黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
65話 説明
「さあ、ここなら落ち着いて話せるでしょう」
そう言い、姉上に案内されたのは、王宮内にある応接室だ。ここは、王宮内で働く人では誰でも使う事が出来るらしい。その部屋に俺と姉上、ミアが集まった。
ウィリアム王子も来たそうだったが、レイブン将軍が積もる話もあるだろうからと、ウィリアム王子を引き止めてくれた。
ただ、婚約者の女性を独身の男性と密室に入れるのは流石に不味いので、兵士が扉を開き、室内で異常がないか確認しているが。まあ、姉上は王子の婚約者だ。その点は仕方がないだろう。
レイブン将軍は、後でロナもここに連れて来てくれると言ってくれた。ロナにも心配をかけたから何かしてあげないと。また、デートだな。
「それじゃあ、レディウスがグレモンド領から出た後に何があったのか教えてもらえるかしら?」
それから俺は、グレモンド領を出た後からの事を話した。グレモンド領の隣のレクリウムで冒険者になった事。その冒険者で、とあるパーティーに誘われて、森で罠に嵌められて死にかけた事。そこで、俺の剣の師匠になるミストレアさんに助けてもらった事。
そのあたりの話をしている時に、扉が叩かれて兵士に連れられてロナが部屋に入って来た。俺は直ぐに立ち上がり、ロナに怪我が無いか確認する。
「大丈夫だったか、ロナ?」
「はい、レディウス様が連れていかれた後は、特に何もされる事もなく、クリスチャンさんと一緒にいましたから」
そう言って微笑むロナ。良かった。特に目立つ怪我はなさそうだ。そんな風に話していると、姉上たちがじーっと見てくる。おっと、ロナの事を紹介しなければ。
「姉上。彼女はロナと言います。今は俺の弟子で従者をしてもらっています」
「私の名前はロナと言います。レディウス様に命を助けて頂き、今はレディウス様の従者としてお支えさせていただいてます」
「ええ、私はエリシア・リストニック。以前はエリシア・グレモンドでレディウスの腹違いの姉になるわ。それから私の隣に座っているのが、ミア。彼女は小さい頃からレディウスのお母様にお支えしていた侍女で今は私の専属侍女になってくれているわ。レディウスのもう1人の姉的な存在ね」
「そ、そんな、姉なんて恐れ多いです」
ミアは姉上の紹介に恐縮そうにするが、俺も姉上の意見に賛成だ。あの息苦しい屋敷の中で、母上と姉上と数少ない俺の身内の1人なのだから。
それからは、順序は逆にはなるが、まずロナとの出会いを話す。ミアはロナとの境遇が似ているのか、直ぐに打ち解けた。姉上は笑顔なのだが、どこか変な感じがする。でもそれも一瞬だったので、俺の気のせいかな?
その後は3年間、ミストレアさんのところで修行した事。そこでヘレネーさんに出会った事。彼女とは恋仲になった事を話した。姉上には目が笑っていない笑顔を、ロナは頬を膨らませていたが、話は進めていく。
修行を終えた後は、ミストレアさんにケストリア子爵領に送ってもらい、そこから王都を目指した事。ケストリア子爵領でアレスに出会い、アレスの母親を助けるために、コカトリスを討伐した話は物凄く心配された。
それから王都に向かっている途中で、ミストリーネさんたち銀翼騎士団と出会った事。王都でブリタリスとの戦争に参加するため、募兵に向かい参加した話も。
戦争の話をしていくうちに、姉上はドンドン首を傾けていくが、今はとりあえず話を進める。その戦争が終わり、レイブン将軍たちに認められ近衛騎士団に入る事になった事。そのために今はメイガス学園に通っているところまで話した。
「……はぁ〜。この4年でどういう生活を……いえ、そうしないといけなかったのよね……私がもっとお父様たちに強く言えたら」
「姉上。それは違いますよ。あの時にも話したかも知れませんが、俺は遅かれ早かれ家を出るつもりでした。あの家で俺は生きづらいかったですから。
それにこの身に起きた事は全部自分のせいですし、死にかけるという事が無ければ、ミストレアさんにもヘレネーさんにも、ロナにも出会う事は出来なかったので、俺は後悔していません」
俺はそう言いロナの方を見ると、ロナは少し擽ったそうにしながらも、嬉しそうに微笑む。
「そう、なの……あっ、そうだ。レディウスにこれを返しておかないと」
そう言い姉上が机の上に置いたのは、一振りの剣だった。……これは。
「……どうして姉上がこの剣を? あいつらに盗まれたはずじゃあ……」
そう、机の上に置かれたのは、母上から戴いた形見の剣だった。あの時盗まれたはずなのに、何故ここに?
「どうやら、この剣は魔力を通すとグレモンド男爵家の家紋が出るようだったの。お父様に聞けばメアリー様にお願いされてこれだけ紋章をつける事が許されたみたい。まあ、家紋としての効力はあまりないみたいだけど。
それをこの剣が売られた武器商人が気が付いてね。お父様のところに持ってきたのをお父様が買って、私に送ってきたのよ」
そう言って俺の前に剣を置く姉上。俺は剣に触れる。懐かしい。母上から戴いてからずっと振っていた剣。もう戻ってこないかも知れないと思っていたのに。俺は気が付かないうちに涙を流していた。
「レ、レディウス様?」
俺が泣くところを初めてみたロナは驚いた声を出す。何だよ? 俺だって嬉しかったり、悲しかったりすれば泣くんだぞ? あまり泣かないだけだ。
「ありがとうございます、姉上。ずっと持っていてくださって」
「いいのよ。それはメアリー様とレディウスの形見だったから」
それから少し話して、俺たちは王宮を出る事にした。あまり一緒にいれば、姉上が疑われてしまうからな。これからはこんな気安く会う事も出来ないだろう。これからは、王子の婚約者として会わなければならないから。
「姉上。ありがとうがざいました」
「ええ。私もありがとう。生きていてくれて」
「レディウス様。またお話をしましょう!」
「ああ、ミアも元気で」
◇◇◇
レディウスたちが、部屋を出て私は自分の部屋に戻ってきた。部屋の中はミアだけ。他には誰もいない。私はずっと我慢していた涙を流し始めた。
涙の理由は色々。レディウスが生きてくれて嬉しかった事。また話をする事が出来た事。レディウスの笑顔を見る事が出来た事。でも、それと同じぐらい悲しい気持ちもある。
「エリシア様……」
「わかっているわ。こんな思いを抱いてはいけない事ぐらい。私はヴィクトリア様に酷い事をして今の地位にいる。そんな私が、レディウスが生きていたからって今更やめられないわ」
だから、私はこの思いを二度と表に出さない。レディウスの事が好きだった事を。これからは黒髪に対する意識を変えるために生きていく。それが、レディウスを助ける事になるから。
そう言い、姉上に案内されたのは、王宮内にある応接室だ。ここは、王宮内で働く人では誰でも使う事が出来るらしい。その部屋に俺と姉上、ミアが集まった。
ウィリアム王子も来たそうだったが、レイブン将軍が積もる話もあるだろうからと、ウィリアム王子を引き止めてくれた。
ただ、婚約者の女性を独身の男性と密室に入れるのは流石に不味いので、兵士が扉を開き、室内で異常がないか確認しているが。まあ、姉上は王子の婚約者だ。その点は仕方がないだろう。
レイブン将軍は、後でロナもここに連れて来てくれると言ってくれた。ロナにも心配をかけたから何かしてあげないと。また、デートだな。
「それじゃあ、レディウスがグレモンド領から出た後に何があったのか教えてもらえるかしら?」
それから俺は、グレモンド領を出た後からの事を話した。グレモンド領の隣のレクリウムで冒険者になった事。その冒険者で、とあるパーティーに誘われて、森で罠に嵌められて死にかけた事。そこで、俺の剣の師匠になるミストレアさんに助けてもらった事。
そのあたりの話をしている時に、扉が叩かれて兵士に連れられてロナが部屋に入って来た。俺は直ぐに立ち上がり、ロナに怪我が無いか確認する。
「大丈夫だったか、ロナ?」
「はい、レディウス様が連れていかれた後は、特に何もされる事もなく、クリスチャンさんと一緒にいましたから」
そう言って微笑むロナ。良かった。特に目立つ怪我はなさそうだ。そんな風に話していると、姉上たちがじーっと見てくる。おっと、ロナの事を紹介しなければ。
「姉上。彼女はロナと言います。今は俺の弟子で従者をしてもらっています」
「私の名前はロナと言います。レディウス様に命を助けて頂き、今はレディウス様の従者としてお支えさせていただいてます」
「ええ、私はエリシア・リストニック。以前はエリシア・グレモンドでレディウスの腹違いの姉になるわ。それから私の隣に座っているのが、ミア。彼女は小さい頃からレディウスのお母様にお支えしていた侍女で今は私の専属侍女になってくれているわ。レディウスのもう1人の姉的な存在ね」
「そ、そんな、姉なんて恐れ多いです」
ミアは姉上の紹介に恐縮そうにするが、俺も姉上の意見に賛成だ。あの息苦しい屋敷の中で、母上と姉上と数少ない俺の身内の1人なのだから。
それからは、順序は逆にはなるが、まずロナとの出会いを話す。ミアはロナとの境遇が似ているのか、直ぐに打ち解けた。姉上は笑顔なのだが、どこか変な感じがする。でもそれも一瞬だったので、俺の気のせいかな?
その後は3年間、ミストレアさんのところで修行した事。そこでヘレネーさんに出会った事。彼女とは恋仲になった事を話した。姉上には目が笑っていない笑顔を、ロナは頬を膨らませていたが、話は進めていく。
修行を終えた後は、ミストレアさんにケストリア子爵領に送ってもらい、そこから王都を目指した事。ケストリア子爵領でアレスに出会い、アレスの母親を助けるために、コカトリスを討伐した話は物凄く心配された。
それから王都に向かっている途中で、ミストリーネさんたち銀翼騎士団と出会った事。王都でブリタリスとの戦争に参加するため、募兵に向かい参加した話も。
戦争の話をしていくうちに、姉上はドンドン首を傾けていくが、今はとりあえず話を進める。その戦争が終わり、レイブン将軍たちに認められ近衛騎士団に入る事になった事。そのために今はメイガス学園に通っているところまで話した。
「……はぁ〜。この4年でどういう生活を……いえ、そうしないといけなかったのよね……私がもっとお父様たちに強く言えたら」
「姉上。それは違いますよ。あの時にも話したかも知れませんが、俺は遅かれ早かれ家を出るつもりでした。あの家で俺は生きづらいかったですから。
それにこの身に起きた事は全部自分のせいですし、死にかけるという事が無ければ、ミストレアさんにもヘレネーさんにも、ロナにも出会う事は出来なかったので、俺は後悔していません」
俺はそう言いロナの方を見ると、ロナは少し擽ったそうにしながらも、嬉しそうに微笑む。
「そう、なの……あっ、そうだ。レディウスにこれを返しておかないと」
そう言い姉上が机の上に置いたのは、一振りの剣だった。……これは。
「……どうして姉上がこの剣を? あいつらに盗まれたはずじゃあ……」
そう、机の上に置かれたのは、母上から戴いた形見の剣だった。あの時盗まれたはずなのに、何故ここに?
「どうやら、この剣は魔力を通すとグレモンド男爵家の家紋が出るようだったの。お父様に聞けばメアリー様にお願いされてこれだけ紋章をつける事が許されたみたい。まあ、家紋としての効力はあまりないみたいだけど。
それをこの剣が売られた武器商人が気が付いてね。お父様のところに持ってきたのをお父様が買って、私に送ってきたのよ」
そう言って俺の前に剣を置く姉上。俺は剣に触れる。懐かしい。母上から戴いてからずっと振っていた剣。もう戻ってこないかも知れないと思っていたのに。俺は気が付かないうちに涙を流していた。
「レ、レディウス様?」
俺が泣くところを初めてみたロナは驚いた声を出す。何だよ? 俺だって嬉しかったり、悲しかったりすれば泣くんだぞ? あまり泣かないだけだ。
「ありがとうございます、姉上。ずっと持っていてくださって」
「いいのよ。それはメアリー様とレディウスの形見だったから」
それから少し話して、俺たちは王宮を出る事にした。あまり一緒にいれば、姉上が疑われてしまうからな。これからはこんな気安く会う事も出来ないだろう。これからは、王子の婚約者として会わなければならないから。
「姉上。ありがとうがざいました」
「ええ。私もありがとう。生きていてくれて」
「レディウス様。またお話をしましょう!」
「ああ、ミアも元気で」
◇◇◇
レディウスたちが、部屋を出て私は自分の部屋に戻ってきた。部屋の中はミアだけ。他には誰もいない。私はずっと我慢していた涙を流し始めた。
涙の理由は色々。レディウスが生きてくれて嬉しかった事。また話をする事が出来た事。レディウスの笑顔を見る事が出来た事。でも、それと同じぐらい悲しい気持ちもある。
「エリシア様……」
「わかっているわ。こんな思いを抱いてはいけない事ぐらい。私はヴィクトリア様に酷い事をして今の地位にいる。そんな私が、レディウスが生きていたからって今更やめられないわ」
だから、私はこの思いを二度と表に出さない。レディウスの事が好きだった事を。これからは黒髪に対する意識を変えるために生きていく。それが、レディウスを助ける事になるから。
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コメント
ペンギン
悲しい...タイミングさえ違っていれば...( 'ω')クッ!