ぼっちの俺がギャル風美少女に好かれた件について

まさたん

第3話 こんなボッチのどこが好きなんだ!?


「さぁ、行くか」

莉沙からの告白の翌日。学校は昼休みになり俺はいつものように体育館裏に殴られに行こうとしていた。
しかし、教室から出ようとした時にそれは起きた。

「どこに行くの?」

急に腕を掴まれて驚き振り返ると金髪ギャルがいた。今日も胸元のボタンを外しスカートも短くしている。

「どこって体育館裏だけど」
「もうほっといたら?なんであの後輩達にやられてるのかはあたし知ってるけど佑介が行く必要ないでしょ」

まあ、確かに莉沙の言うことは分かるし俺だってそんなの分かってる。だけど俺が行かなければまたあの後輩女子が被害を受ける可能性がある。

「佑介はあの後輩が好きなの?」

莉沙は顔を暗くして悲しそうな表情を見せる。

「いや、そういう訳ではない。ただ、目の前にいじめられてる子がいてほっとけないだけ。俺があそこに行かなければまたあの子が標的にされる可能性がある」
「ねぇ、好きな人が殴られたりお金を取られるのって物凄く嫌なんだよ」
「……でもな」

俺は渋る莉沙に困っていた。正直、面倒なことに巻き込まれてるのは分かる。俺自身、面倒なことが大嫌いだがその面倒なことに自ら足を踏み入れていくのがこの俺だ。

「じゃあさ、もう最後にしようよ」
「えっ?」
「佑介が殴られるの」
「どういう意味だ?」
「もういいから!早く体育館裏に行って!」

さっきは行くなと言った莉沙だが今度は背中を押されて教室から出された。
なんなんだ?あいつは……。
俺は莉沙の言葉の意味が理解できずに首を傾げなから体育館裏へと向かった。

所変わって体育館裏。俺はいつもの後輩達に詰め寄られていた。

「今日は遅かったな」
「さぁ、ストレス発散と行きますか」
「じゃあ、俺から殴るわ」

そう言いながら1人の後輩が俺の鳩尾に強烈なパンチを繰り出す。それを皮切りに3人全員から殴られ蹴りを入れられの暴行に遭う。そして、いつものように金を取られる。

「じゃあ、また明日」

そう言いながら去ろうとする後輩達。
俺は地面に倒れてその姿を見送ることしか出来なかった。

「ちょっと待ちなさいよ」

といきなりそんな声が俺の耳に入る。
その声には物凄い怒りが込められているような気がした。

「……り、莉沙」

俺が声のした方向を見るとそこには莉沙が立っていた。そして、その手にはスマホが握られている。

「大丈夫?佑介」
「ん、あぁ、なんとか」

俺は体をお越し壁に体を預ける。殴られた箇所が痛み少し顔を歪める俺。

「めっちゃ可愛い女じゃん」
「何?こいつの女?」
「な訳ねぇだろ。こんな情けない男に彼女なんている訳ねぇだろ」
「ハハハだよな」 

好き勝手に言ってる後輩。ふと莉沙を見ると凄い目付きで後輩達を睨み付けていた。

「佑介が情けない?あたしからしたら1人の人間を3人で寄ってたかって暴力を振るい金を奪い取ってるあんたらの方がよっぽど情けないと思うけど?」
「は?なんだよお前」

莉沙の言葉に反応して3人の後輩達が莉沙に詰め寄る。
ヤバいな、女1人で男3人には勝てないだろ。俺はなんとか体を起こし痛む箇所を押さえて歩き莉沙と後輩達の間に割って入る。

「ゆ、佑介!?」
「この女には手を出すな」
「は?何、カッコつけてんだよ」

俺は胸ぐらを掴まれてる。
あぁ、また殴られるのかと思った時だった。

「お前ら!!何してんだ!!」

そんな怒鳴り声と共に姿を現す生徒指導の先生。
俺の胸ぐらを掴んでいた後輩の手を捻り上げる。

「お前ら!最近、体育館裏で暴力を振るって金を奪ってたらしいな。それに放課後もカツアゲや万引きを繰り返してたって話も聞いたぞ。今、警察が来てるから詳しく事情を聞くぞ!!あとそこの2人も事情を聞くから付いてこい」

先生は俺と莉沙にもそう言い後輩達を連れて行ってしまった。俺と莉沙もお互いの顔を見合わせた後先生の後を追って歩いて行った。

その後の事に関しては結論を言おう。
正直、滅茶苦茶面倒臭かった。

俺がある後輩女子を助けてそれから後輩達に暴力を振るわれ金を取られるようになったことを一から十まで話してそれを生徒指導の先生だけではなく教頭や何故か警察の人にまで何回も話をした。

莉沙に関しては今日の俺の暴力動画を証拠としてスマホで撮ってあったみたいだったが何故すぐに教師に言わなかったのかと怒られていた。
まあ、莉沙のおかげで俺に対する暴力行為がかなり悪質だと認められ普段の素行も良くないとして恐らく後輩達は退学処分になるだろうとの事だった。

「あー疲れた」

教師達の事情聴取と言う名の拷問地獄に耐え疲れ果てた俺は死にそうな顔をして莉沙と一緒に下校をしていた。
なんせ、昼休みから放課後まで事情聴取されてたからな。途中で『これなら暴力振るわれてた方がマシだ』なんて言うアホな考えが思い付くほどだった。

「あたしも疲れた。でも、これで佑介が殴られる必要もなくなったね」

隣で並んで歩いている莉沙は笑みを見せる。

「お前が言ってた『最後にしよう』って言う意味はこういうことだったのか」
「うん。でも、先生が来たのは予想外だったけどね。動画を撮ったのはただ言葉で先生に言ってもあいつらがしらばっくれたら終わりだったし佑介も絶対に先生に言わないだろうと思って」

まあ、会ったばかりなのに俺の事よく分かってるな莉沙は。というか本当になんでこんな可愛い子が俺の事を好きなんだ?

「ん?あたしが佑介を好きな理由?」
「なんで考えてることがわかった!」
「気づいてない?声に出てたよ」

うわっ、マジか。なんか恥ずかしいな。
俺はチラリと莉沙を見る。すると何故か莉沙に睨まれた。

「ねぇ、あたしと会ったことあるの覚えてないの?」
「は?」

俺、莉沙と会ったことあるのか?えっ、いつだ?
実は俺の幼なじみだったり……いや、昔から1人だったからそれはないな。うーん、わからん。

「佑介はあたしが電車で痴漢に遭ってる所を助けてくれたんだよ」

電車?痴漢?あ!そういえば、そんなことあったな。
俺が1人でゲームソフトを買うために電車に乗って少し遠いショッピングセンターに行った時に金髪女が痴漢に遭ってるのを助けたことがあった。

「あの時の?」

俺はなんとか思い出して莉沙を見る。すると莉沙は俺が思い出したことが嬉しいのか上機嫌になる。

「そうそう!それがあたしだよ。痴漢に遭ってショックで泣いてたあたしをひたすら優しく励ましてくれたんだよ。それで助けてくれた相手がまさかのクラスメイトだった。それから意識し出して気づけば佑介を目で追うようになってた。あたしは優しくて思いやりのある佑介が好きだよ」
「……そうか」

莉沙の素直な気持ちになんて言ったらいいのか分からない俺。付き合えばいいのか?まだ俺は莉沙のこと何も分かってない。そんなんで付き合ってもいいのか?

「……分からないな」
「佑介」
「うん?なんだ?」
「なんか難しいこと考えてるでしょ?」
「なんで分かる」
「なんとなくかな。でも、1つだけ言うけど佑介は何も考えなくてもいいよ」
「は?どういうことだ?」

俺は莉沙の言葉の意味が理解できずに聞き返す。
すると莉沙は俺の前に出て止まり俺と向かい合った。

「宣言します!佑介は絶対にあたしのことを好きになるよ。そして、あたしは全力で佑介を落としに行くのでそのつもりで!」

莉沙は大きな声でそう宣言する。大きな声を出したせいで周りにいる人が何人かチラッとこちらを見ていた。

「はぁ、なんか面倒なことに巻き込まれたな」
「ちょっと!面倒なことって何!?こんな美少女に好意を寄せられて嬉しいでしょ?」
「自分で自分のこと美少女とか言うか?普通」

まあ、美少女なのは間違いはないけどな。実際、莉沙から好意を寄せられることは嫌ではない。

「って、引っ付くな!」

気付けば莉沙が俺の腕に自らの腕を絡ませていた。恋人同士がよくやるあれである。

「減るものじゃないしいいじゃん」
「良くねぇよ!」

胸が当たってるし良い匂いがするし落ち着かないんだよ。

「いいから離れろよ!」
「絶対離れない!」
「離れろ!」
「い・や・だ!!」

引き離そうとする俺としがみついて離れない莉沙。そして、その攻防は結局俺が負けることになったのである。

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