勇者の魂を受け継いだ問題児
*センリの部屋*
「ここが今日からセンリさんに入っていただく部屋になります」
「……ふむ」
寮長にそう言われ、室内を見回してみる。
部屋の広さは1LDK。
個室の学生寮にしてはかなり広い方だろう。
少なくとも、元々住んでいた東京のアパートよりは広かった。
先程の光景を見て、一体自分はどんな現実離れした部屋に住まされるのだろうかと心配していたのだが、安心した。
―――いや、むしろ『気に入った』と言うべきか。
その一番の理由は、トイレや洗面所、浴室などといったものも完備されている事だ。
寮、と言えばやはり『共同』という、実に憎たらしい言葉を連想するだろう。
実際にここの寮は、一つの部屋に複数人が住むという、いわゆる『ルームシェア制』。
本当はセンリも、知らないヤツと共同でこの部屋を使う "はず" だったのだ。
しかし、センリは編入生。
この時期には既に、他の寮生たちの部屋は決まってしまっている。
つまり、この時期に入寮するのはセンリだけ。
結果的に、誰も使っていなかったこの部屋を、一人で独占できるというわけなのだ。
「…………」
―――そしてこの時、初めてセンリが『編入生で良かった』と実感した瞬間だった。
「……気に入っていただけましたか?」
そう訊ねてくるカグラに、センリが笑顔で応じる。
「はい。とても綺麗で住み心地が良さそうです」
「そうですか!ありがとうございます。そう言っていただけると私も嬉しいです。 それでは、これを……」
そう言って微笑んだカグラが、数枚の紙の束をセンリに手渡してくる。
「……これは?」
「この寮のマップや規則などをまとめた物です」
「…………」
「この寮は他の生徒たちも利用しているので、その方々に迷惑をかけぬよう、その紙に記されている最低限の規則は守ってくださいね?」
「……わかりました。後で目を通しておきます」
そう言うセンリに、カグラが微笑んで。
「―――と言っても、ここの寮生たちは皆良い子なんですよ」
「…………? と、言いますと?」
センリが首を傾げて訊ねる。
すると、相変わらずの優しい笑みを浮かべたカグラが、とても嬉しそうに語り出した。
「数年前に一度、規則を破ってしまった子がいたんです。 その時、私がその子に『ちょっとだけ』注意したら、それ以降、この寮で規則を破る子がいなくなったんです! 私としては、本当に嬉しい限りですよ」
「………………」
……なるほど。
コレは、すぐに目を通した方が良さそうだ。
「それでは私はこの後用事があるので失礼します。 もしも分からない事があれば、私やお友達に聞いてくださいね?」
「はい。わかりました。……何から何まで、本当にありがとうございます」
そう言って、センリが軽く頭を下げる。
それに、笑みを浮かべたカグラが応じる。
「ふふっ。それが私の仕事ですから。……それでは、また―――」
そう言って、カグラは部屋から出て行った。
「…………」
センリは笑顔のままカグラを見送り、そのまま暫く沈黙。
―――そして、数秒後。
急に真顔に戻ったセンリが、リビングを睨み付けながら言った。
「……で? テメェら……何ちゃっかり人の部屋のリビングで寛いでんだコラァ!!?」
するとクロードが、"俺の" ベッドに横になったまま言う。
「うわ、怖っ……!急に真顔になったぞこいつ!?」
「なんだ、君……。さっきまでの爽やかな笑顔はどうしたの?」
そして、今度はソーマが "俺の" ソファーに座りながら言った。
「…………」
目蓋をピクピクとひくつかせるセンリ。
そんな、最高潮に不機嫌オーラ丸出しのセンリに、ベッドに横になったままのクロードが追い討ちをかけた。
「……あ!そうだセンリ~。 明日も俺たち遊びにくるから、飲み物とか調達しといてくれよ?」
そんなあまりにも図々しい態度を取る二人に、流石のセンリも堪忍袋の緒がブチ切れた。
「―――テメェら………ッ!!」
自分の家のように寛ぐ二人を睨み付けながら、殺意を込めて刀に手を伸ばし―――。
「調子に乗るのもいい加減にしろ―――ッ!!」
「―――わわっ!?」
「―――ちょ、ちょっと待て!?」
そんな悲鳴を上げる二人を無視し―――。
「さっさと出てけ!!……この、筋金入りの邪魔者どもがァ―――ッッ!!」
―――センリは問答無用で斬りかかった。
「……ふむ」
寮長にそう言われ、室内を見回してみる。
部屋の広さは1LDK。
個室の学生寮にしてはかなり広い方だろう。
少なくとも、元々住んでいた東京のアパートよりは広かった。
先程の光景を見て、一体自分はどんな現実離れした部屋に住まされるのだろうかと心配していたのだが、安心した。
―――いや、むしろ『気に入った』と言うべきか。
その一番の理由は、トイレや洗面所、浴室などといったものも完備されている事だ。
寮、と言えばやはり『共同』という、実に憎たらしい言葉を連想するだろう。
実際にここの寮は、一つの部屋に複数人が住むという、いわゆる『ルームシェア制』。
本当はセンリも、知らないヤツと共同でこの部屋を使う "はず" だったのだ。
しかし、センリは編入生。
この時期には既に、他の寮生たちの部屋は決まってしまっている。
つまり、この時期に入寮するのはセンリだけ。
結果的に、誰も使っていなかったこの部屋を、一人で独占できるというわけなのだ。
「…………」
―――そしてこの時、初めてセンリが『編入生で良かった』と実感した瞬間だった。
「……気に入っていただけましたか?」
そう訊ねてくるカグラに、センリが笑顔で応じる。
「はい。とても綺麗で住み心地が良さそうです」
「そうですか!ありがとうございます。そう言っていただけると私も嬉しいです。 それでは、これを……」
そう言って微笑んだカグラが、数枚の紙の束をセンリに手渡してくる。
「……これは?」
「この寮のマップや規則などをまとめた物です」
「…………」
「この寮は他の生徒たちも利用しているので、その方々に迷惑をかけぬよう、その紙に記されている最低限の規則は守ってくださいね?」
「……わかりました。後で目を通しておきます」
そう言うセンリに、カグラが微笑んで。
「―――と言っても、ここの寮生たちは皆良い子なんですよ」
「…………? と、言いますと?」
センリが首を傾げて訊ねる。
すると、相変わらずの優しい笑みを浮かべたカグラが、とても嬉しそうに語り出した。
「数年前に一度、規則を破ってしまった子がいたんです。 その時、私がその子に『ちょっとだけ』注意したら、それ以降、この寮で規則を破る子がいなくなったんです! 私としては、本当に嬉しい限りですよ」
「………………」
……なるほど。
コレは、すぐに目を通した方が良さそうだ。
「それでは私はこの後用事があるので失礼します。 もしも分からない事があれば、私やお友達に聞いてくださいね?」
「はい。わかりました。……何から何まで、本当にありがとうございます」
そう言って、センリが軽く頭を下げる。
それに、笑みを浮かべたカグラが応じる。
「ふふっ。それが私の仕事ですから。……それでは、また―――」
そう言って、カグラは部屋から出て行った。
「…………」
センリは笑顔のままカグラを見送り、そのまま暫く沈黙。
―――そして、数秒後。
急に真顔に戻ったセンリが、リビングを睨み付けながら言った。
「……で? テメェら……何ちゃっかり人の部屋のリビングで寛いでんだコラァ!!?」
するとクロードが、"俺の" ベッドに横になったまま言う。
「うわ、怖っ……!急に真顔になったぞこいつ!?」
「なんだ、君……。さっきまでの爽やかな笑顔はどうしたの?」
そして、今度はソーマが "俺の" ソファーに座りながら言った。
「…………」
目蓋をピクピクとひくつかせるセンリ。
そんな、最高潮に不機嫌オーラ丸出しのセンリに、ベッドに横になったままのクロードが追い討ちをかけた。
「……あ!そうだセンリ~。 明日も俺たち遊びにくるから、飲み物とか調達しといてくれよ?」
そんなあまりにも図々しい態度を取る二人に、流石のセンリも堪忍袋の緒がブチ切れた。
「―――テメェら………ッ!!」
自分の家のように寛ぐ二人を睨み付けながら、殺意を込めて刀に手を伸ばし―――。
「調子に乗るのもいい加減にしろ―――ッ!!」
「―――わわっ!?」
「―――ちょ、ちょっと待て!?」
そんな悲鳴を上げる二人を無視し―――。
「さっさと出てけ!!……この、筋金入りの邪魔者どもがァ―――ッッ!!」
―――センリは問答無用で斬りかかった。
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