黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
11話 姉の決意
「エリシア様、大丈夫ですか?」
「……ええ。2日も授業を休んだのだから、そろそろ出ないと」
レディウスの剣がお父様から送られてきて3日が経った。私はあまりのショックで、その日の午後と次の日とその次の日の2日間も休んでしまった。
クレナが先生方に事情を話してくれたおかげで特に問題なく休めたけど、これ以上休んだら授業に支障をきたしてしまう。
本当は、レディウスの遺体を探して、お葬式をしてあげたいのだけれど、森の中で死んでいたらしいので、遺体は既に魔獣に食べられただろうと言うし、お父様はレディウスが家を出る前に勘当している。だから関係ないと手紙にも書いてあった。
「エリシア様、教室に着きました。私はここで待機室でクレナさんと待機しております」
私がぼーっと考え事をしていると、いつの間にか教室に着いていたみたい。そしてミアがそう言って去っていく。侍女が学園内で動けるのは主人の部屋か、廊下のみ。教室はどの爵位関係なく侍女を連れ入る事は出来なくなっている。
「ふぅ〜。良し」
まだ、レディウスの事で立ち直る事は出来ないけど、これ以上元気のない姿を見せたらあの子に怒られる気がする。だから気を取り直して教室に入る。すると
「……来たわよ」
「あの噂って本当なのかな?」
「お前確かめて来いよ」
私が教室に入った瞬間、同じ教室のクラスメイトが私の方を見てコソコソと何かを話す。何だろう。私は気にせず自分の席に座ると、それを見計らった様にクラスの女子3人が私の側までやってくる。確か3人とも伯爵家の侍女だったかしら。
「あらエリシアさん。もう大丈夫ですの?」
「本当に可哀想ですわね。弟さんが亡くなられたのですから」
「無理せず学園に来なくてもよろしかったのに」
……遠回しに学園に来るなって言いたいのかしら? でも、この程度の事は日常茶飯事。気にするだけ無駄ね。
「ええ、もう大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
私がニコリと返すと、3人ともイラっとした雰囲気に変わる。何でこんなに敵意を向けられないといけないのかしら。そんな風に思っていると
「そういえば、亡くなられた弟さんって、黒髪だったんですってねぇ?」
「まあ、嫌だわ。汚らわしい色ではありませんか」
「確か、エリシアさんにはもう1人弟さんがいらしたわよね。良かったじゃない、そちらの方じゃなくて黒髪の方で。生きていても意味が無かったのだから」
そう言い笑う3人。この人たちは一体何を言っているの? レディウスが死んで良かった? 生きている意味が無かった? ふざけた事言ってんじゃないわよ。レディウスのおかげで私がどれだけ救われたか。
あの家では、レディウスとは違う意味で私は孤立していた。理由は、私があの家でただ1人、髪が赤色で生まれたから。
そのおかげで、家族から大切に育てられて来た。でも、それは親子としてではなく、グレモンド男爵家が成り上がるための道具として大切にされただけ。
周りの侍女たちも、家族である父や母そして弟ですら私を割れ物を触るかの様な扱い。そんな関係に嫌気がさしていた時にレディウスは生まれた。
その時は小さかったからわからなかっただけなのかもしれない。それでも、私を道具としてではなく、1人の姉として、家族として接してくれた。それがとても嬉しかった。
その後は、お母様のせいで、レディウスとの関係がギクシャクしたりした事もあったけど、最後の3年間は楽しかった。今まで私を避けていたレディウスが私を頼ってくれるのが嬉しかった。
だから私は黒髪で辛い思いをしているレディウスを助けてあげると誓った。黒髪のレディウスからしたら、色付きの髪の私なんて憎悪の対象だったかも知れないけど。それでも守りたかった。……その誓いは守れなかったけど。
それなのに、死んだ後まで弟を、レディウスを侮辱するなんて許さない。私は魔力を放出しながらその場で立ち上がる。私を囲んでいた3人の子女はビクッと震えるけど、私をキッと睨んで来る。
「な、何かしら? 伯爵家である私たちに何か文句でもあるのかしら?」
 
1人の子女が気丈にそう言うけど膝は震えている。私は学年の中でも魔力は高い方だと思っている。他の色持ちにも負けないくらい。
「これ以上レディウスを侮辱しないで下さい。さもないと……殺しますよ」
「「「ヒィッ!」」」
私は魔力をその3人に向けて放出する。3人は私の殺気に当てられて、その場で座り込んでジョロジョロと何かを漏らす音がする。
それからは先生が来て大騒ぎ。私は職員室に連れられ、色々な先生から質問責めにされた。あの伯爵家の子女たちは私の殺気から解放されたら気を失ってしまった。
その後は何故か話を聞きつけたウィリアム王子が職員室にやって来て、今回の事情を聞いて、私を解放する様に先生方に言ってくれていた。
そのおかげなのかはわからないけど、私は1週間の謹慎だけで済んだ。でも、丁度良かった。私の中で考えることの出来る時間が出来たから。
そのおかげで気付いた事がある。私はレディウスと過ごす時間が、毎日が楽しくて、毎日レディウスの事を考えていた。明日はどんな話をするのだろう。どんな事を教えたあげたら嬉しいのだろう。魔法の話は辛くないかな。私に笑顔を向けてくれた! 色々と思い浮かぶ。
……ああ、そうなんだ。私はレディウスに恋をしてたんだ。だから些細な話も楽しくて、部屋に来なかった日が辛くて、笑顔を向けられるのが嬉しかった。死んだと聞かされた後に気づくなんて……。
レディウス。私、レディウスの分も強くなるよ。レディウスの事を馬鹿にされない様に強くなる。それから、レディウスの代わりに冒険者になって、世界を見て回るから。
「……ええ。2日も授業を休んだのだから、そろそろ出ないと」
レディウスの剣がお父様から送られてきて3日が経った。私はあまりのショックで、その日の午後と次の日とその次の日の2日間も休んでしまった。
クレナが先生方に事情を話してくれたおかげで特に問題なく休めたけど、これ以上休んだら授業に支障をきたしてしまう。
本当は、レディウスの遺体を探して、お葬式をしてあげたいのだけれど、森の中で死んでいたらしいので、遺体は既に魔獣に食べられただろうと言うし、お父様はレディウスが家を出る前に勘当している。だから関係ないと手紙にも書いてあった。
「エリシア様、教室に着きました。私はここで待機室でクレナさんと待機しております」
私がぼーっと考え事をしていると、いつの間にか教室に着いていたみたい。そしてミアがそう言って去っていく。侍女が学園内で動けるのは主人の部屋か、廊下のみ。教室はどの爵位関係なく侍女を連れ入る事は出来なくなっている。
「ふぅ〜。良し」
まだ、レディウスの事で立ち直る事は出来ないけど、これ以上元気のない姿を見せたらあの子に怒られる気がする。だから気を取り直して教室に入る。すると
「……来たわよ」
「あの噂って本当なのかな?」
「お前確かめて来いよ」
私が教室に入った瞬間、同じ教室のクラスメイトが私の方を見てコソコソと何かを話す。何だろう。私は気にせず自分の席に座ると、それを見計らった様にクラスの女子3人が私の側までやってくる。確か3人とも伯爵家の侍女だったかしら。
「あらエリシアさん。もう大丈夫ですの?」
「本当に可哀想ですわね。弟さんが亡くなられたのですから」
「無理せず学園に来なくてもよろしかったのに」
……遠回しに学園に来るなって言いたいのかしら? でも、この程度の事は日常茶飯事。気にするだけ無駄ね。
「ええ、もう大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
私がニコリと返すと、3人ともイラっとした雰囲気に変わる。何でこんなに敵意を向けられないといけないのかしら。そんな風に思っていると
「そういえば、亡くなられた弟さんって、黒髪だったんですってねぇ?」
「まあ、嫌だわ。汚らわしい色ではありませんか」
「確か、エリシアさんにはもう1人弟さんがいらしたわよね。良かったじゃない、そちらの方じゃなくて黒髪の方で。生きていても意味が無かったのだから」
そう言い笑う3人。この人たちは一体何を言っているの? レディウスが死んで良かった? 生きている意味が無かった? ふざけた事言ってんじゃないわよ。レディウスのおかげで私がどれだけ救われたか。
あの家では、レディウスとは違う意味で私は孤立していた。理由は、私があの家でただ1人、髪が赤色で生まれたから。
そのおかげで、家族から大切に育てられて来た。でも、それは親子としてではなく、グレモンド男爵家が成り上がるための道具として大切にされただけ。
周りの侍女たちも、家族である父や母そして弟ですら私を割れ物を触るかの様な扱い。そんな関係に嫌気がさしていた時にレディウスは生まれた。
その時は小さかったからわからなかっただけなのかもしれない。それでも、私を道具としてではなく、1人の姉として、家族として接してくれた。それがとても嬉しかった。
その後は、お母様のせいで、レディウスとの関係がギクシャクしたりした事もあったけど、最後の3年間は楽しかった。今まで私を避けていたレディウスが私を頼ってくれるのが嬉しかった。
だから私は黒髪で辛い思いをしているレディウスを助けてあげると誓った。黒髪のレディウスからしたら、色付きの髪の私なんて憎悪の対象だったかも知れないけど。それでも守りたかった。……その誓いは守れなかったけど。
それなのに、死んだ後まで弟を、レディウスを侮辱するなんて許さない。私は魔力を放出しながらその場で立ち上がる。私を囲んでいた3人の子女はビクッと震えるけど、私をキッと睨んで来る。
「な、何かしら? 伯爵家である私たちに何か文句でもあるのかしら?」
 
1人の子女が気丈にそう言うけど膝は震えている。私は学年の中でも魔力は高い方だと思っている。他の色持ちにも負けないくらい。
「これ以上レディウスを侮辱しないで下さい。さもないと……殺しますよ」
「「「ヒィッ!」」」
私は魔力をその3人に向けて放出する。3人は私の殺気に当てられて、その場で座り込んでジョロジョロと何かを漏らす音がする。
それからは先生が来て大騒ぎ。私は職員室に連れられ、色々な先生から質問責めにされた。あの伯爵家の子女たちは私の殺気から解放されたら気を失ってしまった。
その後は何故か話を聞きつけたウィリアム王子が職員室にやって来て、今回の事情を聞いて、私を解放する様に先生方に言ってくれていた。
そのおかげなのかはわからないけど、私は1週間の謹慎だけで済んだ。でも、丁度良かった。私の中で考えることの出来る時間が出来たから。
そのおかげで気付いた事がある。私はレディウスと過ごす時間が、毎日が楽しくて、毎日レディウスの事を考えていた。明日はどんな話をするのだろう。どんな事を教えたあげたら嬉しいのだろう。魔法の話は辛くないかな。私に笑顔を向けてくれた! 色々と思い浮かぶ。
……ああ、そうなんだ。私はレディウスに恋をしてたんだ。だから些細な話も楽しくて、部屋に来なかった日が辛くて、笑顔を向けられるのが嬉しかった。死んだと聞かされた後に気づくなんて……。
レディウス。私、レディウスの分も強くなるよ。レディウスの事を馬鹿にされない様に強くなる。それから、レディウスの代わりに冒険者になって、世界を見て回るから。
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コメント
リムル様と尚文様は神!!サイタマも!!
姉さんファイト!!
言葉
姉カッコイイ・:*+.(( °ω° ))/.:+
エルス・ギルバート
レディウス「勝 手 に 殺 す な(# ゜Д゜)」