勇者の魂を受け継いだ問題児
*浮上する疑惑*
「……おや?センリくんじゃないか……」
「……ん?」
センリの正面から声がかかる。
品のある落ち着いた声音。
センリが此方に目を向けると、悠然とした佇まいで、紫がかった艶のある黒髪を靡かせながら歩いてくる一人の少女。
―――キリカ・トワイライト。
センリが校舎内にいる時、一緒にサボって……もとい、休憩していた少女だ。
その少女が問いかけてくる。
「もう試験は終わったのかい?」
「……ああ。今から帰るところだ」
「そうか。それで、試験の結果はどうだった?」
「……何故そんな事をお前に言わなきゃなんねぇんだ?」
「あはは。別に言わなければならない、という事はないよ……ただ、気になるじゃないか」
「……気になる?」
「ああ。何せキミは、私の模擬決闘の対戦相手なのだからね」
「……はっ、そういう事か……」
ここで理解した。
「だが、お前が気にする程じゃないと思うがな……。俺にはお前が思っているような実力も才能もない」
「またまた……」
「…………」
キリカが苦笑しながらそう言うが、今のセンリの言葉は冗談でも謙遜でもなく、事実だった。
今まで17年間、どれだけ自分の無力さを呪って来た事か……。
「……ふぅ……まぁいい」
キリカがそう言って、センリの隣を通り過ぎる。
「なら、当日まで楽しみにしているよ。それではお互い、良い勝負をしよう」
それだけ言って、キリカは試験会場へ向かって歩いて行った。
キリカを見送ると、その擦れ違いで二人の男が駆け足で向かって来るのが分かった。
「おーい!センリィ~っ!!」
「待ちなよ~!」
「…………」
しかしセンリはその男たちを無視して、再び歩き出す。
だが、すぐに二人が追い付いた。
「……だ~か~ら~、待ぁてってば!どうせだから、一緒に帰ろうぜ~ッ!」
そう言って、ドンッ!とセンリの肩に手を回したのは茶髪の男。
「……君、なに一人で帰ろうとしてんのさ」
その後、横から銀髪の男が言ってくる。
センリはその銀髪の男を睨み付けて、
「……んな事より、なんで面倒なのが一匹増えてんだよ?」
センリの問いに銀髪の男、ソーマが答える。
「ちょうどクロードも試験が終わったみたいだからね」
「……それ答えになってねぇ~。っていうか、俺が聞きたいのはそんな事じゃねぇ~」
どうしてちょうど同じ時間に終わったからといって、俺がコイツらと一緒に帰んなきゃならないんだ?
「ははっ、まぁいいじゃねえか!どうせ行くところは同じなんだからよ!」
などと茶髪のチャラ男、クロードが言ってくる。
すると横から、
「……それよりさ、センリ。さっき君、『面倒なのが一匹増えた~』って言ってたけど……その言い方だとまるで、僕まで邪魔者扱いされてるみたいじゃないか」
ソーマが心外だとでも言うような表情で言ってきた。
「…………」
センリは無言でソーマを見据える。
そして―――
「はぁぁ……」
―――深いため息。
ソーマはセンリのため息の理由に気づいていないのか、あるいは気づいていてわざとなのか……へらへら笑いながら付いてくる。
すると、何かを思い出したかのように、未だにセンリの肩に手を回していたクロードが再び口を開いた。
「……そういやお前、さっき、あのキリカと話してたよな? お前らって知り合いだったの?」
「……別に」
いい加減邪魔になったので、クロードの腕を振り解いて短く適当に応じる。
「……ああ、まぁ……深くは詮索しねぇが、お前の為に忠告しておいてやる。あの女だけはやめとけ」
「……は?何の事だ……?」
いきなりそんな事を言い出すクロードに、センリが首を傾げて訊ねる。
しかし、クロードが何故か共感するような口振りで続けた。
「いやぁー、分かる!分かるけどよぉ……あの女だけは絶対にダメだ! 確かにあの女の見た目は良い!だが、あいつは本当に見た目だけだぞ!? ……お前は性格はアレだが、顔はそこそこ良い方だろ?別にあの女じゃなくても他に良い女は沢山いるから、アレはもう諦めろ!」
「…………」
さっきから何言ってんだ、こいつ……。
そんな事を思って、チラリとソーマを一瞥する。
しかしソーマは、苦笑して肩を竦めるだけだった。
クロードがさらに続ける。
「どうせ付き合うんならさ、フィリシアちゃんとかどうよ?……あ~でも、お前にゃ流石にフィリシアちゃんは高嶺の花かなぁ~」
「……オイ、ちょっと待て」
どんどん話を進めていくクロードを制止する。
「……なんだよ?」
「なんだよじゃねえ! 全く話が見えないんだが? 何故キリカの話から、俺が付き合う・付き合わないの話になってんだ!?」
「……いや、だってお前、キリカの事が好きなんだろ?」
「…………。はぁ……」
その言葉を聞いて、突如ため息を吐いて頭を押さえるセンリを見たクロードが、慌てて確認してくる。
「……えぇ!?違うの?お前、あいつにアイラブユーじゃねえの!?」
「……いや、何をどう見たらそうなるんだ」
それに、ちょっと文法おかしいし……。
センリが呆れてもう一度ため息を吐き、続ける。
「……とにかく、俺は友人も恋人もいらん。自己紹介の時にも言っただろうが!」
それを聞いたソーマが、相変わらずのへらへら顔で言ってくる。
「えー、でも僕たちもう友達じゃんか~!」
「そうだぞ~!俺たちはもう友達になっちゃったんだ!諦めろ」
「ふざけんなボケッ!!誰がそんなの認めるか!!」
そんなセンリの反応に、面白そうにへらへら笑う二人。
「もう、照れちゃって」
「お前が何と言おうと、俺たちは友達だ! はい、この話はこれでおしまい」
「…………」
勝手に言い出しておいて、勝手に終わらせやがった。
センリは面倒くさそうに空を見上げる。
「……ったく、勝手にそう思い込んでろ」
センリは諦めたようにそう呟いた後、3人は一度教室へ戻り、荷物を持って校門を出た。
「……ん?」
センリの正面から声がかかる。
品のある落ち着いた声音。
センリが此方に目を向けると、悠然とした佇まいで、紫がかった艶のある黒髪を靡かせながら歩いてくる一人の少女。
―――キリカ・トワイライト。
センリが校舎内にいる時、一緒にサボって……もとい、休憩していた少女だ。
その少女が問いかけてくる。
「もう試験は終わったのかい?」
「……ああ。今から帰るところだ」
「そうか。それで、試験の結果はどうだった?」
「……何故そんな事をお前に言わなきゃなんねぇんだ?」
「あはは。別に言わなければならない、という事はないよ……ただ、気になるじゃないか」
「……気になる?」
「ああ。何せキミは、私の模擬決闘の対戦相手なのだからね」
「……はっ、そういう事か……」
ここで理解した。
「だが、お前が気にする程じゃないと思うがな……。俺にはお前が思っているような実力も才能もない」
「またまた……」
「…………」
キリカが苦笑しながらそう言うが、今のセンリの言葉は冗談でも謙遜でもなく、事実だった。
今まで17年間、どれだけ自分の無力さを呪って来た事か……。
「……ふぅ……まぁいい」
キリカがそう言って、センリの隣を通り過ぎる。
「なら、当日まで楽しみにしているよ。それではお互い、良い勝負をしよう」
それだけ言って、キリカは試験会場へ向かって歩いて行った。
キリカを見送ると、その擦れ違いで二人の男が駆け足で向かって来るのが分かった。
「おーい!センリィ~っ!!」
「待ちなよ~!」
「…………」
しかしセンリはその男たちを無視して、再び歩き出す。
だが、すぐに二人が追い付いた。
「……だ~か~ら~、待ぁてってば!どうせだから、一緒に帰ろうぜ~ッ!」
そう言って、ドンッ!とセンリの肩に手を回したのは茶髪の男。
「……君、なに一人で帰ろうとしてんのさ」
その後、横から銀髪の男が言ってくる。
センリはその銀髪の男を睨み付けて、
「……んな事より、なんで面倒なのが一匹増えてんだよ?」
センリの問いに銀髪の男、ソーマが答える。
「ちょうどクロードも試験が終わったみたいだからね」
「……それ答えになってねぇ~。っていうか、俺が聞きたいのはそんな事じゃねぇ~」
どうしてちょうど同じ時間に終わったからといって、俺がコイツらと一緒に帰んなきゃならないんだ?
「ははっ、まぁいいじゃねえか!どうせ行くところは同じなんだからよ!」
などと茶髪のチャラ男、クロードが言ってくる。
すると横から、
「……それよりさ、センリ。さっき君、『面倒なのが一匹増えた~』って言ってたけど……その言い方だとまるで、僕まで邪魔者扱いされてるみたいじゃないか」
ソーマが心外だとでも言うような表情で言ってきた。
「…………」
センリは無言でソーマを見据える。
そして―――
「はぁぁ……」
―――深いため息。
ソーマはセンリのため息の理由に気づいていないのか、あるいは気づいていてわざとなのか……へらへら笑いながら付いてくる。
すると、何かを思い出したかのように、未だにセンリの肩に手を回していたクロードが再び口を開いた。
「……そういやお前、さっき、あのキリカと話してたよな? お前らって知り合いだったの?」
「……別に」
いい加減邪魔になったので、クロードの腕を振り解いて短く適当に応じる。
「……ああ、まぁ……深くは詮索しねぇが、お前の為に忠告しておいてやる。あの女だけはやめとけ」
「……は?何の事だ……?」
いきなりそんな事を言い出すクロードに、センリが首を傾げて訊ねる。
しかし、クロードが何故か共感するような口振りで続けた。
「いやぁー、分かる!分かるけどよぉ……あの女だけは絶対にダメだ! 確かにあの女の見た目は良い!だが、あいつは本当に見た目だけだぞ!? ……お前は性格はアレだが、顔はそこそこ良い方だろ?別にあの女じゃなくても他に良い女は沢山いるから、アレはもう諦めろ!」
「…………」
さっきから何言ってんだ、こいつ……。
そんな事を思って、チラリとソーマを一瞥する。
しかしソーマは、苦笑して肩を竦めるだけだった。
クロードがさらに続ける。
「どうせ付き合うんならさ、フィリシアちゃんとかどうよ?……あ~でも、お前にゃ流石にフィリシアちゃんは高嶺の花かなぁ~」
「……オイ、ちょっと待て」
どんどん話を進めていくクロードを制止する。
「……なんだよ?」
「なんだよじゃねえ! 全く話が見えないんだが? 何故キリカの話から、俺が付き合う・付き合わないの話になってんだ!?」
「……いや、だってお前、キリカの事が好きなんだろ?」
「…………。はぁ……」
その言葉を聞いて、突如ため息を吐いて頭を押さえるセンリを見たクロードが、慌てて確認してくる。
「……えぇ!?違うの?お前、あいつにアイラブユーじゃねえの!?」
「……いや、何をどう見たらそうなるんだ」
それに、ちょっと文法おかしいし……。
センリが呆れてもう一度ため息を吐き、続ける。
「……とにかく、俺は友人も恋人もいらん。自己紹介の時にも言っただろうが!」
それを聞いたソーマが、相変わらずのへらへら顔で言ってくる。
「えー、でも僕たちもう友達じゃんか~!」
「そうだぞ~!俺たちはもう友達になっちゃったんだ!諦めろ」
「ふざけんなボケッ!!誰がそんなの認めるか!!」
そんなセンリの反応に、面白そうにへらへら笑う二人。
「もう、照れちゃって」
「お前が何と言おうと、俺たちは友達だ! はい、この話はこれでおしまい」
「…………」
勝手に言い出しておいて、勝手に終わらせやがった。
センリは面倒くさそうに空を見上げる。
「……ったく、勝手にそう思い込んでろ」
センリは諦めたようにそう呟いた後、3人は一度教室へ戻り、荷物を持って校門を出た。
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