人外と友達になる方法
第28話 暗闇の執行人 〜鬼篇〜
十二天将にはそれぞれに役割が与えられていた。
ある者は妖怪たちの統括を、またある者は人間との中立関係を。
そして、天空に与えられた役割が、執行人だった。
役の内容はいたってシンプル。ルールを破った妖怪に罰を執行する、それだけだ。
それ故に、天空は妖怪たちに恐れらていた。
「十二天将の天空? こいつが?」
奏鳴はいまだに信じらにいた。目の前にいるのはどこからどう見てもただの青年にしか見えない。
『間違いない……この妖気は天空のものだ……』
黒鬼がそう言うなら間違いないのだろう。
黒鬼が憑依しているからか、あの一件以来奏鳴は以前より妖力をはっきりと感じられるようになっていた。
だからこそ、目の前にいるのがだだの人間ではないことがわかる。
しかしまさか十二天将だとは夢にも思わなかった。
「あ、もしかして人間の姿だからかな?」
天空は相変わらずにこやかな顔をしている。
「妖力の高い妖怪は人の姿に化けることが出来るんだ。何なら元の姿に戻ってあげようか?」
「ああ、折角だしお願いしようかね」
「それじゃ……」
天空が印を結ぶと、天空の体が眩い光を放った。
「これでいいかい?」
眩しさに耐えかねて目をそらした奏鳴が視線を戻すと、そこには獣の耳を生やし、鋭い牙と爪を持った妖怪がいた。
「これが僕の本来の姿だよ」
その姿を見た途端、黒鬼の震えがより一層強くなったような気がする。
『どうする……今の僕じゃまず勝ち目がない。本調子でも互角が関の山だ。せめて天狐がいてくれれば……』
「悠火たちなら今頃こっちに向かってるはずだ」
『本当か? あとどれくらいで着く?』
「四、五分ってとこかな」
『それなら何とかなるかもしれない。お前の命の安全は絶対に約束する。だからお前の体を僕に預けてくれないか?』
「……それで時間稼ぎってことか?」
『ああ、何とか天狐が来るまで耐えてみせるさ』
「わかった、使ってくれ」
『恩にきる』
奏鳴は自分の意識が薄れていくのを感じた。
(ああ、凄え……これが憑依…)
『あとは僕に任せろ』
奏鳴の意識は完全に途切れた。
「……やはりいい器だ……力が溢れてくる」
「憑依……か、まったく面倒ですね」
天空と黒鬼が互いに戦闘態勢に入る。
天空は姿勢を低くし、一瞬の隙を伺う。
黒鬼は両手に黒い靄のようなものを纏い構える。
「はっ!」
黒鬼が先手必勝で攻撃する。
天空は腕で防御するが、黒鬼の火力に押し負け少しずつ後退する。
「はぁぁぁぁぁ!」
黒鬼の怒涛の攻撃に耐えきれず、天空は後ろに跳ぶ。
「流石は鬼族の、それも色持ちなだけはありますね……」
「まだまだ!」
黒鬼が再び天空との距離を詰める。
握った拳が防御の甘い右肩を捉える。
直前、黒鬼の視界が一転した。
「なっ!」
天空が黒鬼の足を払い、その突進の勢いを利用して一回転させたのだ。
黒鬼は背中を地面に打ち付けられた。
「同じ手は喰らいませんよ?」
「くそっ!」
黒鬼は瞬時に起き上がり、天空との距離を取る。
しかし天空が瞬時に詰め寄る。
「逃がしませんよ」
天空が黒鬼の腹に向かって爪を構える。
「はっ!」
黒鬼は腹を黒い靄で守る。
しかし爪の勢いでそのまま黒鬼は吹き飛ばさる。
「おお、防ぎましたか……まあ特級ならこれくらいは当然か」
(まだ一分しか経ってない……このままじゃ……それにあいつの固有術式がまだわかってない)
焦る黒鬼を気にする様子もなく、天空は笑っている。
「その靄凄いですね。攻撃に使えばかなりの火力を誇り、防御に使えばかなりの防御力を誇る。ですが、それだけじゃ僕の固有術式を使うまでもないですね」
一定以上の妖力を持った妖術師や妖怪はそれぞれ固有の妖術を会得することがある。
雷王の電撃や、黒鬼の黒靄などだ。
それに類似する術式は存在するが、固有術式には遠く及ばない。
「余裕こいてられるのも今のうちだ……すぐに使わせてやるよ!」
黒鬼は今度は足に黒靄を纏う。
「今まで僕が固有術式を使った相手は片手で数えられるほどです。あなたにそれほどの力があるとは思えませんが?」
「これでもそんな余裕でいられるか!?」
黒鬼が消える。
いや、消えたのではない高速で移動しているのだ。
足に黒靄を纏うことでこの高速移動が可能になる。
「速い……」
天空をもってしても目で追いきれていない。
「ぐっ!」
天空が前のめりに倒れる。
黒鬼が背後から攻撃したのだ。
「小賢しいっ!」
瞬時に背後に回し蹴りを繰り出すが黒鬼の残像を捉えるだけだった。
「遅い!」
回し蹴りを繰り出し体の重心が傾いた天空の左足を払う。
バランスを崩した天空は膝と手を地面につく。
その隙を見逃すほど黒鬼は優しくはない。
「はぁっ!」
天空の死角から攻撃し、高速移動してまた攻撃。
黒鬼の怒涛の攻撃が続く。
「本当に固有術式を使わなくてもいいのか!? 使わぬのならこのまま叩き潰す!」
「……あぁ、五月蠅いなぁ……」
天空の放ったその一言は今までの落ち着いた声色では無かった。
「霧幻之檻」
天空の体から正体不明の霧が発生する。
その霧は瞬く間に黒鬼の周囲を取り囲み込んだ。
「……それがお前の固有術式か?」
「この術式で倒せない妖怪はいないよ。君はもう終わりだ」
「やってやるよ!」
黒鬼は黒靄を両手に纏い構える。
(天狐が来るまであと約二分……大丈夫だそれまで何としても耐える!)
辺りは一面謎の霧に包まれている。
「はぁ!」
黒鬼の拳が天空の顔面を捉えた。
「手応え有り!」
天空は殴られた勢いのまま吹き飛び、地面を転がる。
「まだだ!」
天空に追い打ちをかけるため、黒鬼が天空に迫る。
しかし、不可解なことが起きた。
天空が消えたのだ。
いや正確には消えたのではなく砂になったのだ。
「何っ! この霧が固有術式じゃないのか!?」
「残念だったね、僕ら十二天将は固有術式を複数持っているんだ」
「そんな……」
「それじゃあ始めようか、暗闇の執行人による裁きの時間だ」
読んでいただきありがとうございます。コングです。
ようやく現代アクションっぽくなってきましたね〜
バトルにスピード感が無いとか、イマイチ迫力に欠ける何て言わないでください。泣いてしまいます。
それではまた次回!
2020/5/5一部改稿
ある者は妖怪たちの統括を、またある者は人間との中立関係を。
そして、天空に与えられた役割が、執行人だった。
役の内容はいたってシンプル。ルールを破った妖怪に罰を執行する、それだけだ。
それ故に、天空は妖怪たちに恐れらていた。
「十二天将の天空? こいつが?」
奏鳴はいまだに信じらにいた。目の前にいるのはどこからどう見てもただの青年にしか見えない。
『間違いない……この妖気は天空のものだ……』
黒鬼がそう言うなら間違いないのだろう。
黒鬼が憑依しているからか、あの一件以来奏鳴は以前より妖力をはっきりと感じられるようになっていた。
だからこそ、目の前にいるのがだだの人間ではないことがわかる。
しかしまさか十二天将だとは夢にも思わなかった。
「あ、もしかして人間の姿だからかな?」
天空は相変わらずにこやかな顔をしている。
「妖力の高い妖怪は人の姿に化けることが出来るんだ。何なら元の姿に戻ってあげようか?」
「ああ、折角だしお願いしようかね」
「それじゃ……」
天空が印を結ぶと、天空の体が眩い光を放った。
「これでいいかい?」
眩しさに耐えかねて目をそらした奏鳴が視線を戻すと、そこには獣の耳を生やし、鋭い牙と爪を持った妖怪がいた。
「これが僕の本来の姿だよ」
その姿を見た途端、黒鬼の震えがより一層強くなったような気がする。
『どうする……今の僕じゃまず勝ち目がない。本調子でも互角が関の山だ。せめて天狐がいてくれれば……』
「悠火たちなら今頃こっちに向かってるはずだ」
『本当か? あとどれくらいで着く?』
「四、五分ってとこかな」
『それなら何とかなるかもしれない。お前の命の安全は絶対に約束する。だからお前の体を僕に預けてくれないか?』
「……それで時間稼ぎってことか?」
『ああ、何とか天狐が来るまで耐えてみせるさ』
「わかった、使ってくれ」
『恩にきる』
奏鳴は自分の意識が薄れていくのを感じた。
(ああ、凄え……これが憑依…)
『あとは僕に任せろ』
奏鳴の意識は完全に途切れた。
「……やはりいい器だ……力が溢れてくる」
「憑依……か、まったく面倒ですね」
天空と黒鬼が互いに戦闘態勢に入る。
天空は姿勢を低くし、一瞬の隙を伺う。
黒鬼は両手に黒い靄のようなものを纏い構える。
「はっ!」
黒鬼が先手必勝で攻撃する。
天空は腕で防御するが、黒鬼の火力に押し負け少しずつ後退する。
「はぁぁぁぁぁ!」
黒鬼の怒涛の攻撃に耐えきれず、天空は後ろに跳ぶ。
「流石は鬼族の、それも色持ちなだけはありますね……」
「まだまだ!」
黒鬼が再び天空との距離を詰める。
握った拳が防御の甘い右肩を捉える。
直前、黒鬼の視界が一転した。
「なっ!」
天空が黒鬼の足を払い、その突進の勢いを利用して一回転させたのだ。
黒鬼は背中を地面に打ち付けられた。
「同じ手は喰らいませんよ?」
「くそっ!」
黒鬼は瞬時に起き上がり、天空との距離を取る。
しかし天空が瞬時に詰め寄る。
「逃がしませんよ」
天空が黒鬼の腹に向かって爪を構える。
「はっ!」
黒鬼は腹を黒い靄で守る。
しかし爪の勢いでそのまま黒鬼は吹き飛ばさる。
「おお、防ぎましたか……まあ特級ならこれくらいは当然か」
(まだ一分しか経ってない……このままじゃ……それにあいつの固有術式がまだわかってない)
焦る黒鬼を気にする様子もなく、天空は笑っている。
「その靄凄いですね。攻撃に使えばかなりの火力を誇り、防御に使えばかなりの防御力を誇る。ですが、それだけじゃ僕の固有術式を使うまでもないですね」
一定以上の妖力を持った妖術師や妖怪はそれぞれ固有の妖術を会得することがある。
雷王の電撃や、黒鬼の黒靄などだ。
それに類似する術式は存在するが、固有術式には遠く及ばない。
「余裕こいてられるのも今のうちだ……すぐに使わせてやるよ!」
黒鬼は今度は足に黒靄を纏う。
「今まで僕が固有術式を使った相手は片手で数えられるほどです。あなたにそれほどの力があるとは思えませんが?」
「これでもそんな余裕でいられるか!?」
黒鬼が消える。
いや、消えたのではない高速で移動しているのだ。
足に黒靄を纏うことでこの高速移動が可能になる。
「速い……」
天空をもってしても目で追いきれていない。
「ぐっ!」
天空が前のめりに倒れる。
黒鬼が背後から攻撃したのだ。
「小賢しいっ!」
瞬時に背後に回し蹴りを繰り出すが黒鬼の残像を捉えるだけだった。
「遅い!」
回し蹴りを繰り出し体の重心が傾いた天空の左足を払う。
バランスを崩した天空は膝と手を地面につく。
その隙を見逃すほど黒鬼は優しくはない。
「はぁっ!」
天空の死角から攻撃し、高速移動してまた攻撃。
黒鬼の怒涛の攻撃が続く。
「本当に固有術式を使わなくてもいいのか!? 使わぬのならこのまま叩き潰す!」
「……あぁ、五月蠅いなぁ……」
天空の放ったその一言は今までの落ち着いた声色では無かった。
「霧幻之檻」
天空の体から正体不明の霧が発生する。
その霧は瞬く間に黒鬼の周囲を取り囲み込んだ。
「……それがお前の固有術式か?」
「この術式で倒せない妖怪はいないよ。君はもう終わりだ」
「やってやるよ!」
黒鬼は黒靄を両手に纏い構える。
(天狐が来るまであと約二分……大丈夫だそれまで何としても耐える!)
辺りは一面謎の霧に包まれている。
「はぁ!」
黒鬼の拳が天空の顔面を捉えた。
「手応え有り!」
天空は殴られた勢いのまま吹き飛び、地面を転がる。
「まだだ!」
天空に追い打ちをかけるため、黒鬼が天空に迫る。
しかし、不可解なことが起きた。
天空が消えたのだ。
いや正確には消えたのではなく砂になったのだ。
「何っ! この霧が固有術式じゃないのか!?」
「残念だったね、僕ら十二天将は固有術式を複数持っているんだ」
「そんな……」
「それじゃあ始めようか、暗闇の執行人による裁きの時間だ」
読んでいただきありがとうございます。コングです。
ようやく現代アクションっぽくなってきましたね〜
バトルにスピード感が無いとか、イマイチ迫力に欠ける何て言わないでください。泣いてしまいます。
それではまた次回!
2020/5/5一部改稿
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