命を助けてくれた女騎士がただのくっ殺キチだった件

名無し@無名

じゅうにくっ殺

 一国の王子であるナイゼルさんは、何故かボロ雑巾みたいな状態で牢屋にぶち込まれ、挙句に猿轡をされて監禁されていました。
 これだけでも中々にショッキングな光景でもあるのだが、ナイゼルさんならば何となく普通の光景にも思えてくるから不思議である。
 しかし、とりあえず状況がよく分からないので私は説明を求める事にした。

「あの、これってナイゼルさんですよね?どうしたんですか?まさかセリアさんに激し目のプレイをお願いしたくて拗らせたとかじゃあ……」
「いえ……僕も初めはその様な事だと考えてました。しかし、いざ蓋を開けてみたら、事態は更に深刻だったという訳なのです」
「……と言うと?」
「これも見た方が早いです。……外してやってくれ」

 アルゼルさんは牢屋の前にいた番兵さんに指示をすると、牢屋の鍵が開けられナイゼルさんは中から連れ出された。そして猿轡を外されたナイゼルさんは薄っすらと目を開けて、小刻みに震えながらこちらを見た。

「……う、あぁ……」
「大丈夫ですかナイゼルさん!?」
「お、おでの……おでの身体を……か、返してくれぇえ」
「!?」

 見た目だけはイケメンのナイゼルさんだが、その声が以前とは別物になっていた。くぐもった低い声で、どこかの訛りがある様な、そんな声に変わっていた。

「あの……遅めの声変わりですか?」
「そんな訳ないでしょう。それに見てください、セリア嬢を目の前にしても冷静さを保っています」
「!?……ホントだ!」
「うむ、だんだんと状況は理解できてきたぞアルゼルよ」
「どうゆう事ですかお姉様?」
「簡単な事だ。ナイゼルは恐らく何かしらの方法で入れ替えたのだよ、オークと自分の身体をな」
「そんなまさか!?なぜそんな事を……」

 セリアさんの言葉に対し、アルゼルさんは頷くと同時に大きなため息をついた。

「その通りです。我が愚兄はセリア嬢に構って欲しいが故に、セリア嬢の気を惹く為の策としてオークの身体を手に入れたのです。とある裏の世界では有名な呪術師に金を積み、呪いの力で野生のオークの身体を手に入れた。つまり兄様とオークの中身が入れ替わったのですよ」
「!?……そんな映画みたいな事が出来るんですか!」
「もちろん簡単じゃありませんよ。元に戻すには呪いをかけた呪術師と、オークの身体を手に入れた兄様を確保しなければならない」

 頭を抱えるアルゼルさん。
 それもそうだ、実の兄が好きな人に振り向いて欲しくて、お金を注ぎ込んで豚野郎になったのだから。

「……馬鹿者めが」
「セリアさん?」
「私はオークが好きなのでは無く、くっ殺のシチュにエクスタシーを感じるだけだ。例え見た目がオークになろうとも、奴にそれを活かせる腕がなければ無意味だ」
「しかし貴女の責任だ!兄様を誑かしたのは他でもなくーーーー」
「落ち着けアルゼル、それに関しては私も少しは責任を感じているのだ。ここは私に任せてもらえるか?」
「ッ……では、どうするのですか?」
「簡単な事だ、私を探して徘徊しているナイゼルを捕まえる。そして呪術師の所へ連れて行き呪いを解かせる。オークを見つけるなど呼吸をするより簡単な事だ」

 そう言ってセリアさんは、ルルティアさんに何か耳打ちし始めた。そしてセリアさんとルルティアさんは一足先に外に出る事になり、私はとりあえず目の前のオークから話を聞く事にした。

「あの、つかぬことを聞いてもいいですか?」

 豚野郎と化したナイゼルさんは私の顔を見て弱々しく答える。

「……あんだおめぇは?まな板みたいな女騎士だな」
「秘技、超目潰し!」
「いでぇよぉぉぉおおおお!」
「ちょっとアリーシャさん!身体は兄様のですから程々にして下さい!」
「あ、すいません。脊髄反射でつい」
「う、うぅ……なんでおでがこんな目にあわねぇといけねぇんだ。おでは、おではただ細々と暮らしてただけなのに」

 さめざめと泣きだしたオーク。
 しかし身体はナイゼルさんなので、縮こまって正座して泣いている姿は中々のものだった。

「あの、詳しく事情を聞かせてくれますか?」
「……あぁ。あれは確か。3日くらい前のことだぁ」


 ◆


 おではいつも通り、森に迷い込んだ女騎士にちょっかいを出してたんだ。
 最近は単騎で乗り込んでくる奴らがいるんだげども、それを狙っておでは森を巡っでたんだ。

「ぐっへへ、おでとイイコトしようぜぇ?」
「は?くそキモいんですけど」
「…………」
「え、うそ泣いてんのwww?いやマジでウケるんですけど!?ねぇちょっとコッチ見てよ?ほらインス○に投稿するからさ?ほらほら早く早くーーーー」
「あぁあぁあああああああ!」

 おでは見た目はゴツいんだけども、何故かこの喋り方の所為で舐められているみたいだ。
 それに最近の女騎士はみんな派手で強くていけねぇ。剣を持たずにスタンガンを常備している奴もいたんだ。
 結局逃げ回って、なんとかおででも何とかなりそうな女騎士を探すてたんだけども、そんや都合のいい話は無かったんだ。
 しっかしそんな時、おではあの変態に出会った。

「あ、それがナイゼルさんですね?」
「んだ、あの変態王子はおでの身体を見てこう言ったんだ」



「いいね、僕は君の身体が欲しい!」



「戦慄しただ」
「でしょうね」

 そっからはよぐ覚えてねぇ。
 目が醒めると、目の前には喜びながら小躍りしているおでが目の前に見えて、だげどもおでは違和感を覚えて自分の身体をみたんだ。すると、おではあの変態王子になっつまってたという話なんだ。



 ◆


「つまり、ナイゼルさんの被害者という訳ですか」
「助けてくんろ!おではこの身体になってなんも良い事がねぇ!」
「いやいや、外見はイケメンですよ?女の子は引っ掛け放題じゃないですか」
「いんや、おではドMだぁ。話に出た女騎士みたいなのは実は大好物で、スタンガンも最近は気持ちよぐなってきたところだぁ」
「引くわー」

 中身が変わってもこれじゃあんまりブレた感じがしない。
 しかしまぁ、これは一方的にオークが可愛そうでもあるので協力する事にした。

「えっと、貴方の名前は?」
「おでの名前は〝ドライヒ・ランツェラインハルト〟だぁ」
「出る作品間違えてるんじゃないんですか?それと訛ってる癖にドイツ語みたいな名前スラスラ言うのもアレですよ」
「それは厨二を拗らせたおでのお父にいっでくれ」
「じゃあ分かりやすく豚太郎さんで!」
「なんの捻りもねぇでねぇかよぉ!」
「じゃあ待ってて下さいね豚太郎さん、アルゼルさんも期待してて下さいね!」
「あ、えっと……はい」

 私は勇んで走り出し、牢屋から地上に向かった。ここで成果を上げればきっと、素敵な女騎士への道が拓ける。
 棚ぼた的ではあるけれど、アルゼルさんに恩を着せておいて損はない。これくらいのリターンがなくては、私のハードモードの人生に機転なんて訪れないのだから。

 私は階段を抜け、城の扉を開いた。
 するとその視線の先には、セリアさんとルルティアさんが立っていたのだが、その様子が些か違っていた。
 ルルティアさんは鎧では無く、よくネタに上がる例のセーターを着ていた。

「おぉ、遅かったなアリーシャよ」
「あの、その前にルルティアさんの格好は一体……?」
「うふ、どうです似合いますか?」

 背中どころかケツまで見えそうな露出。下着が見えない所をみると、裸の上に着ているだけに見えたそれは、まさにあの『童貞を殺すセーター』だった。
 それに加え、ルルティアさんには前に嗅いだようなあのオーク寄せの香水がたっぷりとふられていた。

「ナイゼルは元々、私の特製のオーク寄せに反応を示す。更に際どい格好をする事でオークの身体に眠る本能を刺激すれば、その相乗効果により威力は抜群だろう!」
「セリアさんが着るんじゃないんですね」
「私は肌を出すのは好きじゃない、その点ルルティアは適材と言う訳だな」
「ええ、このスースーするのが堪りません」

 無駄に豊満な胸や尻、その全てが私にとって憎かったが、自ら餌になる事に躊躇しないのはすごい事だと思う。

「アリーシャさんも一緒にどうですか?」
「やめときます、私は自ら崖に落ちていくほど愚かじゃありませんので」

 あんなもの着たら、間違いなくスッカスカになって原型を留めたもんじゃない。SNSの普及した昨今、そんな姿で出歩けばきっと色んなハッシュタグがつけられて拡散されるだろう。
 ともあれ準備は整ったらしい。
 ならせめて、私は出てきたナイゼルさんを捕まえる位の働きはしようと思った。

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