人外と友達になる方法

コング

第36話 修行の成果 〜認定試験篇〜

決勝リーグの1回戦が終わり、老人は椅子に座り第2試合を眺めていた。

「どうでした? 今年の卵達は?」

横に座った男が老人に尋ねる。

「今年は面白いのが何人かおるぞ」

「貴方を負かした彼とか?」

「そうじゃな」

「どうして勝ちを譲ったのですか? 貴方ほどの方が」

「わかっておるじゃろうに…本当に嫌な奴じゃな」

「お褒めに預かり光栄です」

男は楽しそうな顔で笑っている。

「……賭けじゃよ。この世代が最後じゃからな」

「…そうですね。それでは私は戻ります。そろそろ抜け出したのが見つかりそうなので」

そう言うと男は音もなく消えてしまった。

「いよいよじゃな…」

老人の発した声は誰の耳にも届かなかった。




奏鳴vs僧侶の戦いはなかなかに盛り上がっていた。
奏鳴はともかく、僧侶の男の戦闘スタイルも肉弾戦なのだ。てっきり念仏のような物で戦うのだと思っていたのだが。

「行けっ! 若いの!」

「負けんなよ! ハゲー」

いつの間にか周りで試合を見ていた者たちから声援が聞こえるまでになっていた。
決勝リーグに制限時間は無い。つまり勝つには相手を気絶させるか、負けを認めさせる、もしくは場外にする他ない。

「やるな、少年。この天元てんげんの攻撃をかわし続けるとは」

「そりゃどうも! こちとらここ3ヶ月、鬼コーチと修行したんでね」

奏鳴の言っていることは本当だ。何せ、黒鬼と白鬼にしごかれたのだから。

「ほう。修行ですと? 修行なら私も積んでおるぞ。私の師匠も厳しい人ですからな」

「お喋りはここまでにしようぜ。俺には決勝が残ってるんだ」

「ほぉ…その心意気、気に入ったぞ。少年、名はなんと申す?」

「奏鳴…鬼嶋奏鳴だ」

「奏鳴か…君に敬意を払い、私の全力をぶつける! 術式展開・覇衝拳はしょうけん!」

あの技は直撃したらマズイ。悠火は直感的にそう感じた。

「おい、奏…」

奏鳴に呼びかけようとしたが辞めた。奏鳴が負けるはずないと信じているからだ。

「はぁ!」

天元が奏鳴を捉える。今から回避したのではもう間に合わない。

「行くぞ! 術式展開・黒王こくおう!」

ズバァァン! 天元の拳が奏鳴とぶつかりあった衝撃波で土埃が舞う。
観客席にもその衝撃が押し寄せる。

「……あいつ大丈夫か?」

土埃が晴れると試合は決着がついていた。
勝者は奏鳴。奏鳴の足元に気絶した天元が倒れている。

「そこまで!」

審判から正式に奏鳴の勝利が告げられる。
一瞬の静寂の後、ギャラリーから割れんばかりの歓声が上がった。
奏鳴が悠火たちの方へ向かってVサインを掲げた。
悠火たちも奏鳴にVサインを返す。

「どうやって決着がついたかわかる?」

「十中八九奏の術式だろうけど、どんな物かまではわかんねぇな」

「そっか…結局まだ誰の妖術ちからもわからないね」

悠火たち3人は3ヶ月間一緒の館で修行していたが、互いの修行状況や術式の習得状況は互いに秘密にしていたのだ。
別に秘密にする必要はなかったのだが、案の定バカ2人が「秘密にしてた方が何かかっこいい」
との理由で話さなかったため、光秀も秘密にしていたのだ。

「それじゃ行くか」

「うん」

準決勝第2試合。悠火と光秀は闘技台に上がる。

「手は抜かないぜ?」

「当然」

2人とも手は抜かない。それは事前に3人で約束しておいたことだ。例え互いに戦うことになっても本気でぶつかると。

「始め!」

試合開始の合図と同時に悠火が動いた。

「狐々愛、行くぞ!」

『わかった!』

悠火は光秀の体に触れ詠唱する。

「『術式展開・妖火封縛陣ようかふうばくじん」』

光秀の足元から2本の火柱が上がり、光秀を拘束していく。
相手を拘束し、無力化する悠火が考案した術式だ。

「くっ!」

「どうだ光秀? 動けないだろ?」

「確かに動けないね。体はね」

悠火は自分の胸に妖符が貼られているのに気付いた。距離を詰めた時に貼られていたのだ。
急いで剥がそうとするが間に合わい。

紅蓮焔ぐれんほむら

妖符が炎を上げて燃え始める。

「熱っ!」

悠火は燃え盛る妖符を何とか剥がし投げ捨てる。
しかし、光秀の反撃はまだ続く。

焔犬ひけん!」

炎が形を犬の姿に変える。

「行け!」

炎の犬が悠火に迫る。

「凄い術だな光秀! だけど負けるわけにはいかねぇ!」

悠火は構えた拳で焔犬を殴り飛ばす。焔犬はそのまま消えてしまった。
そして悠火は再び拳を構えた。

「狐々愛、俺に憑依しろ!」

その瞬間悠火の右腕にありえないほど高濃度の妖力が込められたのがわかった。
光秀は本能的に感じた。この攻撃をされたら自分は負ける。その前に決着をつけなければならない、と。

覇衝風羅はしょうふうら!」

光秀は風で生成した刃を悠火に放つ。

紅蓮狐爪ぐれんこそう!」

悠火は右腕に炎が纏う。そして、拳を打つと同時に炎が放たれた。
炎は光秀の放った風を巻き込み、相殺しなお進む。

「妖封壁!」

光秀は咄嗟に障壁を張るが、炎の勢いに押され、少しずつ後退していく。
この攻撃を防げば光秀の勝ちだ。強力な技の代償として、少しのインターバルが必要なのだ。つまり悠火はすぐに防御出来ない。

「おぉぉぉ!」

「はぁぁぁ!」

そして、勝負が決まった。光秀の後退が止まったのだ。

「…流石だね」

光秀の足は場外に触れていた。

「そこまで!」

こうして悠火と光秀の試合は悠火の勝利で幕を下ろした。




読んでいただきありがとうございます。コングです。

どうでも良い話ですが、最近涙もろくなりました。
この間テレビで見た病気の話でめちゃくちゃ泣きました。
多分もうすぐ、反抗期の娘の話とかで悲しくなるんだと思います。

それではまた次回!

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