黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
122話 黒い雷
「……一体どう言う事だよ」
俺は目の前に立つ異形な姿になったアルフレッドを見て呟く。アルフレッドは面影はあるが、全身が黒いものに包まれ、まるで二足歩行の狼のような姿に変わってしまった。
黒いものが毛までも再現しており、足先と指先からは鋭い爪が。腰からは尻尾が生えており、地面をバシバシと叩く。
顔の形もアルフレッドの顔に狼の顔を出したような形になり、頭からは耳が生えている。体の大きさも一回りほど大きくなっている。そして手に持つのはその黒いものを出したと思われる剣だ。
「……おいおい、どうしちまったんだよ、アルフレッド!」
ロンドルも初めて見たのか、狼狽えた声を出す。アルフレッドたちの切り札ってわけでも無さそうだな。ロンドルも知らないようだし。
「……これは一体どう言う事なのでしょうか?」
いつの間にか俺の側までやって来たヴィクトリアもアルフレッドを見てそんな事を言う。ティリシアたちも今は戦いを止めてアルフレッドを見ている。
観客はまだ呆然と何が起きているのかわかっておらず、全く動かないが、兵士たちは流石におかしいと感じたらしい。
騒がしく、俺たちが立っている円型の会場を囲うように兵士たちが立つ。その中でも少し豪華な鎧を着た兵士が他の兵士たちより一歩前に出て来て
「アルフレッド・メクリアーノ! 今すぐに武器を置くのだ! さもなくば我々はお主を捕らえねばならない! そうなる前に武器を置いて投降するのだ!」
大きな声でそう言う兵士。だが、アルフレッドは聞こえていないのか、兵士の声に反応しない。
それに焦れたのか、兵士の号令で1人の魔法師が出てくる。そして、アルフレッドに向けて手を差し出して
「アースバインド!」
と、魔法を発動する。あれは束縛系の土魔法。魔法師が魔法を発動すると、地面から土の鞭のようなものが10本ほど出て来て、アルフレッドを縛り上げる。
「グルルゥアア!」
しかし、アルフレッドが力を入れて暴れると、ピキピキと土にヒビが入り、割れてしまった。
今のは流石に敵対されたとわかったのか、アルフレッドは魔法師の方を見る。そして、口を大きく開くと、開けた口に魔力が集まっていく。これは……
「魔法師さん、逃げろぉ!」
俺が魔法師に叫ぶと同時に、アルフレッドの口から黒い雷が線状に放たれた。アルフレッドが放った攻撃は真っ直ぐに魔法師まで進み、魔法師の胸を貫いてしまった。
その光景を見て、流石に危険だと感じた観客たちは大慌てだ。兵士たちが何とか避難させようとするが、慌てて周りが見えていない人たちは勝手に動き回り、周りを乱す。
その中で、アルフレッドを取り押さえようとやって来た兵士たちがアルフレッドに近づこうとした瞬間、アルフレッドは顔を上に上げて魔法を放つ。黒い雷が空中に少し上がると、今度は四方八方に網状に広がった。
丁度俺たちが試合をしていた円型の会場とほぼ同じ大きさだ。網状に広がった黒い雷は今度は雷同士が伸びてひっ付き合い、まるで
「……檻みたいですね」
ヴィクトリアが俺と同じ感想を述べてくれた。そう、俺たちは見世物屋みたいに動物を入れている檻に入れられたようになったのだ。
雷の檻の中にいるのは、魔法を発動したアルフレッドに、俺とロンドルにヴィクトリア。それから、起き上がったガウェインに少し離れたところに、ティリシア、クララ、シャルン、メイリーン、ビーンズが囲まれてしまった。
兵士たちは丁度檻の外になってしまい、入ってくる事が出来なかった。だけど、兵士の1人が、雷の檻を壊そうと剣で叩きつけて……感電してしまった。死にはしないほどの威力だが、気は失ってしまったようだ。
「……俺たちは肉食獣の檻に入れられたエサってわけだな」
こんなときにそんな冗談は笑えないぞ、ロンドル。俺はヴィクトリアを庇うように立ち、ロンドルもバトルアックスを構える。
アルフレッドはキョロキョロと檻の中にいる俺たちを交互に見ているが、何をしているのだろうか? まるで選んでいるかのように……。
そして、決まったのか、アルフレッドが向いたのは
「……私ですわね」
シャルンの方だった。シャルンはメイリーンたちを庇うように立つ。側にはティリシアとクララがいる。そこにはアルフレッドは走り出す。
「ガゥッ!」
アルフレッドは剣思いっきり振り下ろすと、そこには
「この野郎! 女なんか……狙ってんじゃねえよ!」
いつの間にかシャルンとアルフレッドの間に入ったガウェインが立っていた。そして、アルフレッドの剣を盾で防ぎ弾く。アルフレッドは警戒して、ガウェインから離れる。
そこに
「おらぁっ!」
背後からロンドルがバトルアックスで切りかかる。アルフレッドはしゃがむこみ、避けるが、そこに俺も攻める。アルフレッドは剣で受け止めるが、体勢が悪いため俺が押している。
このまま蹴り飛ばしてやろうと思った瞬間、アルフレッドの体が帯電し始める。そして
「ワゥォォォォォーン!」
帯電していた雷を一気に周りに放ちやがった。あまり範囲は広くないため、俺とロンドルは下がる事で避けれたが、こいつはかなり面倒な相手だな。
そう思って武器を構えてアルフレッドを見ていたら、ロンドルが
「……雷魔法……狼……まさか……」
1人でブツブツ言ってやがる。一体何なのかと思ったら、ロンドルは
「あいつ、多分だがBランクの魔獣、ベオウルフトニトニスだ」
と、変な事を言い出した。俺はロンドルに向かって首をかしげる事しか出来なかった。
俺は目の前に立つ異形な姿になったアルフレッドを見て呟く。アルフレッドは面影はあるが、全身が黒いものに包まれ、まるで二足歩行の狼のような姿に変わってしまった。
黒いものが毛までも再現しており、足先と指先からは鋭い爪が。腰からは尻尾が生えており、地面をバシバシと叩く。
顔の形もアルフレッドの顔に狼の顔を出したような形になり、頭からは耳が生えている。体の大きさも一回りほど大きくなっている。そして手に持つのはその黒いものを出したと思われる剣だ。
「……おいおい、どうしちまったんだよ、アルフレッド!」
ロンドルも初めて見たのか、狼狽えた声を出す。アルフレッドたちの切り札ってわけでも無さそうだな。ロンドルも知らないようだし。
「……これは一体どう言う事なのでしょうか?」
いつの間にか俺の側までやって来たヴィクトリアもアルフレッドを見てそんな事を言う。ティリシアたちも今は戦いを止めてアルフレッドを見ている。
観客はまだ呆然と何が起きているのかわかっておらず、全く動かないが、兵士たちは流石におかしいと感じたらしい。
騒がしく、俺たちが立っている円型の会場を囲うように兵士たちが立つ。その中でも少し豪華な鎧を着た兵士が他の兵士たちより一歩前に出て来て
「アルフレッド・メクリアーノ! 今すぐに武器を置くのだ! さもなくば我々はお主を捕らえねばならない! そうなる前に武器を置いて投降するのだ!」
大きな声でそう言う兵士。だが、アルフレッドは聞こえていないのか、兵士の声に反応しない。
それに焦れたのか、兵士の号令で1人の魔法師が出てくる。そして、アルフレッドに向けて手を差し出して
「アースバインド!」
と、魔法を発動する。あれは束縛系の土魔法。魔法師が魔法を発動すると、地面から土の鞭のようなものが10本ほど出て来て、アルフレッドを縛り上げる。
「グルルゥアア!」
しかし、アルフレッドが力を入れて暴れると、ピキピキと土にヒビが入り、割れてしまった。
今のは流石に敵対されたとわかったのか、アルフレッドは魔法師の方を見る。そして、口を大きく開くと、開けた口に魔力が集まっていく。これは……
「魔法師さん、逃げろぉ!」
俺が魔法師に叫ぶと同時に、アルフレッドの口から黒い雷が線状に放たれた。アルフレッドが放った攻撃は真っ直ぐに魔法師まで進み、魔法師の胸を貫いてしまった。
その光景を見て、流石に危険だと感じた観客たちは大慌てだ。兵士たちが何とか避難させようとするが、慌てて周りが見えていない人たちは勝手に動き回り、周りを乱す。
その中で、アルフレッドを取り押さえようとやって来た兵士たちがアルフレッドに近づこうとした瞬間、アルフレッドは顔を上に上げて魔法を放つ。黒い雷が空中に少し上がると、今度は四方八方に網状に広がった。
丁度俺たちが試合をしていた円型の会場とほぼ同じ大きさだ。網状に広がった黒い雷は今度は雷同士が伸びてひっ付き合い、まるで
「……檻みたいですね」
ヴィクトリアが俺と同じ感想を述べてくれた。そう、俺たちは見世物屋みたいに動物を入れている檻に入れられたようになったのだ。
雷の檻の中にいるのは、魔法を発動したアルフレッドに、俺とロンドルにヴィクトリア。それから、起き上がったガウェインに少し離れたところに、ティリシア、クララ、シャルン、メイリーン、ビーンズが囲まれてしまった。
兵士たちは丁度檻の外になってしまい、入ってくる事が出来なかった。だけど、兵士の1人が、雷の檻を壊そうと剣で叩きつけて……感電してしまった。死にはしないほどの威力だが、気は失ってしまったようだ。
「……俺たちは肉食獣の檻に入れられたエサってわけだな」
こんなときにそんな冗談は笑えないぞ、ロンドル。俺はヴィクトリアを庇うように立ち、ロンドルもバトルアックスを構える。
アルフレッドはキョロキョロと檻の中にいる俺たちを交互に見ているが、何をしているのだろうか? まるで選んでいるかのように……。
そして、決まったのか、アルフレッドが向いたのは
「……私ですわね」
シャルンの方だった。シャルンはメイリーンたちを庇うように立つ。側にはティリシアとクララがいる。そこにはアルフレッドは走り出す。
「ガゥッ!」
アルフレッドは剣思いっきり振り下ろすと、そこには
「この野郎! 女なんか……狙ってんじゃねえよ!」
いつの間にかシャルンとアルフレッドの間に入ったガウェインが立っていた。そして、アルフレッドの剣を盾で防ぎ弾く。アルフレッドは警戒して、ガウェインから離れる。
そこに
「おらぁっ!」
背後からロンドルがバトルアックスで切りかかる。アルフレッドはしゃがむこみ、避けるが、そこに俺も攻める。アルフレッドは剣で受け止めるが、体勢が悪いため俺が押している。
このまま蹴り飛ばしてやろうと思った瞬間、アルフレッドの体が帯電し始める。そして
「ワゥォォォォォーン!」
帯電していた雷を一気に周りに放ちやがった。あまり範囲は広くないため、俺とロンドルは下がる事で避けれたが、こいつはかなり面倒な相手だな。
そう思って武器を構えてアルフレッドを見ていたら、ロンドルが
「……雷魔法……狼……まさか……」
1人でブツブツ言ってやがる。一体何なのかと思ったら、ロンドルは
「あいつ、多分だがBランクの魔獣、ベオウルフトニトニスだ」
と、変な事を言い出した。俺はロンドルに向かって首をかしげる事しか出来なかった。
コメント