番外編①　〜願望です〜

勇者佐藤将輝
そんな彼には、ささやかな願望があった。
それは、世の中の全ての女性を堕とすこと。その顔、性格、成績までパーフェクトな彼。中学生までは、その計画は順調に進んでいた。周りの女性は、小学生とは思えない完璧な彼に、堕ちていき、男性さえも、その完璧さに感嘆するしかなかった。
しかし、そんな彼を襲ったショックな出来事。中学の入学式の時、ほとんどの人間がこちらを見ていたにも関わらず、ついに、彼を見向きもしない人間が現れた。その者の名前は、白崎夕貴と白沢吹雪。名字が似ている彼女たちは、性格も似ていて、とても仲が良かった。学校を休みがちで、学校では本しかとらない彼女たちは、桜木が丘中学校の隠れ美少女として有名だった。さらに彼女たちには、将輝を惹く理由があった。
それは、ゲームの腕、である。カヌーから書道までなんでもできた彼は、ゆういつゲームだけができなかった。彼女たちは、fubuとyukiというネームで、ゲームの世界において有名な存在だったのだ。なんでも、2人に戦いを挑んだ元世界王者たちは、全て惨敗に終わるという類稀なる強さを持っていた。自分ができないことをやってのけた2人に、将輝は惹かれた。
そしていつしかその2人が、将輝の最終目標になっていた。両方とも自分の物にする、これが夢だったのである。
しかし、夕貴は火に抱かれ、吹雪は異世界にて消えた。しかし、将輝は諦めない。吹雪がまだ生きていることを信じ、夕貴がこの世界にいることを信じ、走り続ける。次は守れるように。

そんな将輝は知らなかったのである。2人が、既に自分よりも強いことを。