黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
32話 VSコカトリス(2)
「ゴゴゴゲェ」
コカトリスは威嚇らしき音を立てながら俺たちを睨んで来る。尻尾の蛇たちもシュルシュル音を立てて威嚇してくる。
しかし、予想以上の硬さだったな。魔闘装をした剣でも、軽く切れただけだ。もっと深く切ろうと思ったら烈炎流じゃないと厳しいな。両断しようと思ったら魔闘装・極ぐらいか。
「ゴゴッ!」
俺とアレス、ロポが距離を取りながらコカトリスを伺っていると、コカトリスの喉が膨らみ石化毒を吐いて来た。しかもさっきみたいな単発ではなくて、量は1発1発少ないが、小さいのを連発で放って来る。
「くっ! ウォーターウォール!」
アレスは水の壁を出現させ、石化毒を防ぐ。ロポは軽やかに避けている。俺も岩の間をすり抜ける様に走る。ベチャベチャと岩にぶつかる音がする。ぶつかった箇所は、白く固まっていく。
「ゴゲェ!」
石化毒を吐いてもくらわない俺たちを見て、コカトリスは怒りの声を上げる。怒って攻撃が単調になってくれれば有り難いのだが、尻尾の蛇は落ち着いた様子でシュルシュルと音を出し続けている。
取り敢えずあの蛇をどうにかしたいな。シュルシュルシュルシュル鬱陶しいし。でも、さっき切った感覚だと蛇の方も極ぐらいでないと剣は通らないだろうな。
「ググゥ!」
すると、怒りの声を上げているコカトリスに向かってロポが迫る。そんなロポを1番危険だと思ったのか、コカトリスは全ての蛇をロポの方へ向わせた。これはチャンス!
コカトリスがロポに向いている内に、俺もコカトリスへ迫る。しかし
「ゴケッ!」
コカトリスの方が気付きやがった。再び石化毒を吐いて来る。しかも、吐きながら俺の方へ走って来るという器用な事をして。蛇たちはロポが接近してこない様に威嚇している様だ。俺は接近するのをやめて石化毒を避ける。
アレスの方をチラッと見ると、アレスはかなり集中している。強力な魔法を放とうとしているのだろう。コカトリスの注意を、今は無防備になっているアレスに向けさせるわけにはいかないな。
「こっちだ、風切!」
俺はコカトリスに向けて複数の斬撃を放つ。いくつもの斬撃がコカトリスに当たるが、コカトリスの皮膚をほんの僅かに傷つけるだけだ。ただ、当たる感覚はあるのか煩わしそうに体を揺すっている。
しかし、俺の斬撃が通らないのがわかったのか真っ直ぐ走って来る。後ろでロポが追いかけているが、蛇たちに邪魔をされて上手くいかない様だ。だけど好都合。
俺は再び風切を放つ。コカトリスもさっきくらっても大丈夫な物と考えているのだろう。避けるそぶりを全く見せない。
そのまま当たる斬撃。もちろんコカトリスには効かない。それでも俺は何発も放つ。コカトリスに近づいてもらうため何度も。あと少し。避けられない距離で……ここだ!
「烈炎流火鳥!」
風切と同じ動きだが、振りの大きさと魔力の量を多くする。そして再び斬撃を放つ。コカトリスは同じと思ってか真っ直ぐに走って来て、そして
「ゴゴゲッ!?」
コカトリスの体に斜めに大きく傷が出来る。コカトリスも予想外の痛みで大声で鳴き叫ぶ。その隙にロポが跳んで、コカトリスの後頭部を踏みつける。コカトリスは地面に顔から突っ込んで、潰れたような鳴き声をあげる。
「みんな離れて!」
そこにタイミング良くアレスが叫ぶ。魔法の準備ができた様だ。俺とロポは直様コカトリスから離れる。そして
「爆ぜろ、エクスプロージョン!」
アレスが叫ぶと同時に、コカトリスの上あたりが爆発した。うわっ! なんて威力だ。コカトリスを覆い尽くすほどの爆炎。空高く立ち昇る煙。これはかなりの威力だな。熱風が俺のところまで届いているぞ。
「はぁ、はぁ。こ、これでどうだ」
アレスは魔力を使い果たしたのか、顔を真っ青にして立っているのも辛そうだ。しかしこの威力ならコカトリスも……。そう思った瞬間
「ゴゲェェ!」
立ち込める煙の中からコカトリスが飛び出してきたのだ。蛇は二尾死んでいて、コカトリスも右目が潰れて、体から血が吹き出している。しかし怒りで痛みを感じないのか、アレスに向かって走る。
アレスは魔力枯渇で動けないのに! このままじゃまずい! 俺は魔闘脚を全開にして走り出す。ロポもコカトリスを止めようと走る。しかし、俺もロポもこのままじゃ間に合わない。だから
「逃げろぉぉ! アレス!」
俺はアレスに逃げるように叫ぶ。少しでも俺かロポの方に逃げて来れば、助けられると思ったからだ。だけど
「レディウス……」
アレスは苦笑いしながら首を横に振る。俺は手を伸ばしてアレスの名前を何度も呼ぶが
「グゲェェェエ!」
……届く事は無かった。コカトリスが頭を振り、鋭いトサカでアレスに切りかかったからだ。俺はそれを見ているしか出来なかった。
アレスはコカトリスのトサカで切り裂かれ吹き飛ぶ。地面を何度も跳ね、岩にぶつかりようやく止まる。アレスが倒れている地面が、すぐに真っ赤に染まって……
「アレスッ! てめぇぇぇ!」
俺はそれを見た瞬間、コカトリスに向かって走り出していた。全ての魔力を解放。纏全てを最大発動する。そしてコカトリスへ迫り、剣を振るう。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も剣を振るい、コカトリスを切っていく!
「うおぉぉぉぉぉ!」
俺の体が動く限り腕を動かす。体の筋肉がブチブチと音を立てるがそんなものは無視だ。目の前にいるこいつを殺すまで。
「ゴ、ゴゲゲ……」
コカトリスは傷だらけになるが、やられてばかりでなく、蛇が噛み付いたり、トサカで攻撃してくる。蛇の噛み付きは避け、トサカは剣で受け止める。
アレスの魔法でダメージを受けていたのだろう。トサカを剣で受けるとそのままトサカを切る事が出来た。しかし、トサカを切られた怒りで、暴れたコカトリスに蹴り飛ばされる。
「がはっ!」
俺は地面を転がり岩にぶつかりようやく止まった。
「げぼっ。はぁ、はぁ。痛えなあの野郎」
纏を全開に発動しているからか肋骨が折れたぐらいで済んだ。口の中は鉄の味がするが体はまだ動く。
俺は立ち上がり構える。左手をコカトリスに向けて伸ばし、右手に剣を持ち、弓を引く様に右手を引く。左足を前に出し走る準備をする。
「行くぞコカトリス!」
そしてそのままコカトリスへ向かって走り出す。コカトリスもこれで決める気なのだろう。叫びながら走って来る。
「旋風流奥義……」
俺は限界まで右腕を後ろに引く。狙うはコカトリスの頭。放つは神速の突き。
「ゴゲゲゲェ!」
「死突!」
コカトリスは口から特大の石化毒を吐く。俺はそれを避けずに迎え撃つ。コカトリスはそれを見て勝った気でいる様だが。
限界まで引いた右腕を解放する。放たれた神速の突きは、石化毒に当たった瞬間、俺にかかる事なく石化毒を吹き飛ばす。そしてコカトリスの頭へと吸い込まれる様に突き進む。
「はぁぁぁあ!」
グシャッ!
とコカトリスの頭を貫く。コカトリス頭の上半分を吹き飛ばしてしまった。頭を吹き飛ばされたコカトリスは、そのまま何歩か歩いて倒れる。
「はぁ、はぁ、ぐっ!」
倒れたコカトリスが動かないか確認していると全身が痛む。特に右腕がやばい。体は魔力枯渇で怠いし。だけど、こんなところでへたるわけにはいかない。俺はアレスの下へと向かう。
「グゥ……グゥ……」
ロポはアレスの持っていたポーションをかけていてくれた。修行の時もたまにかけてくれたもんな。ポーションは回復する物ってわかっているのだろう。
でも、アレスの持っていたポーションは普通のポーションだ。あまり回復速度が早くない。その上大怪我だとあまり効かないのだ。
俺もようやくアレスの側に寄って容態を確認すると、左手が肘下辺りで切れかけていて、脇腹はざっくりと切られていて血が止まらない状態だ。でも辛うじて息はしている。
アレスの魔法のおかげでコカトリスが弱っていて、トサカがボロボロだったからだろう。これが最初の状態だったら左腕どころか体も上と下で分かれていただろう。
「ロポありがとな。ミストレアさんに貰ったポーションを使おう」
ミストレアさんに3本貰ったハイポーションだ。これをかけると腕を引っ付ける事も出来る。ミストレアさんは普通に使っていたが、この前のギルドの時に初めて高い物だと知ったポーションもこれだ。
それを脇腹へかけて、左腕を引っ付けながらかける。脇腹の傷はすぐに塞がり、左腕も暫くしたら引っ付いた。
よ、良かったぁ。俺も何度か切られては引っ付けとした事があるが、他人のを見るは初めてだったから少し不安だった。苦しそうだったアレスの顔をも、心なしか和らいだ気がする。失った血は増えないから顔色は真っ青だけど。
俺は少しの間ロポにアレスを見てもらい、コカトリスの石化毒の喉袋を剥ぎ取る。この状況じゃあ他の部位は諦めるか。俺1人では限界があるし。
コカトリスの喉袋を剥ぎ終えると、アレスの下へ戻る。血まみれの服のままだと他の魔獣が寄って来るな。着替えさせるか。そう思った俺は、アレスを血溜まりから移動させる。ロポも後ろをついてくる。
体中が余りの痛みで悲鳴を上げているが我慢だ。この程度でハイポーションを使うわけにはいかないし。ポーションじゃあ効かないし。
血溜まりから少し離れた岩場に隠れる。ここなら直ぐには見つからないだろう。ロポに周りを警戒して貰っているし。着替えさせたら直ぐに移動するから、一時的ならここで十分だ。
「良し、着替えさせるか」
上も下も血塗れだ。まずは上を脱がせて、次は下着を脱がせる。って、なんでアレスは胸元に包帯巻いているんだ? どこか傷でも負っているのか?
だけど包帯も血塗れだ。どこか怪我していたなら開いていないか確認しないと。そう思った俺は包帯を解いていく。そして現れたものは
「な、何だよこれ……」
驚くべきものだった。
コカトリスは威嚇らしき音を立てながら俺たちを睨んで来る。尻尾の蛇たちもシュルシュル音を立てて威嚇してくる。
しかし、予想以上の硬さだったな。魔闘装をした剣でも、軽く切れただけだ。もっと深く切ろうと思ったら烈炎流じゃないと厳しいな。両断しようと思ったら魔闘装・極ぐらいか。
「ゴゴッ!」
俺とアレス、ロポが距離を取りながらコカトリスを伺っていると、コカトリスの喉が膨らみ石化毒を吐いて来た。しかもさっきみたいな単発ではなくて、量は1発1発少ないが、小さいのを連発で放って来る。
「くっ! ウォーターウォール!」
アレスは水の壁を出現させ、石化毒を防ぐ。ロポは軽やかに避けている。俺も岩の間をすり抜ける様に走る。ベチャベチャと岩にぶつかる音がする。ぶつかった箇所は、白く固まっていく。
「ゴゲェ!」
石化毒を吐いてもくらわない俺たちを見て、コカトリスは怒りの声を上げる。怒って攻撃が単調になってくれれば有り難いのだが、尻尾の蛇は落ち着いた様子でシュルシュルと音を出し続けている。
取り敢えずあの蛇をどうにかしたいな。シュルシュルシュルシュル鬱陶しいし。でも、さっき切った感覚だと蛇の方も極ぐらいでないと剣は通らないだろうな。
「ググゥ!」
すると、怒りの声を上げているコカトリスに向かってロポが迫る。そんなロポを1番危険だと思ったのか、コカトリスは全ての蛇をロポの方へ向わせた。これはチャンス!
コカトリスがロポに向いている内に、俺もコカトリスへ迫る。しかし
「ゴケッ!」
コカトリスの方が気付きやがった。再び石化毒を吐いて来る。しかも、吐きながら俺の方へ走って来るという器用な事をして。蛇たちはロポが接近してこない様に威嚇している様だ。俺は接近するのをやめて石化毒を避ける。
アレスの方をチラッと見ると、アレスはかなり集中している。強力な魔法を放とうとしているのだろう。コカトリスの注意を、今は無防備になっているアレスに向けさせるわけにはいかないな。
「こっちだ、風切!」
俺はコカトリスに向けて複数の斬撃を放つ。いくつもの斬撃がコカトリスに当たるが、コカトリスの皮膚をほんの僅かに傷つけるだけだ。ただ、当たる感覚はあるのか煩わしそうに体を揺すっている。
しかし、俺の斬撃が通らないのがわかったのか真っ直ぐ走って来る。後ろでロポが追いかけているが、蛇たちに邪魔をされて上手くいかない様だ。だけど好都合。
俺は再び風切を放つ。コカトリスもさっきくらっても大丈夫な物と考えているのだろう。避けるそぶりを全く見せない。
そのまま当たる斬撃。もちろんコカトリスには効かない。それでも俺は何発も放つ。コカトリスに近づいてもらうため何度も。あと少し。避けられない距離で……ここだ!
「烈炎流火鳥!」
風切と同じ動きだが、振りの大きさと魔力の量を多くする。そして再び斬撃を放つ。コカトリスは同じと思ってか真っ直ぐに走って来て、そして
「ゴゴゲッ!?」
コカトリスの体に斜めに大きく傷が出来る。コカトリスも予想外の痛みで大声で鳴き叫ぶ。その隙にロポが跳んで、コカトリスの後頭部を踏みつける。コカトリスは地面に顔から突っ込んで、潰れたような鳴き声をあげる。
「みんな離れて!」
そこにタイミング良くアレスが叫ぶ。魔法の準備ができた様だ。俺とロポは直様コカトリスから離れる。そして
「爆ぜろ、エクスプロージョン!」
アレスが叫ぶと同時に、コカトリスの上あたりが爆発した。うわっ! なんて威力だ。コカトリスを覆い尽くすほどの爆炎。空高く立ち昇る煙。これはかなりの威力だな。熱風が俺のところまで届いているぞ。
「はぁ、はぁ。こ、これでどうだ」
アレスは魔力を使い果たしたのか、顔を真っ青にして立っているのも辛そうだ。しかしこの威力ならコカトリスも……。そう思った瞬間
「ゴゲェェ!」
立ち込める煙の中からコカトリスが飛び出してきたのだ。蛇は二尾死んでいて、コカトリスも右目が潰れて、体から血が吹き出している。しかし怒りで痛みを感じないのか、アレスに向かって走る。
アレスは魔力枯渇で動けないのに! このままじゃまずい! 俺は魔闘脚を全開にして走り出す。ロポもコカトリスを止めようと走る。しかし、俺もロポもこのままじゃ間に合わない。だから
「逃げろぉぉ! アレス!」
俺はアレスに逃げるように叫ぶ。少しでも俺かロポの方に逃げて来れば、助けられると思ったからだ。だけど
「レディウス……」
アレスは苦笑いしながら首を横に振る。俺は手を伸ばしてアレスの名前を何度も呼ぶが
「グゲェェェエ!」
……届く事は無かった。コカトリスが頭を振り、鋭いトサカでアレスに切りかかったからだ。俺はそれを見ているしか出来なかった。
アレスはコカトリスのトサカで切り裂かれ吹き飛ぶ。地面を何度も跳ね、岩にぶつかりようやく止まる。アレスが倒れている地面が、すぐに真っ赤に染まって……
「アレスッ! てめぇぇぇ!」
俺はそれを見た瞬間、コカトリスに向かって走り出していた。全ての魔力を解放。纏全てを最大発動する。そしてコカトリスへ迫り、剣を振るう。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も剣を振るい、コカトリスを切っていく!
「うおぉぉぉぉぉ!」
俺の体が動く限り腕を動かす。体の筋肉がブチブチと音を立てるがそんなものは無視だ。目の前にいるこいつを殺すまで。
「ゴ、ゴゲゲ……」
コカトリスは傷だらけになるが、やられてばかりでなく、蛇が噛み付いたり、トサカで攻撃してくる。蛇の噛み付きは避け、トサカは剣で受け止める。
アレスの魔法でダメージを受けていたのだろう。トサカを剣で受けるとそのままトサカを切る事が出来た。しかし、トサカを切られた怒りで、暴れたコカトリスに蹴り飛ばされる。
「がはっ!」
俺は地面を転がり岩にぶつかりようやく止まった。
「げぼっ。はぁ、はぁ。痛えなあの野郎」
纏を全開に発動しているからか肋骨が折れたぐらいで済んだ。口の中は鉄の味がするが体はまだ動く。
俺は立ち上がり構える。左手をコカトリスに向けて伸ばし、右手に剣を持ち、弓を引く様に右手を引く。左足を前に出し走る準備をする。
「行くぞコカトリス!」
そしてそのままコカトリスへ向かって走り出す。コカトリスもこれで決める気なのだろう。叫びながら走って来る。
「旋風流奥義……」
俺は限界まで右腕を後ろに引く。狙うはコカトリスの頭。放つは神速の突き。
「ゴゲゲゲェ!」
「死突!」
コカトリスは口から特大の石化毒を吐く。俺はそれを避けずに迎え撃つ。コカトリスはそれを見て勝った気でいる様だが。
限界まで引いた右腕を解放する。放たれた神速の突きは、石化毒に当たった瞬間、俺にかかる事なく石化毒を吹き飛ばす。そしてコカトリスの頭へと吸い込まれる様に突き進む。
「はぁぁぁあ!」
グシャッ!
とコカトリスの頭を貫く。コカトリス頭の上半分を吹き飛ばしてしまった。頭を吹き飛ばされたコカトリスは、そのまま何歩か歩いて倒れる。
「はぁ、はぁ、ぐっ!」
倒れたコカトリスが動かないか確認していると全身が痛む。特に右腕がやばい。体は魔力枯渇で怠いし。だけど、こんなところでへたるわけにはいかない。俺はアレスの下へと向かう。
「グゥ……グゥ……」
ロポはアレスの持っていたポーションをかけていてくれた。修行の時もたまにかけてくれたもんな。ポーションは回復する物ってわかっているのだろう。
でも、アレスの持っていたポーションは普通のポーションだ。あまり回復速度が早くない。その上大怪我だとあまり効かないのだ。
俺もようやくアレスの側に寄って容態を確認すると、左手が肘下辺りで切れかけていて、脇腹はざっくりと切られていて血が止まらない状態だ。でも辛うじて息はしている。
アレスの魔法のおかげでコカトリスが弱っていて、トサカがボロボロだったからだろう。これが最初の状態だったら左腕どころか体も上と下で分かれていただろう。
「ロポありがとな。ミストレアさんに貰ったポーションを使おう」
ミストレアさんに3本貰ったハイポーションだ。これをかけると腕を引っ付ける事も出来る。ミストレアさんは普通に使っていたが、この前のギルドの時に初めて高い物だと知ったポーションもこれだ。
それを脇腹へかけて、左腕を引っ付けながらかける。脇腹の傷はすぐに塞がり、左腕も暫くしたら引っ付いた。
よ、良かったぁ。俺も何度か切られては引っ付けとした事があるが、他人のを見るは初めてだったから少し不安だった。苦しそうだったアレスの顔をも、心なしか和らいだ気がする。失った血は増えないから顔色は真っ青だけど。
俺は少しの間ロポにアレスを見てもらい、コカトリスの石化毒の喉袋を剥ぎ取る。この状況じゃあ他の部位は諦めるか。俺1人では限界があるし。
コカトリスの喉袋を剥ぎ終えると、アレスの下へ戻る。血まみれの服のままだと他の魔獣が寄って来るな。着替えさせるか。そう思った俺は、アレスを血溜まりから移動させる。ロポも後ろをついてくる。
体中が余りの痛みで悲鳴を上げているが我慢だ。この程度でハイポーションを使うわけにはいかないし。ポーションじゃあ効かないし。
血溜まりから少し離れた岩場に隠れる。ここなら直ぐには見つからないだろう。ロポに周りを警戒して貰っているし。着替えさせたら直ぐに移動するから、一時的ならここで十分だ。
「良し、着替えさせるか」
上も下も血塗れだ。まずは上を脱がせて、次は下着を脱がせる。って、なんでアレスは胸元に包帯巻いているんだ? どこか傷でも負っているのか?
だけど包帯も血塗れだ。どこか怪我していたなら開いていないか確認しないと。そう思った俺は包帯を解いていく。そして現れたものは
「な、何だよこれ……」
驚くべきものだった。
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