深緑の天使、反逆の使徒

ノベルバユーザー266019

6話 〜誘拐された(⊙ꇴ⊙)〜

「ははっ、笑えん」
辺り一面の蜂型魔物モンスターを見て言う。
(ちょっ、僕の体でそういう男みたいな口調やめてよー。たしかに笑えない状況だけど)
「僕っていうのは本来男が使うものなのだよ。パンドラ君」
(そういう君だって女の子でしょ!)
「てへぺろ(棒)」
(てへぺろじゃなくて本当にどうするのこの状況!)
「全部殺す」
(君ならそういうと思いましたわざわざ質問してすみませんでしたー)
「巣まで駆逐する」
(同情するよ蜂君)
私はコートの裾から綺麗な箱を取り出し、開けて言う。
風の刀カマイタチ
箱が星空のような彩りの霧を放ち、消えた。そこにあるのはこれまた星空のような魔法陣…少し経つと消える。しかし、次の瞬間、音もならずに蜂の胴と頭が切り離され、血が噴水のごとく湧き出る。返り血が赤い涙のように目元につくが、 そんなことは気にしない。で魔石を回収、箱の中の虚空空間に仕舞う。この箱は、スキル、『災厄の箱』で災害級魔法を出すときに使うもの。そこに、自由生成で虚空空間を作った。ちなみに、このスキルでは、災害系、殺戮系、パンドラの固有魔法が使えると発覚。災害系は暴風雨だとか、地震だとか、"自然に起きるもの"のこと。殺戮系は、その名の通り、人間、亜人を大量に虐殺する魔法。風の刀はもろそれ。爆発は含まれていないが、それはおそらく、爆発魔法は対策があることだろう。固有魔法だが、まだ試したことがない。本人に話を聞いたところによると、星空のような見た目、ほかに星に関連するものが多いのだとか。属性として分けるなら、星属性。
「さて、次は巣を潰さないと」
普通の蜂と違う奴らは蜜を人間が食べれるように作らない。存在するだけ、羽音が五月蝿く、人をやたら殺そうとするゴミ。いなくてもいいよね。
「重力」
初めての星属性。パンドラが、もしやるなら重力からがいいよ!と言っていたのでこれにしたが…地面が、蜂の形に抉れている。これが星属性の"初級"。やばそう。ついでに巣を潰す。
魔物を潰しながら、夜になれば箱から用具を取り出し、野営。そして能力の鍛錬。まだ把握できてないからね。地面が抉れたり、局地的な豪雨が起きたりしたけど、関係ないよね。うん。と、ステルヴァの国境を発見。森に魔物が湧くので、かなり屈強な作り。森ルートだと、すぐに王都に着く。ステルヴァの作りは、円形の石壁の中に、街や草原、都市があるという感じ。さてこの入国審査のための門には馬車や冒険者(っぽい服装をした人)がいっぱい。とりあえず列に並ぶ。
「おい!この中身はなんだ!」
お?何だ何だ?荷馬車の中の樽を指さして警備員が叫んでらっしゃる。私も気になるから透視魔法でも使おう。む?人が入ってるぞ。これは、俗に言う奴隷商売と言うやつか。
「ただの酒樽ですが…」
と商人さん。いやどう見ても人間の子供なんですが。しかも女子。まあ透視ありきだからね。しょうがないよね。と、
「俺が中を見よう」
ともう一人の警備員。んーわざわざもう一人必要かな?もしかして、あの警備員、共犯者グルなんじゃない?
「大丈夫だ、ぶどう酒ワインの樽だったよ」
「そうか、疑って悪かったな。入国を許可する」
やっぱりね。まあ私は厄介事に巻き込まれるのはごめんなんで。助けたりはしないです。はい。
「入国を許可する。はい、次!」
私の番だ。用意していた小さいバックから、箱を取り出し、そこからギルドカードを出す─ように見せかけた。
「む?こんな嬢ちゃんがCランクか。世界は広いもんだなぁ!ほい、通行許可証」
途中の街とかで倒しまくったので、Cになってしまっていた。見た目に対して高すぎるのだろう。全てはパンドラのおかげなのだが…
「さっきの酒樽の人、気をつけたほうがいいですよ」
それだけ言って私は去ることにした。というか、そのまま去った。
「どこの宿がいいかな」
探していると、朝市が行われるという広場の近くにある宿が。ここにしよう。宿をとり、部屋に入ってからパンドラに聞く
(ここのスキルは目覚めてる?)
(いや、目覚めてないね。目覚めかかってるけど、もうちょっと足りない。たぶん、僕らが近づけば、目覚めるよ)
という返事。スキルの状況は分かった。場所はおそらく、学園、だそうだ。ステルヴァには学園があるのだとか。ただそうなると…
(連れ出すのが難しいね)
そう、それだ。ステルヴァは後回しにすることも考えなければ。とりあえず、名前だけでも、覚えとかないと。


とりあえず、今日のところは観光しよう。


──と、思っていたのだが。


バサッ、という音とともに、私の口元にハンカチが持ってこられた。そして、私の視界は暗転した。








目が覚めた。視界は相変わらず暗い。が、先程とは違い、ある程度見える。薄暗い、部屋。そして、ドア。この縦に入った模様─いや、これは、鉄柵か…牢屋の中に閉じ込められたか。ここでハッとなる。とりあえず、箱。なくても魔法は使えるし、そもそもどこにあっても私のもとに出せるけれど…確認してみる。うんない。ないから出そう。
ちょっとした魔法陣が展開され、箱が飛びててくる。それをコートの内側の中に入れる。
ギシ、ギシ、ギシ、ギシ………
人の気配。こちらの部屋に歩いてくる。監禁犯だろうか。とりあえずまだ眠っているフリをしてみる。
「まだ眠ってるか。まぁ起きたところで出さんがな。よかったな。こいつでてめぇみてえな奴隷予定の仲間が増えるぜ?」
ほう、奴隷として誘拐されたか。ガチャッという音のあと、白髪の少女と茶髪の少女、さらに黒髪の少年が牢屋に投げ込まれる。もう一度ドアと牢の音がなり、男は去っていった。この世界の奴隷って少年もありなのか。労働力かな?
「うっ!どこだよここ、つかなんか痛え!」
少年がまっさきに起きた。原因は投げ込まれたときの衝撃だろう。少年は少女よりも乱暴に扱われていた。
「起きろよお前ら!誰だか知らんけど、なんか知ってんだろ!」
と二人の少女の体を揺らす。
「起こさないで、その子達は何も知らないだろうし」
「うわっ、誰だ!」
私に気付いていなかったらしい。失礼な奴め!
「『うわっ』とは何だ。私はおばけが何かか?それに、名前を聞くときは自分から言うものだぞ」
「あ、ああ。そっか。俺はユーキだ。お前は?」
「私はふ…パンドラ。口調はあれだが一応女だから気をつけて」
「おう。お前は俺より先にここにいたようだが、状況はわかっているのか?」
なかなか頭がいい、のかな?
「牢に入れられているところやこうやって子供しかいないのを考えると、おそらく奴隷商に捕まったということ。買い手が決まったら、奴隷の証烙印を入れられて買い手に逆らえないようになるはず、それまでに脱出しないと」
「要は奴隷にされかけてるってわけだな?奴隷商は禁じられてるはずなんだが。こういうバカってのはどこにでもいるもんだな」
とこのタイミングで
「ここはどこなのです?」
白髪の少女が起きた。先程ユーキに話したことをそのまま話すと、
「なら私があなた達を救ってみせるのです!」
と言い出し止まらない。それはまだやめろとユーキとともに説得していると突然
「止めたって無駄なのです!もう実行しますから!“風よ!その身をかき集め強き刃となり吹き飛ばせ!風の爆発ウィンド・ブレイカー!”」
その魔法は、風の爆発。その名の通り。
バァーンという爆音とともに、牢の柵が吹き飛んだ。何が起こった!と男の声がする。ギシギシギシと床がきしむ音。たぶん3人程度が向かってきている。
「やるしかない、か」
「やるしかない、な」
と私とユーキが言ったのはほぼ同時。ガチャッとドアの音が。
「かかってこいなのです!」
「フン!子供ガキが調子に乗りやがって!」
私はユーキに茶髪の子を頼む、という意味を込めて目線を一瞬向けたが、それだけでユーキはわかったようだ。初対面なのにね。まぁいい。そう思いながら、私はコートの内側から星空色の短剣を取り出した。


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森に出現した大っきな爪熊クロベアー普通は2m程度なのに、こいつは7mはある。しかもどういう訳か、私の…というかパンドラの魔法が効かない。なぜ?パンドラに聞いたところ、こいつは大昔にとある天使さんがふざけて作った対パンドラ用兵器の可能性がある、ぶっちゃけそれしか考えられないというね。ただ、パンドラの災害魔法、殺戮系魔法が効かないのは確か。ここでパンドラの力がなくとも勝てるようになっとかなければ。と言うわけで、私はこいつと3日ぐらい対戦を繰り広げた。爪熊の能力である、風の爪、投げ技(上に投げるのが多かった)、回復魔法、幻覚魔法、未来予知(3秒程度しか見えない)などなど、詰め込みすぎた能力に苦しめられた。そんな私がどうやって倒しのかというと、当初覚えることができていた氷魔法(吹雪の適性は氷、光、闇)の氷の刀アイシクルソードという魔法で、氷でできた剣を作り、周りの木をあと1、2回剣で叩けば倒れる、という状況にし、あのクソ野郎を連れてきて、木を倒しまくって動きを抑制し、そこを切る。というのを逃げつつ繰り返した。そしてようやく倒した。しかし、問題が起きた。現在、氷を溶かさずに維持するというやったこともない高度なことに加え、逃げるときに光魔法を目くらましに使ったりしていたため、魔力がほとんど残っていない。あんなに膨大だったのに。さらに、食料が尽きている。私の手元にあるのは、箱と、熊の死体。馬が食べれるなら、熊も食べれるのでは?と思う。とここで、パンドラ師匠からのお声が。
(箱は変形できるよ)
とのこと。つまり、箱を剣というか包丁というかに変形させ、熊を食べれる!というわけですね!という謎理論をこのとき形成し、早速実行した私氏。焚き火で焼いて食べてみると、うまい。美味しい。たまにスーパーにある肉の量り売り?みたいなところの高級和牛のそれ。熊なんだよこれ。しかも魔も…
「ぐっ!?」
激痛が走る。体に電気を通されたかのような痛み。ああ、サ○シってこういう感覚だったんだろうな、と変に思う。
(大丈夫!!??)
とパンドラ。普通に痛い。今まで感じたことがないレベル。やはり魔物を食べるのはいけなかったのだろうか。
激痛に一時間ほど苦しんだ。痛みが引いていく。どれだけダメージを負ったのだろうか。星の神ステータスプレートを確認してみる。
「へ?」
なぜ、そんな声を出したか。それは
「スキルが、増えてる?」
スキルが増えるのは別に珍しいことではない。スキルを持っていなかった剣士が、何千、何万と剣を振り続けた結果、剣術(中)や、剣技『スライド』、という2つを手に入れたという有名な話がこの世界にはある。星の紙を受け取るときに、誰もが聞かされるそうだ。そして、その話が噂になってから、努力する衛兵や冒険者が増え、スキルを新たに獲得する者が現れ始めたらしい。が、私は当然そんなものはしていない。というか、
「このスキル、さっきの熊の?」
そう、さっきの熊が使ったとされるスキルたちだった。つまりこれは…
「魔物からスキルが奪える?」
ということが判明した。試しに、ごく稀に出現するウサギ型の魔物を食べてみた。おいしい、が、やはり激痛。たぶん私みたいに体力が多くないと死ぬのではないか。ごっそり減ってたから。星の紙を確認。増えたスキルは、熊と合わせて、風の爪、回復魔法、幻覚魔法、未来予知、気配隠蔽、気配察知、跳躍力上昇、空中蹴跳。なかなかやばい。まさかこんな方法でパワーアップを図れるとは。痛いけどね。


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という訳で最近身につけたのはスキルと変形。今回は変形を活かす。
「火よ!球を型取りて爆ぜろ!火球ファイヤーボール
白髪少女の火球で前の一人が吹き飛ぶ。が、三人のうちの一人が、剣を持っていた。
「クソッなんだこの糞ガキ!」
と叫びながら剣を振った。


白髪の少女は赤い飛沫を出して倒れた。ユーキの目に絶望の光が。






反抗しただけで、殺そうとするものなのか?と疑問が浮かぶ。だが、私とユーキが少女を止めようとしたのも、この結末が予想できていたからだった。結局、今分かったのはパンドラの強さではない。自分の成長でもない。流石に殺さないから大丈夫だろうという、平和ボケした考えだった。
撃ち合うゲームじゃ、目についた敵から殺しに行ってたのに、おかしいなぁ。
まぁ、要するに、自分は甘かったということか。魔物を喰ってまで強くなったのに、を忘れていた。倒すべきものも忘れていた。敵はなにも魔物だけじゃない。
── 敵 は 殺 す ──
この方針。ありがとうね、商人=サン。目を覚まさせてくれて。悪いけど、君たちは敵だよ。死んでもらわなきゃね。
転移テレポート
余った男共の後ろに回り込んで短剣を突き刺す。びしゃっ、と音が鳴る。音が奇妙だったからか、さらに数人が来る足音が聞こえる。ドアを開け周りを確認する。狭い廊下でよかった。数人ずつしか来れない。


それからは惨殺だった。


「もう大丈夫。早く、その子を連れて出て」
「あ、ああ。この子は?」
そう言って斬られた子を指差すユーキ。
「もう、駄目」
「そう、か」


こうして、私の天使探しの1日目を終えたのだった。

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