深緑の天使、反逆の使徒

ノベルバユーザー266019

2話 〜不思議なスキル〜

行ってきます
そう言って私は家を出た。相変わらずセルガーは返事を返してくれない。別にいいけども。さて、私は魔の森ルートを選択している。魔の森には毒持ちがいるようだけど、サリナがいる限り私に毒は効かない。そう考えれば、このルートが一番楽。とにかくまずはクラロイロの船にならないといけない。
「歩きかぁ」
思わずつぶやく。ミルキィウェイ領はクラロイロの中腹部。今更だがなぜ私はこんなとこからステルヴァに行こうと思ったのか…最悪の場合は転移するのだが…






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運命の星の紙―ステータスプレートを受け取る。そのためにクラロイロ王都、ネカロシスに来ていた。魔人族の王が変わり(倒されない限り30年単位で変わるらしい)、本格的に人族と敵対しはじめ、自然に生まれる魔物(魔物は溜まった魔力が動物や死体に集まり、姿が変化したもの)に加えて、魔人族が人為的に作った魔物が増えて、冒険者の需要が上がっているため、最近はステータスプレートを必ず発行すると決めている国が多い(星の紙の他に年齢などの個人情報を乗せるだけで発行できる身分証明書もあるが)。ただ、星の紙は各国の主要都市でしか発行できない。クラロイロだと王都がそれにあたる。だから私は、母ミレイとここに来ていた。
そして今日が、私の運命の日となる。




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「星の紙を発行するためにはこの魔水晶に触れる必要があります」
発行員の方が言う。ふむ、
「綺麗な水晶だなぁ」
と普通に思う。
「「そうでしょう」」
ミレイと発行員が同時に言う。どうやら二人共、初めて見たときはそう思ったようだ。こほん!と咳というか、あれだ、アニメとかでよくあるやつ。説明の続きしますよーという合図。
「えー触れた人の大体の魔力は光の強さでわかります。光が強いほど、その人の魔力が強いということです。また、光の色で属性も大体わかります。まぁ星の紙に具体的な数値と適正属性が載っていますが…」
とのことらしい。目を向ける。
「さぁ、どうぞ。水晶に触れてください」
私は手を水晶に差し伸べる。
青、茶、白、紫、水色、黄、黄緑…火と木以外の全属性である。私は知っていたので特に驚きもしなかったが、あと二人が驚いた顔で固まっていた。そんな二人を私が見ると、発行員…要はギルドの人だが…が急いで部屋の外に出ていった。ミレイはまだ固まっている。カミサマがさらっと「たまに全属性持ちが生まれるんですよぉ」と言っていたので、たまにいるくらいで別にそこまですごくないだろうとは思っていたけど…実はたまにじゃなくて、ごくごく稀にだったり?ガチャッ‼とドアが勢いよく開く
7属性適正レインボーはどこだぁ!!?」
冒険者組合支部長ギルドマスターと書かれた名札を胸につける大男が叫びながらやってきた。
(やばいなぁ。やっぱりめずらしかったのかなぁ?)レインボーとは7属性適正のことだろう。そう思って声をかける。
「あっ、あの…『お前かッ⁉』………はい!」
無意味に張り合って声を大きくする。会話が少ないからあんまり大声を出すと喉をやりそうな気がするけど気にしない。
「そうか……」
大男はそうつぶやく
「君……冒険者になるかい?」
今度はそう言ってきた。冒険者にはなりたいが、その前に学園で勉強がしたい。だから
「冒険者には、なりたいですが……、あっとえっと。えーっとその…その前に、ステルヴァの魔法学園に行きたいんです!」
言ってみた。
「そうかい、なら、こちらで手配するのも構わないが…『いいです』!!?」
「私は、自分で…自分の力で学園に行って、そこで友達を作って、一緒に冒険者になるのが夢です」
もはや自分でもなぜ学園に執着しているのかわからない。考えられる理由としては、現在最強と言われる冒険者が、そこの学園の出であることだろうか。自分もそうなりたいとは思っていた。
「君が冒険者になるなら、いつでも歓迎するよ」
支部長───ルインズ·ステイルはそう言ってくれた。
「歓迎してもらいますよ!」
と言った。昔(前世)からこういうのは好き。ハハ、と笑う周り。とにかく此れで、冒険者になる夢はおそらく達成した。あとは死なないようにするだけ。閉じたドアからまた人が出てきた。
「星の紙、発行できました!」
どうやら発行が完了したらしい。さて内容は名前、歳、天職、スキル、能力値レベルの5つ。確認といこう。
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ガヴリィル·ミルキィウェイ  七歳


天職    
         天使
能力値


レベル        2
体力         50
俊敏         62
攻撃         62
魔力         100
対魔         62


〈スキル〉
調律と伝令の天使ガブリエル
   空気震動【音程調律、音量調節】
   曲奏者【特殊演奏エンチャント
   伝令師【意思疎通テレパシー、妨害無効】 
   進化【スキルレベル】
   不協和音【法則無視、法則妨害】


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む?なんだこれは。スキルガブリエル?他の人は「ガブリエルってなんだ?」などと言っている。この世界にそういうのはないらしい。私の名前に近いな、程度にしか思ってなさそうだ。進化、ねぇ。多分このスキルのレベルが上がるのかな?特殊演奏エンチャントってなんだろう?音で特殊効果を出したりみたいなそんな感じかな?んー。どうなんだろ。
「これ、強いんですかね?」
と聞く。
「うーむ、このスキルは見たことがないから定かではないが…ステータスだけを見れば1レベルこれは頭がおかしいレベルだぞ?」
な!?
「強いってことですか?」
「そうだ」
やはり、チートだったか。そりゃあカミサマに頼んだんだから当たり前か。




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星の紙を受け取ってはや二年。ガブリエルの研究に没頭していた。この二年でわかったのは、特殊演奏エンチャントで空気震動の利用で、相手に俊敏低下や、毒、対魔低下などのデバフにかけることができるとわかった。逆に、自分に俊敏上昇や跳躍上昇、体力時間回復などのバフをかけられる。なかなかに強力だ。空気震動では別に音を出さなくても、振動だけを出せるので、擬似風魔法が使える。そもそも適正があるが、これなら呪文を唱える時間も短縮できる上、呪文として存在する風魔法以外のこともできる。さらに、魔法より魔力消費が少ない。まさしくチート。不協和音はまだわかっていない。【】内を見ると明らかにやばいので、使わない方がいいかもしれない。街に頻繁に出るようになったので、コミュ症も解決した。万全の極み。いよいよあと二年だ。寮に入るつもりだが、念の為にお小遣いとしてもらったお金はためている。ちなみにこの世界のお金は、紙貨が一円、銅貨が十円、銀貨が百円。金貨が千円。白銀貨が一万円。紫鉱貨が十万円だそう。すべての通貨に一定量の決められた特殊な魔力が込められていて、詐欺等は無理らしい。ありふれたやり方だなぁと思う。ためたお金は約121万円分程度。貴族とあって、お金が結構多い。
「さぁ、行きますか」
今日も街に行く。なぜ行ってるかというと、エンチャントの支援効果の練習のために隠蔽+跳躍+俊敏を常につけて、屋根の上を走っている。バレたらすごく怒られそう。


そんなこんなを繰り返し、成長し、学園入学試験まで、あと1ヶ月になった。


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ステータスプレートを受け取って約4年。ガブリエルになぜか、転移テレポートが加わったり、未来予知なんていう強い能力が加わったりと進展があったなぁと、船場を目指して思うい出す。ステルヴァまで1ヶ月はかかると親は言っていた。どんだけ遠いんだ。テレポートは極力使わないようにはしている。歩くほうがたのしいもんね。とりあえず、今日の目標地点は、途中で馬車を見つけられれば、王都。なければ、水の都グレーテル。とっても綺麗な場所で、ホテルがいっぱいあるのだとか。どこにしようかな
──馬車がなければ、だけどね。
整備された道は安全なようで、魔物の一匹も会わない。森に入ればいるのだろうけど。時間を食いたくないためスルーする。
──いろんな魔物が見てみたいなぁ
という願望こそあるが…


結局馬車には出会えなかった。ということでグレーテルだ。夕暮れ空だけど、それがまた良かった。噴水が所々にあり、水路には船が通る。開けた場所には必ずあるチューブには、オレンジ色に反射する水が流れる。
──綺麗…
という言葉が一番似合う景色。こりゃ観光客も多いわけだとあたりを見回す。夕景を見に来たのか、ホテルから人がたくさん出てくる。魔力街灯が光りはじめ、さらに景色は良くなる。そこかしこから「すげぇ」「幻想的…」「綺麗だ…」などと感嘆の声が聞こえる。しばらく見とれて、広い水路の水門に目を向けると、かなりの数の旅行客が船に乗っていたので、ハッとしてホテルをとりにいく。
「ここも駄目か」
ホテルの殆どが満室。ここしかない。この、見るからに高級そうなタワーホテル。
「ゔっ、大丈夫かなぁ」
一応ホテル代に75万円分と大金を渡されているけれど高級ホテルばかり泊まっていれば、すぐにすっからかんだ。貯金をすぐには使いたくないが…意を決して進んだ。
「おお…」
魔力感知型自動ドア。すごいです。そして二度目の
「おお…」
それはホテルのロビーを見て漏れてしまった声。すごい。高級感が。ん、でも、このホテル、安いぞ?あれ、あれれ?ハッ!国立ホテルと書いてある。前世では聞いたこともない。ホテルに国立なんてあるのか。安いし空きまくってる。みんな見た目の高級感に押されて入らないらしい。
「これは、知る人ぞ知る!みたいなやつなんじゃないですかねぇ」
そんなわけでここ、─国立べルージュ·ホテルに泊まることにした。


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うむ、このベッド、下手したら家のよりふかふかなんじゃ…と思うレベル。部屋が広いしベランダにお風呂があるし、三食もついて、一泊なんと10240円分である。びっくり。質に比べてすごく安いんじゃない?とガヴリィルは思う。夜食、次の日の朝食だけ食べて、その日は出発。次の目的地は、相変わらず。馬車が見つければそれに乗り王都へ。なければ…というところで、馬車発見。
「すみませーん」
ん?とこちらに顔を向ける商人。
「ちょっと王都まで連れて行ってくれません?」
「ん、ああいいよ。ちょうどそこが目的地だし、ね」
良かった。このおじさんはいい人そうだ。
「ありがとうございます。じゃあ乗らせてもらいますね」
と言って荷台の布をかいて入り、足を外に向けて座る。ああ、何年ぶりだろうこの感覚。ブランコに乗ったときのこの感覚。長らく学校、グッズショップ、本屋以外の場所には行っていなかった。まぁ中学生となればブランコに乗るのも限られるだろうが。途中に昨日は見なかった馬車がたくさん通った。昨日はなぜ会えなかったのだろうか。そういえば、この服装、怪しまれたりはしていないだろうか。ここまで来た限り、私のような服装の人は居なかった。モッズコートにスカートで革靴。ちょっと合わないかな?ちなみに髪はSA◯のア◯ナの薄緑版みたいな感じ。SA◯で思い出した。私の主武器は何にしようか。剣か杖か弓か。ただ杖はいらないんだよね。んー。よーし弓にしよう。正直こんな適当に決めていいのだろうか。一応弓も使えるけど剣と同じレベルにしか使えない。いっそのこと両方使うか!と思った時、それがいいなと思った。ガブリエルの力で、夢幻の鞄というの作った。作ったというかはスキルで出した、というのが正しいが。この鞄びっくりするほど中に入って、四次元ポケットかと疑うレベル。これに使ったいない方の武器を入れ、使いたいときにチェンジする。これで夢の剣弓同時使い。やったね。そんなことやら考えていたら、意外と時間が立っていたらしい。
「ついたよ」
とおじさんが言う。手短にありがとうございました!と伝えて走ってギルドへ。ルインズに王都に来たらギルドへ来てくれ!と手紙があった。そのため私はギルドへ向かっている。ギルドへ着くと、いかにも冒険者だ、というような風貌の男女。こちらをニヤニヤして見てくる、感じ悪そうな男集団がいる。すると感じ悪集団の一人が、急に立って私に
「おい!そこのチビ!」
む!?私はたしかに背が低いが初対面にチビと言われる筋合いはないとむっとする。
「ここはてめぇみてぇな雑魚が来る場所じゃねぇんだよぉ。まぁ今なら?俺の女になれば許すけどよぉ。」
感じ悪集団がクスクスと笑う。ほかの冒険者はこいつらにムカついたというご様子。
「いやぁ、ギルドマスターに呼ばれたんですよ」
感じ悪集団を無視して受付に言う。すると無視されたのがよっぽどムカついたのか、
「無視すんじゃねぇよ雑魚!だいたいギルマスがてめぇみてぇな子供で弱いやつを呼ぶわけねぇだろぉ!聞いてんのかチビ!」
と言って来る。うざい。
「五月蝿い」
手に入れたスキル「威圧」を使ういながら言ってやる。
「な、なんだよその目!調子乗ってんのか?ああ?」
「威圧」に一瞬ビクッとなってから反論してくる。
「いやぁ待たせたね。ガヴリィルちゃん」
受付の奥からギルマスが出てくる。感じ悪一号の顔が青くなっていく。感じ悪集団は一号を残してそそくさと逃げる。それをギルマスが止めて、
「うん?なんかみんなピリピリしているね?何かあったのかい?」
と聞く
「ギルマスさん!そこの青くなってるやつがその子めっちゃ馬鹿にしてたんすよ」
とポテトを食っていた冒険者が答える。
「おお?そうか。ありがとうマルク。」
どうやらポテト食い一号はマルクと言うらしい。
「だだだっておかしいだろう!!?そんなちb、小さい女の子がギルドにいてしかもマスターに呼ばれたなんて‼︎」
感じ悪一号が反論する。感じ悪集団もそうだそうだと言うふうに抗議。
「でも、それはこの子を馬鹿にする理由にはならないだろう?しかもよりによって11歳なんて子供を…」
「じゃっじゃあなんでこんな子に用があるんすかッ‼︎⁉︎」
「ああそれはね?この子が7属性適正だから、今のうちに勧誘を、ね」
「なっ!!?」
感じ悪集団以外も驚いている。
「しかもまだ未発見だった新スキル持ちなんだ」
「「「「「「「「「「「なッッ!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」
む?この反応の違いを見ると、レインボーより新スキルの方が珍しいようだ。
「そうだったのか。すまねぇ」
感じ悪一号が謝ってくる。こいつ意外といいやつ?
「別にいいよ。小さいのは事実だし」
と適当に返しておく。
「で、マスター=サン?勧誘は学園卒業してからしか受け付けないって言ったでしょ?何用デスカ?」
「いや、スキルと君の武器に関してだ。武器、まだ決めていないだろう?」
たしかにそうだ。剣と弓というのは決めたが、剣には直剣やら細剣やら色々ある。




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ギルマスには、ガブリエルのスキルに、転移、夢幻の鞄、未来予知が加わったこと。エンチャントの効果をとりあえず話した。尚、ギルマスとの話し合いで、武器は弓と短剣ダガーに決まった。
ゆ弓はギルド(クラロイロ支部)最高峰のものをくれるということで、短剣は宮廷鍛冶師に頼むとのこと。だから、2日ほどここネカロシスに泊まることになった。流石に一か月前に出るのは早かったので、いい暇つぶしになりそうだ。そういえば宮廷鍛冶師に作らせると言ったなあの人。てことは王宮にも私の話は届いてるってことなのかな?まぁどうでもいいが。さて夕飯を食べに行こう。なにやらネカロシスには美味しいハンバーガーモドキがあるらしい。前世ではマクドナ◯ドにはよく行った。ポテトの塩加減がいい。しかもネットも繋がっているあの店は素晴らしい。まぁそんなわけでなにかと大好きだったハンバーガーを食しに店に向かった。


「あ〜美味しかったなぁ」
ハンバーガーモドキ、食べました。チーズサンドと言う名のチーズバーガー、大変美味でした。よし!宿屋に帰って寝よう!


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「およ?」
部屋の前にギルマスとなにやらイケメンメガネが。んー爆ぜろ。部屋に入れると、
「いやぁガヴリィルちゃんは運がいいねぇ!」
「む。突然どうしましたか?」
「ああいやね、ちょうど王宮に『最速最高の鍛冶師』がいてね。まぁ横のこいつなんだが、こいつのお陰ですぐにダガーが出来たよ」
「!で、どれですか?」
「これだ!」
そう言って鞄から布に包まれた物体を取り出し、布を剥ぐと…刃は白金に光る短剣が出てきた。
「強そう」
「そうだろうそうだろう?あとここ見てくれ!」
そう言って柄の部分を指差すルインズ。
「!普通のより細い。」
「そう!こいつがお前サイズに合わせたんだ」
「でもどうやって…」
「こいつは『最高の鍛冶師』だぜ?それぐらい容易いんだろ」
「ああ…」
そのセリフには流石に苦笑い。
「あ、あとこれ、弓です」
宮廷鍛冶師の方がついに喋る。
「この弓は、最大3本の矢を一度に飛ばします。またほぼ真っ直ぐに矢を飛ばすので、700m先ぐらいには届きます。ただ慣れるまでしばらくかかる人もいる弓なので気をつけて使ってください」
と澄んだ声で説明を行う。
「はい!ありがとうございます!」
そう言って夢幻の鞄の中に入れる。
「お?もう行くのかい?」
「そうですね。歩きなので何かアクシデントがあったら間に合わないかもしれないので」
「そうかい。気をつけていきなよ」
「では、お世話になりました」
そう言って私はネカロシス港に向かった。




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「ふぁーー」
船の上で言う。暑い。とてつもなく暑い。もう春に入ってるのに。船の上にプールがあるらしいが水着を持っていないし、持っていても一人で入る勇気はない。船内レストランで食事しながら持ってきている勉強用の本でも読むか…
「ん〜そうしよ!」
レストランへ向かった。この船ーネカロシス〜ユーガリア(レベッカ王国)行きは日本でいう豪華客船というやつだ。船上プールに船内レストラン、完全個室客室などサービス精神極まれり。まぁしかしー
「オラァオラァオラァ!このレストランは俺らが占領だぁ。ねぇそこのぼく?とっととどけ!」
どうしてこうも厄介ごとに巻き込まれるのだろうか。ガッシャーン‼︎と音がなる。奴らがこっちに来る。
「お?いい女子いるじゃーん!まだちっせぇけど何才?名前は?家族は?ね?ね?ね?」
ウザ。とりあえず質問には答えようか。
「ー11歳。名前はガヴリィル・ミルキィウェイ。家族はいない。一人で来た」
「ふーんそっかぁー。何しにきたのー?」
「ステルヴァのセントリア魔法学校に受験するため」
「じゃあさー?俺の奴隷になる気はないー?」
「ないです」
「ふーん。こりゃ痛い目に合わせてやんないとなぁ?よしお前らぁ!魔法でもなんでもいい!痛めつけろぉ!」
特殊演奏エンチャント効果:神経毒」
おそらく金で雇われたのであろう黒ずくめの男たちには、神経を小規模破壊する毒による痛みが襲っているだろう。エンチャントは狙った相手にしか効果を出さない。私が踊りながら指揮をし、流れている曲が全員に聞こえても、神経毒は私の指定した相手にしか当たらない。逆に、音楽が聞こえているなら誰にでも魔法がかけられる。最強の状態変化魔法。私が指揮を執り始めてから流れた音楽。それにより仲間が異常をきたしたことに気づいたのか、逃げ出す痛い目一号。神経毒はなかなか強力だなぁ。そういえば最近、ステータスの上がり方がすごかった。レベルが11になったのだが、すでに体力と魔力以外は全部547に上がっていた。体力はそれ以上。
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レベル                     11
体力                       750 
俊敏                       651
攻撃                       547
魔力                       861
対魔                       547
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こんな感じで、凄い勢いで増えている。大丈夫かな?とか最近思っている。まあ転生者補正だろうけどね。


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レベッカ王国についた。ここからはこのマテリシス大陸を、ステルヴァのある東部へ向かう。ちなみにそれより北には魔族がはびこる世界がある。










二週間ほど経った。試験まであと一週間。もうガヴリィルはステルヴァについていた。途中で馬車に会えたのは奇跡だった。いくらサリナがいるからって魔の森は辛かった。なにせ迷う迷う。サリナが博識でも、ここの抜け方は分からない。同じ場所をぐるぐる回っていたところ、ちょうど道には慣れた商人の馬車を見つけて!毒、魔物を無効化する代わりに乗せてもらった。相手はこちらが受験生だとわかったようで、武器のメンテナンスに最適な鍛冶屋を教えてくれた。一見ただの民家に地味な看板が立っている店があるらしく、佇まいはあれだが腕はいいそう。よーしここに決めた。実際行ったら行ったでダガーについてどこで?やらなんやら聞かれまくった。『全部クラロイロです。』と答えておいた。宿屋も決めその日は寝た。
次の日。この日は宿からセントリア魔法学校までの道のり、所要時間を記録して終わった。その次の日もまたその次の日も勉強で終わった。
ステルヴァに着いて5日目。朝市に行くことにした。りんごが売っていたのでいくつか買って、見て回っていたところ…
「だれかその犬をつかまえてぇー!」
声が聞こえる慌てて後ろを振り返ると袋を咥えて走ってくる犬が!その後ろには叫んだ人であろう金髪の女性が!「お、おい、また盗み犬が現れたぞ!」なーんて声が聞こえるから、結構この市では有名な犬らしい。なんて凶悪そうな顔の犬。というか、周りは盗られた人より犬の走行ルートにいる私に目を向けている。そりゃこんな背が低い女の子に大きい犬が突っ込もうとしてるんだから当たり前だが。「逃げろ!」とか言われてるよ。
「はぁ」
ため息のあと…
「風よ吹け」
この世界の魔法はいずれも呪文が必要で、ガブリエルで風を発生させると怪しまれる。多分厄介事までの直行ルート。なので、ガブリエルで発動するが、極力呪文を唱えるようにしている。先程の魔法で犬を真上に上げる強風が!ひゅーっと落ちてきた犬は気絶。その間に咥えていた荷物を取り、走って来た女性に渡す。周りから称賛の声。ありがとうと言う女性…うん?背が、思っていたよりは低かったようだ。なぜ見間違いを…と思っまたが気にせずどういたしましてと返す。
「あれ?もしかしてあなたも試験を受けに?」
あ、やっぱりか。この女子は多分11歳にしては背が高いな。
「あ、え?あはいそうですね」
「やっぱりですか!じゃあ二人共受かったときのために名前教えてください。私はクレナイ·ステイル。」
え?
「もしかして、クラロイロからきました?」
ステイル─がギルマスと一緒だったから聞いてみる。
「いえ、生まれは確かにクラロイロですが、今は母親と一緒にレベッカ王国に住んでます。もしかして父の…」
「ルインズさんね。お世話になったよ〜。と、私はガヴリィル·ミルキィウェイ」
「じゃーリィルで!一緒に頑張ろう!」
「お、おー!」


祝!初の友達!
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6日目。試験は明日というタイミングで、学園が試験内容を公開。内容は


一次試験


筆記。呪文の暗記やら魔法陣。魔物の生まれる理由など。知識問題を出す。


二次試験(選択)


魔法実技は必ず。他に、剣技実技、弓技実技、調合実技の一つ(いくつでも可)を選ぶ。


というものらしい。実技は恐らく、多くやったほうが点数は稼げるが、いくつも扱える人は少ない。最終得点でクラスが決まるらしい。クレナイは剣技一つを選ぶらしい。できれば同じクラスになりたいが、私は剣技と弓技を選ぶ上、すごいやつをもらっているしかなり練習した。クレナイの剣技がすごいことを祈ろう。






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ついにその日がやってきた。


「おっはよーごさいまぁす‼」
「クレナイ、おはよう」
「いよいよ試験ですねぇ。ん〜、お?筆記試験教室同じじゃないですか〜」
「実際関係ないでしょ」
「まぁそうですけどねぇ」


「むぅ、隣の教室がうるさい」
「隣にはステルヴァの大貴族がいるらしいですよ。もしかしたらリィルみたいな人じゃなくて完全に、平民をバカにする貴族かもしれないです。あれ?そこまでうるさくはないですよね?」
「私は調律と伝令の天使ガブリエルで良く音が聞こえるんだよー」
「ああそういうことですか」
向こうで静粛に!と聞こえる。ということは…
ガララララ…
ドアが開く。
「えー私がこの教室の試験官を担当するアリサです。開始まであと10分ほどですので、筆記用具以外はすべて鞄にしまってください」




十分後


「では試験を始めます」


紙を配り終え、アリサ先生はそう言う。いよいよ、試験が始まった。


うーむ。簡単すぎる気がする。なぜだ?周りは結構悩んでいるのに。まさか引っ掛けが?
しかしそんなものは見つからなかった。
二次試験。
魔法実技は、魔法で的を破壊するというものらしい。的は全部で10個。縦にあったり横に並んでいたり、斜めにおいてあったり。それのすべてを早く壊したほど点数が高い。一つ一つ狙うのはめんどくさいので、爆破でまとめて壊したら、早くて35秒の試験を7秒で終わらしてしまった。んーこれはやってしまった。頭おかしいやつとか思われるわこれ。クレナイはすごい!って顔していたが…剣技と弓技なんだが、剣技はやっぱりなしにしておいた。これでクレナイと同じクラスになれる?と思っていたが…




結果発表の日。
「「あ?」」
二人してそんな声を出してしまった。同じクラスであるAだったのはいい。でも、なぜ?二人して、"特待生"だった。
「いやまぁ、いいんだけど…」
「確かに試験の日は調子は良かったけど…」
「「これは予想してなかった」」
はぁ。何という喜劇。奇跡だ!
さて、これで入学まで一週間。制服の採寸に行かなければ。
「とりあえず、採寸。行きましょう」
「そうだね」
魔法って便利。前世と違って、いちいち着なくてもいい。一瞬で終わる。制服は上は男女あまり変わらず、下が紺色のズボンかチェックのスカートか、という違い。うーんどうだろ。私にはわからない。







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