勇者の魂を受け継いだ問題児
*早朝の学生寮―2*
「……おいおい……。なんでこんなに混んでんだ……?」
賑わう食堂を睨み付けながらセンリが言った。
それに、半眼で呆れ半分に応じたのはクロードだった。
「あ~あ……だーから早く行こうって言ったじゃねぇか……」
「うるせぇ! お前だって10分後に来るとか言っといて、結局来たのは15分後だっただろうが!!」
「それでもお前、まだ準備終わって無かっただろッ!?」
二人が電話で約束した約20分後―――まだ6時前だというのに、ほぼ満員の食堂にて。
茶髪のチャラ男と黒髪の問題児が、子供のような罪の擦り付け合いをしながら席を探していた。
だが、どの席も誰かしら座っていて、二人が座る席など一席も残っていない。
そんな時、嘆息しながらセンリが呟いた。
「……俺、別に食堂で食わなくてもいいかな……?」
そう呟いたセンリに、隣のクロードが声を張り上げて言ってくる。
「……は?お前何言ってんだ!? 朝の栄養はしっかり摂れよ! ここの飯は本当に美味いんだぞ?」
それにセンリは鼻を鳴らし、
「はっ、知らねぇよ! 俺は部屋に戻れば買い置きしてあるカップ麺があるし……。 わざわざ席が空くまで待つのも退屈だからな……」
「はあぁ~?お前、そういうこと言う!? 大体カップラーメンってのはなぁ―――」
「うるせぇ! ……てめぇ、それ以上カップラーメンを馬鹿にしたら許さねえぞ……?」
―――云々かんぬん。
下らない言い争いを続けながらも、空いている席はないものかと周囲を見回していた。
「…………」
……と、そこで、センリは食堂の一角の席に座る、見慣れた三人の少女たちを見つけた。
すると、こんな人混みの中でもセンリの視線に気づいたのか、燃えるような赤髪が特徴のサヤが「げっ……」とか言いながら、此方をいかにも嫌そうな目付きで睨み付けてくる。
そして、そんなサヤに釣られ、フィリシアとシャノンの二人もこちらの存在に気づいたようだ。
そこでシャノンが席から立ち上り、手を振りながら呼び掛けてくる。
「おーい!セッち~~ん!!」
「…………」
彼女は俺を見つけると、決まってこう呼んでくる。
最初は『セッちん』などと言う巫山戯たあだ名に違和感のようなものを覚えていたのだが、今では何故かそのようなものは無い。
フィリシアやサヤの事もあだ名で呼んでいるようだが、彼女にはそういった能力のようなものがあるのだろうか?
―――などと言う、実にどうでもいい思考を停止させ、センリは未だに周囲を見回している隣のチャラ男を見据えて言った。
「……オイ。どうやら席が見つかったようだぞ?」
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