魔導書は何かないだろうか?
ガラスの向こうにある魔導書を眺めていると、俺の接客に来た女性店員さんが
「あ、あのぉぅ、本当に魔導書を買われるのですか?」
と、心配そうに尋ねてきた。どうしてそんな顔をするのだろうか不思議で仕方なかったけど、テルマも同じように
「じ、ジーク様にはまだ早いですよぉ〜。ほら、こっちの子供向けの本の方が良いですよ?」
と、薄い幼児向けの絵本を渡して来た。流石にこれは対象年齢が幼過ぎるだろうが。嫌がらせか何かか? と、思ったけど、テルマの目は真剣だった。
そこで、俺の風評を思い出す。そういえば俺って文字も読めないボンクラ王子扱いされていたな。テルマも俺がそこまで文字を読めるのを知らないのか。
「大丈夫だよ。少しは読めるから」
「ううっ、前もそう言った貴族のお子様が魔導書を買っていかれたのですが、後日読めないじゃないかと父親の貴族様が怒鳴り込んで来たのです。それ以来、子供への販売は少し避けたくて……」
ふむ、そんな事があったのか。そんな事があったのなら女性店員さんの対応もわかる。それなら
「なら、この魔導書を買いたい。勿論現金は即払いで、読めなくても返せなんて言わない。メルティア」
「……本当に宜しいのですか? この魔導書は18万イェンもします。ほとんど使い切ってしまいますが」
「良いよ。これくらいしないと店員さんも可哀想だからね。それなら良いでしょ?」
俺たちが女性店員さんを見ると、女性店員さんはオロオロとして自分の判断では出来ないからと裏に行ってしまった。俺は買う予定の魔導書を眺めていると
「お待たせしました……おやおや、これはジークレント殿下。このようなところにお越し頂けるとは」
「ええっと……あなたは?」
恭しく俺に頭を下げてくる男性。年齢は50になろうかという年齢で茶髪の少し小太りな男性だ。雰囲気からして
「私の名前はアルフォンス・マーケッティーと申します。このマーケッティー書店の店長でございます」
やっぱり店長でだったか。なんだか貫禄があると思ったんだ。
「初めまして。ジークレント・ヴァン・アルフォールだ。今はお忍びのようなもので来ているからジークでいい。それで、女性店員さんから聞いた?」
「はい。18万イェンの魔導書を買いたいとかで。読んでみて読めなくてもしっかりと払ってくださるのなら、私どもとしては何の問題もありません」
「おおっ、それなら、その魔導書が欲しい!」
俺が選んだのは青色の魔導書だ。マーケッティー店長は俺が選んだ魔導書を取り出して渡してくれる。メルティアが俺が受け取るのと同時に女性店員さんへとお金を渡したのを確認して、俺は魔導書を開く。
魔導書に書かれていたのは……なるほどね。確かにこれは読めない人が多いわけだ。
この世界の基本言語は大陸語と呼ばれる平仮名を逆にした文字だ。前世の書き方で『ひらがな』を『ながらひ』と書かれて、更に文字が鏡に向けたように逆になっている。それだけでも、普通の人では読めない人がいるのに、魔導書は更にカタカナが同じように混ざっているのだ。
例えば『きょうもびーるがのみたい』が『いたみのがルービもうょき』となっており、更に鏡写したような書き方がされている。これは読めない。俺は何とか読めるけど、カタカナを知らなかったら絶対に読めない。
しかも、この魔導書、物語になっている。読んだら使えるようになる魔法が関わる物語が魔導書に書かれていたのだ。こういうところはゲームでは見えてこないところで面白く感じてしまうな。ゲームだと『魔導書を使いますか?』で、はい、か、いいえを押すだけだったから。
……おっと、序章を読んだら魔法が使えるようになった感覚がある。ただ、上手く使える気がしない。魔法は使えるようになるけど、完璧に使おうと思ったら最後まで読めって事か。
しかも、この魔法って……やっぱり魔導書はやばいな。今のままこの魔法を使ったら、俺の体がもたないぞ、これ。
「どうでしたかな?」
「ああ、読めて使えるようになった。ありがとうマーケッティー店長。良い買い物が出来たよ」
俺は手に入った魔導書を両手に抱えて店を出る。新しく手に入った魔法『オーバードライブ』。所謂限界突破ってやつだけど、今のまま使ったら俺の体が壊れてしまう。どのような魔法を手に入れても、まずは体作りをやれって事かな。
また、明日から頑張ろ。この魔法を使っても耐えられるように。それと、頑張ってお金を貯めてまた来よう。他の魔導書も読んでみたい!
俺が目の前のガラスの向こうにある魔導書を見ながら尋ねる。予算を聞いておかないと買えるかどうかもわからないからな。
「陛下から頂いのは20万イェンですね」
……いくらなんでも、子供の誕生日に使わせる金額じゃないぞ、それ。これだから王族は、と思うべきか、流石は王族か、と思うべきか。まあ、国がお金を使わないと民たちにお金が回らないっていうから良いのだろう。
王族だけど、そういう金銭的なところはまだ前世の感覚を引きずっているため、少し躊躇してしまうが、ここで使わなかったら何か申し訳ない気がしたので、俺は魔導書を探す。俺に合った魔導書は何かないだろうか?
ガラスの向こうにある魔導書を眺めていると、俺の接客に来た女性店員さんが
「あ、あのぉぅ、本当に魔導書を買われるのですか?」
と、心配そうに尋ねてきた。どうしてそんな顔をするのだろうか不思議で仕方なかったけど、テルマも同じように
「じ、ジーク様にはまだ早いですよぉ〜。ほら、こっちの子供向けの本の方が良いですよ?」
と、薄い幼児向けの絵本を渡して来た。流石にこれは対象年齢が幼過ぎるだろうが。嫌がらせか何かか? と、思ったけど、テルマの目は真剣だった。
そこで、俺の風評を思い出す。そういえば俺って文字も読めないボンクラ王子扱いされていたな。テルマも俺がそこまで文字を読めるのを知らないのか。
「大丈夫だよ。少しは読めるから」
「ううっ、前もそう言った貴族のお子様が魔導書を買っていかれたのですが、後日読めないじゃないかと父親の貴族様が怒鳴り込んで来たのです。それ以来、子供への販売は少し避けたくて……」
ふむ、そんな事があったのか。そんな事があったのなら女性店員さんの対応もわかる。それなら
「なら、この魔導書を買いたい。勿論現金は即払いで、読めなくても返せなんて言わない。メルティア」
「……本当に宜しいのですか? この魔導書は18万イェンもします。ほとんど使い切ってしまいますが」
「良いよ。これくらいしないと店員さんも可哀想だからね。それなら良いでしょ?」
俺たちが女性店員さんを見ると、女性店員さんはオロオロとして自分の判断では出来ないからと裏に行ってしまった。俺は買う予定の魔導書を眺めていると
「お待たせしました……おやおや、これはジークレント殿下。このようなところにお越し頂けるとは」
「ええっと……あなたは?」
恭しく俺に頭を下げてくる男性。年齢は50になろうかという年齢で茶髪の少し小太りな男性だ。雰囲気からして
「私の名前はアルフォンス・マーケッティーと申します。このマーケッティー書店の店長でございます」
やっぱり店長でだったか。なんだか貫禄があると思ったんだ。
「初めまして。ジークレント・ヴァン・アルフォールだ。今はお忍びのようなもので来ているからジークでいい。それで、女性店員さんから聞いた?」
「はい。18万イェンの魔導書を買いたいとかで。読んでみて読めなくてもしっかりと払ってくださるのなら、私どもとしては何の問題もありません」
「おおっ、それなら、その魔導書が欲しい!」
俺が選んだのは青色の魔導書だ。マーケッティー店長は俺が選んだ魔導書を取り出して渡してくれる。メルティアが俺が受け取るのと同時に女性店員さんへとお金を渡したのを確認して、俺は魔導書を開く。
魔導書に書かれていたのは……なるほどね。確かにこれは読めない人が多いわけだ。
この世界の基本言語は大陸語と呼ばれる平仮名を逆にした文字だ。前世の書き方で『ひらがな』を『ながらひ』と書かれて、更に文字が鏡に向けたように逆になっている。それだけでも、普通の人では読めない人がいるのに、魔導書は更にカタカナが同じように混ざっているのだ。
例えば『きょうもびーるがのみたい』が『いたみのがルービもうょき』となっており、更に鏡写したような書き方がされている。これは読めない。俺は何とか読めるけど、カタカナを知らなかったら絶対に読めない。
しかも、この魔導書、物語になっている。読んだら使えるようになる魔法が関わる物語が魔導書に書かれていたのだ。こういうところはゲームでは見えてこないところで面白く感じてしまうな。ゲームだと『魔導書を使いますか?』で、はい、か、いいえを押すだけだったから。
……おっと、序章を読んだら魔法が使えるようになった感覚がある。ただ、上手く使える気がしない。魔法は使えるようになるけど、完璧に使おうと思ったら最後まで読めって事か。
しかも、この魔法って……やっぱり魔導書はやばいな。今のままこの魔法を使ったら、俺の体がもたないぞ、これ。
「どうでしたかな?」
「ああ、読めて使えるようになった。ありがとうマーケッティー店長。良い買い物が出来たよ」
俺は手に入った魔導書を両手に抱えて店を出る。新しく手に入った魔法『オーバードライブ』。所謂限界突破ってやつだけど、今のまま使ったら俺の体が壊れてしまう。どのような魔法を手に入れても、まずは体作りをやれって事かな。
また、明日から頑張ろ。この魔法を使っても耐えられるように。それと、頑張ってお金を貯めてまた来よう。他の魔導書も読んでみたい!
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