英雄の妹、最強を目指す!
43話 確認のための勝負
「一体何の用だよ、婆さん」
憤然とした様子で部屋へと入って来た魔族の少年。歳は私たちと変わらないくらいで、銀の短髪を刈り上げて、面倒くさそうに睨んでくる。
「あんたに紹介したい子たちがいてねぇ。この面倒くさそうな表情を浮かべているのは、レーリックだ。ちょい訳ありでね、私が預かっている魔族の子だ。
レーリック、この子たちは、私の知り合いの妹とそのパーティーだよ。この子たちの実力を見たいから相手してもらうよ」
シルフィードさんの言葉に嫌そうな顔をするレーリックと呼ばれた少年。でも、シルフィードさんには逆らえないのか、嫌々ながらもわかったと答える。
「それじゃあ、訓練場へ行こうか」
シルフィードさんが部屋を出て行くのに後をついて行く私たち。部屋から出ると、シルフィードさんや私たちに気が付いた冒険者たちや受付の人たちが訝しげにこちらを見ていた。すると
「何見てるんだい、あんたたち。仕事をしな!」
と、シルフィードさんの一喝であわあわと動き出した。それでも、チラチラと見てくる視線に晒されながらも、私たちは訓練場に辿り着いた。
「さてと、クリシアの実力を見せてもらおうかね。レーリック、本気でやるんだよ?」
「ちっ、わかっているよ」
シルフィードさんの言葉に悪態をつきながらも準備をするレーリック。私も彼の真正面に立つため離れて準備をする。
「2人とも本気でするように。クリシア、いざとなれば力を解放しても構わないよ。限界近くになれば私が止めるから」
「えっ? で、でも」
そんな事をすればレーリックが危険に晒されるんじゃあ? そんな事を考えていると
「レーリックも解放して構わないからね」
と、シルフィードさんは言う。レーリックも解放って私と同じような力を持っているって事かしら? ……わからないけど、油断は出来ないわね。
私は黒賢杖を構えてレーリックを見る。レーリックは手を前にかざすと、何処からともなく大剣を召喚した。漆黒に染まる大剣。
「それじゃあ、2人とも本気でやるように。いざとなれば止めてあげるから。始め!」
シルフィードさんの開始の合図とともに、飛び出してきたレーリック。かなり速い速度でこちらに向かってきた!
「アイスバレット!」
牽制のつもりでアイスバレットをレーリックに放つけど、容易くレーリックの持つ大剣に切られてしまう。一気に距離を詰めてきたレーリック。大剣には黒い魔力が纏わされていた。
「おらっ!」
レーリックはその大剣を勢い良く振り下ろしてくるけど、そんなものを真正面から受け止めるわけがないじゃない。
私は右足から地面に魔力を流してアイスウォールを発動。地面から氷の壁がレーリックの行く手を阻む。半透明で微かにだけどレーリックの姿が見えるため、ウォール系の弱点である、敵を視界から見失うというのがない。
壁に阻まれたため左右のどちらからか来るだろうと思って準備をしようと思った瞬間、レーリックは関係無しにアイスウォールに向かって大剣を振り下ろしてきた。
アイスウォールを切れるわけが……そう思っていたけど、レーリックの大剣が触れた瞬間、触れた部分が溶けるように消えていった。
レーリックは大剣で切った隙間から体をねじ込んで壁を抜けてきた。まさか真正面から突破されるとは思っていなかったら、少し油断してしまった。
目の前に迫るレーリック。私との距離が近いため大剣は振れないようだけど、その代わりに蹴りを放ってきた。私は黒賢杖を盾に蹴りを防ぐけど、勢いを殺しきれずに後ろに下がる。
ただ、やられっ放しじゃない。下がると同時にアイスランスを放つ。氷の槍をレーリックに向けていくつも放ち、その間に立て直す。
レーリックは初めに放ったバレットの時のように大剣で防ぐけど、私は放ちながらレーリックへと迫り、黒賢杖を振るう。
ガキンッと大剣に防がれ、押し返されるけど直ぐに振り下ろす。ギリギリと押し合いになるけど、力ではやっぱりレーリックの方が強い。
レーリックに弾かれた私は再び距離を取る。レーリックも警戒してか、突っ込んで来ようとはしなかった。 
……やっぱり、シルフィードさんの弟子なだけあって強い。魔法は多分大剣に纏わせているものがそうなのだろうけど、身体能力的にどれも私を上回っている。
このままでは押し切られてしまうのが目に見えている。シルフィードさんに私の実力を見てもらうのが目的なのだけど、負けたいとは思わない。どうにかして勝ちたいのだけど、そう考えると思いつくのは
『私の力ね』
と、いつか聞こえた声が私の頭の中で囁いてくる。そう、彼を超えるにはこの力を使うしかない。だけど、不安もある。以前の様に暴走してしまわないかという。その不安で中々使う気持ちにはなれなかったけど
『大丈夫よ。ここにはシルフィードがいるのだから。あなたは気にせずあなたの中に眠る力を使いこなせる様にしなさい』
と、囁いて来た。私はその言葉につられる様にチラッとシルフィードさんを見る。そうだ、シルフィードさんも本気でやれって言っていたし、いざとなれば止めてくれるとも言ってくれた。
この力に頼るのは駄目だけど、飲み込まれない様にいざという時に扱えない様にしないと。そうしなければ私はまた後悔する。それだけは絶対に嫌だ。
私は自分の奥底に眠る力に意識を向ける。ドクンッと脈打って体を巡る魔力。体の奥底から溢れる高揚感に飲み込まれそうになるけど、歯を食いしばって耐える。
前の様に精神的に不安定じゃない分、何とか耐えれた。見た目は前と同じ様に黒のロングドレスを着て、大鎌を持っていた。
「ふぅ……ふぅ……行くわよ」
今までの先を目指すためにこの力を何とか使いこなしてやる!
憤然とした様子で部屋へと入って来た魔族の少年。歳は私たちと変わらないくらいで、銀の短髪を刈り上げて、面倒くさそうに睨んでくる。
「あんたに紹介したい子たちがいてねぇ。この面倒くさそうな表情を浮かべているのは、レーリックだ。ちょい訳ありでね、私が預かっている魔族の子だ。
レーリック、この子たちは、私の知り合いの妹とそのパーティーだよ。この子たちの実力を見たいから相手してもらうよ」
シルフィードさんの言葉に嫌そうな顔をするレーリックと呼ばれた少年。でも、シルフィードさんには逆らえないのか、嫌々ながらもわかったと答える。
「それじゃあ、訓練場へ行こうか」
シルフィードさんが部屋を出て行くのに後をついて行く私たち。部屋から出ると、シルフィードさんや私たちに気が付いた冒険者たちや受付の人たちが訝しげにこちらを見ていた。すると
「何見てるんだい、あんたたち。仕事をしな!」
と、シルフィードさんの一喝であわあわと動き出した。それでも、チラチラと見てくる視線に晒されながらも、私たちは訓練場に辿り着いた。
「さてと、クリシアの実力を見せてもらおうかね。レーリック、本気でやるんだよ?」
「ちっ、わかっているよ」
シルフィードさんの言葉に悪態をつきながらも準備をするレーリック。私も彼の真正面に立つため離れて準備をする。
「2人とも本気でするように。クリシア、いざとなれば力を解放しても構わないよ。限界近くになれば私が止めるから」
「えっ? で、でも」
そんな事をすればレーリックが危険に晒されるんじゃあ? そんな事を考えていると
「レーリックも解放して構わないからね」
と、シルフィードさんは言う。レーリックも解放って私と同じような力を持っているって事かしら? ……わからないけど、油断は出来ないわね。
私は黒賢杖を構えてレーリックを見る。レーリックは手を前にかざすと、何処からともなく大剣を召喚した。漆黒に染まる大剣。
「それじゃあ、2人とも本気でやるように。いざとなれば止めてあげるから。始め!」
シルフィードさんの開始の合図とともに、飛び出してきたレーリック。かなり速い速度でこちらに向かってきた!
「アイスバレット!」
牽制のつもりでアイスバレットをレーリックに放つけど、容易くレーリックの持つ大剣に切られてしまう。一気に距離を詰めてきたレーリック。大剣には黒い魔力が纏わされていた。
「おらっ!」
レーリックはその大剣を勢い良く振り下ろしてくるけど、そんなものを真正面から受け止めるわけがないじゃない。
私は右足から地面に魔力を流してアイスウォールを発動。地面から氷の壁がレーリックの行く手を阻む。半透明で微かにだけどレーリックの姿が見えるため、ウォール系の弱点である、敵を視界から見失うというのがない。
壁に阻まれたため左右のどちらからか来るだろうと思って準備をしようと思った瞬間、レーリックは関係無しにアイスウォールに向かって大剣を振り下ろしてきた。
アイスウォールを切れるわけが……そう思っていたけど、レーリックの大剣が触れた瞬間、触れた部分が溶けるように消えていった。
レーリックは大剣で切った隙間から体をねじ込んで壁を抜けてきた。まさか真正面から突破されるとは思っていなかったら、少し油断してしまった。
目の前に迫るレーリック。私との距離が近いため大剣は振れないようだけど、その代わりに蹴りを放ってきた。私は黒賢杖を盾に蹴りを防ぐけど、勢いを殺しきれずに後ろに下がる。
ただ、やられっ放しじゃない。下がると同時にアイスランスを放つ。氷の槍をレーリックに向けていくつも放ち、その間に立て直す。
レーリックは初めに放ったバレットの時のように大剣で防ぐけど、私は放ちながらレーリックへと迫り、黒賢杖を振るう。
ガキンッと大剣に防がれ、押し返されるけど直ぐに振り下ろす。ギリギリと押し合いになるけど、力ではやっぱりレーリックの方が強い。
レーリックに弾かれた私は再び距離を取る。レーリックも警戒してか、突っ込んで来ようとはしなかった。 
……やっぱり、シルフィードさんの弟子なだけあって強い。魔法は多分大剣に纏わせているものがそうなのだろうけど、身体能力的にどれも私を上回っている。
このままでは押し切られてしまうのが目に見えている。シルフィードさんに私の実力を見てもらうのが目的なのだけど、負けたいとは思わない。どうにかして勝ちたいのだけど、そう考えると思いつくのは
『私の力ね』
と、いつか聞こえた声が私の頭の中で囁いてくる。そう、彼を超えるにはこの力を使うしかない。だけど、不安もある。以前の様に暴走してしまわないかという。その不安で中々使う気持ちにはなれなかったけど
『大丈夫よ。ここにはシルフィードがいるのだから。あなたは気にせずあなたの中に眠る力を使いこなせる様にしなさい』
と、囁いて来た。私はその言葉につられる様にチラッとシルフィードさんを見る。そうだ、シルフィードさんも本気でやれって言っていたし、いざとなれば止めてくれるとも言ってくれた。
この力に頼るのは駄目だけど、飲み込まれない様にいざという時に扱えない様にしないと。そうしなければ私はまた後悔する。それだけは絶対に嫌だ。
私は自分の奥底に眠る力に意識を向ける。ドクンッと脈打って体を巡る魔力。体の奥底から溢れる高揚感に飲み込まれそうになるけど、歯を食いしばって耐える。
前の様に精神的に不安定じゃない分、何とか耐えれた。見た目は前と同じ様に黒のロングドレスを着て、大鎌を持っていた。
「ふぅ……ふぅ……行くわよ」
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