戦雷記

ノベルバユーザー257840

惑星間の戦争

とある家の小さな部屋、男の子が机に向かって勉強中だ。
すると男の子は不意に顔を上げ、窓の外を見た。
(…飛行機が飛んでる)



 夜、轟音と共に大空を翔ける飛行機。

 今はドイツの第335教習飛行隊の夜間飛行訓練の最中だ。
『こちら335空1番機、教習飛行を開始します。どうぞ』
『こちら管制塔、気を付けて飛行して下さい。』
教習機はゆっくり旋回を始め、しばらく飛行場上空を飛行し、ゆっくり高度を落としていく。

 まさにその時だ。
『こちら1番機、国籍不明の航空機が接近中。どうぞ』
『こちら管制塔、指示が出るまで待機してくれ。どうぞ』
『こちら1番機、了か…ザッ…ザー…』
1番機との交信が切れた。
「1番機、返事をしろ!おい!」
「もう撃墜されたようです。レーダーにも映りません。」
その時、2番機から通信が入る。
『こちら2番機、1番機が撃墜されました。応戦の許可を。』

 管制官はしばらく考えた末、
『…こちら管制塔、応戦を許可する。』
「本当にいいのですか?」
「新人パイロットを亡くす事になるが、仕方ない。」
窓の外は漆黒の闇だが、管制官は窓の外を見守る。

 「クソ、何も見えねぇ!」
銃手が叫ぶ。
「もっと動いてくれ、追いつけないぞ!」
「仕方ない、コイツぁ重爆だぞ。」
2番機はドイツの爆撃機 He111、そう軽快に動くものではない。
「くそ、こうなったら…」
機首が急に上を向き、速度が落ちだした。そして敵機もそれを追いかける。
銃弾が容赦なく命中し、部品がバラバラと外れ出す。
「落ちろおぉぉぉぉ!!」
敵機が火を噴くと同時に、こちら側の主翼も遂にもげた。
「やったあああああああああぁぁぁ........」
乗組員の喜びの声と共に、 He111と謎の敵機は深い闇へと消えた。


 とある駐屯地では、皆がテレビに釘付けである。
『昨日午後11時頃、ドイツ軍の練習機が何者かに撃墜された事件で専門家は、あの戦闘機は地球の物だと述べ、意見が対立しています。地球側からの返答は未だ返って来ず、真相解明には時間がかかる見通しです。えーまた...』
「練習機でも十分戦えるでしょ、ドイツって弱いのね。」
「いや、爆撃機だったらしいぞ。重爆なら流石に軽くは動けないだろ」
川西と仲島が話し合っている。
「何れにしても、もし地球の機体なら戦争になりかねないな。」
「惑星間の戦争ねぇ...」
 その時歴史が動いた。
『臨時ニュースを申し上げます。只今より惑星WTと地球が、戦争状態に
入れり。繰り返します。惑星WTと地球が戦争状態に入れり。』
辺りがざわざわし出す。
「やっぱりか...」
河崎が呟いた。
「条約を破ったって事?」
テレビに夢中で、山葉の質問には誰も答えない。
その後しばらく、駐屯地はお祭り騒ぎだった。

 ニュースによると、惑星WTは地球に対して徹底応戦すると言及し、
地球本土まで届くワープ装置の開発に着手した。


その夜、河崎は空を見上げ笑った。
「これからたのしみだ。」

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