黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
86話 朝の騒動
「うぅ〜んっ! 今日も良い天気だなぁ! 何だかいい事がありそうな予感がする!」
俺は自分の家から出て、空を見てそんな事を言う。まあ、ただの思いつきで言っただけなのだが。
昨日は、ティリシアの家で、夜ご飯をご馳走になった。昨日の夜からロナたちは依頼で外に出ているからな。丁度運が良かった。
俺は料理があまり出来ないからな。ミストレアさんの家でも、殆どヘレネーさんかミストレアさんが作ってくれたし。あの2人は本当に料理が上手かったな。出てくるもの全て美味しいので、手が止まらなかった。懐かしいなぁ。元気にしているだろうか?
「おい、レディウス。今ロナちゃんといねえんだろ? 俺の家で朝飯食うか?」
俺が家の外で体を伸ばしていると、ガラナがそんな事を言ってくる。
「でも、お前のところマリエナさんがいるじゃないか。そんなところに邪魔するわけにはいかないよ」
ガラナは戦争が終わってから彼女を作った。まあ、年齢もまだ20後半だったからな。全然良いのだが、彼女は20手前ぐらいで、とても若い人だ。
なんでも、王都の中で、チンピラに襲われそうなところをガラナに助けられたらしい。その姿を見てガラナに一目惚れしたと言うのを聞いた事がある。
「何、マリエナもわかってくれるさ。さあ、行こうぜ」
俺はガラナに肩を組まれて、ガラナの家まで連れていかれる。ガラナの家からは朝食のいい匂いがする。
「あっ、ガラナさん。今朝ごはんが出来ま……って、あれ? レディウス君じゃないの? どうしたの?」
「ああ、今ロナちゃんたちがギルドの依頼でいないから、こいつ食べるものが無くてな。それならうちで食べさせてやろうと思ってな」
「いや、別に食べるものがないわけじゃないぞ。ロナみたいに美味しく作ってくれる人がいないだけで、いざとなれば干し肉でも齧ってれば良いんだから」
俺がそう言うと、ガラナとマリエナさんが揃って溜息を吐く。
「ダメだよ、レディウス君。日々の健康は日頃の食事からなるのだから、しっかりと栄養良く食べないと。ロナちゃんも毎日レディウス君の事を思って作っているんだから、ロナちゃんがいなくてもちゃんと食べないと」
マリエナさんは俺にビシッと指を突きつけて言う。そう言われたらぐうの音も出ない。確かにロナも俺やクルトの健康を考えて作ってくれている。それを無駄にするわけにはいかないな。
「……わかりました。頂きます」
「うむ、素直でよろしい!」
「ほら、席に座れ」
俺はガラナに促されるまま席に座る。待つ事数分、机の上にはサラダにスープ、ベーコンエッグに黒パンと、朝食が並べられる。
それから、3人で朝食を食べていく。途中でたわいの無い話などを挟みながらも楽しく朝食を食べていると、外が騒がしくなってきた。
「……何かあったのかしら?」
「ちょっと見てくるわ」
何かあったのか外を見にいくガラナ。それを不安そうに見送るマリエナさん。俺も見に行くか。置いていた剣を持って外に出ようとすると
「レディウス! 来てくれ!」
と、ガラナの叫ぶような声が聞こえる。俺はマリエナさんと顔を見合わせてから急いで外に出る。外に出ると、人だかりが出来ていた。
俺とマリエナさんは人をかき分けるように進む。そして、人だかりが無くなり、輪の中心部分に出ると、そこには、1人の女性を抱えるガラナの姿があった。そしてその横には
「ロポ!」
ロポが寝転んでいた。俺が来たのがわかったのかロポはグゥと手を上げながら一鳴きする。見た限り、あちこち砂埃などで汚れているが、怪我はなさそうだ。
「レディウス。この女性はフラン。ロナちゃんやクルトと同じパーティーを組んでいた魔法師だ」
「それじゃあ、フランさんとロポがこんなボロボロになって帰ってきたって事は……」
「依頼先で何かあったのだろう」
◇◇◇
「……うぅ……こ、こは?」
私は暗闇の中目を覚ましました。周りは木材で出来た壁で囲われており、少し埃っぽいです。どうやら何処かの使われていない小屋のようです。
私は起き上がろうと体を動かしますが、思うように動けません。どうやら手足を縄で縛られているようです。……そういえば、ローブの男に殴られて気を失ってしまいましたね。
「……っ! クルト! クルトはいますか!」
「……うるせえぞ、ロナ」
私は声のした方を見るとそこには私と同じように手足を縛られて寝転がるクルトの姿がありました。良かったぁ。無事だったんですね!
「クルト、大丈夫ですか? 何処か怪我はありませんか?」
「ああ、男に蹴られたところが痛むが、それ以外は大丈夫だ。ロナは?」
「私も殴られたところ以外は大丈夫です。それにしても、ここはどこなのでしょうか?」
「……わからねえ。依頼のあった村から連れ去られたのはわかっているんだが、どの辺かまではな」
「……そうですか」
ここはどこだとか、これからどうなるとか、色々と不安な事はありますが、ここにフランさんがいないって事は無事に逃げ切れたって事でしょうか? それなら良いのですが。そう思っていたら
「なんだ、貴様ら目を覚ましたのか? でもまあ、1日も寝ていたら当然か」
扉から金髪の太った男が入ってきます。その後ろにはガリガリの細身の男と、ローブの男が立っていました。他にも10人ほどいます。私たちは1日も気を失っていたのですね。
「グルッカス。こいつらが、あいつの仲間か?」
「ええ、そうです、バルト様」
「クックック、こいつらを使って奴をおびき出せば、奴を殺せるな……その前に、お前たち、楽しませてやる!」
金髪の男がそう言うと、男たちはジリジリと私に寄ってきます。金髪の太った男と細身の男はその光景を同じようにニヤニヤとし見ていて、ローブの男も見ているだけ。
「てめえら! ロナに近寄るんじゃねえ! ぶっ殺すぞ!」
「あん? 捕まっているガキが粋がってんじゃねえぞ、コラァ!」
「がはぁっ!」
「クルト!」
男たちは、歯向ったクルトを蹴ります。クルトが血反吐を吐いても蹴りは止まりません。その光景を見ていたら、あの時を思い出しました。
クルトとセシルが殴られ、蹴られ、そしてセシルが死んでしまったあの日を。私はあの時から何も変わっていません。今度はクルトを守れるように修行したのに。私はまた見ている事しか出来ません。気が付いたら涙が出ていました。
「や、やめてください! お願いします! お願いしますからクルトを傷付けないでください!」
私が懇願して言うと、ようやく男たちはクルトを蹴るのをやめます。クルトを見ると血塗れですが、息はあります。
「クックック。それなら女で楽しませてもらおうか。逆らったら今度はあの男の命は無いぞ?」
金髪の太った男はニヤニヤしながらそう言ってきます。私にはもう返事する事でしか、クルトを助ける事が出来ませんでした。
「……わかりました。わかりましたから、クルトを傷付けるのはやめてください」
「はっはっは! 女に免じて許してやるよ。やれ!」
金髪の太った男の号令で、周りの男たちは、私に手を伸ばしてきます。ごめんなさい、レディウス様。レディウス様に初めてを上げることが出来ません。私はせめて、歯を食いしばって我慢するだけです。
……
…………
………………あれ? 何も起きませんね? 私は恐る恐る瞑っていた目を開けると全員が扉の向こうを見ていました。耳を済ませれば外にいる人が何か騒いでいるようです。
「……おい、お前、見て来い」
「へ、へい!」
金髪の太った男に命令された男が扉の方へ向かい開けようとした次の瞬間
ドバァン!
と、扉が吹き飛びました。扉が吹き飛んだ原因は外から別の人が飛んできたからです。当然扉を開けようとした男の人も巻き込まれて吹き飛びます。
「ななな、なんだ!?」
男たちが呆然と扉の方を見る中、ローブの男だけが警戒心をあらわにして見ています。
扉のあった向こうからカツ、カツ、カツ、と足音が聞こえてきます。そして、少しずつ人影が見えてきました。丁度、日が入り込み見えづらいのですが。でも、私にはわかりました。
その姿を見るだけで、私の目から再び涙が溢れます。でも、今度の涙は悔し涙ではなくて、嬉し涙です。なぜならその方は
「れでぃ……うす……さまぁ」
私の愛しの方だったのですから。
レディウス様は私とクルトを見てから、金髪の太った男に向いて
「バルト・グレモンド。お前は……殺す」
俺は自分の家から出て、空を見てそんな事を言う。まあ、ただの思いつきで言っただけなのだが。
昨日は、ティリシアの家で、夜ご飯をご馳走になった。昨日の夜からロナたちは依頼で外に出ているからな。丁度運が良かった。
俺は料理があまり出来ないからな。ミストレアさんの家でも、殆どヘレネーさんかミストレアさんが作ってくれたし。あの2人は本当に料理が上手かったな。出てくるもの全て美味しいので、手が止まらなかった。懐かしいなぁ。元気にしているだろうか?
「おい、レディウス。今ロナちゃんといねえんだろ? 俺の家で朝飯食うか?」
俺が家の外で体を伸ばしていると、ガラナがそんな事を言ってくる。
「でも、お前のところマリエナさんがいるじゃないか。そんなところに邪魔するわけにはいかないよ」
ガラナは戦争が終わってから彼女を作った。まあ、年齢もまだ20後半だったからな。全然良いのだが、彼女は20手前ぐらいで、とても若い人だ。
なんでも、王都の中で、チンピラに襲われそうなところをガラナに助けられたらしい。その姿を見てガラナに一目惚れしたと言うのを聞いた事がある。
「何、マリエナもわかってくれるさ。さあ、行こうぜ」
俺はガラナに肩を組まれて、ガラナの家まで連れていかれる。ガラナの家からは朝食のいい匂いがする。
「あっ、ガラナさん。今朝ごはんが出来ま……って、あれ? レディウス君じゃないの? どうしたの?」
「ああ、今ロナちゃんたちがギルドの依頼でいないから、こいつ食べるものが無くてな。それならうちで食べさせてやろうと思ってな」
「いや、別に食べるものがないわけじゃないぞ。ロナみたいに美味しく作ってくれる人がいないだけで、いざとなれば干し肉でも齧ってれば良いんだから」
俺がそう言うと、ガラナとマリエナさんが揃って溜息を吐く。
「ダメだよ、レディウス君。日々の健康は日頃の食事からなるのだから、しっかりと栄養良く食べないと。ロナちゃんも毎日レディウス君の事を思って作っているんだから、ロナちゃんがいなくてもちゃんと食べないと」
マリエナさんは俺にビシッと指を突きつけて言う。そう言われたらぐうの音も出ない。確かにロナも俺やクルトの健康を考えて作ってくれている。それを無駄にするわけにはいかないな。
「……わかりました。頂きます」
「うむ、素直でよろしい!」
「ほら、席に座れ」
俺はガラナに促されるまま席に座る。待つ事数分、机の上にはサラダにスープ、ベーコンエッグに黒パンと、朝食が並べられる。
それから、3人で朝食を食べていく。途中でたわいの無い話などを挟みながらも楽しく朝食を食べていると、外が騒がしくなってきた。
「……何かあったのかしら?」
「ちょっと見てくるわ」
何かあったのか外を見にいくガラナ。それを不安そうに見送るマリエナさん。俺も見に行くか。置いていた剣を持って外に出ようとすると
「レディウス! 来てくれ!」
と、ガラナの叫ぶような声が聞こえる。俺はマリエナさんと顔を見合わせてから急いで外に出る。外に出ると、人だかりが出来ていた。
俺とマリエナさんは人をかき分けるように進む。そして、人だかりが無くなり、輪の中心部分に出ると、そこには、1人の女性を抱えるガラナの姿があった。そしてその横には
「ロポ!」
ロポが寝転んでいた。俺が来たのがわかったのかロポはグゥと手を上げながら一鳴きする。見た限り、あちこち砂埃などで汚れているが、怪我はなさそうだ。
「レディウス。この女性はフラン。ロナちゃんやクルトと同じパーティーを組んでいた魔法師だ」
「それじゃあ、フランさんとロポがこんなボロボロになって帰ってきたって事は……」
「依頼先で何かあったのだろう」
◇◇◇
「……うぅ……こ、こは?」
私は暗闇の中目を覚ましました。周りは木材で出来た壁で囲われており、少し埃っぽいです。どうやら何処かの使われていない小屋のようです。
私は起き上がろうと体を動かしますが、思うように動けません。どうやら手足を縄で縛られているようです。……そういえば、ローブの男に殴られて気を失ってしまいましたね。
「……っ! クルト! クルトはいますか!」
「……うるせえぞ、ロナ」
私は声のした方を見るとそこには私と同じように手足を縛られて寝転がるクルトの姿がありました。良かったぁ。無事だったんですね!
「クルト、大丈夫ですか? 何処か怪我はありませんか?」
「ああ、男に蹴られたところが痛むが、それ以外は大丈夫だ。ロナは?」
「私も殴られたところ以外は大丈夫です。それにしても、ここはどこなのでしょうか?」
「……わからねえ。依頼のあった村から連れ去られたのはわかっているんだが、どの辺かまではな」
「……そうですか」
ここはどこだとか、これからどうなるとか、色々と不安な事はありますが、ここにフランさんがいないって事は無事に逃げ切れたって事でしょうか? それなら良いのですが。そう思っていたら
「なんだ、貴様ら目を覚ましたのか? でもまあ、1日も寝ていたら当然か」
扉から金髪の太った男が入ってきます。その後ろにはガリガリの細身の男と、ローブの男が立っていました。他にも10人ほどいます。私たちは1日も気を失っていたのですね。
「グルッカス。こいつらが、あいつの仲間か?」
「ええ、そうです、バルト様」
「クックック、こいつらを使って奴をおびき出せば、奴を殺せるな……その前に、お前たち、楽しませてやる!」
金髪の男がそう言うと、男たちはジリジリと私に寄ってきます。金髪の太った男と細身の男はその光景を同じようにニヤニヤとし見ていて、ローブの男も見ているだけ。
「てめえら! ロナに近寄るんじゃねえ! ぶっ殺すぞ!」
「あん? 捕まっているガキが粋がってんじゃねえぞ、コラァ!」
「がはぁっ!」
「クルト!」
男たちは、歯向ったクルトを蹴ります。クルトが血反吐を吐いても蹴りは止まりません。その光景を見ていたら、あの時を思い出しました。
クルトとセシルが殴られ、蹴られ、そしてセシルが死んでしまったあの日を。私はあの時から何も変わっていません。今度はクルトを守れるように修行したのに。私はまた見ている事しか出来ません。気が付いたら涙が出ていました。
「や、やめてください! お願いします! お願いしますからクルトを傷付けないでください!」
私が懇願して言うと、ようやく男たちはクルトを蹴るのをやめます。クルトを見ると血塗れですが、息はあります。
「クックック。それなら女で楽しませてもらおうか。逆らったら今度はあの男の命は無いぞ?」
金髪の太った男はニヤニヤしながらそう言ってきます。私にはもう返事する事でしか、クルトを助ける事が出来ませんでした。
「……わかりました。わかりましたから、クルトを傷付けるのはやめてください」
「はっはっは! 女に免じて許してやるよ。やれ!」
金髪の太った男の号令で、周りの男たちは、私に手を伸ばしてきます。ごめんなさい、レディウス様。レディウス様に初めてを上げることが出来ません。私はせめて、歯を食いしばって我慢するだけです。
……
…………
………………あれ? 何も起きませんね? 私は恐る恐る瞑っていた目を開けると全員が扉の向こうを見ていました。耳を済ませれば外にいる人が何か騒いでいるようです。
「……おい、お前、見て来い」
「へ、へい!」
金髪の太った男に命令された男が扉の方へ向かい開けようとした次の瞬間
ドバァン!
と、扉が吹き飛びました。扉が吹き飛んだ原因は外から別の人が飛んできたからです。当然扉を開けようとした男の人も巻き込まれて吹き飛びます。
「ななな、なんだ!?」
男たちが呆然と扉の方を見る中、ローブの男だけが警戒心をあらわにして見ています。
扉のあった向こうからカツ、カツ、カツ、と足音が聞こえてきます。そして、少しずつ人影が見えてきました。丁度、日が入り込み見えづらいのですが。でも、私にはわかりました。
その姿を見るだけで、私の目から再び涙が溢れます。でも、今度の涙は悔し涙ではなくて、嬉し涙です。なぜならその方は
「れでぃ……うす……さまぁ」
私の愛しの方だったのですから。
レディウス様は私とクルトを見てから、金髪の太った男に向いて
「バルト・グレモンド。お前は……殺す」
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
4
-
-
55
-
-
147
-
-
111
-
-
768
-
-
1
-
-
93
-
-
238
-
-
39
コメント