黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜

やま

84話 ロナたちへの依頼

「ふへへへ〜」


「何、気持ちの悪い笑み浮かべてんだよ、ロナ」


「だって〜、レディウス様の手紙が届いて、そこに書かれていたのが……きゃっ!」


「はぁ〜、全く兄貴の事になると直ぐこれだ」


 御者台に乗っているクルトが呆れた声でそんな事を言ってきます。むむぅ、仕方ないじゃ無いですか。レディウス様の手紙には、私がいないと生きられないって書いてあるんですから!


 これなら私がアタックすればもしかしたら……最近私の胸も大きくなってきていますし! えへへ〜。


「でも、毎回あなたたちの話から出てくるレディウス様ってそんなに凄いの?」


 私がレディウス様との夜を想像していると、私の向かいに座る女性が話しかけてきます。


 彼女の名前はフランさん。Cランクのベテランの冒険者で、以前同じ依頼を受けさせていただいてから一緒に組むようになった方です。膝の上にはロポさんを乗せています。


 年齢は20歳の茶髪の髪の毛を三つ編みにして左肩から前へと垂らしています。フランさんは私たちの持っていない水と風魔法の使い手で、とても頼りになる先輩です!


「はい! レディウス様はとても凄い方です! 私と同じ黒髪なのですが、そんな事は一切気にせず自分の実力だけで、周りを認めさせている方で、この前も学園主催の対抗戦で4年生のチームで優勝したんですよ!!」


 あぁ、今思い出してもあのレディウス様はカッコ良かったですぅ。戦いの時のレディウス様ぁ。カッコ良すぎて、あのお姿を思い出しただけでも、ご飯5杯はいけます!


「それは凄いわね。そんな凄い人、一度で良いから会って見たいわね」


 フランさんは腕を組みながら、そんな話をしてくれます。むむっ! これは会わせて良いのでしょうか? もし、フランさんがレディウス様と出会って一目惚れでもしたら……ううぅ、でも、フランさんは良い人ですし、会ってもらいたいのですが……悩みます。


「2人とも〜、そろそろ目的の村に着くぜ〜」


 フランさんをレディウス様に会わせてもいいのか考えていると、御者台からクルトの声がします。御者台を見てみると、クルトは地図片手に馬を動かしていました。


 私とクルトはガラナさんに読み書きと四則演算に地図を使ったこの大陸の地理も教えて貰いました。まだわからない部分もありますが、アルバスト王国内なら地図があれば、大体の場所はわかります。


「今回の依頼って確か調査だったわよね? 突然畑が誰かに荒らされて全滅したから調べて欲しいっていう」


「はい。調査だけなのでそこまで高い依頼ではないのですが、もしかしたら戦闘になるかも知れないからと、私たちに依頼されました」


 調査だけならDランクの私たちが出来ますし、万が一戦闘になってもCランクのフランさんのサポートがあれば戦えまし、ロポさんをもいます。そこまで強い魔獣は確認されていませんし、大丈夫でしょう。


 クルトが馬車をそのまま進めて、村の入り口まで行くと、入り口から鍬や手鎌を持った男たちが出てきます。クルトは馬車を止めて村の人たちの元へ向かいます。私とフランさんもあります。ロポさんは私の肩に。


「驚かせてすみません。俺たちは王都の冒険者ギルドからやってきました冒険者です。これがカードです」


 クルトは懐からギルドカードを取り出して、村の人たちに見せます。ギルドカードには今受けている依頼も見れますからね。


 その間、私は村の様子を見て見ましょう。村の大きさは私たちが住んでいる廃村より少し小さいくらいでしょうか。


 人数的には200人ほどが住めるほどの大きさ。偶然なのか男の人しかいませんね。女の人は家の中にいるのでしょうか?


「おおっ、これは失礼した。君たちが依頼した冒険者か。俺はこの村の村長をしているハタンだ。よろしく」


「はい、俺の名前はクルト。こっちの黒髪がロナ、こちらの茶髪の女性がフランさんです。よろしくお願いします」


 クルトから順に村長のハタンさんと握手をしていく……うん? これは。


「それでは早速見て貰いましょうか。こちらになります」


 ハタンさんはそれだけを言って歩き始めます。他の村人の人たちは各々の家に帰ってしまいました。見張りは良いのでしょうか?


「行こうぜ」


 クルトもハタンさんの後ろをついていきます。この村について色々と思う事はありますが、まずは依頼です。私たちもハタンさんの後ろについていきます。


 その間、家の中から視線を感じました。どこか値踏みされているような感じです。まだ、子供だと侮られているのでしょうか?


 まあ、仕方ないといえば仕方ありませんが。ましてや1人は黒髪。他の依頼でも似たような事はあるので余り気にしていません。レディウス様も気にしていないと言っていましたし。


 そのまま、畑まで案内されると、そこには無惨に荒らされた畑がありました。作っていた作物が全て潰されて、グチャグチャになっています。


「この作物はこの村の財産でしてね。外に出られない子供や年寄りの唯一の収入で我々の食事だったのですが、何者かにこのようにされてしまったのです」


「なるほど。その犯人の目星はついているのですか?」


 クルトが尋ねると、ハタンさんは首を横に振ります。


「でも、夜になると奴らは毎日来ているようです。毎晩奴らの鳴き声がしますので。確かめたいのですが、怖くて家の外に出られなくて……面目無い」


「それは仕方ないですよ。誰だって魔獣は怖いものです。わかりました。とりあえず夜まで待ちましょう。後数時間はありますし」


「それでは、私の家に案内しましょう。空き部屋で休んでください」


「ああ、それには及びません。少し村の周りを見て回りたいので。それが終わったら、そのままここで待機します。今日は野宿をするので、皆さんは家で休んでいて下さい」


「そうですか。わかりました、よろしくお願いします」


 クルトの言葉にハタンさんは自分の家へと帰っていった。その後ろ姿を真剣に見送るクルト。そして


「みんな、少し話がある」


 と言ってきた。それから私たちは今回の依頼について話し合うのでした。

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