人外と友達になる方法
第57話 審査 〜古の祠篇〜
空間断絶が消え、中から出てきた青龍を竜夜はただ呆然の見つめていた。
(光秀さんが負けた!? そんな! まだ悠火さん達も回復してないのに!)
上級四人が次々とやられ、残るは下級の竜夜だけとなってしまった。
「お前で最後だ。だが、今の戦いで思った以上に消耗してしまった。俺の邪魔をしないのであれば、お前は見逃してやろう」
「え?」
「いくら俺が消耗しているとはいえ、お前では勝機はない。そこで黙っていれば、お前だけは助けてやる」
「悠火さん達は?」
「こいつらは俺の脅威となり得る。ここで殺して行く」
「そんな……」
青龍は光秀に向かって手を伸ばす。
「初めはお前からだ」
青龍の掌に妖力が集まっているのがわかる。あれを食らえば、竜夜はもとより、光秀ですら即死だろう。
「せめてもの慈悲だ。一撃で殺してやる」
「……めろ」
青龍の耳に何やら声が聞こえた。声のした方を見ると竜夜が妖符を持って立っていた。
「何だ? 俺に立ち向かうと言うのか?」
「そうだ! 皆さんが命がけで戦っているのに、僕だけが逃げるわけにはいかない!」
「そうか、なら死ね!」
光秀に撃つはずだった妖力を竜夜に放つ。
「妖壁符!」
結界を張り防御する。しかし焼け石に水だ。あっさりと結界を破った攻撃は竜夜に直撃する。
そのまま竜夜は前のめりに倒れ込む。しかし、竜夜はすんでのところで耐え切った。
「ま……だだ……」
「ほぉ……手加減したとはいえ、一撃で倒れないその胆力は素晴らしい。名乗れ、名を覚えておいてやる」
しかし竜夜の耳に青龍の声は届いていない。
「僕が……みんなを……守るん……だ……下級だからなんて……関係無い……力が無くたって……守るんだ!」
竜夜が妖符を取り出す。
「炎弓符」
炎の矢が青龍に向かって飛ぶ。悠火の灼火之弓の下位互換の術式だ。
「ふん!」
青龍の払った手で矢は全て消滅する。
「もう楽になれ」
青龍が再び妖力を放つ。もう竜夜に結界を張る気力も、妖力も残っていない。
「ごめんなさい、母さん、父さん……」
竜夜の意識はゆっくりと深い闇に落ちていった。
真っ暗な世界に竜夜はいた。
(ここはどこだろう? 僕死んじゃったのかな?)
自分の手を見てみると少し透けている。
(ああ、やっぱり死んだのか……)
『いや、死んではおらんぞ』
(だ、だれ!?)
『名乗る前に聞きたいことがある』
(何でしょうか?)
『お前はどうして妖術師になったのだ?』
(それは、両親に楽を……)
『本当にそれだけか? 思い出せ、お前の夢を、理想を、憧れを!』
(夢……ですか?)
少し悩んだ末に竜夜が出した答えは。
(やっぱり、両親に楽をさせてあげることですね)
『お前……幸薄そうだな』
(急に悪口!)
『まあ、それもお前らしいか……』
(あのそれでここは何処なんですか?)
『ここはワシの意識の中だ。お前を審査するためにここに呼んだ』
(審査?)
『左様。お前と言う人物を見極めるためにな』
(はぁ……それで審査の方は?)
『これが最後の質問だ。もしお前が世界で一番強い妖術師になったとしたら、お前はその力をどう使う?』
竜夜は少しだけ考えてから言った。
(平和のために使います)
『それがお前の答えか?』
謎の声の言葉に、竜夜は自嘲の笑みを浮かべた。
(……なんて言えたらかっこいいんでしょうね……多分僕は一番強い妖術師になっても、自分のことにいっぱいいっぱいで平和の為や弱い人を守る為に力を使うなんてことはできないと思います。もちろん目の前でそんなことが起きたら助けるとは思いますが……)
『では、本当の答えは何だ?』
(僕は最強の力なんて要りません。僕が守りたい人達だけ守れたらそれでいい。最強の力を持つのは僕なんかじゃなくて、悠火さんみたいな人だと思います。結局僕は自分勝手で弱虫ですからね。だから、僕がもし一番強い妖術師になったら、その力を放棄すると思います)
『成る程な……力は要らぬ……か』
(はい、要りません)
『その答えを聞いたのはお前で二人目だ。良いだろう……お前を合格とする!』
(ありがとうございます。で、何の審査だったんですか?)
『ワシを使役するに足る器かどうかの審査だ。お前になら仕えても良いと思った。さぁ、現実に戻すぞ、そして戻ったらワシの名を叫べ。ワシの名はー』
迫り来る攻撃が竜夜に直撃する。その直前。
「来い! 真竜!」
竜夜の体が光輝く。
まるで太陽のような輝きが竜夜の中に吸い込まれるように消えていった。
「何だ、今のは!?」
竜夜の身体中の傷が塞がっている。それどころか尽きかけていた妖力も回復している。
「凄い……力が溢れてくる」
「回復した程度で調子に乗るな!」
竜夜に襲いかかる植物を竜夜は紙一重で避ける。
(凄いさっきまで見えなかったのに今ではゆっくりに見える)
「小賢しい!」
青龍が接近戦に持ち込む。
妖符で戦っている竜夜を見て接近戦は苦手と踏んだのだろう。
しかし、青龍の攻撃は全て竜夜にいなされる。
「何故だ! どうなってる! お前は下級のはずだろ!」
青龍が肩で息をしている。
そして今度は竜夜が先程のセリフを青龍に投げかける。
「このまま立ち去るのなら見逃します。しかしこれ以上皆さんに危害を加えるの言うのなら、僕が相手になります!」
読んでいただきありがとうございます。
年々身長が縮んでるコングです。
私ごとですが、先日私の所属するノベルバ作家グループ『Fictionalizer』が創立半周年記念日をを迎えました!
いやーめでたい! 我々ノベルバ作家が日々小説を書けるのは、共に競い合う作家仲間と、いつも読んでくださる読者の皆様のおかげです!
これからも引き続き、コングと『Fictionalizer』の応援をよろしくお願いします!
という事で、久しぶりに『Fictionalizer』の仲間の小説を紹介したいと思います!
作者: shota
タイトル: 転生貴族の異世界生活
ジャンル:ファンタジー
あらすじ: 
ある日突然意識を失った高校3年生の泉涼太は、気付いたら病院でも家でもなく真っ白な空間にいた。
そこで「自分は神様だ」という少年に出会い、「もし2度目の人生があるならどんな世界がいい?」と聞かれ、ラノベ好きの涼太は思い切って「魔法がある世界がいい。」と言った。
すると自称神様が「OK、じゃ、頑張ってね!」といい、その瞬間目の前の景色が変わり、前には見知らぬ天井があった...。
今後も作家仲間の小説を紹介していくと思うので、楽しみにして眠れない夜を過ごしてください。
それではまた次回!
2020/5/26一部改稿
(光秀さんが負けた!? そんな! まだ悠火さん達も回復してないのに!)
上級四人が次々とやられ、残るは下級の竜夜だけとなってしまった。
「お前で最後だ。だが、今の戦いで思った以上に消耗してしまった。俺の邪魔をしないのであれば、お前は見逃してやろう」
「え?」
「いくら俺が消耗しているとはいえ、お前では勝機はない。そこで黙っていれば、お前だけは助けてやる」
「悠火さん達は?」
「こいつらは俺の脅威となり得る。ここで殺して行く」
「そんな……」
青龍は光秀に向かって手を伸ばす。
「初めはお前からだ」
青龍の掌に妖力が集まっているのがわかる。あれを食らえば、竜夜はもとより、光秀ですら即死だろう。
「せめてもの慈悲だ。一撃で殺してやる」
「……めろ」
青龍の耳に何やら声が聞こえた。声のした方を見ると竜夜が妖符を持って立っていた。
「何だ? 俺に立ち向かうと言うのか?」
「そうだ! 皆さんが命がけで戦っているのに、僕だけが逃げるわけにはいかない!」
「そうか、なら死ね!」
光秀に撃つはずだった妖力を竜夜に放つ。
「妖壁符!」
結界を張り防御する。しかし焼け石に水だ。あっさりと結界を破った攻撃は竜夜に直撃する。
そのまま竜夜は前のめりに倒れ込む。しかし、竜夜はすんでのところで耐え切った。
「ま……だだ……」
「ほぉ……手加減したとはいえ、一撃で倒れないその胆力は素晴らしい。名乗れ、名を覚えておいてやる」
しかし竜夜の耳に青龍の声は届いていない。
「僕が……みんなを……守るん……だ……下級だからなんて……関係無い……力が無くたって……守るんだ!」
竜夜が妖符を取り出す。
「炎弓符」
炎の矢が青龍に向かって飛ぶ。悠火の灼火之弓の下位互換の術式だ。
「ふん!」
青龍の払った手で矢は全て消滅する。
「もう楽になれ」
青龍が再び妖力を放つ。もう竜夜に結界を張る気力も、妖力も残っていない。
「ごめんなさい、母さん、父さん……」
竜夜の意識はゆっくりと深い闇に落ちていった。
真っ暗な世界に竜夜はいた。
(ここはどこだろう? 僕死んじゃったのかな?)
自分の手を見てみると少し透けている。
(ああ、やっぱり死んだのか……)
『いや、死んではおらんぞ』
(だ、だれ!?)
『名乗る前に聞きたいことがある』
(何でしょうか?)
『お前はどうして妖術師になったのだ?』
(それは、両親に楽を……)
『本当にそれだけか? 思い出せ、お前の夢を、理想を、憧れを!』
(夢……ですか?)
少し悩んだ末に竜夜が出した答えは。
(やっぱり、両親に楽をさせてあげることですね)
『お前……幸薄そうだな』
(急に悪口!)
『まあ、それもお前らしいか……』
(あのそれでここは何処なんですか?)
『ここはワシの意識の中だ。お前を審査するためにここに呼んだ』
(審査?)
『左様。お前と言う人物を見極めるためにな』
(はぁ……それで審査の方は?)
『これが最後の質問だ。もしお前が世界で一番強い妖術師になったとしたら、お前はその力をどう使う?』
竜夜は少しだけ考えてから言った。
(平和のために使います)
『それがお前の答えか?』
謎の声の言葉に、竜夜は自嘲の笑みを浮かべた。
(……なんて言えたらかっこいいんでしょうね……多分僕は一番強い妖術師になっても、自分のことにいっぱいいっぱいで平和の為や弱い人を守る為に力を使うなんてことはできないと思います。もちろん目の前でそんなことが起きたら助けるとは思いますが……)
『では、本当の答えは何だ?』
(僕は最強の力なんて要りません。僕が守りたい人達だけ守れたらそれでいい。最強の力を持つのは僕なんかじゃなくて、悠火さんみたいな人だと思います。結局僕は自分勝手で弱虫ですからね。だから、僕がもし一番強い妖術師になったら、その力を放棄すると思います)
『成る程な……力は要らぬ……か』
(はい、要りません)
『その答えを聞いたのはお前で二人目だ。良いだろう……お前を合格とする!』
(ありがとうございます。で、何の審査だったんですか?)
『ワシを使役するに足る器かどうかの審査だ。お前になら仕えても良いと思った。さぁ、現実に戻すぞ、そして戻ったらワシの名を叫べ。ワシの名はー』
迫り来る攻撃が竜夜に直撃する。その直前。
「来い! 真竜!」
竜夜の体が光輝く。
まるで太陽のような輝きが竜夜の中に吸い込まれるように消えていった。
「何だ、今のは!?」
竜夜の身体中の傷が塞がっている。それどころか尽きかけていた妖力も回復している。
「凄い……力が溢れてくる」
「回復した程度で調子に乗るな!」
竜夜に襲いかかる植物を竜夜は紙一重で避ける。
(凄いさっきまで見えなかったのに今ではゆっくりに見える)
「小賢しい!」
青龍が接近戦に持ち込む。
妖符で戦っている竜夜を見て接近戦は苦手と踏んだのだろう。
しかし、青龍の攻撃は全て竜夜にいなされる。
「何故だ! どうなってる! お前は下級のはずだろ!」
青龍が肩で息をしている。
そして今度は竜夜が先程のセリフを青龍に投げかける。
「このまま立ち去るのなら見逃します。しかしこれ以上皆さんに危害を加えるの言うのなら、僕が相手になります!」
読んでいただきありがとうございます。
年々身長が縮んでるコングです。
私ごとですが、先日私の所属するノベルバ作家グループ『Fictionalizer』が創立半周年記念日をを迎えました!
いやーめでたい! 我々ノベルバ作家が日々小説を書けるのは、共に競い合う作家仲間と、いつも読んでくださる読者の皆様のおかげです!
これからも引き続き、コングと『Fictionalizer』の応援をよろしくお願いします!
という事で、久しぶりに『Fictionalizer』の仲間の小説を紹介したいと思います!
作者: shota
タイトル: 転生貴族の異世界生活
ジャンル:ファンタジー
あらすじ: 
ある日突然意識を失った高校3年生の泉涼太は、気付いたら病院でも家でもなく真っ白な空間にいた。
そこで「自分は神様だ」という少年に出会い、「もし2度目の人生があるならどんな世界がいい?」と聞かれ、ラノベ好きの涼太は思い切って「魔法がある世界がいい。」と言った。
すると自称神様が「OK、じゃ、頑張ってね!」といい、その瞬間目の前の景色が変わり、前には見知らぬ天井があった...。
今後も作家仲間の小説を紹介していくと思うので、楽しみにして眠れない夜を過ごしてください。
それではまた次回!
2020/5/26一部改稿
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