人外と友達になる方法

コング

第29話 遺言 〜鬼篇〜

今一度情報を整理する。
攻撃力、速度に関しては黒鬼が優勢。
術式、妖力の練度は天空に分がある。

「確かに絡繰からくりはわからないけど、攻撃系の術式じゃないならこの勝負は決着はつかないだろ!」

「そうだね。どうやら君は持久戦が狙いみたいだから願ったり叶ったりかもしれないね」

いつの間にか天空は黒鬼の背後に立っている。
黒鬼は瞬時に天空と距離を取る。

「それじゃ、君に1ついいことを教えてあげましょう」

「いいこと?」

「僕のこの術式のことについてね」

黒鬼の方が妖力で劣っているとはいえ、特級相手に固有術式をバラすなど、普通はありえない。

「僕のこの霧の術式は霧の中の空間を完璧に把握出来るんだ」

「何だと!?」

「試しに攻撃してみなよ。もう君の攻撃は当たらないからさ」

わかりやすい挑発だが、ここは乗ってみるこのにする。

「だったらこれでも喰らえ!」

黒鬼は黒靄を纏った拳を天空の腹に叩き込む。
しかし天空はこの拳をいとも簡単に避ける。

「ならこれでどうだ!」

黒鬼は足に黒靄を纏わせ、先ほど見せた高速移動を仕掛ける。

「無駄ですよ」

(ここだ!)

黒鬼は完全に天空の死角から攻撃を仕掛けた。

(捉えた!)

黒鬼の蹴りは確実に天空の側頭部を捉えた。

はずだった…

「やれやれ、これでわかったでしょ?」

天空は片腕で黒鬼の橋を掴むとそのまま黒鬼を放り投げた。

「ぐっ!」

放り投げられた黒鬼は大樹に背中を打ち付け、倒れる。

「まだだ…」

「ほう…背中に靄を動かして防御しましたか…」

黒靄の防御があと少し遅れていたら、無傷では済まなかっただろう。

(しかし、もう打つ手がない…)

黒鬼は必死に思案する。
霧の正体はわかったが、もう1つの固有術式がわからない。

「もう、諦めて祓われてください」

「死んでも断る!」

天空はため息をついて言った。

「なら、矢張り器ごと殺すしかあるまいな」

突如目の前から天空が消える。

「またか!」

黒鬼は集中し、天空の居場所を探る。霧が邪魔で視覚は使えない。聴覚だけが頼りだ。

「…どこだ……」

そのとき、向かって右の方から足音が聞こえた。

「そこか!」

黒鬼は音のした方を向き構える。しかしそれ以降、気配がない。

「どういうことっ!」

黒鬼は背後から伸びてきた2本の腕で首を絞められた。

「かはっ! 貴様…な…ぜ……」

黒鬼の背後には天空が立っていた。天空は両腕で黒鬼の首に絞め技をかけている。チョークスリーパーのような形だ。

「さあ? どうしてでしょう」

天空の2つ目の固有術式だろうということは黒鬼にもわかっている。しかし、タネがわからない。

「さあ、これが最後のチャンスです。大人しくあなただけ・・・・・祓われますか? それとも器ごと・・・死にますか?」

黒鬼の怪力をもってしても天空の拘束は解けない。
つまりこれ以上反撃は不可能だ。それなら選ぶべき選択は1つだけだ。

「…わかった。大人しく祓われてやる。だからこの器は見逃してくれ」

奏鳴をこれ以上巻き込むわけにはいかなかった。

(こいつには、こいつを必要としている人がいるんだ。僕と違って…)

黒鬼が憑依を解いた。奏鳴が気絶しているため黒鬼の意思だけで奏鳴の体から出ることができた。

「さあ、器を離してくれ」

「ええ、わかりました」

天空は両腕の拘束を解いた。奏鳴は崩れ落ちるように倒れる。

「それでは言い残したことは?」

天空が術式を詠唱し構えながら言う。

「ふっ、暗闇の執行人にも慈悲があるんだな」

「ええ、僕とて鬼ではありませんから」

「それは僕に対する皮肉か? まあいい、言い残したこと、か…」

黒鬼は封印される前や封印が解かれてからの数日を思い出していた。
そして、覚悟を決めて言った。

「肉じゃが、美味かった」

あの日食べた肉じゃがの味を黒鬼は、はっきり覚えている。奏鳴と初めて共に食べた思い出の食事だ。

「彼に伝えておきますね」

「ああ…」

「それでは、貴方の魂が浄化されますように。浄給きよめたまえ

天空の手から放たれた術式が静かに黒鬼に向かってくる。
これが暗闇の執行人と恐れられる所以の術式だ。

(ありがとう、奏鳴。そして、もう一度お前に会いたかった、無力なわたしをどうか許してくれ)

そして、黒鬼の視界が真っ白に光り輝いた。




読んでいただきありがとうございます。コングです。

いよいよ、vs天空篇も終わりです。鬼篇自体はもう少し続きますのでお楽しみに。

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