黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
242話 死竜討伐戦(4)
「……姉……上……?」
俺の肩に手を置いて、俺の傷を治療してくれる人物、もう3年……もうすぐ4年になるのか。それぐらい会っていなかった姉上がそこにいたのだ。
赤く輝く髪が肩甲骨辺りで揃えられて、赤いローブに、赤い宝玉が先端に付けられた杖を持っており、二つ名の『紅蓮の魔女』に相応しい容貌をしていた。
……そうだった。姉上がこの国にいるのは手紙で知っていたじゃないか。クルトもいるのだから当然だ。ここ2年ほどは戦争やら領地の移動に俺が行方不明になる事件などで、手紙を送る事が出来ていなかったが。
「久し振りね、レディウス。見ない間にかっこよくなっちゃって」
そう言いながら、俺に魔力を流してくれる姉上。治療をするとともに、魔力も渡してくれているのか。他人に魔力を渡すのは難しいはずなのに、流石姉上だ。
「姉上こそ、かなり綺麗になられた」
「ふふっ、お世辞でも嬉しいわ」
うふふ、と笑う姉上だが、お世辞でもなんでもない。姉上からはヴィクトリアたちに負けない大人の色気というものがあった。フローゼ様にだって負けてなかった。
「グゥゥルァァオア!!!」
そんな姉上を見ていたが、背後から聞こえる咆哮に俺は立ち上がり背後を見る。そこには、少し形を崩しているが、ドロっと濁った目でこちらを見てくる死竜の姿があった。その周りにはアンデッドとなった兵士たちも。
「レディウスとはゆっくり落ち着いて話がしたいところだけど、今はあの死竜をどうにかしないといけないわね」
「そうですね。行けますか?」
「もちろんよ。誰に言っているのよ?」
そう言う姉上の頭上には、いくつもの炎の球体が現れる。そして、その炎の球体は、次々とアンデッドとなった兵士たちの上に落ちていく。
兵士たちには心苦しいが許してほしい。俺は姉上が放った瞬間に走り出していた。魔天装をし、死竜を目指す。
死竜は向かってくる俺に気が付き、体に魔力を流す。流した魔力は体から触手のように生えて、俺を狙ってくる……かと思いきや、近くのアンデッドとなった兵士たちを掴み始めた。
一体何を? と、思った瞬間、死竜はその兵士たちを口元まで持って行き食べ始めたではないか。死竜がアンデッドを食べる度に増す魔力。あいつ、アンデッドを食って回復してやがる!?
「させるか! 風切!」
このままでは不味いと思った俺は、触手に目掛けて斬撃を放つ。姉上も炎の刃を放ち次々と切って落としていく。
しかし、触手は切った瞬間から新たに生えて来て、近くのアンデッドを次々と食っていく。そして、辺りのアンデッドがいなくなると、今度は魔獣の方へと向かった。
「レディウス!」
「ええ!」
その後を追うように俺と姉上は再び外壁から飛び降りる。俺は走り、姉上は魔法で宙を飛ぶようにして。死竜が魔獣たちの元へ向かった理由はたった1つだ。同じようにアンデッドを食べるためだろう。
死竜は魔獣の元へ降り立つと、一気に瘴気を辺りに放つ。その瘴気を浴びた死体は勿論の事、生きていた魔獣まで瘴気の濃さに死にアンデッドとなった。
俺は魔天装で消滅させて、姉上は光魔法で瘴気を浄化させる魔法を体に纏っているため、効果は無いが、この辺りはもう浄化しなければ人が入らない程濃くなっていた。
「レディウス、絶対にその鎧解いたらダメよ!」
「わかっています!」
魔天装を解けば、俺も奴らの仲間入りになってしまうだろう。それは避けなければならない。
死竜の瘴気に誘われて集まった魔獣たちも、次々とアンデッドになり食われていく。それに比例して死竜の力が増していく。
その力に恐れた魔獣たちは、散ってくれたおかげで俺たちが進めるのは皮肉な事だ。
俺や姉上が死竜の元へと辿り着いた頃には、辺りには魔獣はおらず、完全に回復どころか、異形へと変わった死竜の姿があった。
背からは翼以外に触手が生えて、魔獣やら兵士の肉片で集められた腕と足が新たに増えており、尻尾も3尾に生えていた。
「グギャアラアアア!」
「レディウス!!!」
「はいっ!!」
咆哮と共に死竜の背の触手が俺たちに伸びてくる。それが来るのを見て、姉上が俺を呼ぶ。俺はその声を聞いて走り出す。
特に交わす事は無い。姉上の言いたい事は伝わってくるから。俺に向かってくる触手。俺は何もする事なく触手へと突っ込む。俺1人なら対応しなければいけないが、今は後ろに姉上がいる。
俺に迫る触手は、次々と放たれる火球に撃たれていく。触手は直ぐに再生するが、俺が掻い潜る時間はある。
目の前には異形へと変異した死竜の姿が。俺をドロっと濁った目で睨んでくる。それと同時に増す圧力。向こうも本気で俺たちを潰しに来るのだろう。
だが、負ける気は更々ない。死竜よ。お前の首を狩らせてもらうぞ!
俺の肩に手を置いて、俺の傷を治療してくれる人物、もう3年……もうすぐ4年になるのか。それぐらい会っていなかった姉上がそこにいたのだ。
赤く輝く髪が肩甲骨辺りで揃えられて、赤いローブに、赤い宝玉が先端に付けられた杖を持っており、二つ名の『紅蓮の魔女』に相応しい容貌をしていた。
……そうだった。姉上がこの国にいるのは手紙で知っていたじゃないか。クルトもいるのだから当然だ。ここ2年ほどは戦争やら領地の移動に俺が行方不明になる事件などで、手紙を送る事が出来ていなかったが。
「久し振りね、レディウス。見ない間にかっこよくなっちゃって」
そう言いながら、俺に魔力を流してくれる姉上。治療をするとともに、魔力も渡してくれているのか。他人に魔力を渡すのは難しいはずなのに、流石姉上だ。
「姉上こそ、かなり綺麗になられた」
「ふふっ、お世辞でも嬉しいわ」
うふふ、と笑う姉上だが、お世辞でもなんでもない。姉上からはヴィクトリアたちに負けない大人の色気というものがあった。フローゼ様にだって負けてなかった。
「グゥゥルァァオア!!!」
そんな姉上を見ていたが、背後から聞こえる咆哮に俺は立ち上がり背後を見る。そこには、少し形を崩しているが、ドロっと濁った目でこちらを見てくる死竜の姿があった。その周りにはアンデッドとなった兵士たちも。
「レディウスとはゆっくり落ち着いて話がしたいところだけど、今はあの死竜をどうにかしないといけないわね」
「そうですね。行けますか?」
「もちろんよ。誰に言っているのよ?」
そう言う姉上の頭上には、いくつもの炎の球体が現れる。そして、その炎の球体は、次々とアンデッドとなった兵士たちの上に落ちていく。
兵士たちには心苦しいが許してほしい。俺は姉上が放った瞬間に走り出していた。魔天装をし、死竜を目指す。
死竜は向かってくる俺に気が付き、体に魔力を流す。流した魔力は体から触手のように生えて、俺を狙ってくる……かと思いきや、近くのアンデッドとなった兵士たちを掴み始めた。
一体何を? と、思った瞬間、死竜はその兵士たちを口元まで持って行き食べ始めたではないか。死竜がアンデッドを食べる度に増す魔力。あいつ、アンデッドを食って回復してやがる!?
「させるか! 風切!」
このままでは不味いと思った俺は、触手に目掛けて斬撃を放つ。姉上も炎の刃を放ち次々と切って落としていく。
しかし、触手は切った瞬間から新たに生えて来て、近くのアンデッドを次々と食っていく。そして、辺りのアンデッドがいなくなると、今度は魔獣の方へと向かった。
「レディウス!」
「ええ!」
その後を追うように俺と姉上は再び外壁から飛び降りる。俺は走り、姉上は魔法で宙を飛ぶようにして。死竜が魔獣たちの元へ向かった理由はたった1つだ。同じようにアンデッドを食べるためだろう。
死竜は魔獣の元へ降り立つと、一気に瘴気を辺りに放つ。その瘴気を浴びた死体は勿論の事、生きていた魔獣まで瘴気の濃さに死にアンデッドとなった。
俺は魔天装で消滅させて、姉上は光魔法で瘴気を浄化させる魔法を体に纏っているため、効果は無いが、この辺りはもう浄化しなければ人が入らない程濃くなっていた。
「レディウス、絶対にその鎧解いたらダメよ!」
「わかっています!」
魔天装を解けば、俺も奴らの仲間入りになってしまうだろう。それは避けなければならない。
死竜の瘴気に誘われて集まった魔獣たちも、次々とアンデッドになり食われていく。それに比例して死竜の力が増していく。
その力に恐れた魔獣たちは、散ってくれたおかげで俺たちが進めるのは皮肉な事だ。
俺や姉上が死竜の元へと辿り着いた頃には、辺りには魔獣はおらず、完全に回復どころか、異形へと変わった死竜の姿があった。
背からは翼以外に触手が生えて、魔獣やら兵士の肉片で集められた腕と足が新たに増えており、尻尾も3尾に生えていた。
「グギャアラアアア!」
「レディウス!!!」
「はいっ!!」
咆哮と共に死竜の背の触手が俺たちに伸びてくる。それが来るのを見て、姉上が俺を呼ぶ。俺はその声を聞いて走り出す。
特に交わす事は無い。姉上の言いたい事は伝わってくるから。俺に向かってくる触手。俺は何もする事なく触手へと突っ込む。俺1人なら対応しなければいけないが、今は後ろに姉上がいる。
俺に迫る触手は、次々と放たれる火球に撃たれていく。触手は直ぐに再生するが、俺が掻い潜る時間はある。
目の前には異形へと変異した死竜の姿が。俺をドロっと濁った目で睨んでくる。それと同時に増す圧力。向こうも本気で俺たちを潰しに来るのだろう。
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