黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
13話 流派
僕はヘレネーさんに手渡された剣を抜く。母上に頂いた剣より少し刃渡りが短いけど、それでも80ぐらいか。久しぶりの剣の感触に思わず頰が緩んでしまう。
「なんだい? 剣を持つのがそんなに嬉しいのかい?」
「はい。母上に最初で最後に貰ったものが剣だったんです。それからは独学だったんですが、嬉しくて毎日振っていましたね」
僕はそう言い剣を上から下は振り下ろす。剣を振り下ろすたび、シュン! シュン! と音が鳴り、空気が切れる感触が気持ちいい。
「へぇ、迷いのないいい振りだ。これなら教え甲斐があるねぇ。まず初めに、この大陸にある流派について教えておこう。この大陸の剣術には大きく分けて3つの流派がある。1つは烈炎流。この流派は防御をせず、何もかもを斬り伏せるという力で押す流派だ」
そう言いながらミストレアさんは剣を上段に構え、一気に振り下ろす。すると
ドガァンッ! ガガガガガァッ!
と地面が爆発した。……え? そして爆発したと思ったら数十メートル程斬撃が飛び、地面が抉れる。こ、これが剣術なのか?
「まあ、ここまで極端では無いよ。精々、1メートルほどのクレーターが出来て、10メートル程懺悔が飛ぶぐらいだ」
いや、それだけでも十分凄いのだけれど。
「それからこの流派はヘレネーが使う流派だ。覚えときな」
僕はえっ!? と思いヘレネーさんの方を見る。すると
「な、何よ! 私がこの流派使ったら悪い?」
「い、いや、全く悪く無いです」
確かに相性などは人それぞれだ。でも、斬撃を飛ばすかぁ〜。かっこいいなそれ。僕も斬撃を飛ばしてみたい。剣を振るった瞬間斬撃を放ち、敵を薙ぎ払っていく。うん、良いね。
「今、大陸で最も門下が多いのがこの流派だね。そして2つ目が旋風流。こちらは烈炎流に比べると、攻撃力は劣るのだが、素早さには定評がある。まあ、速度重視と思って貰えばいい」
そしてミストレアさんは、剣を持つ右腕を引き、左手を僕に向け前に出す。まるで弓を放つかのように……。
「しっ!」
そう思った瞬間、ミストレアさんが目の前に一瞬で現れ、神速の突きを放つ。ビュオンッ! と剣が突き抜ける音が、僕の左耳の側を通り過ぎる。
……ダラダラダラダラと冷や汗が流れてきたぞ。速すぎてわからなかった。凄過ぎる。そのまま何事も無かったかのように戻るミストレアさん。なんか言ってくださいよ。
でも速度で翻弄して、敵を欺き倒すっていうのも良いかも。敵が1回の攻撃の間に僕は複数回攻撃出来たら中々良いんじゃない?
「そして最後の明水流だ。この流派は防御重視の流派で、自分から攻撃するというのはあまり無い。基本は相手の攻撃を待ち、その攻撃を返すと言った感じだ。ヘレネー、私に攻撃してきな」
「はい、お婆様」
ヘレネーさんは腰に下げていた剣を抜き、剣を上段に構える。そして
「はぁああっ!」
ヘレネーさんがミストレアさんに斬りかかる。だけどヘレネーさんが放つ強烈な振り落としを涼しい顔して逸らす。ヘレネーさんは幾重にも攻撃するが、当たるどころか掠る気配すらしない。そして
カァーン!
とヘレネーさんの剣が弾かれる。ミストレアさんの剣はいつの間にかヘレネーさんの喉元へと向けられていた。
「これが明水流。敵の攻撃を受け流し、隙を見つけて反撃をする。言うのは簡単だがするとなると中々難しい。そのため門下も1番少ない流派だ」
ほえ〜、これはまた難しそうな技術だ。敵の攻撃を受け流すなんてそう簡単に出来るものではない。力を受け過ぎるとそれはただの防御だし、全て避けてしまうとそれはだだの避けだ。
相手の力を流しながら、その受け流した力を利用して攻撃に転ずる。確かに難しそうだ。
「攻の烈炎流、速の旋風流、守の明水流。これが大陸にある大きな流派だ。後のものは、これらの流派から派生したものばかりだね」
そう言いながらも少し落胆した表情を見せるミストレアさん。どうかしたのだろうか?
「どうしたんです、ミストレアさん?」
「ん? ああ、ちょっとね。昔はどの流派も纏をしっかりと教えていたんだ。だけど最近はあまり詳しくはやらなくてねぇ。レディウスも纏について知らず、身体強化は知っていただろう?」
ミストレアさんが聞いてくるので僕は頷く。確かに僕も初めて姉上に魔法を教えてもらった時は、纏なんて言葉は一言も出て来なかった。
姉上から教えてもらったのは、体に魔力を流すことで身体の能力が上がる事だけ。後は魔力の流す量を増やせば、それに応じて能力も上がるとだけかな。
「理由は、纏を習得するのが難しいからだ。みんなが身体強化と言う魔鎧ですら均等にしようと思えば1週間そこらは最低でも掛かる。それなのにそこから魔闘拳などを覚えようと思えば剣術どころではなくなるからね」
その分覚えればかなり強くなれるのだが、とミストレアさんは言う。
「それじゃあ、今の流派はどうしているのです?」
「今の流派は属性魔法でそれらを補っている」
属性魔法で補っている? どう言う事だろうか?
「例えば、烈炎流を使おうと思えば、魔闘装をする代わりに火属性魔法のフレイムエンチャントを行えばいい」
そう言いながらミストレアさんは剣にそのフレイムエンチャントとやらを行う。すると剣に炎が纏い出すではないか。そのまま剣を振るとドォン! と地面が爆発する。なるほどなぁ〜。
「こちらの方が魔法を習得すれば早いからねぇ」
「なるほど。まあ、魔法が使えない僕には関係ない話ですけど」
そんな事よりも早く色々と教えて欲しい。どの流派が僕に合っているのかはまだわからないけど、どの流派を覚えたとしても、僕のためになると思う。
「そうだな。レディウスには関係ない話だったね。後、纏を覚える利点とすれば、エンチャントに比べて魔力消費を抑える事が出来、発動速度もエンチャントより速くなる」
魔力消費を抑えるか。確かにそれは重要だ。魔力の量は使えば減ってしまう。使えば魔力量の限界は上がるけど、それにも限度がある。
その限度を超えて使ってしまうと、気を失ってしまうと姉上が教えてくれた。
発動速度もエンチャントより速く出来るなら、戦闘にも有利になるのではないか。
「それってエンチャントをした時と比べて、どのくらい違うのですか?」
「魔力消費だと、エンチャントとをした時に比べて半分程には抑えられるかね。発動速度もそのくらいだ。理由としては、纏、魔闘装は魔力を通すだけだけど、エンチャントは魔法を付与するのに、魔法を発動、武器に付与と2回行程を踏まなければならいからね」
なるほどな〜。それは今後重要になってくると思うから覚えておこう。メモメモ。
「それでもエンチャントを教えるのは、楽という理由とは別に見栄えもあるからね」
確かに、さっきミストレアさんが剣に炎を纏わせた時は格好良かった。僕も魔法が使えていたら、エンチャントを覚えていたかもしれない。まあ、今は纏の方が興味はあるけど。
「それで、レディウスが覚える流派に移るけど、どの流派が良いとかあるかい? 私はどの流派も免許皆伝しているからどれでも教えられるよ」
……はっ? 物凄く簡単に言うけど、とんでもなく凄い事だよな。全部の流派を免許皆伝? 道場開いたら人がかなり集まるんじゃあ……。
「お婆様は凄いでしょ! この3つの流派を使いこなして冒険者として色々な依頼をこなしてきたから、今では『魔剣王』って呼ばれているんだから!」
弾かれた剣を取って戻ってきていたヘレネーさんが胸を張ってそう言う。確か、ヘレネーさんと初めて話した時に場所を聞いたら、魔剣王ミストレアの家だ、って言っていたっけ。
でも、どの流派でも教えられるのなら僕は。
「なら僕が教えて貰いたい流派は……」
「なんだい? 剣を持つのがそんなに嬉しいのかい?」
「はい。母上に最初で最後に貰ったものが剣だったんです。それからは独学だったんですが、嬉しくて毎日振っていましたね」
僕はそう言い剣を上から下は振り下ろす。剣を振り下ろすたび、シュン! シュン! と音が鳴り、空気が切れる感触が気持ちいい。
「へぇ、迷いのないいい振りだ。これなら教え甲斐があるねぇ。まず初めに、この大陸にある流派について教えておこう。この大陸の剣術には大きく分けて3つの流派がある。1つは烈炎流。この流派は防御をせず、何もかもを斬り伏せるという力で押す流派だ」
そう言いながらミストレアさんは剣を上段に構え、一気に振り下ろす。すると
ドガァンッ! ガガガガガァッ!
と地面が爆発した。……え? そして爆発したと思ったら数十メートル程斬撃が飛び、地面が抉れる。こ、これが剣術なのか?
「まあ、ここまで極端では無いよ。精々、1メートルほどのクレーターが出来て、10メートル程懺悔が飛ぶぐらいだ」
いや、それだけでも十分凄いのだけれど。
「それからこの流派はヘレネーが使う流派だ。覚えときな」
僕はえっ!? と思いヘレネーさんの方を見る。すると
「な、何よ! 私がこの流派使ったら悪い?」
「い、いや、全く悪く無いです」
確かに相性などは人それぞれだ。でも、斬撃を飛ばすかぁ〜。かっこいいなそれ。僕も斬撃を飛ばしてみたい。剣を振るった瞬間斬撃を放ち、敵を薙ぎ払っていく。うん、良いね。
「今、大陸で最も門下が多いのがこの流派だね。そして2つ目が旋風流。こちらは烈炎流に比べると、攻撃力は劣るのだが、素早さには定評がある。まあ、速度重視と思って貰えばいい」
そしてミストレアさんは、剣を持つ右腕を引き、左手を僕に向け前に出す。まるで弓を放つかのように……。
「しっ!」
そう思った瞬間、ミストレアさんが目の前に一瞬で現れ、神速の突きを放つ。ビュオンッ! と剣が突き抜ける音が、僕の左耳の側を通り過ぎる。
……ダラダラダラダラと冷や汗が流れてきたぞ。速すぎてわからなかった。凄過ぎる。そのまま何事も無かったかのように戻るミストレアさん。なんか言ってくださいよ。
でも速度で翻弄して、敵を欺き倒すっていうのも良いかも。敵が1回の攻撃の間に僕は複数回攻撃出来たら中々良いんじゃない?
「そして最後の明水流だ。この流派は防御重視の流派で、自分から攻撃するというのはあまり無い。基本は相手の攻撃を待ち、その攻撃を返すと言った感じだ。ヘレネー、私に攻撃してきな」
「はい、お婆様」
ヘレネーさんは腰に下げていた剣を抜き、剣を上段に構える。そして
「はぁああっ!」
ヘレネーさんがミストレアさんに斬りかかる。だけどヘレネーさんが放つ強烈な振り落としを涼しい顔して逸らす。ヘレネーさんは幾重にも攻撃するが、当たるどころか掠る気配すらしない。そして
カァーン!
とヘレネーさんの剣が弾かれる。ミストレアさんの剣はいつの間にかヘレネーさんの喉元へと向けられていた。
「これが明水流。敵の攻撃を受け流し、隙を見つけて反撃をする。言うのは簡単だがするとなると中々難しい。そのため門下も1番少ない流派だ」
ほえ〜、これはまた難しそうな技術だ。敵の攻撃を受け流すなんてそう簡単に出来るものではない。力を受け過ぎるとそれはただの防御だし、全て避けてしまうとそれはだだの避けだ。
相手の力を流しながら、その受け流した力を利用して攻撃に転ずる。確かに難しそうだ。
「攻の烈炎流、速の旋風流、守の明水流。これが大陸にある大きな流派だ。後のものは、これらの流派から派生したものばかりだね」
そう言いながらも少し落胆した表情を見せるミストレアさん。どうかしたのだろうか?
「どうしたんです、ミストレアさん?」
「ん? ああ、ちょっとね。昔はどの流派も纏をしっかりと教えていたんだ。だけど最近はあまり詳しくはやらなくてねぇ。レディウスも纏について知らず、身体強化は知っていただろう?」
ミストレアさんが聞いてくるので僕は頷く。確かに僕も初めて姉上に魔法を教えてもらった時は、纏なんて言葉は一言も出て来なかった。
姉上から教えてもらったのは、体に魔力を流すことで身体の能力が上がる事だけ。後は魔力の流す量を増やせば、それに応じて能力も上がるとだけかな。
「理由は、纏を習得するのが難しいからだ。みんなが身体強化と言う魔鎧ですら均等にしようと思えば1週間そこらは最低でも掛かる。それなのにそこから魔闘拳などを覚えようと思えば剣術どころではなくなるからね」
その分覚えればかなり強くなれるのだが、とミストレアさんは言う。
「それじゃあ、今の流派はどうしているのです?」
「今の流派は属性魔法でそれらを補っている」
属性魔法で補っている? どう言う事だろうか?
「例えば、烈炎流を使おうと思えば、魔闘装をする代わりに火属性魔法のフレイムエンチャントを行えばいい」
そう言いながらミストレアさんは剣にそのフレイムエンチャントとやらを行う。すると剣に炎が纏い出すではないか。そのまま剣を振るとドォン! と地面が爆発する。なるほどなぁ〜。
「こちらの方が魔法を習得すれば早いからねぇ」
「なるほど。まあ、魔法が使えない僕には関係ない話ですけど」
そんな事よりも早く色々と教えて欲しい。どの流派が僕に合っているのかはまだわからないけど、どの流派を覚えたとしても、僕のためになると思う。
「そうだな。レディウスには関係ない話だったね。後、纏を覚える利点とすれば、エンチャントに比べて魔力消費を抑える事が出来、発動速度もエンチャントより速くなる」
魔力消費を抑えるか。確かにそれは重要だ。魔力の量は使えば減ってしまう。使えば魔力量の限界は上がるけど、それにも限度がある。
その限度を超えて使ってしまうと、気を失ってしまうと姉上が教えてくれた。
発動速度もエンチャントより速く出来るなら、戦闘にも有利になるのではないか。
「それってエンチャントをした時と比べて、どのくらい違うのですか?」
「魔力消費だと、エンチャントとをした時に比べて半分程には抑えられるかね。発動速度もそのくらいだ。理由としては、纏、魔闘装は魔力を通すだけだけど、エンチャントは魔法を付与するのに、魔法を発動、武器に付与と2回行程を踏まなければならいからね」
なるほどな〜。それは今後重要になってくると思うから覚えておこう。メモメモ。
「それでもエンチャントを教えるのは、楽という理由とは別に見栄えもあるからね」
確かに、さっきミストレアさんが剣に炎を纏わせた時は格好良かった。僕も魔法が使えていたら、エンチャントを覚えていたかもしれない。まあ、今は纏の方が興味はあるけど。
「それで、レディウスが覚える流派に移るけど、どの流派が良いとかあるかい? 私はどの流派も免許皆伝しているからどれでも教えられるよ」
……はっ? 物凄く簡単に言うけど、とんでもなく凄い事だよな。全部の流派を免許皆伝? 道場開いたら人がかなり集まるんじゃあ……。
「お婆様は凄いでしょ! この3つの流派を使いこなして冒険者として色々な依頼をこなしてきたから、今では『魔剣王』って呼ばれているんだから!」
弾かれた剣を取って戻ってきていたヘレネーさんが胸を張ってそう言う。確か、ヘレネーさんと初めて話した時に場所を聞いたら、魔剣王ミストレアの家だ、って言っていたっけ。
でも、どの流派でも教えられるのなら僕は。
「なら僕が教えて貰いたい流派は……」
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