黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
37話 到着
「はぁっ!」
「うおっ!」
俺はミストリーネさんの突きを剣で逸らす。相変わらず速い! 突きの隙を突こうにも、剣をすぐに手元に戻して、気がついたら突きの構えをしているので、突こうにも突けないのだ。
このままでは押し切られてしまうので、一旦距離を取る。その距離をミストリーネさんは詰めようとしてくるところを
「風切!」
斬撃を放つ。これで少しは余裕が……って思っていたが、ミストリーネさんはそのまま突っ込んで来た。そして見えない何かに阻まれる。
初めは気付かなかったが、あれは風魔法のウインドシールドだ。風の盾で魔闘眼をしなければ目には見えない。前に空中で跳んだ時も、ウインドシールドを踏み台にしてたみたいだ。
しかし、これでは時間稼ぎも出来ないぞ。気が付けば目の前にいるミストリーネさん。俺は怪我覚悟で剣を両手で持ち、肩に担ぐ様に構える。
剣に魔力を溜め、そしてミストリーネさんの突きを左に避ける。少しは右腕が切られたが予想の範囲内だ。俺はミストリーネさん目掛けて剣を振り下ろす。
「烈炎流大火山!」
「くっ!」
ミストリーネさんは左側に飛ぶ事で俺の剣を避けたが、俺の剣が地面にぶつかると同時に地面が爆発した。俺が放った技、大火山は剣に魔力を丸く溜めてぶつかった瞬間魔力を放出するというものだ。
これが地味に難しい。剣に沿って魔力を集めるのはなんとか出来るのだが、そこから違う形に魔力を集めて留めるのが難しいのだ。ミスったら自分の顔の近くで放出してしまうから危ないし。
俺の技で深さ10センチほどで幅1メートル程のクレーターが出来るが、そこにミストリーネさんの姿はなかった。そして
「これで終了です」
左目の死角からミストリーネさんの声が聞こえた。喉元には冷たい感覚が。
「先程の技は威力は大きいですが、隙が出来やすいですね。私の様に素早い相手には、中々当てる事は難しいでしょう」
「成る程ですね。少しでも怯めばと思っていたのですが」
「確かに普通の相手なら、先程の衝撃で怯んでいたでしょう。でも、私程になると魔法で防ぐのは容易です」
あっ、魔法の事をすっかり忘れていたな。自分が使えない分、注意しなければならないのに。
「でも、この2週間毎日相手をしていますが、レディウスさんには驚かされてばかりですね。全流派を覚えて、その上その年で旋風流を上級まで使いこなせるのですから」
「いや〜それ程でも〜」
こんな美人に褒められるなんて。思わずにやけてしまう。この1週間、毎日朝と夜にミストリーネさんに相手をしてもらったが、ミストレアさんとはまた違った雰囲気で良い訓練になった。
「レディウスが男でなくて女なら銀翼騎士団に誘ったのだがな」
そこに見学していたミレイアさんがそんな事を言ってくる。有り難い話だ。この人たちは髪の色関係なく実力で見てくれるからな。
「それに、カッコいい体してるしね〜。ミレイアのどストライクだもんね〜。傷のある体って〜」
そこにミレイアさんの隣で同じ様に見学をしていたシオンさんがそんな事を言ってくる。その言葉に顔を真っ赤にしてシオンさんを追いかけ回すミレイアさん。
他の団員の人たちも、初めは嫌々な感じがあったが、俺とミストレーネさんが打ち合っているのを見て態度が変わった。
この騎士団でミストリーネさんと打ち合あるのはミレイアさんぐらいしかいないらしい。シオンさんは魔法主体らしいから外れる。
「はい、レディウス」
「おっ、サンキュー」
俺がシオンさんを捕まえて頭をグリグリするミレイアさんを見ていると、アレスが汗拭き用の布を渡してくれる。俺はそれで汗を拭う。
「それでは出発の準備をしましょう。今日の昼には着く予定ですので、みなさん油断せずに」
ミストリーネさんが団員立ち向かって言う。団員のみんなは返事をしてそれぞれ動き出す。予定だと今日の昼には王都に辿り着く。
「アレス、もう少しだからな」
「……うん」
ミストリーネさんたちと一緒だったため、魔獣のほとんどは出会う前に団員の方が倒してくれたので、予定より1週間程早く辿り着く事が出来た。
アレスはお母さんを見るまで不安だろうが、もうすぐの辛抱だ。
それから、途中でウルフやゴブリンに出会い、それらを討伐しながら進んでいくと
「うお〜、でかい城だなぁ〜」
大きな城が見えてきた。高さは10メートル程ある門からでも見える程の高さだ。近くで見るとかなり大きいだろう。
「あれが陛下の住む王城だよ。僕でも数回しか入った事ないんだ」
そんなに厳しいのか。でも、王様が住む場所だからそんな簡単には入れないか。
王都に近づくとあちらこちらから王都に向かう馬車が見える。みんな王都に行くんだなぁ〜。そのまま進んで行くと、門の前で馬車の渋滞が見える。これはすごい数だ。全部で20台ぐらいはあるんじゃないか。
「ライルさん。この列には並ばず私たちの後をついて来てください」
そんな風に渋滞を見ていたら、ライルにそんな事をいうミストリーネさん。この渋滞に並ばなくてもいいの? そうは思うが、何か考えがあるのだろう。黙っておく。
話に聞くとここは一般用なので混みやすいそうだ。こことは別に貴族用もあるらしい。今は関係ないけど。
その間にも、ミストリーネさんが先頭に銀翼騎士団の人たちが並んでいる馬車の横をスイスイと進んで行く。
すると、ミストリーネさんに気が付いた門兵が、ミストリーネさんたちに敬礼をするではないか。馬車の相手をしている人以外みんな出て来た。
「ミストリーネ様! お勤めご苦労です!」
「はい。お疲れ様です。後ろの馬車は私たちの同行人なので身分は大丈夫です。そのまま通してください」
「わかりました!」
そしてミストリーネさんはそのまま門をくぐってしまう。その後に続く銀翼騎士団。こんな簡単で良いのかな? まあ、大丈夫なんだろう。銀翼騎士団の団長にもなると顔も覚えられているだろうし。
スイスイ進む銀翼騎士団の後にライルが後に続くように馬車を進める。うわぁ〜、大きい道だなぁ。馬車が片道3台走っているぞ。とんでもないな。
俺は初めて見る王都の中に見回す。他の街とは違う華やかさがあるな。おっ、あれは噴水とかいうやつでは。本で見たことあるぞ!
「凄いな、王都は!」
「はは、レディウスは王都は初めてなんだよね。僕は生まれが王都だから慣れちゃったけど」
俺の横でアレスがクスクスと笑う。うう、何だか恥ずかしくなったぞ。
「私も、ここに来るのは1年ぶりだわ。美味しいお菓子屋さんがあると良いのだけれど」
前に座るライネがそんな事を言う。ライネは甘党だからな。マイお菓子を持ち歩くぐらいだ。
そんな話をしながらも、俺とアレスは馬車を降りる。理由は、ライルとライネとはここでお別れだからだ。そこにミストリーネさんたちもやってきた。銀翼騎士団ともここまでだ。
「ミストリーネさん、この2週間ありがとうございました」
「いえ。私も楽しかったです。また会える事を楽しみにしています」
「募兵、受かれよ」
「じゃあねぇ〜」
そう言い馬を走らせるミストリーネさんたち。この2週間は本当にいい経験をした。俺も軍に入ればまた会う事もあるだろう。
今度は馬車の方を向き
「ありがとうなライル。ライネも」
「ああ。私こそありがとう。楽しかったよレディウス」
「鈍感は程々にしておきなさいよ。アレスもお母様、助かるといいわね」
「うん、ありがとうライネ!」
お別れの挨拶が済むと、ライルも馬車を走らせる。ライルたちは王国内外色々な場所をを移動するみたいだから、もう会えないかもしれないな。良い出会いだった。
ライルたちが見えなくなるまで見送ると
「さあ、行こうか」
「うん」
俺たちは歩き出す。目指すはアレスの家だ。
「うおっ!」
俺はミストリーネさんの突きを剣で逸らす。相変わらず速い! 突きの隙を突こうにも、剣をすぐに手元に戻して、気がついたら突きの構えをしているので、突こうにも突けないのだ。
このままでは押し切られてしまうので、一旦距離を取る。その距離をミストリーネさんは詰めようとしてくるところを
「風切!」
斬撃を放つ。これで少しは余裕が……って思っていたが、ミストリーネさんはそのまま突っ込んで来た。そして見えない何かに阻まれる。
初めは気付かなかったが、あれは風魔法のウインドシールドだ。風の盾で魔闘眼をしなければ目には見えない。前に空中で跳んだ時も、ウインドシールドを踏み台にしてたみたいだ。
しかし、これでは時間稼ぎも出来ないぞ。気が付けば目の前にいるミストリーネさん。俺は怪我覚悟で剣を両手で持ち、肩に担ぐ様に構える。
剣に魔力を溜め、そしてミストリーネさんの突きを左に避ける。少しは右腕が切られたが予想の範囲内だ。俺はミストリーネさん目掛けて剣を振り下ろす。
「烈炎流大火山!」
「くっ!」
ミストリーネさんは左側に飛ぶ事で俺の剣を避けたが、俺の剣が地面にぶつかると同時に地面が爆発した。俺が放った技、大火山は剣に魔力を丸く溜めてぶつかった瞬間魔力を放出するというものだ。
これが地味に難しい。剣に沿って魔力を集めるのはなんとか出来るのだが、そこから違う形に魔力を集めて留めるのが難しいのだ。ミスったら自分の顔の近くで放出してしまうから危ないし。
俺の技で深さ10センチほどで幅1メートル程のクレーターが出来るが、そこにミストリーネさんの姿はなかった。そして
「これで終了です」
左目の死角からミストリーネさんの声が聞こえた。喉元には冷たい感覚が。
「先程の技は威力は大きいですが、隙が出来やすいですね。私の様に素早い相手には、中々当てる事は難しいでしょう」
「成る程ですね。少しでも怯めばと思っていたのですが」
「確かに普通の相手なら、先程の衝撃で怯んでいたでしょう。でも、私程になると魔法で防ぐのは容易です」
あっ、魔法の事をすっかり忘れていたな。自分が使えない分、注意しなければならないのに。
「でも、この2週間毎日相手をしていますが、レディウスさんには驚かされてばかりですね。全流派を覚えて、その上その年で旋風流を上級まで使いこなせるのですから」
「いや〜それ程でも〜」
こんな美人に褒められるなんて。思わずにやけてしまう。この1週間、毎日朝と夜にミストリーネさんに相手をしてもらったが、ミストレアさんとはまた違った雰囲気で良い訓練になった。
「レディウスが男でなくて女なら銀翼騎士団に誘ったのだがな」
そこに見学していたミレイアさんがそんな事を言ってくる。有り難い話だ。この人たちは髪の色関係なく実力で見てくれるからな。
「それに、カッコいい体してるしね〜。ミレイアのどストライクだもんね〜。傷のある体って〜」
そこにミレイアさんの隣で同じ様に見学をしていたシオンさんがそんな事を言ってくる。その言葉に顔を真っ赤にしてシオンさんを追いかけ回すミレイアさん。
他の団員の人たちも、初めは嫌々な感じがあったが、俺とミストレーネさんが打ち合っているのを見て態度が変わった。
この騎士団でミストリーネさんと打ち合あるのはミレイアさんぐらいしかいないらしい。シオンさんは魔法主体らしいから外れる。
「はい、レディウス」
「おっ、サンキュー」
俺がシオンさんを捕まえて頭をグリグリするミレイアさんを見ていると、アレスが汗拭き用の布を渡してくれる。俺はそれで汗を拭う。
「それでは出発の準備をしましょう。今日の昼には着く予定ですので、みなさん油断せずに」
ミストリーネさんが団員立ち向かって言う。団員のみんなは返事をしてそれぞれ動き出す。予定だと今日の昼には王都に辿り着く。
「アレス、もう少しだからな」
「……うん」
ミストリーネさんたちと一緒だったため、魔獣のほとんどは出会う前に団員の方が倒してくれたので、予定より1週間程早く辿り着く事が出来た。
アレスはお母さんを見るまで不安だろうが、もうすぐの辛抱だ。
それから、途中でウルフやゴブリンに出会い、それらを討伐しながら進んでいくと
「うお〜、でかい城だなぁ〜」
大きな城が見えてきた。高さは10メートル程ある門からでも見える程の高さだ。近くで見るとかなり大きいだろう。
「あれが陛下の住む王城だよ。僕でも数回しか入った事ないんだ」
そんなに厳しいのか。でも、王様が住む場所だからそんな簡単には入れないか。
王都に近づくとあちらこちらから王都に向かう馬車が見える。みんな王都に行くんだなぁ〜。そのまま進んで行くと、門の前で馬車の渋滞が見える。これはすごい数だ。全部で20台ぐらいはあるんじゃないか。
「ライルさん。この列には並ばず私たちの後をついて来てください」
そんな風に渋滞を見ていたら、ライルにそんな事をいうミストリーネさん。この渋滞に並ばなくてもいいの? そうは思うが、何か考えがあるのだろう。黙っておく。
話に聞くとここは一般用なので混みやすいそうだ。こことは別に貴族用もあるらしい。今は関係ないけど。
その間にも、ミストリーネさんが先頭に銀翼騎士団の人たちが並んでいる馬車の横をスイスイと進んで行く。
すると、ミストリーネさんに気が付いた門兵が、ミストリーネさんたちに敬礼をするではないか。馬車の相手をしている人以外みんな出て来た。
「ミストリーネ様! お勤めご苦労です!」
「はい。お疲れ様です。後ろの馬車は私たちの同行人なので身分は大丈夫です。そのまま通してください」
「わかりました!」
そしてミストリーネさんはそのまま門をくぐってしまう。その後に続く銀翼騎士団。こんな簡単で良いのかな? まあ、大丈夫なんだろう。銀翼騎士団の団長にもなると顔も覚えられているだろうし。
スイスイ進む銀翼騎士団の後にライルが後に続くように馬車を進める。うわぁ〜、大きい道だなぁ。馬車が片道3台走っているぞ。とんでもないな。
俺は初めて見る王都の中に見回す。他の街とは違う華やかさがあるな。おっ、あれは噴水とかいうやつでは。本で見たことあるぞ!
「凄いな、王都は!」
「はは、レディウスは王都は初めてなんだよね。僕は生まれが王都だから慣れちゃったけど」
俺の横でアレスがクスクスと笑う。うう、何だか恥ずかしくなったぞ。
「私も、ここに来るのは1年ぶりだわ。美味しいお菓子屋さんがあると良いのだけれど」
前に座るライネがそんな事を言う。ライネは甘党だからな。マイお菓子を持ち歩くぐらいだ。
そんな話をしながらも、俺とアレスは馬車を降りる。理由は、ライルとライネとはここでお別れだからだ。そこにミストリーネさんたちもやってきた。銀翼騎士団ともここまでだ。
「ミストリーネさん、この2週間ありがとうございました」
「いえ。私も楽しかったです。また会える事を楽しみにしています」
「募兵、受かれよ」
「じゃあねぇ〜」
そう言い馬を走らせるミストリーネさんたち。この2週間は本当にいい経験をした。俺も軍に入ればまた会う事もあるだろう。
今度は馬車の方を向き
「ありがとうなライル。ライネも」
「ああ。私こそありがとう。楽しかったよレディウス」
「鈍感は程々にしておきなさいよ。アレスもお母様、助かるといいわね」
「うん、ありがとうライネ!」
お別れの挨拶が済むと、ライルも馬車を走らせる。ライルたちは王国内外色々な場所をを移動するみたいだから、もう会えないかもしれないな。良い出会いだった。
ライルたちが見えなくなるまで見送ると
「さあ、行こうか」
「うん」
俺たちは歩き出す。目指すはアレスの家だ。
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