最果ての闇

黒猫

疾風勁草

射撃場へ着いた冬香はその広さにあ然としていた。店の広さも相当なものだったので射撃場もある程度の広さはあるのだろうと思っていたが予想以上に広すぎた。豪と新はそんな冬香を意にも介さずまた話を進めていく。
「じゃあ、好きな的に撃っていいからね」
新にそう言われたが銃など見たことすらなかった冬香に扱い方など分かるわけがない。
「使い方…分からない」
新にそう言うと新は驚きを隠しきれない様子だった。
「え?使い方知らないの?てっきり城ノ内に教えられてるかと…」
「教わってない」
冬香はそう答えると豪を見上げた。
「豪、使い方教えて」
「あぁ、教えてやる」
豪はそう言うと冬香に銃の扱い方を全て教えてくれた。まだ早撃ちなどの技は教えてくれなかったが敵と対峙した時の対処法は知ることが出来た。
冬香には銃術の才能があったらしく、少し練習しただけで豪も驚くほど腕を上げ、止まっている的ならかなりの確率で当てられるほどになった。
「冬香ちゃん、銃術の才能あるね。俺のグループ来ない?」
「冬香を裏業界に引き込もうとするな」
そう新に言い返したのは豪だった。
「何で城ノ内に止められなきゃならないの?俺は冬香ちゃんに言ってるんだけど」
口喧嘩に発展しそうになっている二人の間に冬香はため息を吐きながら割って入る。
「私はあなたのグループに行く気はない」
「そんなバッサリと斬り捨てないでよ。少しくらい考えてくれたって…」
「嫌」
冬香は即答した。自分の知らない組織に入るつもりなど毛頭なかった冬香に迷うことなど一切ない。はっきりと拒絶の意を示した冬香を見ると豪は我が意を得たりと笑う。
「ほら、冬香もこう言っている」
「まぁ、冬香ちゃんがそう言うなら諦めるしかないかな。でも気が変わったらいつでもおいで。大歓迎だから。一応連絡先渡しとくね」
新はそう言うと連絡先を書いた紙を冬香に渡してくれた。
「ん、ありがと。なら私の連絡先も渡しておく」
冬香はそう答えると自分の連絡先を新に渡す。
「くれるの?ありがとー」
新は意外そうな顔をしたが、嬉しそうに冬香が渡した紙を受け取った。
「じゃあ、今日は代金取らないから俺の奢りでいいよ。二丁くらい持ってた方が便利だから一つおまけね」
新は上機嫌でそう言い、もう一つ銃を渡してくれた。豪は黙って事の顛末を伺っていたが冬香が銃を受け取ったのを確認すると冬香へ声をかける。
「終わったか、ならもう行くぞ」
「また来てね。城ノ内は常連客だし、いい武器仕入れとくから」
「あぁ、また頼む」
そう言うと豪は冬香を連れ、店を後にした。

豪と車へ戻った際、冬香は何者かの視線を感じていた。何かまでは分からないのだが、見られているような気がしてならない。豪に相談してみようか迷ったが、冬香の勘違いで豪に気を使わせてはならないと判断し、何も言わなかった。
車を走らせ少しすると豪がいきなり車をとめた。そのまま冬香に銃の装填をするよう指示する。冬香は戸惑いつつも先程新に貰った銃の装填をした。
「敵だ。車から降りろ」
冬香はその言葉通り車から降りると周囲に気を配る。続いて豪も車から降り、銃を取り出して構える。暫くの沈黙の後、十人程の男が各々の武器を手に姿を現した。
お互いに一言も発さず時が流れる。先に動いたのは敵の方だった。リーダー格らしき男が一瞬で冬香の間合いに踏み込んできた。冬香の心に緊張が走る。高鳴る鼓動を抑え、男の額に狙いをつけると引き金を引く。
男は身を翻して回避したが頬を銃弾が掠め赤い筋を作る。冬香はもう一度標準を男に合わせるがその引き金を引くよりも先に男がその場に崩れ落ちた。
何事かと豪を見やれば銃口を男へと向けている。それだけで状況を察した冬香は豪に礼を言った。
冬香が再び敵陣を見た時、既に男達は動き出していた。豪は冷静に銃で敵を撃ち倒していく。冬香も己に斬りかかってきた男を銃で撃ち抜く。すると男の腹部から鮮血の花が噴き上がった。
冬香は己にかかる返り血など気にも止めずもう一人の男を撃つ。
冬香にナイフを持った男が迫る。この男が最後の一人だ。震える手で刀を振り抜く。男の首筋から血が溢れ出し、次の瞬間もう男は息をしていなかった。

冬香は自分にとって初めての実戦を終え胸の高鳴りを抑える事が出来なかった。それもそうだろう。まだ齢十一歳の少女が人間を殺して冷静でいられるわけがない。殺し慣れているのなら話は別だが、冬香が人間を殺したのはこれが初めてなのだから。
冬香は刀を振り抜いたあの瞬間を思い出す。このまま実戦経験を積んでいけば母にも届くかもしれない。そのためにもこんなところで躓いている暇はないのだ。冬香は殺人を犯した後でも尚、闘い続ける道を選んだ。




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