黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜

やま

222話 宴

「さあ、我らが女神よ! 私たちの勇姿をご覧あれ!!!」


 会長たちは隊列を組むと、会員たちは先頭に立つ会長へと魔力を集めた。会長は隊列の先頭でミレイヤにウインクをして、変なポーズでハイオークジェネラルへと構える。


 そして、次々と放たれる風の矢。途轍もなく大きな矢は、槍ぐらい……いや、槍以上の大きさを誇る。その矢を何発も連続で放つ会長たち。武器を無くしたハイオークジェネラルにはそれを避けるのが精一杯のようで、少しずつ削っていく。


 気が付けば、ハイオークジェネラルは血塗れで、息も絶え絶えといった感じだ。避けるのもままならず、いくつもの風の矢がハイオークジェネラルへと突き刺さっていく。


「普段はあんなのだけど、あれでも村ではトップに入る実力なのよ。本当に普段のあれがなかったら凄いんだけどね」


 気が付けばミレイヤが隣に立っていた。でも、本当にミレイヤの言う通りだ。普段がアレじゃなかったら尊敬に値するのに。いや、今の光景を見ても凄いとは思うのだが……なぁ。


 ドスンと倒れるハイオークジェネラル。同時にその場に倒れこむ会長たち。かなり魔力を消費したのか顔色が青く、汗だくだった。


「はぁ……はぁ……女神の前で勇姿を見せる事ができたぞ、諸君!!」


 会長の雄叫びに、会員たちも賛同して叫ぶ。そしてキラキラとした目でミレイヤの方を見る。うん、やっぱり残念な奴らだ。さっきまでの勇姿が残念に見えるくらい。


「はぁ……今日はこの辺にしておきましょう。結界の周りはあらかた倒せたし、ハイオークジェネラルが現れたから、この辺りの魔獣も一時的に移動しているだろうし」


「そうだな……それなら、俺が転移するだけの時間は稼げるんじゃないのか?」


「もしかしたらもういけるかもしれないわね。一回お婆様に尋ねて見ましょうか」


 俺はミレイヤの言葉に頷き村のある方へと向かう。会長たちはへばってはいるが、歩く程度は問題ないようで、俺たちの後を付いてくる。


 村に戻ると、村の中央には討伐された魔獣が積み重ねられていた。そこには先ほど倒したハイオークジェネラルや、オルガロンなど、様々な魔獣が積み重なっていた。


 これら全部、俺のために討伐してくれているのだ。そう考えたら、まだ会って数日程度の俺のためにしてくれているのだから、感謝をいくらしてもし足りない。村長などは偶には間引かないといけないから、なんて言うが、明らかに嘘なのがわかる。


「おばば様、どんな感じかしら?」


「まあまあもいったところかねぇ。でも、これだけ狩れば少しの間結界が無くなっても大丈夫だろうね。レディウス。明日には帰れるよ」


 おおっ! やっと帰られるのか! 食われてからここまで1月近く経ったがようやく!


「良かったわね、レディウス」


「ああっ! ありがとうな、ミレイヤ。お前に出会わなかったらこんな早く帰れていなかったと思う! 本当にありがとう!」


「きゃっ!? ちょっ、レ、レディウス、落ち着きなさいって、もう!」


 俺は興奮のあまりミレイヤの両手を掴んで上下に振る。ミレイヤは驚きながらも、一緒に喜んでくれた。


 その日は、俺を送るためにと宴会を開いてくれた。料理は討伐した魔獣たちや、この大平原で取れる果物などを使用した料理が次々と運ばれてくる。


 当然、大平原の魔獣の肉は今までの食べた肉に比べてかなり美味しい。ただ焼くだけでもとても甘く感じたりして、いくらでも食べられる気がするほど。


 しかも、安全を祈願してと村秘蔵のお酒も出してくれて。これは俺だけでなく、滅多に飲むことの出来ない村のみんなもとても嬉しそうだった。


 俺も貰って飲んでいると


「レディウス〜、飲んでるぅ〜?」


 と、ふらふらとした足取りでミレイヤがやって来た。こいつ、両手に木のカップを1つずつ持っており、両方ともお酒が入っていた。


 顔を赤くしながらふらふらと寄ってくるミレイヤ。こいつ完全に酔ってやがる。


「飲んでるから、少し座れよ。お水貰ってくるからさ」


「お水なんていらなぁーい! それよりも飲んでぇ。ほらほら、もっと飲みましょう〜!」


 あはははぁ〜、と笑いながら抱きついてくるミレイヤ。少し胸骨が当たって痛い。いや、もちろん柔らかい感覚もあるのだけど、ヴィクトリアたちに比べると……なぁ。


「ほらほらぐいっとぉ〜、あははっ!!」


「ちょっ、や、やめろって! 酔い過ぎだぞ、お前!」


 俺がいくら止めようとも酒の入ったコップをぐいぐいと押し付けてくるミレイヤ。周りに頼もうとしても、みんな久し振りの酒に舞い上がってこっちなんか見向きもしていない。


 このままでは終わりそうにもなかったので、ミレイヤからの酒を飲む。すると、それを見ていたミレイヤは機嫌が良くなり更に酒を渡してくる。もう、こうなったら、飲んでやる! と思い飲み続けた結果……朝だった。


 あの酒を飲んだ後から記憶がない。みんなで楽しく騒いでいた記憶はあるのだが、気が付けば朝だったのだ。まあ、それはいいとしよう。そんな事よりも


「……うぅん」


 ……なぜ、ミレイヤが俺と同じ布団に? そして、なぜ裸!? 俺は呼吸で薄く上下するミレイヤの布団をかけた胸を見ながら頭を抱えるのだった。


 ……頭痛い。

コメント

  • リムル様と尚文様は神!!サイタマも!!

    オルガロンてなに?

    1
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品