黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
232話 王都で出会ったのは
「セシルの体調は大丈夫かい? ヴィクトリア?」
「はい、物凄く元気ですよ。この子たちは父親であるレディウスに似て、強く育っていますから」
俺の前の席に座るヴィクトリアは、腕の中で眠るセシルを優しく撫でる。セシルはそれがむず痒かったのか体を動かして、ヴィクトリアに抱き着く。あんな事があったが、元気に育ってくれて何よりだよ。
「本当に可愛いわね。わ、私も触っても良いかしら?」
「ええ、良いですよ。ただ、眠っているのであまり強くはしないように」
そして、そのヴィクトリアの隣には、1月前に助けたブリタリス王国の元王妃、メリエンダ夫人が座っている。彼女は恐る恐るセシルの頰に指を持っていきつんつんとつつく。
そんな様子を温かい目で見ているミレイとロナ。ミレイはメリエンダ夫人のお世話のため付いて来ている。ロナは俺たち……ヴィクトリアとセシルの護衛のために来ている。外にはグリムドたちがいるが、女性の護衛も必要だからな。
何故メリエンダ夫人たちを連れて来たかというと、陛下に俺の生存報告をするのと同時に、彼女の事を話すためだ。それに合わせてヴィクトリアと息子であるセシルも合わせようと思い連れてきたのだ。
子供たちが生まれた事は手紙では知らせていたのだが、合わせるのは今回が初めて。ただ、ヘレネーとヘレスティアにパトリシアは留守番をして貰っている。
ヘレネーは肩苦しいのが嫌だと言って屋敷に残ってミネルバたちと狩りにでも行こうかな、とか言っていた。
ヘレスティアもお利口だし、子供がいる間は運動が出来なくて鬱憤が溜まって、産んだ後もしばらく安静、落ち着いたと思えば俺が行方不明になったりしたからな。そろそろ発散させてあげないと。
パトリシアは見た目のせいで連れて来られないのが1番の理由だ。本当は1番連れて来てあげたかったのだけどな。
「あっ、レディウス様、王都が見えて来ましたよ!」
眠るセシルを眺めるヴィクトリアとメリエンダ夫人を眺めていると、窓から外を見ていたロナが教えてくれた。ここに来るのはあいつを殴りに来た時以来か。嫌な事を思い出してしまった。もう、あれから1年ぐらい経つのか。
俺があの時の事を思い出しているのに気が付いたのか、俺の手にヴィクトリアの手がそっと重ねられる。
「レディウス、もしかしたらあの時の事を思い出しているのかもしれませんが、少し怖い顔をしていますよ? もう、あの時の事は気にしていませんし、この子が見ているので笑顔でいてくださいな」
そう言い微笑むヴィクトリアの腕の中で、目が覚めたのか、セシルがあうあう言いながら俺に向かって手を伸ばして来る。
俺もその光景に思わず笑みを浮かべながら指を伸ばすと、がしっと握って口へと持って行こうとする。
「あっ、駄目ですよセシル」
そこで、ヴィクトリアが俺の指を口に入れさせないよう離れさせると、ヴィクトリアの腕の中で暴れるセシル。全く、まだ生まれて1年も経っていないのに腕白なやつだ。
それから門を通り抜けて、真っ直ぐと王宮へと進む。街並みは俺たちが学園を通っていた頃と殆ど変わりない。まあ、通っていたと言っても1年ほどなのだが。
馬車をしばらく走らせ、辿り着く王宮。そういえば、ヴィクトリアと初めて出会ったのも王宮だったよな。あの時は、結婚して子供が出来るなんて思っても見なかった。人生どうなるかなんて全くわからないものだ。
「懐かしいですね。よく考えれば、レディウスと出会ったのはこの王宮でした。あの時は悲しかったのですが、今思えば、あの時、ウィリアム元王子に婚約破棄をされなければ、レディウスと出会えてなかったのですね」
どうやらヴィクトリアも俺も同じ事を思い出していたようだ。彼女にとっては、ウィリアムに婚約破棄されて悲しかった事と、俺と出会った事、どちらの方が大きいのだろうか? 俺がじっとヴィクトリアを見ていると
「ふふっ、そう不安そうな顔しないでください。もう、あの時の事は気にしていませんし、あれのおかげでレディウスに会えました。今となっては感謝しているほどです」
と、微笑みながら言われてしまった。やばい、今すぐ抱き締めてキスがしたい。だけど、セシルもいるし、メリエンダ夫人たちも見ている。ここは我慢しよう。
俺とヴィクトリアが少し甘い雰囲気なったのを感じたロナが、何故か俺と王都で初めて会った時の話をして、メリエンダ夫人と仲が良くなったミレイを泣かせたりしながら待っていると、馬車が止まる。王宮の前まで辿り着いたようだ。
外から扉が開き、グリムドに促されロナとミレイが先に降りる。その次に俺が降りて、メリエンダ夫人とヴィクトリアをエスコートする。
ヴィクトリアの腕の中でセシルが、滅多に見る事の出来ない大きさである城を見て、おー、と手を伸ばしていた。
「待っていたよ、アルノード伯爵」
そして、俺たちを出迎えてくれたのはレイブン将軍と、その隣に立つ
「……レグナント殿下」
アルバスト王国の友好国であるトルネス王国の王太子、レグナント王太子と、その娘であるベアトリーチェ様が待っていたのだった。
「はい、物凄く元気ですよ。この子たちは父親であるレディウスに似て、強く育っていますから」
俺の前の席に座るヴィクトリアは、腕の中で眠るセシルを優しく撫でる。セシルはそれがむず痒かったのか体を動かして、ヴィクトリアに抱き着く。あんな事があったが、元気に育ってくれて何よりだよ。
「本当に可愛いわね。わ、私も触っても良いかしら?」
「ええ、良いですよ。ただ、眠っているのであまり強くはしないように」
そして、そのヴィクトリアの隣には、1月前に助けたブリタリス王国の元王妃、メリエンダ夫人が座っている。彼女は恐る恐るセシルの頰に指を持っていきつんつんとつつく。
そんな様子を温かい目で見ているミレイとロナ。ミレイはメリエンダ夫人のお世話のため付いて来ている。ロナは俺たち……ヴィクトリアとセシルの護衛のために来ている。外にはグリムドたちがいるが、女性の護衛も必要だからな。
何故メリエンダ夫人たちを連れて来たかというと、陛下に俺の生存報告をするのと同時に、彼女の事を話すためだ。それに合わせてヴィクトリアと息子であるセシルも合わせようと思い連れてきたのだ。
子供たちが生まれた事は手紙では知らせていたのだが、合わせるのは今回が初めて。ただ、ヘレネーとヘレスティアにパトリシアは留守番をして貰っている。
ヘレネーは肩苦しいのが嫌だと言って屋敷に残ってミネルバたちと狩りにでも行こうかな、とか言っていた。
ヘレスティアもお利口だし、子供がいる間は運動が出来なくて鬱憤が溜まって、産んだ後もしばらく安静、落ち着いたと思えば俺が行方不明になったりしたからな。そろそろ発散させてあげないと。
パトリシアは見た目のせいで連れて来られないのが1番の理由だ。本当は1番連れて来てあげたかったのだけどな。
「あっ、レディウス様、王都が見えて来ましたよ!」
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俺があの時の事を思い出しているのに気が付いたのか、俺の手にヴィクトリアの手がそっと重ねられる。
「レディウス、もしかしたらあの時の事を思い出しているのかもしれませんが、少し怖い顔をしていますよ? もう、あの時の事は気にしていませんし、この子が見ているので笑顔でいてくださいな」
そう言い微笑むヴィクトリアの腕の中で、目が覚めたのか、セシルがあうあう言いながら俺に向かって手を伸ばして来る。
俺もその光景に思わず笑みを浮かべながら指を伸ばすと、がしっと握って口へと持って行こうとする。
「あっ、駄目ですよセシル」
そこで、ヴィクトリアが俺の指を口に入れさせないよう離れさせると、ヴィクトリアの腕の中で暴れるセシル。全く、まだ生まれて1年も経っていないのに腕白なやつだ。
それから門を通り抜けて、真っ直ぐと王宮へと進む。街並みは俺たちが学園を通っていた頃と殆ど変わりない。まあ、通っていたと言っても1年ほどなのだが。
馬車をしばらく走らせ、辿り着く王宮。そういえば、ヴィクトリアと初めて出会ったのも王宮だったよな。あの時は、結婚して子供が出来るなんて思っても見なかった。人生どうなるかなんて全くわからないものだ。
「懐かしいですね。よく考えれば、レディウスと出会ったのはこの王宮でした。あの時は悲しかったのですが、今思えば、あの時、ウィリアム元王子に婚約破棄をされなければ、レディウスと出会えてなかったのですね」
どうやらヴィクトリアも俺も同じ事を思い出していたようだ。彼女にとっては、ウィリアムに婚約破棄されて悲しかった事と、俺と出会った事、どちらの方が大きいのだろうか? 俺がじっとヴィクトリアを見ていると
「ふふっ、そう不安そうな顔しないでください。もう、あの時の事は気にしていませんし、あれのおかげでレディウスに会えました。今となっては感謝しているほどです」
と、微笑みながら言われてしまった。やばい、今すぐ抱き締めてキスがしたい。だけど、セシルもいるし、メリエンダ夫人たちも見ている。ここは我慢しよう。
俺とヴィクトリアが少し甘い雰囲気なったのを感じたロナが、何故か俺と王都で初めて会った時の話をして、メリエンダ夫人と仲が良くなったミレイを泣かせたりしながら待っていると、馬車が止まる。王宮の前まで辿り着いたようだ。
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ヴィクトリアの腕の中でセシルが、滅多に見る事の出来ない大きさである城を見て、おー、と手を伸ばしていた。
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