人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第56話 青龍vs光秀 〜古の祠篇〜

 崩れ落ちた二人を見て光秀が絶叫する。

「おい! どうしたんだ!」

 慌てて駆け寄る。
 しかしその光秀を止めたのは後方からの声だった。

「光秀さん! ダメです! そこには毒が充満しています!」

 竜夜の声に踏みとどまった光秀はよく目を凝らしてみる。
 すると確かに毒素が空中を待っているのがわかる。

「くそ! 烈風符!」

 風の術式で毒素を押しのけ、光秀は二人の元へと向かう。
 幸い二人に目立った外傷はない。先程の毒素でやられたのだろうか体が痙攣している。

「神経毒か?」

「御名答」

 瓦礫の中から青龍が姿を現わす。
 しかし流石に無傷というわけではなく、口からは血を流し腹部を押さえている。

「俺の操る植物にはとある特性が備わってる」

「特性?」

「妖力を養分や毒素に変換する能力だ」

 つまり今の毒素は悠火達が植物に加えた攻撃から得た妖力だろう。
 強い妖力程強い毒素になり、高い再生能力を得ることになる。

「お前らに勝機はねぇよ!」

 青龍の腹部に植物が巻き付く。するとみるみる傷が癒えて行く。

「あと二人だな」

 悠火と奏鳴は毒で動けず、舞姫も先程の攻撃の反動で倒れている。残りは光秀と竜夜の二人だけだ。

「竜夜。僕が青龍の相手をする。その間に三人を回復させてくれ」

「わかりました。でも、大丈夫なんですか?」

 あの三人が敵わない相手に真っ向勝負を挑むほど光秀は己の力を過信してはいない。

「大丈夫。任せてくれ」

 光秀は四人を後方に残し青龍との距離を詰める。

「次は貴様か?」

 青龍は光秀を見て笑っている。
 しかし次の瞬間顔が曇った。

「お前、全く妖力を感じない。後ろの者の方がまだマシなレベルだ」

 確かに光秀は五人の中で最も妖力が弱い。
 下級の竜夜にですら勝てないほどだ。

「僕をあまりなめない方がいいよ」

 光秀は妖符を取り出し唱える。

「空間断絶符」

 以前雷王との戦いで用いた空間断絶だ。

「何の真似だ? まさか一人で俺の相手をするつもりではないな?」

「そのまさかだよ」

「悪いが貴様は俺を楽しませるには足りぬ。一撃で殺してやる」

 植物が光秀に襲いかかる。

「何!?」

 かに思えた。
 しかし植物はピクリとも動かない。

「どうしたの? 僕を殺すんじゃなかったの?」

「ちっ! 植物が使えぬのなら俺が直接手を下すまで!」

 植物を使わずとも青龍は強い。そんなことはわかりきっている。

「はぁ!」

 青龍の拳が光秀の顔面を捉える。しかし。

「残念、一撃で殺せなかったね」

 光秀は顔を殴られたことを意に介さぬかのように話している。

「どう言うことだ!」

 青龍は気味の悪さに光秀との距離を取る。
 術式が使えず、自分の全力の拳をまるで羽虫が顔に留まったかのような威力になっている現状に、流石の十二天将も動揺が隠せない様子だ。

「だから言ったでしょ? 僕をなめない方がいいって」

 光秀は不敵な笑みを浮かべて青龍に近づく。
 青龍も先程までとは打って変わり、臨戦態勢を取る。
 光秀を強敵と認めたのだろう。

「格下だとなめていた……だがもう油断はしない」

「それをもっと早くに気付いていれば勝機はあったのにね」

 光秀の姿が消える。そして一瞬で青龍の懐に移動し連打を叩き込む。

「ぐはっ!」

 一撃一撃が悠火や奏鳴の拳のように重く突き刺さる。

「どうなってる! 貴様は式神を従えていないはず!」

 何か起きているのかわからない青龍はなす術なく殴られ続ける。

「ふぅ」

 何発撃ったか光秀にもわからない。青龍は仰向けに倒れて血を吐いている。

「ふふ……ふははは!」

 青龍が大声で笑い声をあげる。

「何がおかしい? 負けそうになって頭がおかしくなったのか?」

「いや……ようやくわかったのさ、お前の攻撃のタネがな」

「何のことだ? ハッタリなら……」

「幻影、だろ?」

 光秀が押し黙る。その額にはうっすらと汗が滲んでいる。

「おかしいと思ったんだ。式神も従えていない妖術師の拳にしては重すぎる。それに大前提、お前の妖力じゃ俺に傷一つつけられない」

「隠し技があるかもしれないだろ?」

「それはもちろん考えたさ。だがそれなら最初から使っていたはずだ。現にあの三人は最初から全力だったしな」

「だが!」

「服。見てみな」

 青龍に言われるがまま光秀は自分の服を見る。
 しかし何一つ不自然なところはない。汚れ一つなく綺麗ままだ。

「お前俺の植物を切った時、液体をを浴びだだろ?」

そういえば風刃符で植物を切った時、植物達は液体を撒き散らしながら暴れていた。

「あの液体を浴びたにも関わらず、お前の服は綺麗なままだ。そこから考えられる結論は一つ」

 青龍が光秀を指差しながら言う。

「お前は幻影の術式だ。幻影の術式は強くイメージした姿になる。小さな汚れまでは再現できなかったようだな。そして、俺に自分が一方的にやられている幻影を見せることで俺の意識を錯覚させ、ダメージを負わせた。恐ろしい術式だぜ」

 青龍の傷が瞬く間に消え、起き上がる。

「無傷な自分を想像すればこの通りだ。幻影の弱点は理解だ。ネタが割れれば意味がない」

 光秀に植物が襲いかかる。
 光秀は避けることができず吹き飛ばされ倒れる。

「まあまあ楽しかったぜ」

 空間断絶が解除される。

「あと一人」




読んでいただきありがとうございます。

最近校外模試やら定期テストやらで、まったく続きを書けていないコングです。

更新頻度がエグいくらいに遅くなって本当申し訳ないです。
これからは更に忙しくなっていくので、それまでに何とかキリのいいところまで書いて投稿したいと思います。
更新頻度は遅くなりますが必ず更新していきますので待っていてください。

それではまた次回!



2020/5/26一部改稿

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