黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
23話 紅蓮の魔女
王都アルバスト
王立学園
「ねぇ、あれってもしかして……」
「ええ。あの人がこの学園で初めて飛び級した人よ」
「うわぁ〜、とっても綺麗ぃ」
「お姉様って呼びたいわ」
周りから様々な声が聞こえる。でも、どの声も私の声には響かない。
「お待ちくださいエリシア様」
私は直ぐにこの場を去ろうとしたけど、目の前に金髪の男が立ち塞がる。確か、侯爵家の長男だったかしら。
「何の用かしら?」
「お呼び止めして申し訳ございません。本日我が家でパーティーがありましてもしよろしければ……」
「興味ないわ」
私はそのままその男の横を過ぎていく。男はえっ? 不思議そうな顔をしてから、振り返って私を呼ぶけど、私は無視して教室へ行く。
「やあ、遅かったじゃないか?」
教室に入って私にそう話しかけてくるのはウィリアム王子だ。周りにはグラモアさんとフェリエンスさんもいる。いつも一緒にいるわね。
「ちょっと用事がありまして」
はぁ。本当はため息を吐きたいけど、笑顔で誤魔化す。本来なら1つ上のウィリアム王子たちなんでけど、今は同じ教室で授業を受けている。
理由は、私が飛び級したからだ。レディウスが亡くなってから3年が経つ。初めの頃は、時折レディウスの悪口を言う人たちがいた。
だからそれを黙らす為に私は努力した。勉学、魔法、剣術。剣術はあまり向いていなかったみたいだけど、魔法だけはもう学園では負けなしだ。そのおかげもあって学園初の飛び級をして今に至る。
私は火属性の魔法ばかり使うからか、2年生になったあたりから『紅蓮の魔女』って呼ばれる様になった。まあ、そのおかげでレディウスを馬鹿にする声も聞こえなくなったのだけれど。
逆に私に話しかける人は増えたわね。女生徒は何故か私の事を「お姉様」って呼ぶし、男生徒は私に告白してくる人ばかり。お姉様呼びは、まあ許して、告白は全部断っているのだけれど。
私は、そのまま自分の席に着く。早く授業終わらないかな。早く師匠の下で修行がしたい。そんな事を考えていたら周りがざわざわしているのに気がつく。
何だろうかと、辺りを見回すと、入り口から1人の女性と、2人のメイドが入ってくる。
金髪のふわふわした髪をしていて、それが腰までの長さがある。目尻は下がっていて、柔らかそうな印象を持たせる。胸は服を物凄く押し上げるほど大きく、腰は折れそうなぐらい細い。誰もが振り返る程の美しさがある女性。
ウィリアム王子の婚約者、未来の王妃のヴィクトリア様だ。セプテンバーム公爵家の長女で、生まれた時にもう婚約者って決まっていたらしい。
「ウィリアム様。おやすみ時間中失礼します」
「……なんだ」
ヴィクトリア様が用事があったのはウィリアム王子みたい。まあ、婚約者なのだから当たり前よね。でも、ウィリアム王子はどこか機嫌が悪そう。
「今日は王宮で週末に行われるパーティーで私が着るドレスを一緒に選ぶ様にと王妃様が……」
「何故、私がそんなものに付き合わなくてはならない。母上にも行かないと申したはずだ」
「そ、それは、そうなのですが……」
「要件はそれだけか? ならもういいだろ。私も休んでいるのだ」
「……も、申し訳、ございません」
ヴィクトリア様はウィリアム王子に謝って教室を出て行ってしまった。出て行く前に後ろに付いていたメイドの1人が私を睨んで来たけど。
最近の噂は本当だったのね。ウィリアム王子とヴィクトリア様の仲が悪いって。その原因が私にあるっていうとんでもない噂。私はなんとも思ってなくて、ウィリアム王子が話しかけてくるだけなのに。
「全く、せっかくの休み時間に。そうだ、エミリア。もしよければ今日の放課後ドレスを見に行かないか? 週末のパーティーに着て行くドレスを」
……私の耳はおかしくなったのかしら。さっきウィリアム王子は、ヴィクトリア様のドレスを選ぶのを断ったはずよね? それなのに私のドレスを選ぶ?
「……先ほどヴィクトリア様とのお約束を断ったのですよね? 何か用事があるのでは?」
私が尋ねると
「何、さっきのは気にしなくて良い。私とヴィクトリアはどうやら趣味が合わなくてな。私は赤色とかが好きなのだが、ヴィクトリアは緑などしか着なくてな。どうせ決まっているから選ぶ必要はないのだ。そんな事より、エミリアは本当に赤色が似合う!」
「そうだな。前のパーティーの時も似合っていたし」
「ええ。あれは綺麗でしたね」
「良し、今日は王国一の服飾店へ行き、エミリアの服を選ぼう。何お金はもちろん私が払うから気にしなくて良いぞ!」
ニコニコとした顔で私をみてくるウィリアム王子。どうして私の知らないところで話か進んでいるのかしら。私は行くとは言っていないし、行くつもりもないのに。
だけど、こうなったウィリアム王子を止める事は出来ない。最終的に命令されたら逆らえないから。はぁ。こういう事しているから変な噂が立つのよね。
まあ、後1年で卒業。卒業したらこの国を出る予定だから良いのだけれど。後継にはバルトがいるし、今男爵家は結構稼いでいるみたいだし。私がいなくなっても良いでしょう。
私はレディウスがなれなかった冒険者になって、レディウスの代わりに世界を回るのだから。
王立学園
「ねぇ、あれってもしかして……」
「ええ。あの人がこの学園で初めて飛び級した人よ」
「うわぁ〜、とっても綺麗ぃ」
「お姉様って呼びたいわ」
周りから様々な声が聞こえる。でも、どの声も私の声には響かない。
「お待ちくださいエリシア様」
私は直ぐにこの場を去ろうとしたけど、目の前に金髪の男が立ち塞がる。確か、侯爵家の長男だったかしら。
「何の用かしら?」
「お呼び止めして申し訳ございません。本日我が家でパーティーがありましてもしよろしければ……」
「興味ないわ」
私はそのままその男の横を過ぎていく。男はえっ? 不思議そうな顔をしてから、振り返って私を呼ぶけど、私は無視して教室へ行く。
「やあ、遅かったじゃないか?」
教室に入って私にそう話しかけてくるのはウィリアム王子だ。周りにはグラモアさんとフェリエンスさんもいる。いつも一緒にいるわね。
「ちょっと用事がありまして」
はぁ。本当はため息を吐きたいけど、笑顔で誤魔化す。本来なら1つ上のウィリアム王子たちなんでけど、今は同じ教室で授業を受けている。
理由は、私が飛び級したからだ。レディウスが亡くなってから3年が経つ。初めの頃は、時折レディウスの悪口を言う人たちがいた。
だからそれを黙らす為に私は努力した。勉学、魔法、剣術。剣術はあまり向いていなかったみたいだけど、魔法だけはもう学園では負けなしだ。そのおかげもあって学園初の飛び級をして今に至る。
私は火属性の魔法ばかり使うからか、2年生になったあたりから『紅蓮の魔女』って呼ばれる様になった。まあ、そのおかげでレディウスを馬鹿にする声も聞こえなくなったのだけれど。
逆に私に話しかける人は増えたわね。女生徒は何故か私の事を「お姉様」って呼ぶし、男生徒は私に告白してくる人ばかり。お姉様呼びは、まあ許して、告白は全部断っているのだけれど。
私は、そのまま自分の席に着く。早く授業終わらないかな。早く師匠の下で修行がしたい。そんな事を考えていたら周りがざわざわしているのに気がつく。
何だろうかと、辺りを見回すと、入り口から1人の女性と、2人のメイドが入ってくる。
金髪のふわふわした髪をしていて、それが腰までの長さがある。目尻は下がっていて、柔らかそうな印象を持たせる。胸は服を物凄く押し上げるほど大きく、腰は折れそうなぐらい細い。誰もが振り返る程の美しさがある女性。
ウィリアム王子の婚約者、未来の王妃のヴィクトリア様だ。セプテンバーム公爵家の長女で、生まれた時にもう婚約者って決まっていたらしい。
「ウィリアム様。おやすみ時間中失礼します」
「……なんだ」
ヴィクトリア様が用事があったのはウィリアム王子みたい。まあ、婚約者なのだから当たり前よね。でも、ウィリアム王子はどこか機嫌が悪そう。
「今日は王宮で週末に行われるパーティーで私が着るドレスを一緒に選ぶ様にと王妃様が……」
「何故、私がそんなものに付き合わなくてはならない。母上にも行かないと申したはずだ」
「そ、それは、そうなのですが……」
「要件はそれだけか? ならもういいだろ。私も休んでいるのだ」
「……も、申し訳、ございません」
ヴィクトリア様はウィリアム王子に謝って教室を出て行ってしまった。出て行く前に後ろに付いていたメイドの1人が私を睨んで来たけど。
最近の噂は本当だったのね。ウィリアム王子とヴィクトリア様の仲が悪いって。その原因が私にあるっていうとんでもない噂。私はなんとも思ってなくて、ウィリアム王子が話しかけてくるだけなのに。
「全く、せっかくの休み時間に。そうだ、エミリア。もしよければ今日の放課後ドレスを見に行かないか? 週末のパーティーに着て行くドレスを」
……私の耳はおかしくなったのかしら。さっきウィリアム王子は、ヴィクトリア様のドレスを選ぶのを断ったはずよね? それなのに私のドレスを選ぶ?
「……先ほどヴィクトリア様とのお約束を断ったのですよね? 何か用事があるのでは?」
私が尋ねると
「何、さっきのは気にしなくて良い。私とヴィクトリアはどうやら趣味が合わなくてな。私は赤色とかが好きなのだが、ヴィクトリアは緑などしか着なくてな。どうせ決まっているから選ぶ必要はないのだ。そんな事より、エミリアは本当に赤色が似合う!」
「そうだな。前のパーティーの時も似合っていたし」
「ええ。あれは綺麗でしたね」
「良し、今日は王国一の服飾店へ行き、エミリアの服を選ぼう。何お金はもちろん私が払うから気にしなくて良いぞ!」
ニコニコとした顔で私をみてくるウィリアム王子。どうして私の知らないところで話か進んでいるのかしら。私は行くとは言っていないし、行くつもりもないのに。
だけど、こうなったウィリアム王子を止める事は出来ない。最終的に命令されたら逆らえないから。はぁ。こういう事しているから変な噂が立つのよね。
まあ、後1年で卒業。卒業したらこの国を出る予定だから良いのだけれど。後継にはバルトがいるし、今男爵家は結構稼いでいるみたいだし。私がいなくなっても良いでしょう。
私はレディウスがなれなかった冒険者になって、レディウスの代わりに世界を回るのだから。
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コメント
ウォン
EMTやんけ
ノベルバユーザー232154
エリシアがエミリアになっているヶ所があります。