俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件

ながしょー

第47話 二人による看病は辛い

 「私のベッドに寝て!」

 「え?」

 「いいから早く!」

 「あ……はい」

 言われるがまま、俺は六花のベッドに寝た。
 六花が先ほどまで寝ていたベッド。
 布団を被るなり、六花の匂いが鼻を伝って脳を刺激する。
 ある意味で頭がクラクラしてきて……もう……さらに悪化しそう!

 「とにかく今日は安静にしておくこと!それとユキちゃんはまた伝染るといけないからリビングのところに行ってて」

 「ええー。やだ!お兄ちゃんを看病するのはウチだもん!」

 六花の言う通り、安静にしていようと思った矢先、ユキが頬を膨らませながら抗議している。
 その仕草がなんとも可愛らしくみとれていると、六花が獲物を狙うライオンのごとく、俺を睨みつけた。
 ――あ……すみません。
 次、睨まれたら食われちゃう!
 ということで次こそ大人しく布団を被り目を閉じた。

◆❖◇◇❖◆

 次に目を覚ました時にはもう昼過ぎだった。
 カーテンの隙間からは高く登った太陽のせいで俺の目元ピンポイントに光が差し込んでいる。
 そんな眩しさで目を薄めている時、部屋のドアが開いた。
 
 「しょーくん起きた?」

 「……ああ」

 入ってきたのはおかゆと風邪薬をお盆にのせて持ってきた六花だ。
 俺は生返事をして、上半身だけ起こす。

 「これなら食べられるでしょ?」

 「なんとかな」

 正直、食欲がない。
 おかゆも食べたくない。
 でも、断ったら六花が怒る。
 だから食べる。
 
 「しょーくん、あーん」

 「え?」

 六花がレンゲでおかゆをすくったと思えば、いきなりの行動である。
 俺は気恥しさのあまり、これだけは拒んだんだが……

 「……食べないなら……口移しでする?」

 「あ……いや……結構です!食べますからはい!」

 なんとも大胆な六花さん。
 もしかして俺のことが好きなのかしらん?
 と、思っているやつはイタイ。
 世間一般的に言えば、ただの勘違い男。
 六花は俺が少しでも楽に食べられるように食べさせてくれているのだと思う。
 これを勘違いしたやつは本当にイタイ。
 以上、俺の中学の体験談よりでした!

 「何泣いてるの?」

 「い、いや……嫌なこと思い出しちゃって」

 「ふーん……相談乗ろうか?」

 「それだけはいい!聞かれたくない!」

 ◆❖◇◇❖◆

 それから数時間後。
 気がつけば夜になっていた。
 カーテンの隙間からはあんなに眩しかった太陽の光はなく、代わりに柔らかな月の光が差し込んでいた。

 「お兄ちゃん!」

 「うわ!お前いつの間に入ってきてたんだ?!」

 ぼーっとしていたせいもあり、義理の妹のユキが部屋に入ってきたことすら気づかなかった。

 「ねぇ、電気つけないの?」

 「ああ、つけてくれるか?」

 ユキはドアの横にあるスイッチをポチッと押すと部屋全体がパッと明るくなった。
 その明るさにまだ目が慣れてないのか、少し目を細める。

 「ユキ、何しに来たんだ?」

 「その……体を拭きに……」

 ユキは頬を赤くし、手足をモジモジさせながらそう言った。
 「体なら自分で拭けるぞ」と、言ったのだが「私が拭いてあげる!」と、まるで人の話を聞いていない。

 「ったく……じゃあ、背中だけな」

 「うん!任せにゃしゃい!」

 こいつ今絶対噛んだよな?
 全然任せられないんだけど!
 でも、妹の善意だし断るのもなんかはばかられた。

 「服脱いだぞ」

 「よし!やるぞ!」

 気合い入れるほどのことでもないが、まぁいいだろう。
 ユキは俺の背中を肩から下へと丁寧に吹いてくれた。
 途中、ユキの吐息がかかったり、変な声が聞こえたりして理性が吹っ飛びかけた。

 「お兄ちゃんの硬くて太い……」

 何がだよ!
 何が硬くて太いなんだ?!
 俺の背中に何かそういうものでも付いてるんですか?!
 もう……声に出してツッコム気にもなれなかった。

 「終わったよぉ〜」

 「あ、ありがとな……」

 「どうしたのそんな疲れた顔をして」

 その原因は全てユキなんだが……。
 こうして二人による看病のおかげで三日後に元気になった。

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