命を助けてくれた女騎士がただのくっ殺キチだった件

名無し@無名

じゅういちくっ殺

 パツキンイケメンことアルゼルさん。
 シュッとしたクセのない顔立ちは、あらゆる面で濃ゆいナイゼルさんが目立つが故に好感が持てた。しかし、私が反応したのは〝そこ〟では無い。
 まずはそれを確かめる為に、私はひとつ質問を投げかけてみた。

「あの、アルゼルさん。貴方はセリアさんの座右の銘というか魂である〝くっ殺〟にどの様な意見をお持ちでしょうか?」
「くっ殺?僕にはさっぱり理解出来ませんが……」
「!?」
「それがどうかしましたか?」
「い、いえ!なんでもござりませぬ!」
(ござりませぬ?)

 どうしよう、久々に会った普通の人に変なテンションになってしまった。落ち着け私、そもそも変な人が多すぎる最近の環境こそが異常なのだ。

「アルゼルよ、お前にはくっ殺の良さがわからんか。ナイゼルは共感してくれたぞ?」
「兄様はくっ殺とやらではなく貴女に惚れているだけです!でなければ、こんな事にはッ!」
「そう言えば私達に話があるんでしたっけ?」
「ええ、隠していても仕方がないので貴女達には包み隠さず話しておきます。とりあえず……〝見た〟ほうが早いので付いてきてもらえますか?」
「?わかった」

 とりあえず、アルゼルさんが私達に何かを見せたいらしいので後に着いて行く事にした。

 ◆

 城の中はとにかく絢爛の一言だった。
 床に敷かれたカーペット、壁に飾られた絵画、働くメイドさんの容姿。どれを取っても、素人目でも分かるくらいの最高峰である。
 特に豪華な額縁に入った絵画なんてその筆頭だ。目に付いた絵は、白い背景に鮮やかな赤が散らされただけのものだが、なんというかこう、迸るセンスを感じずにはいられなかった。自分で言うのもアレだがモノを見る目はあると思っている。私は自信満々にアルゼルさんに尋ねてみた。

「いやーあの絵は素晴らしいですね。生命の胎動を思わせる躍動感を感じますよ」
「……あれですか?あれは兄様がセリアさんの〝残り香〟に興奮した時にブチまけた鼻血ですが」
「さ、よそ見してないで行きましょう」

 少し前の私を全力で殴りたい。
 そんな気持ちと、鼻血を散らした紙を額縁に入れたナイゼルさんを助走をつけて殴りたいと思った。


 ◆


 連れてこられたのは城の地下に位置する場所だった。薄暗く、ロウソクの灯りでほんのり照らされた通路を進むと、何やら物々しい鉄格子が見えてきた。よくよく考えれば、このような場所にあるものなんて地下牢しかない。
 そんな地下牢の前につくと、アルゼルさんはそこに向けてランタンの灯りを翳した。すると、その灯りの先に私達の目を疑う人物が照らし出されたのだった。

「……む、どうゆう事だアルゼルよ」
「なんで……ここにーーーー!?」





 そこには両手両足を縛られ猿轡をしたナイゼルさんその人が横たわっていた。

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