黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
52話 婚約破棄
「私は、この女性、エリシア・グレモンドを妻として迎える!」
……どうしてこうなったのかしら。
ブリタリス王国から帰還した兵士たちを労うための祝勝会で、ウィリアム王子が発した一言が今の発言。その事にどよめきの声を上げる貴族たち。
その中でも顔色変えて見てくるのが、ヴィクトリア様とその父親、ベルゼリクス・セプテンバーム公爵。2人は聞かされてなかったようね。本来であれば今隣にいるのはヴィクトリア様のはず。
それなのに私がいる事に驚いているところにこのウィリアム王子の発表。本当にどうしてこうなったのかしら。
◇◇◇
「私はエリシアを王妃として妻に迎えようと思う」
私が王宮に呼ばれて、ウィリアム王子や国王陛下に王妃様、私の両親がいる部屋に入った瞬間言われた言葉がこれだ。
その言葉に、国王陛下は苛立ちを隠せない様子だ。
「ウィリアム。何故急にそんな事を言い出す。お前にはヴィクトリアがいるだろう。王妃ではなくて側室ならわかるが……」
「そうですよウィリアム。もう一度考え直しなさい」
「父上、母上。何だ言われようとも私の考えは変わりません! それに急ではありませんよ。学園にエリシアが入学した時からです」
ウィリアム王子の気迫に押される国王陛下と王妃様。私の事を想ってくれていたのは嬉しいけど、私は恋愛対象としては見ていなかった。
「私は考えを変える気はありませんから。それに父上は私と約束したはずです。今回の戦争で手柄を立てれば、私の望みを叶えると」
「……うぅむ」
何て約束をしているの、この2人は。それに巻き込まれる私の身にもなってほしいわ。しかし、私の望みをわかるわけもなく
「ヴィクトリアはどうするのだ。王妃にしないのであれば、側室に置くべきだろう」
「はっきり言いますが、私は彼女が好みではありません。これについては前から言っていたはずですが、母上」
「そ、それはそうだけど、ヴィクトリアはあなたのために王妃としての教養を小さい頃から学んで来たのよ。私も娘のように思っていたし」
「それは母上の考えであって、私の考えではありません。彼女には誰か相手を探してあげれば良いでしょう」
そう言って私の方を見るウィリアム王子。……前は普通に接する事が出来たのに、今では嫌悪感が湧いてくる。
「それにエリシアにも悪い話ではないよ?」
そう言ってニヤリと笑うウィリアム王子。一体何の話かしら?
「それはどういう事でしょうか?」
「髪色による差別の撤廃とかどう思う?」
「なっ!!」
私はウィリアム王子の言葉に我慢出来ず席を立ってしまった。国王陛下や王妃様、両親も驚いたように私を見てくる。
「戦争にも黒髪がいてね。ケイネス将軍が褒めていたからこの事を話したんだ。これには将軍も賛成してくれたんだ」
周りが困惑の表情を浮かべている中で、ウィリアム王子は話を進めていく。
「だけど、この話は自分には殆ど関係ないからね。自分の身内に関わった人がいないと、別にしなくても良いかなぁと思ったりもしているんだ。エリシア。僕の妻となって手伝ってくれないかい?」
……私が妻になる事で、レディウスみたいな思いをする子がいなくなるのかな? こう考えたら私の中でもう答えは決まっていた。
「……わかりました」
レディウスのような子を、これ以上生まないためには、髪色による差別を無くさないといけない。それをするためには相応の地位にいないと中々上手くはいかない。そのために王妃にならないといけないのならば私は……
◇◇◇
そう思っていたのだけれど、これはあまりにもヴィクトリア様に酷すぎるわ。みんなの前で発表するなんて。
「そ、それはどういう事でしょうか?」
翡翠色のドレスを着たヴィクトリア様。今にも涙を流しそうなのに、気丈に振る舞っている。
「今言った通りだ。彼女を私の妻とする。ヴィクトリア。君との婚約は破棄にさせてもらおう」
「そう……ですか……」
彼女はそのまま振り返って立ち去ってしまった。周りは騒然とする中、国王陛下が話をし、一応は祝勝会が始まったけど、話の内容は婚約の話ばかり。
私も色々な人に恨まれたでしょう。特にヴィクトリア様の父親であるセプテンバーム公爵には。ヴィクトリア様にも申し訳ない事をしたわ。でも、私の新しい目的のための犠牲になってもらうわ。
この時の選択を後悔する事になるとはこの時は何も思わずに、私はそう考えていた。
◇◇◇
え、ええっと、どうしたものか。俺の当たりが強すぎてどこか痛めたのだろうか。翡翠色のドレスを着た金髪の女性は、蹲りながら涙を流していた。
「だ、大丈夫ですか? どこか痛めたのでしょうか?」
俺がいくら尋ねようとも、女性は反応せずにそのまま蹲っている。本当にどうしようかと考えていたが、とりあえず、泣き止むまで待つ事にした。
周りには誰もいないし。1人にしておく事は出来ないからな。そんな風に待っていると
「……なんでずっと……ぐすっ……いるんですか!?」
泣きながら怒鳴られた。いや、泣いている女性を1人には出来ないだろう。
「私は今1人になりたいのです! どこかへ行ってください!」
「いや、泣いている女性を1人には出来ないでしょう。せめて落ち着くまでは……」
「余計なお世話です!」
そう言って立ち上がった女性は俺の横を通り過ぎてどこかへ走って行ってしまった。なんだよ、全く。こっちは心配しただけなのに。心配して損した……ん? 何か落っこちている。
「なんだこれ?」
俺はそれを拾って見るとそれはイヤリングのようだった。エメラルド色した綺麗な宝石があしらってある。宝石にはどこかの家系の紋章が刻まれている。さっきの女性が落としたのかな? 振り返って見るけど、既に姿は見えない。
うーん、どうしようか。俺にはどこの家かわからないし。明日もここに呼ばれているから、その時マグロスさんにでも聞いて見るか。
あ〜、腹減った。さっさと帰って早くご飯が食べたい。ロナたちも待っているだろうし。
……どうしてこうなったのかしら。
ブリタリス王国から帰還した兵士たちを労うための祝勝会で、ウィリアム王子が発した一言が今の発言。その事にどよめきの声を上げる貴族たち。
その中でも顔色変えて見てくるのが、ヴィクトリア様とその父親、ベルゼリクス・セプテンバーム公爵。2人は聞かされてなかったようね。本来であれば今隣にいるのはヴィクトリア様のはず。
それなのに私がいる事に驚いているところにこのウィリアム王子の発表。本当にどうしてこうなったのかしら。
◇◇◇
「私はエリシアを王妃として妻に迎えようと思う」
私が王宮に呼ばれて、ウィリアム王子や国王陛下に王妃様、私の両親がいる部屋に入った瞬間言われた言葉がこれだ。
その言葉に、国王陛下は苛立ちを隠せない様子だ。
「ウィリアム。何故急にそんな事を言い出す。お前にはヴィクトリアがいるだろう。王妃ではなくて側室ならわかるが……」
「そうですよウィリアム。もう一度考え直しなさい」
「父上、母上。何だ言われようとも私の考えは変わりません! それに急ではありませんよ。学園にエリシアが入学した時からです」
ウィリアム王子の気迫に押される国王陛下と王妃様。私の事を想ってくれていたのは嬉しいけど、私は恋愛対象としては見ていなかった。
「私は考えを変える気はありませんから。それに父上は私と約束したはずです。今回の戦争で手柄を立てれば、私の望みを叶えると」
「……うぅむ」
何て約束をしているの、この2人は。それに巻き込まれる私の身にもなってほしいわ。しかし、私の望みをわかるわけもなく
「ヴィクトリアはどうするのだ。王妃にしないのであれば、側室に置くべきだろう」
「はっきり言いますが、私は彼女が好みではありません。これについては前から言っていたはずですが、母上」
「そ、それはそうだけど、ヴィクトリアはあなたのために王妃としての教養を小さい頃から学んで来たのよ。私も娘のように思っていたし」
「それは母上の考えであって、私の考えではありません。彼女には誰か相手を探してあげれば良いでしょう」
そう言って私の方を見るウィリアム王子。……前は普通に接する事が出来たのに、今では嫌悪感が湧いてくる。
「それにエリシアにも悪い話ではないよ?」
そう言ってニヤリと笑うウィリアム王子。一体何の話かしら?
「それはどういう事でしょうか?」
「髪色による差別の撤廃とかどう思う?」
「なっ!!」
私はウィリアム王子の言葉に我慢出来ず席を立ってしまった。国王陛下や王妃様、両親も驚いたように私を見てくる。
「戦争にも黒髪がいてね。ケイネス将軍が褒めていたからこの事を話したんだ。これには将軍も賛成してくれたんだ」
周りが困惑の表情を浮かべている中で、ウィリアム王子は話を進めていく。
「だけど、この話は自分には殆ど関係ないからね。自分の身内に関わった人がいないと、別にしなくても良いかなぁと思ったりもしているんだ。エリシア。僕の妻となって手伝ってくれないかい?」
……私が妻になる事で、レディウスみたいな思いをする子がいなくなるのかな? こう考えたら私の中でもう答えは決まっていた。
「……わかりました」
レディウスのような子を、これ以上生まないためには、髪色による差別を無くさないといけない。それをするためには相応の地位にいないと中々上手くはいかない。そのために王妃にならないといけないのならば私は……
◇◇◇
そう思っていたのだけれど、これはあまりにもヴィクトリア様に酷すぎるわ。みんなの前で発表するなんて。
「そ、それはどういう事でしょうか?」
翡翠色のドレスを着たヴィクトリア様。今にも涙を流しそうなのに、気丈に振る舞っている。
「今言った通りだ。彼女を私の妻とする。ヴィクトリア。君との婚約は破棄にさせてもらおう」
「そう……ですか……」
彼女はそのまま振り返って立ち去ってしまった。周りは騒然とする中、国王陛下が話をし、一応は祝勝会が始まったけど、話の内容は婚約の話ばかり。
私も色々な人に恨まれたでしょう。特にヴィクトリア様の父親であるセプテンバーム公爵には。ヴィクトリア様にも申し訳ない事をしたわ。でも、私の新しい目的のための犠牲になってもらうわ。
この時の選択を後悔する事になるとはこの時は何も思わずに、私はそう考えていた。
◇◇◇
え、ええっと、どうしたものか。俺の当たりが強すぎてどこか痛めたのだろうか。翡翠色のドレスを着た金髪の女性は、蹲りながら涙を流していた。
「だ、大丈夫ですか? どこか痛めたのでしょうか?」
俺がいくら尋ねようとも、女性は反応せずにそのまま蹲っている。本当にどうしようかと考えていたが、とりあえず、泣き止むまで待つ事にした。
周りには誰もいないし。1人にしておく事は出来ないからな。そんな風に待っていると
「……なんでずっと……ぐすっ……いるんですか!?」
泣きながら怒鳴られた。いや、泣いている女性を1人には出来ないだろう。
「私は今1人になりたいのです! どこかへ行ってください!」
「いや、泣いている女性を1人には出来ないでしょう。せめて落ち着くまでは……」
「余計なお世話です!」
そう言って立ち上がった女性は俺の横を通り過ぎてどこかへ走って行ってしまった。なんだよ、全く。こっちは心配しただけなのに。心配して損した……ん? 何か落っこちている。
「なんだこれ?」
俺はそれを拾って見るとそれはイヤリングのようだった。エメラルド色した綺麗な宝石があしらってある。宝石にはどこかの家系の紋章が刻まれている。さっきの女性が落としたのかな? 振り返って見るけど、既に姿は見えない。
うーん、どうしようか。俺にはどこの家かわからないし。明日もここに呼ばれているから、その時マグロスさんにでも聞いて見るか。
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