人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第38話 合格発表 〜認定試験篇〜

「すまんっ! ほんとーに、すまんっ!」

 悠火は医務室で手当てされていた。
 その悠火に対して、奏鳴はひたすら頭を下げていた。

「……これからは気をつけろよ。あと、後でジュース奢れ」

「……はい」

 ジュースで、悠火と奏鳴のいざこざは示談となった。




 悠火の治療も終わり、三人は試験会場へと戻る。

「おい、あいつら……」

「ああ、近くで見ると迫力あるな」

「はぁ、カッコイイ」

「実技があれだけ凄いなら、筆記も……」

 悠火たちを見た他の参加者たちは口々に言う。
 残念ながら筆記は悲惨なのだが。

「なあ、俺たちのモテ期来たんじゃね?」

「女の子よりも、男から手合わせとか申し込まれそうだけどね」

「それは勘弁だな……」

 少し浮かれていた奏鳴も光秀の言葉で再び着陸する。

「全員注目!」

 試験管の男が中央のステージから声を上げている。
 終始あの大声で疲れないのだろうか。

「これにて、第二、第三試験を終了する!」

 試験管の言葉に参加者全員が驚く。
 第一試験が筆記テスト、第二試験が戦闘による実技テストなのは説明があった。
 しかし第三試験については全く説明がない。

「あの、質問よろしいでしょうか?」

 光秀が試験管に尋ねる。

「どうした? 手短にな」

「第三試験の説明も試験自体も、僕たちは受けていないのですが?」

「そうだな。説明しなくてはいかんな」

 試験管は参加者全員を見渡してから言った。

「第三試験の内容は、妖力量テストだ! 第一、第二試験中、諸君らは常に妖力量を監視されていた! そこで測定された妖力量の絶対値が第三試験の結果になる!」

 どうやら知らない間に妖力量を測定されていたようだ。
 知らない間に見られていたと思うとなんだかむず痒い。

「それでは試験結果を配布する! 名前を呼ばれたものから取りに来い!」

 こうして認定試験の試験全てが終わった。




「それじゃせーので見せるぞ」

「ああ」

「わかった」

 悠火たちは互いの試験結果を見せ合う事にした。
 今日まで共に修行して来た仲間だ。
 苦しみも共にしたのなら喜びも共にしたい。
 まあ、三人とも合格しているだろうが。

「「「せーの」」」



受験者名:伊鳴悠火
第一次試験順位:289/307
第二次試験順位:2/307
第三次試験順位:1/307

上記の者を『上級妖術師』として認定する。


受験者名:鬼嶋奏鳴
第一次試験順位:302/307
第二次試験順位:1/307
第三次試験順位:2/307

上記の者を『上級妖術師』として認定する。


受験者名:西園寺光秀
第一次試験順位:1/307
第二次試験順位:4/307
第三次試験順位:286/307

上記の者を『上級妖術師』として認定する。



「「「おお!」」」

 無事三人とも認定試験に合格することができた。

「おい光秀! 筆記一位かよ!」

「そうみたいだね。でも妖力量がこれじゃね」

「って、悠火は妖力量一位かよ!」

 何と悠火は妖力量で、奏鳴は戦闘で、光秀は筆記で、それぞれ一位を取ることができた。
 つまり、三人は各分野においてこの会場で最強ということだ。
 三人が浮かれていると声を掛けてくる男がいた。

「その様子だと、少年たちも合格できたみたいですな」

 三人が声の方を向くと、そこには見事なスキンヘッドを携えた僧侶、天元が立っていた。

「も、ってことはおっさんもか?」

「無論です。しかし恥ずかしながらどの分野でも首席を撮り損ないましたが…」

 天元は恥ずかしそうに頭を掻いている。

「おっさんの順位見せてくれよ!」

 奏鳴は天元に対して全く気を使う様子はない。
 一度拳を交えたら友達ダチというやつだろうか。
 天元は奏鳴の圧に押されて、渋々見せてくれた。



受験者名:天元
第一次試験順位:4/307
第二次試験順位:4/307
第三次試験順位:11/307

上記の者を『上級妖術師』として認定する。



「はぁ!?」

 奏鳴は思わず叫んでしまった。
 確かにどの分野でも一位こそ逃しているものの全てトップクラスだ。

(このおっさん、ただのハゲじゃなかったのか……奏に一撃で負けた印象しかないけど。凄い奴だったんだなぁ、ハゲだけど)

 悠火がそんなことを思っていると、天元が悠火に向かって言った。

「何か失礼なことを考えておりませんか?」

 正直にはい、と言うわけにもいかず悠火はお茶を濁した。

「いや、順位高いなぁって」

「そ、そうですかな? ですが一位に言われても皮肉にしか聞こえませんな」

 天元はニヤリと笑う。
 最初の印象はフラグ建てまくりのバカかと思ったが、話してみると案外面白くていい奴だった。



 これが後の大戦で名を上げ、英雄と呼ばれる者たちの出会いだということを、悠火たちは知らない。




読んでいただきありがとうございます。コングです。

天元さんは出来る子です。やれるハゲです。
もともと天元は出落ちキャラでしたが、急遽予定変更して重要キャラになりました。
バイトから係長くらいにランクアップです。

これからも天元の活躍にご期待ください。
天元の戦いはまだ始まったばかりだ!

ちょっと打ち切りっぽくなってしまった。

それではまた次回!(本作はまだまだ続きます)


2020/5/6一部改稿

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