Regulus

有賀尋

Entrust me

『叶多、俺の写真集のカメラマンやってくんない?』

そう真修から告げられたのは僕が仕事で、真修がRegulusのミーティングに出た日だった。
今では一緒に暮らし始めた家で、詳しい話を聞いた。

「写真集?真修が出すの?」
「そう、正確にはRegulus全員で、かな。Regulus名義で個人で出そうってことになってさ、由真に、かっこいい俺を見てもらえば?って言われてコンセプトは決まったんだけど」

かっこいい真修か...。

正直真修くらいかっこいい人の撮りようはいくらでもある。

真修はRegulusの中でも元気なイメージを持たれているから、そのイメージを払拭させて、かっこいい真修の写真を撮ればいい。
笑顔がない、モノトーン統一で締める写真集もありだろう。でも、それはどちらかというと遥先輩かな...。カラーを入れつつ、真修のかっこいい所か...。
今までのモデルの写真や資料のデータを見ながら探していく。すると僕の写真のフォルダの中の1枚に目が止まった。

「...真修、和装は?」
「...和装?着物着るの?」
「うん、これ見て」

僕が真修に見せたのは、とある歌手のビジュアル撮影の時のデータだ。既に情報解禁になっているから見せても問題ない。

「...へぇ、すげー...」
「これなら普段と違う真修が見せられると思う。でも、あんまりカッコよすぎるのもあれだから、少しは普段の感じのを入れてもいいんじゃないかな、カフェとかでさ」
「...うん、いいね!」
「都内で場所があるはずだから、見ておくね」
「さっすが叶多ー!」

そう言って抱きしめてくれた。

ロケハンを終えて撮影当日。
僕は一足先に家を出て向かった。季節柄咲いている花に混ぜ込んで、バレない程度に花をコソッと入れ込む。ファインダーを覗いて試し撮りをしながら微調整を重ねていると

「柊真修さん入られまーす!」

と、真修が和装をして現れる。真修の和装はかっこよかった。思った通りに似合っていた。
僕を見つけた真修が近寄ってきた。

「どう?似合う?」
「うん、似合ってるよ、真修かっこいい」
「すげー不思議、した事ないからさ、和装なんて」
「新規開拓もいいと思うよ、それに、今回はそれが目的なんだし。ほら、そっち入って!」

真修をセットに押しやって撮影が始まった。
今回はコンセプト以外は全て僕の企画が通った。司馬先輩達に確認を取りつつ、真修のかっこよさを全面に出せる企画を作った。
そして僕は、和装した真修に少し意地悪なことをしてみた。

「柊さん、色気出してみてください」

案の定、真修はすごく困った表情をしてた。すごくわかりやすい。
だけど僕は知ってる。
真修はカメラを見ているだけでいい。それで色気は出る。
それを真修は知らない。だから変に身構えてしまう。

「変に身構えなくてもいいですよ、ただカメラ見つめるだけで」

後は撮り方の問題。少しずつ光の当て方や顔の角度、細かな仕草をオーダーしながら和装の写真を終えて、次に向かったのはカフェ。
店長さんの衣装を着てコーヒーを淹れたり、人に渡したりする場面を流れにした。

真修や他のスタッフさん、先輩方と写真を選びに選んで完成した写真集を貰って自分で見ると色々反省点が出てくる。
どれだけモデルを魅力的に映すか、新しいものを引き出すか。これはカメラマンの手にかかっている。どれだけモデルや衣装が完璧だとしてもカメラマンが下手では全てが台無しになってしまう。
いつかはRegulus全員の写真集のカメラマンをやりたい。そうなるには、今の先輩達に追いつかなきゃいけない。

...真修に負けてられない。

いつか胸を張って「僕に任せてください!」と言えるように。

写真集は好評だったって真修が言ってた。重版もかかるみたい。

良かったね、真修!

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