俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件

ながしょー

第7話 愛の告白練習♡【後編】

 六花の世にも恐ろしい愛の告白から30分。
 俺はその間ずっと屋上でのたうち回っていた。
 だって、封印して自分の過去から忘却していた黒歴史を掘り起こされたもん。
 結構な精神的にも身体的にもダメージを負った俺は、六花と一緒に部室に戻ることにした。

 「美月ちゃん、お待たせぇ~…って、あれ?」

 六花の表情が変わった。

 「どうしたんだ?」

 俺は部室の中を覗いた。
 すると、美月の姿はどこにもいなかった。
 その代わりにあるものが長机の上に置かれていた。
 それを発見した六花は近寄り、それを手に取ると、

 「これって…ラブレターじゃない?」

 「え…」

 なんで美月がラブレター?
 もしかして告白の練習すか?
 あー。なるほど。
 あいつ好きな人がいるのね。
 だから練習なのか。
 ということは練習相手は女子である六花だな。
 
 「ねぇ…これしょーくん宛てだよ」

 「はああああああ?!」

 いやいやいや、嘘でしょ?
 そう思いながら六花が持っている封筒を強引に取り上げ、裏を見ると…

 「ほんとだ…」

 でも、なぜ俺に?
 普通は女子である六花を練習台にすればいいと思うんだが。

 「たぶん…あれだよ!女子である私から練習するのはハードルが高すぎたのよ」

 「なるほど…」

 それなら、何となく納得ができる。
 一瞬、美月の好きな人って俺かと思っちゃったよ。まったく…あはははは。
 …はぁ。

 「で、早く読んでよ。なんて書いてあるか気になるじゃん」

 「う、うん。分かった」

 俺は可愛らしいシールが張られた封をはがし、中に入っている紙を取り出した。
 そして、1回深呼吸をし、文章を黙読した。

 ‟拝啓 ますますのご活躍をお喜び申し上げす。
  さて、今回の要件につきましては……………………
  特別棟1階多目的室にて心よりお待ちしています。„

 「……」

 どこの公文書だよ!
 めちゃくちゃ堅苦しい文章だな!
 これを好きな人にラブレターとして送ったらどうなることやら。

 「ねぇねぇ、もう読み終わった?5分は経ったよ?さすがに読み終わったよね?」

 「う、うん…なんとかね」

 読み終わるのにそんなにかかったのかよ。
 一応、公文書らしきラブレターを六花にも読ませた。

 「……」

 六花は唖然としていた。
 まぁ、予想通りの反応だ。
 誰でもこんな長くて堅苦しい文書を読めば、そうなるし、これがラブレターと聞いたら、言葉も出ないのは当たり前。

 「とりあえず行ってくる」

 「うん…頑張って」

 何を頑張るのか分からないが、美月が待っているであろう多目的室へと向かった。

 多目的室に着くと、中にはもう美月の姿があった。
 教卓の横に置いてある椅子を窓際に移動して外を眺めていた。

 「み、美月…来たぞ」

 声をかけるなり、勢いよく飛び立った姿は何かに上から吊るされているようにピンとしていた。
 
 「…緊張してんのか?」

 「じぇんじぇんしてにゃいよ!」

 ろれつが回ってないほど緊張しているらしい。
 男同士でしかも、ほぼおふざけみたいな告白練習にそんなきんちょうしなくてもなぁ…。

 「わ、私…じゃなくて、ぼ、僕と付き合ってください!」

 「率直すぎるだろ!」

 会って数十秒で告白された。
 もう少しなんか話すこととかないのかな?

 「じゃあ…どうすれば…」

 俺の反応を見た、美月は困惑気味だ。
 
 「いや、まぁ…こういう告白もありちゃありか」

 「じゃあ、答えは?」

 「は?」

 答えって何?
 もしかして今の告白の答えを求めているの?
 
 「…やっぱりいい。ごめんね」

 「うん…」

 俺の困惑した表情を見て、悟ったのか、悲しそうな顔で断った。
 その表情がとても女の子ぼくて…本当に男だよな?女だったら絶対に好きになってたかも。

 「そろそろ戻るか」

 「そうだね。六花ちゃんを長く待たせるのもいけないし」

 俺と美月は一緒に多目的室を出ると、六花が待つ部室へ戻った。

 部室に戻ると退屈そうに椅子に座り、長机の上で頬杖をついた六花がいた。

 「遅い!」

 そう言っても、六花の時よりかは短く済んだんだが。
 俺と美月はそれぞれ椅子に座ると、六花から1枚のプリントを渡された。

 「何これ?」

 そのプリントを見ると、一番上に『夏合宿!』と書かれていた。
 その下には夏合宿の日程やら準備するもの、宿泊するところなどが書かれていた。

 「一つ聞いていいか?」

 「何?」

 「この夏合宿にかかる費用ってどこから出てるんだ?」

 この部活は学校側は認めているけれど、正式な部活ではない。
 いわば同好会なのだ。
 同好会は正式な部活ではないため、生徒会から部活動にかかる予算などはおりない。
 よって、何をするにもすべて実費なわけだ。
 だから俺は疑問に思ったのだが、学校側が出してくれるとも思わないし…

 「これから出したよ」

 と、言って六花がカバンから取り出したのは…通帳だった。
 そして表紙に記載されている口座名義をよく見ると…『小鳥遊翔太 様』
 
 「って、おおおおおおおいいいいいいいいい!」

 「どうしたの?」

 「ニヤニヤしながら聞くな!分かってるだろ!?それ俺のじゃねぇか!」

 「……いいじゃん!」

 「何今の間は?!いいから返せ!」

 俺は乱暴に六花の手から通帳を取り上げ、中の残高を確認した。
 …………ZERO
 ニュースZEROの音が頭をよぎった。
 
 「じゃなくて、どうやって引き出したんだ!」

 暗証番号とかは教えていなかったはず。
 
 「それは内緒♡」

 六花は俺にウィンクをするとゲラゲラと笑い始めた。
 こいつ悪魔だ。
 初めて会った時と性格違くないか?
 ……もう。
 それなりに貯まってたのに…。
 俺は泣きそうだった……いや、泣いていた。

 「うそうそ。後で返すから今だけ貸して?」

 「ほ、本当に…?」

 六花は俺に近づいてきてハンカチを差し出すと、

 「も、もし…うそだったら私を、そ、その…しょーくんのものにしていいから…」

 頬がほんのり赤くなっていた。
 俺を見つめた目は本気だった。
 …もう……返さなくていいです。そう言いかけそうになった。

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