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雪の華

音絃 莉月

3話〜家族達〜

久方ぶりの陽の光に目を焼かれながら、意識が覚醒していく。
見慣れた天井を見ながらの第一の思考は、

『夢の中だからノーカンだな』だった。

あの悪魔を思い出す。妖艶に嗤う悪魔ノッテはそれはもう神秘的だった。
だが、ムカつく。ノッテは完全な男だった。所謂イケメンなのだ。
きっと『美しい』の次に『カッコいい』と評価されるであろう顔なのだ。

俺は『可愛い』しか言われた事ないのに。

寝起きの頭でノッテへの愚痴を言いながら、ゆっくりと起き上がった。
限界まで身体を伸ばし、一気に脱力。
脱力と共にベッドに再度倒れこむ。まだ、身体が活動してないらしい。

少しボーっとしていると扉がノックされた。返事をすると酷く驚いたようで慌てて入ってきた。

「ルヴィ様っ!目が覚めたんですね!」

目を見開き入ってきた暗めの金髪に青のメッシュが入った男の子は徐々に顔を歪めアクアマリンの瞳に涙を溜める。

「おはよう。ルシィ。心配かけちゃったみたいだね」

俺が安心させる様に笑い掛けると、花開く様に笑う。しばらく俺の無事を確認してきたが、思い出した様に家族に報告に向かった。

彼はルシリオ。初めて出掛けた街で路地裏から飛び出してきて、護衛に止められた孤児だった。初めて自分の小遣いで買ったチーズケーキを分けてあげたのだ。

身体に傷を負い薄汚れながらも、透き通った輝きを放つその眼に惹かれて父上に保護を頼み込んだ。

今は執事長のエルドさんの養子になって、執事見習いをやっている。

「ルヴィ!目が覚めたのか。あぁ、よかった。ヘルリックの言葉は信じていたが」

開いたままの扉から小走りで入ってきて、抱きついてきた。明るめの金髪に藤色の瞳を持つ男。

「父上。心配かけてごめんなさい」

ほんの少し苦しさを感じる熱い抱擁に、背中に手を回しながら答える。この苦しさが今は安心できた。

「五日間も眠っていたのだ。ヘルリックにどれだけ診察させても安心出来なかった」

父上の言う『ヘルリック』さんとはクワルツ公爵家専属の医師で、妻の『ミリヴァーナ』さんと共に何かと助けてくれる。優しいお爺さん。

にしても五日とは、身体が怠いのはそのせいか。そういえばノッテが摘み食いをしたとかなんとか言ってたな。

「ルヴィお兄さま!」

小さな女の子が駆け寄り父上を押し退け、しがみ付いてくる。その姿を認識した時、ほんの一瞬だけ抱き返す事を躊躇した。

その女の子は周りを不幸にするから。

「ルヴィお兄さまぁ!ルヴィお兄さまぁ!死んじゃうって。だいじょうぶって言われたけど、動かないからぁ!」

泣き喚き無事を確認する様に暗めの銀髪を胸に押し付けてくる。
その姿を見れば自然とその小さな身体を抱き締めていた。

「リア、だいじょうぶ。兄さまは生きてるよ。死んだりしない。だいじょうぶだよ」

背中を優しく撫で、声を掛ける。安心させる様に。
例えこの子が原因で破滅するとしても、この子は大事な大事な妹なのだ。

それから暫く妹は泣き続けた。泣き止まそうと声を掛けると余計に泣くから、黙って背中をさすり続けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

やがてリアは寝息を立て始めた。
赤くなった目元は、綺麗な江戸紫の瞳を隠している。
布団の下にある俺の脚に乗っているため、そこそこ重いのだが、父上が引き取ろうとしてもしがみ付いて離れないのだ。
仕方がないのでそのままである。

「ルヴィ、目が覚めて良かったよ」

リアと共に部屋に入ってきたが、今まで空気と化していた2歳上の少年が頭を撫でてきた。

「兄上、ご心配をおかけしました」

少し暗めの白に紫が滲む髪と竜胆色の瞳を持つ目の前の少年は、俺の兄だ。
『ローリクルス・リシアネ・クワルツ』
俺やリアを溺愛しているが、7歳にして既に腹黒い一面を持つ。

「お前が謝る必要はない。全てはミーネの葛藤に気が付けなかった私の責任だ。お前に恐ろしい思いをさせた事、本当にすまない」

そう言って父上は拳を握り締めた。
ミーネさんは父が子供の頃からこの屋敷に仕えていた。父上にとって執事長エルドさんの次に長い付き合いなのだ。
信頼していたのだ。今回の事を予測出来ないのも無理はない。

いや、長い付き合いで信頼していたからこそ、ミーネさんの心の中を見抜けなかった事を悔いているのかもしれない。


その後俺を安心させる様に他愛のない話をした。この場に来ない母上の体調も気掛かりだったが、俺が姿を見せれば元気になるだろうと、父上は笑って言った。

だが、途端に表情を消し何か考え込んだ。
暫くして深呼吸をすると、覚悟を決めた様に父上は俺の目を真っ直ぐ見つめた。

「ルヴィ、お前はもう魔法を使えない」

そして悲しげな表情で父上はそう言った。
妹の柔らかな髪を梳いていた俺の手は止まり、先程までの和やかな雰囲気は一変して冷たいものへと変わっていた。

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