黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
93話 断罪
物凄く気まずい馬車の中、ようやく王宮に辿り着いた俺たちは案内の侍女を先頭に、セプテンバーム公爵、俺、ゲルムドさんの順に王宮の中を進む。
ゲルムドさんが俺の前で無くていいのか尋ねると、少し離れている方がセプテンバーム公爵の全体を見渡せるから、俺の後ろが丁度良いらしい。
そのまま、王宮の中を進むと、待たされる事なく謁見の間まで案内される。侍女が、扉の前に立つ兵士にセプテンバーム公爵が来た事を伝えると、兵士たちはセプテンバーム公爵に敬礼をして、扉を開ける。
俺はその時に兵士に武器を預ける。危うくそのまま持ち込むところだった。危ない危ない。
セプテンバーム公爵の後に続いて謁見の間入ると……おおぉっ、これはまた煌びやかなところだなぁ。踏んでも良いのか気になる程柔らかい絨毯に、多分高いだろうと思われる美術品が飾られている。
扉から真っ直ぐに玉座まで赤い絨毯がひかれ、その絨毯を挟むように左右に貴族が立っている……って、グレモンド男爵と夫人が混ざっている。セプテンバーム公爵が呼んだのか。
他にはレイブン将軍やリストニック侯爵に、ウィリアム王太子に姉上までいるぞ。グレモンド男爵と夫人、それから姉上は俺見ては驚きの表情を浮かべている。そういえば、グレモンド男爵たちと出会うのは4年ぶりだな。少し老けたな。
「国王陛下のおなり〜」
文官の人が全員揃ったのを確認すると、国王陛下が謁見の間に入って来る。それと同時に全員が片膝で頭を下げる。俺も習って頭を下げなければ。
「うむ。面をあげよ」
国王陛下の許可が出たけど、良いのかな? 良いんだよな? 横目でチラッと見ると、上げているから俺も上がる。くそっ、こういう事なら前もって教えて欲しかったぜ。物凄くドキドキするじゃないか。
「セプテンバーム公爵よ。お主が公爵権限を使って皆を集めるとは珍しいではないか。お主が使うという事はよっぽどの事が起きたのだろうな?」
「はっ。少々面倒な問題を見つけてしまいまして。国王陛下のご判断を仰ぎたく、皆を召集させていただきました」
「成る程な。その話にはグレモンド男爵とその夫人、それにウィリアムやエリシアを呼ぶ必要があったのか?」
「はい。ウィリアム王太子は兎も角、グレモンド男爵と夫人、エリシア王太子妃は無関係ではありませんからな」
セプテンバーム公爵はそれだけ言うと、レイブン将軍に目で合図をする。レイブン将軍とは前もって話していたのだろう。
レイブン将軍は側にいた兵士に何か指示を出すと、兵士は部屋を出て行った。
「しかし、セプテンバーム公爵が私たちを集めるという事は、まさかウィリアム王太子の婚約について何か言いたい事でもあるのですかな?」
そう言いニヤニヤと笑うのはリストニック侯爵。でっぷりと太ったお腹が苦しそうだな。あの双子は父親の面影を少しだけ受け継いでいるけど、ほとんど似ていない。母親にで良かったな。
セプテンバーム公爵はリストニック侯爵の言葉を無視だ。それを見たリストニック侯爵は面白くなさそうな顔をする。
そこに丁度扉が開かれて、先ほど出て入った兵士が先頭に歩く。その後ろには
「バババ、バルト! 何でお前がここに!?」
「グルッカスまで!」
縄で括られたバルトとグルッカスが入って来た。その姿を見たグレモンド男爵と夫人が悲鳴に近い声を出す。姉上も口元を押さえて驚きの表情を浮かべている。
……あっ、バルトの腕と足が治ってやがる。誰が治した、こら! せっかくぶった切ってやったのに!
バルトとグルッカスは丁度みんなから中央の位置ぐらいまで連れてこられ、無理矢理座らされる。後ろにはバルトたちが動かないように兵士が長い棒で押さえつけている。
「こやつは確かグレモンド家の長男だったか?」
「そうです。この男バルト・グレモンドは許し難い罪を犯したので私たちが捕らえました」
「……皆を集めるほどだ。こやつは余程の事を仕出かしたのだろうな」 
「ヒイッ!」
うおっ、国王陛下の声のトーンが一つ下がっただけで、周りの空気が一変した。これが王の威圧ってやつか。これだけでバルトの体は震えが止まらなくなっている。
「ええ。バルト・グレモンドは私の隣にいる少年。国王陛下も対抗戦の決勝でご覧になってご存知かと思いますが、レディウスと腹違いの兄になります」
「うむ。それは聞いたぞ」
「当然、学園でもその事は広がりました。その結果、バルトは『黒髪に勝てない弱い兄』や『弟より成績の悪い兄』などと、陰口を言われるようになったのです。その事に腹立てたバルトはレディウスを亡き者にしようとしたのが、今回の騒動の発端です」
「なっ! バルト、あなた!」
セプテンバーム公爵の言葉に一番初めに反応したのが姉上だった。この謁見の間は魔法が使えないようになっているらしいが、姉上の周りで時折火花が散っている。かなり怒っているなあれは。
「エリシアよ。落ち着きなさい。セプテンバーム公爵、続きを」
国王陛下は姉上を止めて、セプテンバーム公爵に話の続きを促す。
「はっ、そしてバルトがまず行ったのが、レディウスと親しい仲間をおびき出す事でした。そのためにバルトは冒険者ギルドの職員を脅して、その仲間たちに偽りの指名依頼を受けさせ、裏では闇ギルド、傭兵、盗賊を雇い、その依頼の村へ先回りをさせていました」
「村に盗賊たちを先回りさせていた? 何故そのような事を?」
「村にやってくるレディウスの仲間を待ち構えるためです。そのためにその盗賊たちは村にいた住民を皆殺しにしたのです」
「なんだとっ!」
バルトの仕出かした罪を聞いて、国王陛下は声を荒げて椅子を思いっきり叩く。それと同時に夫人は気を失って倒れてしまった。グレモンド男爵も何とか夫人を支えようとするが、顔面蒼白だ。
「その村は私の寄子であるバーロ子爵の村でした。確認したところ村の人口は300人ほどだったようですが、兵士に確認させたところ、村の裏からそれに近い数の死体がアンデッドとなって出て来たようです」
……それは初耳だったな。殺されている話は聞いたが、まさかそのまま埋められていたとは。
「そのバルトの罠に嵌ってしまったレディウスの仲間は、無事に助ける事が出来ましたが、2人いたうちの1人は大怪我で今も寝込んでいます。これがこやつらが起こした罪です」
セプテンバーム公爵の説明が全て終える。周りの貴族はシーンと黙り込んでしまった。あのリストニック侯爵でさえ、苦虫を潰したような表情を浮かべている。
「……レイブンよ。こやつの処分はどう考える?」
「はっ。今の話を聞きますと、バルトが行った罪は我が国の大切な国民を傷つけ、裏切る行為です。そうなれば一家全員が死刑と考えてもおかしくはないでしょう」
「ちょっと、待ってください。さすがにそれは重すぎるのではありませんか? 確かに彼がやった事は許しがたい事ですが、それが家族全員が死刑とは」
そして、ここで口を挟んで来たのが、リストニック侯爵だ。まあ、リストニック侯爵は姉上が無事なら良いのだろう。
「ふむ、とりあえずはバルトとそれに付き従った者の死刑は確定だ。それは変わらん。そのほかの家族も何らかの罰を与えなければならん。しかし、片方は死刑と、もう片方はそれは重たいと言う。セプテンバーム公爵はどう考える?」
「私でしょうか? 私はまずは貴族位の剥奪は確定だと考えます。そして、エリシア王太子妃の事もどうするか考えるべきだと思います。家族の1人がとんでもない罪を犯したのに、その家族に国の母となって頂くわけにはいきませんからな」
「な、ちょっと、待ってくれ、セプテンバーム公爵! せっかく私とエリシアが一緒になれたのに、それを引き離すと言うのか!」
セプテンバーム公爵が貴族位の剥奪と、姉上の婚約の話の取りやめを提案したのだが、当然ながらウィリアム王太子が反対する。だけど
「ウィリアム王太子。そういえば、話に聞いたのですが、今回の婚約の話は、ウィリアム王太子がこの前の戦争で活躍したから、その褒美として許可貰ったそうですな?」
と、セプテンバーム公爵は何故か今の話とは関係ない戦争の時の話をする。何かあるのか?
「そ、そうだが、それがどうした!?」
「いえ。私が聞いた話では、活躍したのは別の人物だと聞いていたものですから」
「っ!」
そして、その言葉にかなり反応するウィリアム王太子。そんな反応したら嘘だってバレてしまうぞ。ほら国王陛下はウィリアム王太子の顔を見て疑問に思っている。
「それはどう言う事だ、セプテンバーム公爵よ」
「いえ、国王陛下も聞いているかとは思いますが、ブリタリス王国のニート山で危険になったところある人物によって助かったと言う話を」
「ああ、それは当然聞いているぞ。軍がニート山の中を進んでいたところをブリタリス軍に奇襲をかけられたのだろう。その時にウィリアムたちが逃げ惑う兵士を纏めて反撃した聞いたが」
なんか、初めて聞いたぞ、それ。全く別の話になっているじゃないか。誰が言ったんだ?
「それは誰から聞きましたか?」
「ん? それはウィリアムたちと側にいた近衛兵たちだが? 何か違うのか?」
「ええ。私の聞いた話とは違いますね。私が聞いた話は、奇襲により危険になったところをこのレディウスが体を張って食い止めたからこそ、立て直す準備が出来たと聞いています」
「……何だと。全く違うではないか。どう言う事だウィリアム!」
「そ、それは……」
「はっきりせんかぁ!」
うおっ! び、びっくりしたぁ! しどろもどろになったウィリアム王太子を国王陛下が怒鳴り散らした。さすがに予想外だったのか、セプテンバーム公爵も目を丸くしている。なんか新鮮だ。
「ウィリアム。お前は嘘をついていたのか?」
「……ぐっ、申し訳ございません」
「……レイブンはこの事を知っておったか?」
「はっ、私はケイネスから報告を受けていましたから。てっきり国王陛下もその話は知っているものと」
「いや、儂のところに来たのはケイネス将軍の部下だった。ウィリアム、お前まさか」
「……はい、私が指示を致しました」
ウィリアム王太子の言葉に国王陛下は頭を抱える。さすがに予想外過ぎる事が起き過ぎて、少し可哀想になってきた。
「……仕方あるまい。ウィリアムよ。お前の王太子の話は一旦無しだ。少し頭を冷やすが良い。グレモンド家の罰は、まず主犯のバルト・グレモンドとその指示に従った者は死刑。グレモンド家は爵位剥奪、その上国外追放だ。
エリシアよ。お主にも申し訳ないがグレモンド家として罰を受けてもらう。だが、本来であれば家族死刑だったところを、国外追放まで下げたのは、お主にも迷惑をかけてしまったお詫びも込めてだ。許してほしい」
「……はい。私はリストニック侯爵家の養子ではありますが、グレモンド男爵家の長女でもあります。今回の罪は私も当然の事受けましょう。国王陛下のご配慮感謝いたします」
そう言い頭を下げる姉上。こうして、バルトたちへの断罪は死刑と国外追放という、重い罪で幕を閉じた。
……ある程度予想はしていたが、なんだか後味の悪い結果になってしまったな。
ゲルムドさんが俺の前で無くていいのか尋ねると、少し離れている方がセプテンバーム公爵の全体を見渡せるから、俺の後ろが丁度良いらしい。
そのまま、王宮の中を進むと、待たされる事なく謁見の間まで案内される。侍女が、扉の前に立つ兵士にセプテンバーム公爵が来た事を伝えると、兵士たちはセプテンバーム公爵に敬礼をして、扉を開ける。
俺はその時に兵士に武器を預ける。危うくそのまま持ち込むところだった。危ない危ない。
セプテンバーム公爵の後に続いて謁見の間入ると……おおぉっ、これはまた煌びやかなところだなぁ。踏んでも良いのか気になる程柔らかい絨毯に、多分高いだろうと思われる美術品が飾られている。
扉から真っ直ぐに玉座まで赤い絨毯がひかれ、その絨毯を挟むように左右に貴族が立っている……って、グレモンド男爵と夫人が混ざっている。セプテンバーム公爵が呼んだのか。
他にはレイブン将軍やリストニック侯爵に、ウィリアム王太子に姉上までいるぞ。グレモンド男爵と夫人、それから姉上は俺見ては驚きの表情を浮かべている。そういえば、グレモンド男爵たちと出会うのは4年ぶりだな。少し老けたな。
「国王陛下のおなり〜」
文官の人が全員揃ったのを確認すると、国王陛下が謁見の間に入って来る。それと同時に全員が片膝で頭を下げる。俺も習って頭を下げなければ。
「うむ。面をあげよ」
国王陛下の許可が出たけど、良いのかな? 良いんだよな? 横目でチラッと見ると、上げているから俺も上がる。くそっ、こういう事なら前もって教えて欲しかったぜ。物凄くドキドキするじゃないか。
「セプテンバーム公爵よ。お主が公爵権限を使って皆を集めるとは珍しいではないか。お主が使うという事はよっぽどの事が起きたのだろうな?」
「はっ。少々面倒な問題を見つけてしまいまして。国王陛下のご判断を仰ぎたく、皆を召集させていただきました」
「成る程な。その話にはグレモンド男爵とその夫人、それにウィリアムやエリシアを呼ぶ必要があったのか?」
「はい。ウィリアム王太子は兎も角、グレモンド男爵と夫人、エリシア王太子妃は無関係ではありませんからな」
セプテンバーム公爵はそれだけ言うと、レイブン将軍に目で合図をする。レイブン将軍とは前もって話していたのだろう。
レイブン将軍は側にいた兵士に何か指示を出すと、兵士は部屋を出て行った。
「しかし、セプテンバーム公爵が私たちを集めるという事は、まさかウィリアム王太子の婚約について何か言いたい事でもあるのですかな?」
そう言いニヤニヤと笑うのはリストニック侯爵。でっぷりと太ったお腹が苦しそうだな。あの双子は父親の面影を少しだけ受け継いでいるけど、ほとんど似ていない。母親にで良かったな。
セプテンバーム公爵はリストニック侯爵の言葉を無視だ。それを見たリストニック侯爵は面白くなさそうな顔をする。
そこに丁度扉が開かれて、先ほど出て入った兵士が先頭に歩く。その後ろには
「バババ、バルト! 何でお前がここに!?」
「グルッカスまで!」
縄で括られたバルトとグルッカスが入って来た。その姿を見たグレモンド男爵と夫人が悲鳴に近い声を出す。姉上も口元を押さえて驚きの表情を浮かべている。
……あっ、バルトの腕と足が治ってやがる。誰が治した、こら! せっかくぶった切ってやったのに!
バルトとグルッカスは丁度みんなから中央の位置ぐらいまで連れてこられ、無理矢理座らされる。後ろにはバルトたちが動かないように兵士が長い棒で押さえつけている。
「こやつは確かグレモンド家の長男だったか?」
「そうです。この男バルト・グレモンドは許し難い罪を犯したので私たちが捕らえました」
「……皆を集めるほどだ。こやつは余程の事を仕出かしたのだろうな」 
「ヒイッ!」
うおっ、国王陛下の声のトーンが一つ下がっただけで、周りの空気が一変した。これが王の威圧ってやつか。これだけでバルトの体は震えが止まらなくなっている。
「ええ。バルト・グレモンドは私の隣にいる少年。国王陛下も対抗戦の決勝でご覧になってご存知かと思いますが、レディウスと腹違いの兄になります」
「うむ。それは聞いたぞ」
「当然、学園でもその事は広がりました。その結果、バルトは『黒髪に勝てない弱い兄』や『弟より成績の悪い兄』などと、陰口を言われるようになったのです。その事に腹立てたバルトはレディウスを亡き者にしようとしたのが、今回の騒動の発端です」
「なっ! バルト、あなた!」
セプテンバーム公爵の言葉に一番初めに反応したのが姉上だった。この謁見の間は魔法が使えないようになっているらしいが、姉上の周りで時折火花が散っている。かなり怒っているなあれは。
「エリシアよ。落ち着きなさい。セプテンバーム公爵、続きを」
国王陛下は姉上を止めて、セプテンバーム公爵に話の続きを促す。
「はっ、そしてバルトがまず行ったのが、レディウスと親しい仲間をおびき出す事でした。そのためにバルトは冒険者ギルドの職員を脅して、その仲間たちに偽りの指名依頼を受けさせ、裏では闇ギルド、傭兵、盗賊を雇い、その依頼の村へ先回りをさせていました」
「村に盗賊たちを先回りさせていた? 何故そのような事を?」
「村にやってくるレディウスの仲間を待ち構えるためです。そのためにその盗賊たちは村にいた住民を皆殺しにしたのです」
「なんだとっ!」
バルトの仕出かした罪を聞いて、国王陛下は声を荒げて椅子を思いっきり叩く。それと同時に夫人は気を失って倒れてしまった。グレモンド男爵も何とか夫人を支えようとするが、顔面蒼白だ。
「その村は私の寄子であるバーロ子爵の村でした。確認したところ村の人口は300人ほどだったようですが、兵士に確認させたところ、村の裏からそれに近い数の死体がアンデッドとなって出て来たようです」
……それは初耳だったな。殺されている話は聞いたが、まさかそのまま埋められていたとは。
「そのバルトの罠に嵌ってしまったレディウスの仲間は、無事に助ける事が出来ましたが、2人いたうちの1人は大怪我で今も寝込んでいます。これがこやつらが起こした罪です」
セプテンバーム公爵の説明が全て終える。周りの貴族はシーンと黙り込んでしまった。あのリストニック侯爵でさえ、苦虫を潰したような表情を浮かべている。
「……レイブンよ。こやつの処分はどう考える?」
「はっ。今の話を聞きますと、バルトが行った罪は我が国の大切な国民を傷つけ、裏切る行為です。そうなれば一家全員が死刑と考えてもおかしくはないでしょう」
「ちょっと、待ってください。さすがにそれは重すぎるのではありませんか? 確かに彼がやった事は許しがたい事ですが、それが家族全員が死刑とは」
そして、ここで口を挟んで来たのが、リストニック侯爵だ。まあ、リストニック侯爵は姉上が無事なら良いのだろう。
「ふむ、とりあえずはバルトとそれに付き従った者の死刑は確定だ。それは変わらん。そのほかの家族も何らかの罰を与えなければならん。しかし、片方は死刑と、もう片方はそれは重たいと言う。セプテンバーム公爵はどう考える?」
「私でしょうか? 私はまずは貴族位の剥奪は確定だと考えます。そして、エリシア王太子妃の事もどうするか考えるべきだと思います。家族の1人がとんでもない罪を犯したのに、その家族に国の母となって頂くわけにはいきませんからな」
「な、ちょっと、待ってくれ、セプテンバーム公爵! せっかく私とエリシアが一緒になれたのに、それを引き離すと言うのか!」
セプテンバーム公爵が貴族位の剥奪と、姉上の婚約の話の取りやめを提案したのだが、当然ながらウィリアム王太子が反対する。だけど
「ウィリアム王太子。そういえば、話に聞いたのですが、今回の婚約の話は、ウィリアム王太子がこの前の戦争で活躍したから、その褒美として許可貰ったそうですな?」
と、セプテンバーム公爵は何故か今の話とは関係ない戦争の時の話をする。何かあるのか?
「そ、そうだが、それがどうした!?」
「いえ。私が聞いた話では、活躍したのは別の人物だと聞いていたものですから」
「っ!」
そして、その言葉にかなり反応するウィリアム王太子。そんな反応したら嘘だってバレてしまうぞ。ほら国王陛下はウィリアム王太子の顔を見て疑問に思っている。
「それはどう言う事だ、セプテンバーム公爵よ」
「いえ、国王陛下も聞いているかとは思いますが、ブリタリス王国のニート山で危険になったところある人物によって助かったと言う話を」
「ああ、それは当然聞いているぞ。軍がニート山の中を進んでいたところをブリタリス軍に奇襲をかけられたのだろう。その時にウィリアムたちが逃げ惑う兵士を纏めて反撃した聞いたが」
なんか、初めて聞いたぞ、それ。全く別の話になっているじゃないか。誰が言ったんだ?
「それは誰から聞きましたか?」
「ん? それはウィリアムたちと側にいた近衛兵たちだが? 何か違うのか?」
「ええ。私の聞いた話とは違いますね。私が聞いた話は、奇襲により危険になったところをこのレディウスが体を張って食い止めたからこそ、立て直す準備が出来たと聞いています」
「……何だと。全く違うではないか。どう言う事だウィリアム!」
「そ、それは……」
「はっきりせんかぁ!」
うおっ! び、びっくりしたぁ! しどろもどろになったウィリアム王太子を国王陛下が怒鳴り散らした。さすがに予想外だったのか、セプテンバーム公爵も目を丸くしている。なんか新鮮だ。
「ウィリアム。お前は嘘をついていたのか?」
「……ぐっ、申し訳ございません」
「……レイブンはこの事を知っておったか?」
「はっ、私はケイネスから報告を受けていましたから。てっきり国王陛下もその話は知っているものと」
「いや、儂のところに来たのはケイネス将軍の部下だった。ウィリアム、お前まさか」
「……はい、私が指示を致しました」
ウィリアム王太子の言葉に国王陛下は頭を抱える。さすがに予想外過ぎる事が起き過ぎて、少し可哀想になってきた。
「……仕方あるまい。ウィリアムよ。お前の王太子の話は一旦無しだ。少し頭を冷やすが良い。グレモンド家の罰は、まず主犯のバルト・グレモンドとその指示に従った者は死刑。グレモンド家は爵位剥奪、その上国外追放だ。
エリシアよ。お主にも申し訳ないがグレモンド家として罰を受けてもらう。だが、本来であれば家族死刑だったところを、国外追放まで下げたのは、お主にも迷惑をかけてしまったお詫びも込めてだ。許してほしい」
「……はい。私はリストニック侯爵家の養子ではありますが、グレモンド男爵家の長女でもあります。今回の罪は私も当然の事受けましょう。国王陛下のご配慮感謝いたします」
そう言い頭を下げる姉上。こうして、バルトたちへの断罪は死刑と国外追放という、重い罪で幕を閉じた。
……ある程度予想はしていたが、なんだか後味の悪い結果になってしまったな。
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ペンギン
レディウスはいいってことでいいのかな...?