人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第33話 解放軍本部 〜認定試験篇〜

悠火たちは総隊長の待つ部屋へと通された。

「総隊長、連れて参りました」

「…ご苦労」

悠火たちからは総隊長の姿が見えない、どうやらクルクル回転するタイプの椅子に座って向こうを向いているようだ。
そして、今その椅子が180°回転し総隊長の姿が見え…見え……ない。
一体どう言うことだろうか。

「よく来てくれた、俺はこの解放軍の総隊長をしている。以後お見知り置きを」

声は確かに目の前の机の方からする。なのに姿が見えないのはもしや姿を消す術式を使っているからだろうと悠火は思った。
だが現実は違った。それは悠火の予想を見事に上回る出来事が起こったのだ。
椅子が少し動き、机の陰から1匹の猫が姿を現した。

「何だ? どうしてこんなところに猫が…可愛いなぁお前」

奏鳴が猫の頭を撫でようとしたその時、信じられないことが起こった。

「ん? 握手か? よろしくな」

猫が喋ったのだ、しかも結構なイケボで!

「ね、猫が喋った!」

奏鳴は驚いて腰を抜かす。

「ああ、これは失敬。俺としたことが、いつもこの姿でいるのでついな」

猫の体がみるみる大きくなり、あっという間に屈強な男に変身した。

「改めて、解放軍の総隊長、名を貴人きじんと申す」

「貴人じゃと!」

誰よりも早く反応したのは狐々愛だった。

「どったの? 狐々愛」

「あれほど説明したではないか! 貴人は十二天将の1人にして、十二天将の主神。つまりリーダーの男じゃ!」

「え! この人十二天将なの!?」

「如何にも、俺は十二天将の主神、貴人だ」

天空に次いで貴人に出会うなど、そうそうあるものではない。
というか、1つの部屋に5人の特級妖怪がいるだけでおかしいのだ。

「久しいの、貴人」

「お久しぶりです、天狐様」

狐々愛と貴人は固く握手した。どうやら仲が悪かったわけではないようだ。

「相変わらず可愛いですな」

ん? 何やら貴人の顔が緩んで見える。とても一組織のトップとは思えぬほどに。

「お主は相変わらずの童女趣味じゃな」

童女趣味、それ即ち…

「このおっさん、ロリコンなのかよ!」

貴人は見た目30代後半の髭面だ。これでロリコンとはなかなかの破壊力がある。

「ロリコンだとっ! その通りだが?」

こいつ認めやがった。まあ、無意識のロリコンよりはマシか。そして気になったのはロリコンという単語が通じたことだ。
封印が解けてから時間が経っている狐々愛は知っているらしいが、黒鬼と白鬼は何のことかわからない様子だ。
十二天将は400年前に封印されなかったため、現代の言葉も理解出来るようだ。

「おっと、いかん。本題を忘れるところだった」

「しっかりしてくれよ」

出会ってからというもの、悠火の中で貴人の株がだだ下がりだ。本当にあの天空の上司なのだろうか。

「まず初めに、今回の戦いの件について、うちの部下の早とちりで迷惑をおかけした。すまない」

天空も頭を下げている。

「それはこっちも悪かった。お互い様だ」

「そう言ってもらえると助かる」

「そして風狸の件だが。俺が調べようと思う」

「それは貴人が出るほどの案件か? 風狸はたかが上級妖怪じゃ、部下の妖怪にやらせても…」

「いや、これは俺が調べた方がいい…勘だがな」

勘かよっ! と突っ込みたくなるが堪える。貴人の顔が真剣だったからだ。

「お主がそういうなら仕方ないの」

「そして、お前たちを呼んだのは協力体制を築くためだ」

「協力体制?」

「ああ、俺たち解放軍は名前の通り、妖怪の解放を目標としている。だが、妖怪の中には悪い奴もいてな。そんな奴は解放しないようにしてるんだが、最近そいつらを解放してる奴がいるんだ…そいつらが恐らく鵺だと思う」

「おっさん、何で鵺のこと知ってんだよ」

貴人に鵺のことはまだ話していないはずだ。

「それは天空から聞いた。念話でな」

念話とはまた便利そうな術だ。

「お前たちには鵺の捜索を頼みたい」

「ちょっと待て! 鵺は危険じゃ、悠火たちを危険に晒すつもりか!」

「戦えと言っているわけではありません。ただ、奴らを追い込むのに妖怪の力だけでは限界がある、その時に強力な人間の味方が欲しいのです。それに天狐様がいるなら安心でしょう」

「うう…確かに一理あるのぅ…わかった妾たちは鵺の動向を追うことにするのじゃ」

「助かります。そのお礼と言っては何ですが…お前たち入ってこい」

貴人がそう呼びかけると、入り口のドアが開いた。

「紹介しよう。我が軍の幹部たちだ」

幹部たちは天空の横に一列に並んだ。

「紹介いらないと思いますが、天空です。よろしく」

続いては、おっとりとした印象の女性だ。

「初めまして、うちの名前は六合りくごう仲ようしてや」

その次は如何にも堅物そうな老人だ。

「私の名はぬらりひょん。よろしく」

そして最後はえらく小柄なお面を被った少女だ。

[天狗です。仲良くしてください]

天狗と名乗る少女は喋らず、手に持ったスケッチブックに文字を書いて挨拶する。
皆個性豊かな面子だ。

「以上がうちの軍の4大幹部だ。聞いたところによるとお前たち妖術師の認定試験を受けるらしいではないか」

「はい、そうですけど」

「本番までの約3ヶ月、俺たちがお前たちの修行をしてやる!」

「「「ええ!」」」

こうして、悠火たちの妖術修行が始まった。




読んでいただきありがとうございます。コングです。

この話の後、前話の冒頭になります。ずっと認定試験篇をやりたくてうずうずしてました!
認定試験篇ではかなり新キャラが増える予定です。書き分けできるか心配ですが、気合いで何とかしますとも!

それではまた次回!

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