黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜

やま

238.兄妹のような存在

「……その、なんだ……久し振りだな、ロナ」


「……そうだね。元気にしていた?」


 3年ぶりくらいに久し振りに出会ったクルト。3年前より身長も高くなって、男らしさが増していた。まあ、レディウス様には敵わないけど。


「ああ、俺は元気にしていたよ。色んな事があったが楽しく過ごしているよ」


 あはは、と笑うクルト。それで話は途切れてしまった。余りにも久し振りに出会うからか何を話せばいいかわからない。すると


「ねえ、あなた、クルトの何なのかしら? クルトにはミアさんっていう奥さんと私がいるのよ?」


 そう言ってクルトの前に立って睨みつけてくる茶髪の女性が。確か、私たちが向かった町で補佐をしていた人ね。その女性の言葉を聞いて思わずクルトを見てしまった。


 ミアさんと……私? という事は彼女はクルトの女なのかしら? ミアさんについて行くって言って行ったのに、ミアさん以外の女性を作っているなんて。レディウス様みたいに甲斐性があるのなら別だけど、悪いけどクルトには……


「アルテナ。その話はこれが終わってからって言っただろ? それにロナは俺を救ってくれたアニキに付いている俺の兄妹のような存在だよ。前に話しただろ?」


「……ああ、前に話してくれた妹のことね。ごめんなさい、カッコいいクルトと親しく話しているからてっきり新しい女性かと思って。私の名前はアルテナ。クルトの第二の妻になる予定の女よ」


 そう言って私に手を差し出してくるアルテナ。私はその手を取って握手をするけど首を傾げてしまった。カッコいいクルト? カッコいい……かしら? それに妹ってどういう事かしら? 私は姉でクルトが弟のはずだけど……


「まあ、良いわ……私の名前はロナよ。今はアルバスト王国の貴族、レディウス・アルノード伯爵の補佐をしているわ」


「ああ! レディウス・アルノード伯爵! 通りで聞き覚えがあったわけね。クルトが前に話してくれた人!」


「それじゃあ、アルバスト王国からの救援ってアニキが来ているのか?」


「ええ、レディウス様が今回のアルバスト王国からの救援の大将をしているわ」


「そうか……やっぱ凄えな、アニキは」


 そう言って笑みを浮かべるクルト。ふふっ、覚えているじゃない。そうよ、レディウス様は凄いんだから! クルトの言葉に少し満足していると


「あっ、そうだ! アニキに会う事はできるか? 話したい事があるんだ」


 と、突然言い出してきた。レディウス様に会う事か。会えない事は無さそうだけど


「死竜との戦いが終わるまでは厳しいと思うわ。これからが本番だし」


「それもそうだな。終わってからでもいいから話がしたいと伝えてくれないか?」


「わかったわ。でも、確実に会えるかはわからないから。それに、今からそんな話したら駄目よ。戦う前に終わった後の話をするのはふらぐって言われているんだから」


「なんだそりゃ? まあいいや。これから何度か会うかもしれないが、よろしくな」


 そう言い笑みを浮かべて去って行くクルト。その後に続くアルテナ。久し振りに会ったけど、あまり変わってなくて良かった。


 仲よさそうに歩いて行く2人の後ろ姿を見ていると、思わず羨ましく思ってしまう。私もレディウス様と2人で……


「ぼーっとしてどうしたんだ、ロナ?」


「ひょわぁんっ!? レレレ、レディウス様!? いい、いつからそこに!?」


「ん? 今だよ。会議が終わったからロナを探していたら、1人でいたからな。何かあったのか?」


「い、いえ! 何もありませ……あっ、そ、そうです! クルトと会って話していたんです!」


「お! クルトがいたのか! それは俺も会いたかったな。まあ、ここにいれば話せる機会はあるか」


 それから私とレディウス様は2人でクルトの事で話しながら歩きます。この時にはもう、2人が羨ましいという気持ちは無くなっていた。


 それによくよく考えれば、今は私とレディウス様の2人っきり。ヴィクトリアさんやヘレネーさんから許可は頂いておりますので……えへへっ!


「ロナ、どうした?」


「いえ、楽しみです!」


 私の言葉に首を傾げるレディウス様ですが、そんなお姿も愛らしく思います。周りから私とレディウス様を汚らわしそうに見てくる視線のせいで、羨ましそうに見てくる視線には気が付きませんでした。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品