命を助けてくれた女騎士がただのくっ殺キチだった件

名無し@無名

はちくっ殺

 
 いよいよ始まったルルティアさんによる〝くっ殺〟。

 そう言えば、屋敷の中で見たけれど、改めて人のを見るとなると新鮮である。
 私がセリアさんの前で見せた(別に見せたつもりは無いが)ものは、はっきり言って始めは酷評であった。
 多分、セリアさんが言っていた〝ナチュラルボーンバージンくっ殺〟なる、言わば初出し故の加点による甘めの採点だったに違いない。しかし、そこに素質を見出されたと言われても、私自身は特にといった具合でどうすれば良くて何をすれば駄目なのか、未だに不明である。
 ただ、勝負事なので負けたくは無い。その一心で、私はルルティアさんのくっ殺から何か得られるものはないか凝視した。
 負けたくないからであって〝くっ殺〟を極めるつもりはない。そして、胸の大きな可愛い女騎士にジェラってる訳でも決してない。断じて無い。

 そんなこんなしている内に、豚吉さんとルルティアさんはセッティングを終えたらしい。

 こうしてみると、なんだか卑猥な映像の撮影現場に見えなくも無い。まぁ私も本物のその現場を見た事がないのだが、雰囲気というか、何とも言えない背徳感が入り混じる、そんな不思議な光景だった。

「さぁ準備はいいようだな!それではーーーーよーい……〝くっ殺〟!」

 まるで映画の撮影みたいなノリで、ルルティアさんのくっ殺が始まった。




「ちぃッ、仲間と逸れただけでなく、貴様の様な醜い豚に負けるなど……お父様から譲り受けたこの剣が折れさえしなければッ!」
「ぶひょひょひょ、いくら強い女騎士とはいえ、その命ともいえる剣が無くてはただの肉便器よなぁ」

 悔しさで涙を滲ませるルルティアさん。え、俳優かなんかなのあの人、いきなり泣くなんて、そもそもその時点で私出来ないんですけど?
 それに乗っかり迫真の演技の豚吉さん。だけど、その持って生まれたイケボはどうしようも無いらしく、下品なセリフと相まって少し面白かった。

「剣は折れても私の心までは折れてはいない!」
「口だけは減らない雌が。ならその身体に解らせてやるとしようじゃねぇか!」
「貴様の様な醜い豚に辱められる位ならーーーーくっ、殺せ!私を殺せぇぇぇええええ!」




「はいカット、中々だなルルティアよ」

 どこから出したのか、セリアさんは映画の撮影で良くみる例のパチンとなる黒いアレで場を仕切り出した。
 今にもルルティアさんに襲い掛かりそうな剣幕の豚吉さんもピタリと止まり、そしてルルティアさんも、目に蛇口でもついてるんじゃないかって位にピタリと涙を止めた。

「いかがでしょうお姉様!私の今のくっ殺は!?」
「うむ……77点という所か」
「80点に届かないんですかッ!?自信あったんですが……」
「ルルティアよ、確かにお前のくっ殺は非常に丁寧で、実に教本をよく見たくっ殺だ。しかし、それはあくまで表面上から読み取れるものだけを具現化している。私があのシチュエーションに込めた裏側までは見えていないらしい」
「そ、それは一体!」
「あのシチュエーションはな、あの女騎士は前の日、付き合っていた男と喧嘩別れした後なのだ。オークに似た彼氏への腹いせにオークを狩ろうとした矢先に、逆に倒されてしまったと言うわけなのだよ」
「な、なんと!?そこまで見えてませんでした!このルルティア、一生の不覚!」
(いや、おかしいから。言ってること全部おかしいからね?)

 ガクリと膝をつき、そして庭先でゴロゴロ転がりながら悶えるルルティアさん。
 しかしセリアさんのアドバイスは続いていた。

「故に、あの状況でのくっ殺はお前の言った〝く↑ッ→殺↑せ↓〟では無く〝く↓ッ↓殺↑せ↓〟が正解だ」
「な、成る程!!勉強になりますッ!」

 急いでメモにそれを記す。もう格ゲーのコマンドみたいな発音だが、その違いがどれほどなのか、私にはてんでサッパリだった。

「さ、アリーシャよ、次はお前だ。ルルティアに解説として答えを言ってしまったので、お前は他のシチュにするが、構わないか?」
「え、ええ……大丈夫ですケド」

 どんなシチュエーションだろうが、もうこのレベルなら関係ないなと、私は少し自暴自棄気味になっていた。

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