黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
68話 セプテンバーム家
「はぁ〜、大きいなあ〜」
俺は大きな玄関に降り立ちそんな事を言う。門から玄関までは馬車が悠々と回る事が出来るほどの広さを持ち、屋敷は3階建ての屋敷だがかなり大きい。グレモンド家の屋敷を5つ程合わせたぐらいの大きさだ。
「ふふ。そう言って頂けて嬉しいです。でも他の公爵家や侯爵家も似た様なものですよ」
俺がほへぇ〜、と言いながら屋敷を見ている隣に立つヴィクトリアが微笑みながらそう言ってくる。確か公爵家ってもう1家あるんだったよな。この前学園で習った。西のセプテンバームと北のバルスタン。
それぞれが王都から同一距離に公爵領を持って、それぞれの公爵領がいざという時の防衛拠点になる。そのため、他の領地に比べて兵士が多い。
そして、東側の代表がリストニック侯爵家、南側をまとめるのがハスフォート侯爵家になる。当然ながらリストニック侯爵家の寄子の寄子であるグレモンド家も東側になる。
「それでは行きましょうか」
俺はヴィクトリアに先導され屋敷に進む。屋敷の玄関の前には侍女たちが並び、全員揃って頭を下げている。その中から1人初老の男性が現れる。燕尾服を着ているので多分執事なのだろう。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「ええ、ただいま戻りました、ベン。お父様は?」
「はい、中庭で奥様とゲイル様とお待ちです」
「わかりました。それではレディウス、私の後について来てください」
「ああ、わかった」
俺は執事の人や侍女の人に軽く頭を下げてヴィクトリアの後ろについていく。執事の人はニコニコと笑顔をしていて内心が読めないが、他の侍女たちは普通の人もいれば、蔑んだ目で見てくる人もいる。露骨に嫌そうな顔をする人も。
当然それは俺だけでは無く、ヴィクトリアやマリーさんもわかったみたいで
「ごめんなさい、レディウス。不快な思いをさせてしまって」
と、ヴィクトリアに謝られた。マリーさんもヴィクトリアの後ろで頭を下げてくる。別に俺は気にしていないのだがな。逆に侍女たちの反応が当たり前だと思う。
「別に気にしていないよ。日常茶飯事だからな」
俺がそう言うと、ヴィクトリアたちもそれ以上言わなかった。少し気まずい雰囲気になり、誰も話さないままヴィクトリアの後をついていく。
この屋敷結構広いな。俺1人だったら絶対迷うぞこれ。
「ーーッ!」
そんな風にヴィクトリアの後ろをついて行っていると、誰かの叫ぶ声が聞こえ、鉄がぶつかる音がする。これは剣を打ち合っているのか? ヴィクトリアは気にした様子もなく、音のする方へと進んで行く。
少し進むと、そこは外になっており、大きな中庭になっていた。中庭を囲う様に色とりどりの花が咲き、花の良い香りがする。
その囲む様に咲いている花の中心には、壮年の男性が、若い男性と剣を打ち合っていた。壮年の男性は金髪を後ろで一括りにして、顎にヒゲが生えている。若い方の男性も金髪だが、何処かで見たことある顔だ。年は20前後ってところだろう。
「ほっほっほ! 若様、そんなんじゃあ、儂には勝てませんぞ!」
「くっ! ゲルムドはやっぱり強いな。だけど、私もそう易々とやられないぞ!」
そう言いながらも、楽しそうに剣を打ち合う2人。やば、うずうずしてきた。物凄く混ざりたいのだが。俺の思いを知ってか知らずか、ヴィクトリアはその横を歩いて行く。
その先には、屋敷からテラスみたいになっており、そこで2人の男女が座っていた。周りには侍女と兵士が固めている。男の人は金髪で少しふっくらしている。しかし、雰囲気は普通の人とは比べ物にならないぐらい鋭い。この人がセプテンバーム公爵なのだろう。
その隣に座る女性は、ヴィクトリアをそのまま歳をとったらそうなるであろうと思えるほど、ヴィクトリアと似ていた。扇で口を隠しながら微笑んでいる。この人がセプテンバーム夫人か。
「お父様。連れてきました」
「んっ? おおっ、帰ったかヴィクトリア。ご苦労であったな」
「あら。おかえりなさいヴィクトリア。お疲れ様です」
2人ともヴィクトリアが帰ったのに気がつくと、優しく微笑んでヴィクトリアを労う。そしてそのまま顔を俺の方に向けて睨む2人……おぉぅ、温度差が激しすぎませんかね?
「そいつが、お前のチームに入るやつか?」
「はい、お父様。彼の名前は……」
「レディウスだろ? グレモンド男爵家の次男として生まれて、勘当された男だ」
調べたのかな? まあ、公爵家の力を使えば容易なのかも。
「……知っているならなぜ呼んだのです?」
「いつも言っているだろ? 私は実際に見て感じたものしか信用せんと。それにお前を蹴落とした女の弟だ。それだけでも腹が立つというのに」
そして、セプテンバーム公爵は俺に向けて殺気を飛ばさしてくる。中々の密度だ。この人もそれなりに腕はありそうだが、戦争の時に比べると普通だ。
だから、俺は気にした様子を表に出さずに挨拶をする。
「お招きいただき有難うございます。私の名前はレディウスと申します。ヴィクトリア様と学園の対抗戦で同じチームを組ませていただいております」
と、貴族の礼をする。セプテンバーム公爵は「フン」とそっぽを向いて、夫人は「まあまあね」と言ってくる。
……仕方ないじゃないか。ここ数年貴族に挨拶する事なんて無かったんだから。俺も昔姉上に教えてもらっただけで、うろ覚えだし。
「ここまでですな」
「……くそ」
そんな風に挨拶をしていると、後ろで鳴り響いていた剣戟が止む。振り返ると、若い男性の喉元に壮年の男性の剣が突きつけられていた。
それから壮年の男性が剣を納めて2人揃ってセプテンバーム公爵の前まで歩いてくる。俺の横をチラッと通る若い男性は、俺を横目で睨んでから、セプテンバーム公爵の前に立つ。俺、この家で恨まれすぎだろ。
「父上。負けてしまいました」
「やはりゲルムドの方が数枚上手か。ゲイルも精進せねばな」
「はい、父上。それで彼が?」
「ああ、それでは早速見せてもらおうか。グリムド準備は出来ているか?」
「はっ! 大丈夫です!」
そして、いつの間にか準備をし終えていたグリムドが、先ほどまで戦っていた中庭の中心で剣に手をかけて立っていた。
「悪いが、お前の実力を知らなければ、ヴィクトリアを参加させる事は出来ないからな。大事な娘を怪我させるわけにはいかん」
……娘好き過ぎるだろ。親バカってやつだな。口には絶対に出さないけど。
「わかりました」
俺はそれだけ言って、中庭の中心に向かう。物凄くうずうずしてきた! さーて、どのくらい強いのだろうか。楽しみだ!
俺は大きな玄関に降り立ちそんな事を言う。門から玄関までは馬車が悠々と回る事が出来るほどの広さを持ち、屋敷は3階建ての屋敷だがかなり大きい。グレモンド家の屋敷を5つ程合わせたぐらいの大きさだ。
「ふふ。そう言って頂けて嬉しいです。でも他の公爵家や侯爵家も似た様なものですよ」
俺がほへぇ〜、と言いながら屋敷を見ている隣に立つヴィクトリアが微笑みながらそう言ってくる。確か公爵家ってもう1家あるんだったよな。この前学園で習った。西のセプテンバームと北のバルスタン。
それぞれが王都から同一距離に公爵領を持って、それぞれの公爵領がいざという時の防衛拠点になる。そのため、他の領地に比べて兵士が多い。
そして、東側の代表がリストニック侯爵家、南側をまとめるのがハスフォート侯爵家になる。当然ながらリストニック侯爵家の寄子の寄子であるグレモンド家も東側になる。
「それでは行きましょうか」
俺はヴィクトリアに先導され屋敷に進む。屋敷の玄関の前には侍女たちが並び、全員揃って頭を下げている。その中から1人初老の男性が現れる。燕尾服を着ているので多分執事なのだろう。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「ええ、ただいま戻りました、ベン。お父様は?」
「はい、中庭で奥様とゲイル様とお待ちです」
「わかりました。それではレディウス、私の後について来てください」
「ああ、わかった」
俺は執事の人や侍女の人に軽く頭を下げてヴィクトリアの後ろについていく。執事の人はニコニコと笑顔をしていて内心が読めないが、他の侍女たちは普通の人もいれば、蔑んだ目で見てくる人もいる。露骨に嫌そうな顔をする人も。
当然それは俺だけでは無く、ヴィクトリアやマリーさんもわかったみたいで
「ごめんなさい、レディウス。不快な思いをさせてしまって」
と、ヴィクトリアに謝られた。マリーさんもヴィクトリアの後ろで頭を下げてくる。別に俺は気にしていないのだがな。逆に侍女たちの反応が当たり前だと思う。
「別に気にしていないよ。日常茶飯事だからな」
俺がそう言うと、ヴィクトリアたちもそれ以上言わなかった。少し気まずい雰囲気になり、誰も話さないままヴィクトリアの後をついていく。
この屋敷結構広いな。俺1人だったら絶対迷うぞこれ。
「ーーッ!」
そんな風にヴィクトリアの後ろをついて行っていると、誰かの叫ぶ声が聞こえ、鉄がぶつかる音がする。これは剣を打ち合っているのか? ヴィクトリアは気にした様子もなく、音のする方へと進んで行く。
少し進むと、そこは外になっており、大きな中庭になっていた。中庭を囲う様に色とりどりの花が咲き、花の良い香りがする。
その囲む様に咲いている花の中心には、壮年の男性が、若い男性と剣を打ち合っていた。壮年の男性は金髪を後ろで一括りにして、顎にヒゲが生えている。若い方の男性も金髪だが、何処かで見たことある顔だ。年は20前後ってところだろう。
「ほっほっほ! 若様、そんなんじゃあ、儂には勝てませんぞ!」
「くっ! ゲルムドはやっぱり強いな。だけど、私もそう易々とやられないぞ!」
そう言いながらも、楽しそうに剣を打ち合う2人。やば、うずうずしてきた。物凄く混ざりたいのだが。俺の思いを知ってか知らずか、ヴィクトリアはその横を歩いて行く。
その先には、屋敷からテラスみたいになっており、そこで2人の男女が座っていた。周りには侍女と兵士が固めている。男の人は金髪で少しふっくらしている。しかし、雰囲気は普通の人とは比べ物にならないぐらい鋭い。この人がセプテンバーム公爵なのだろう。
その隣に座る女性は、ヴィクトリアをそのまま歳をとったらそうなるであろうと思えるほど、ヴィクトリアと似ていた。扇で口を隠しながら微笑んでいる。この人がセプテンバーム夫人か。
「お父様。連れてきました」
「んっ? おおっ、帰ったかヴィクトリア。ご苦労であったな」
「あら。おかえりなさいヴィクトリア。お疲れ様です」
2人ともヴィクトリアが帰ったのに気がつくと、優しく微笑んでヴィクトリアを労う。そしてそのまま顔を俺の方に向けて睨む2人……おぉぅ、温度差が激しすぎませんかね?
「そいつが、お前のチームに入るやつか?」
「はい、お父様。彼の名前は……」
「レディウスだろ? グレモンド男爵家の次男として生まれて、勘当された男だ」
調べたのかな? まあ、公爵家の力を使えば容易なのかも。
「……知っているならなぜ呼んだのです?」
「いつも言っているだろ? 私は実際に見て感じたものしか信用せんと。それにお前を蹴落とした女の弟だ。それだけでも腹が立つというのに」
そして、セプテンバーム公爵は俺に向けて殺気を飛ばさしてくる。中々の密度だ。この人もそれなりに腕はありそうだが、戦争の時に比べると普通だ。
だから、俺は気にした様子を表に出さずに挨拶をする。
「お招きいただき有難うございます。私の名前はレディウスと申します。ヴィクトリア様と学園の対抗戦で同じチームを組ませていただいております」
と、貴族の礼をする。セプテンバーム公爵は「フン」とそっぽを向いて、夫人は「まあまあね」と言ってくる。
……仕方ないじゃないか。ここ数年貴族に挨拶する事なんて無かったんだから。俺も昔姉上に教えてもらっただけで、うろ覚えだし。
「ここまでですな」
「……くそ」
そんな風に挨拶をしていると、後ろで鳴り響いていた剣戟が止む。振り返ると、若い男性の喉元に壮年の男性の剣が突きつけられていた。
それから壮年の男性が剣を納めて2人揃ってセプテンバーム公爵の前まで歩いてくる。俺の横をチラッと通る若い男性は、俺を横目で睨んでから、セプテンバーム公爵の前に立つ。俺、この家で恨まれすぎだろ。
「父上。負けてしまいました」
「やはりゲルムドの方が数枚上手か。ゲイルも精進せねばな」
「はい、父上。それで彼が?」
「ああ、それでは早速見せてもらおうか。グリムド準備は出来ているか?」
「はっ! 大丈夫です!」
そして、いつの間にか準備をし終えていたグリムドが、先ほどまで戦っていた中庭の中心で剣に手をかけて立っていた。
「悪いが、お前の実力を知らなければ、ヴィクトリアを参加させる事は出来ないからな。大事な娘を怪我させるわけにはいかん」
……娘好き過ぎるだろ。親バカってやつだな。口には絶対に出さないけど。
「わかりました」
俺はそれだけ言って、中庭の中心に向かう。物凄くうずうずしてきた! さーて、どのくらい強いのだろうか。楽しみだ!
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