マグ拳ファイター!!

西順

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「な、何なのよ? あなたたちのそのデタラメな強さは!?」
 オレが皆の下に戻ってくると、最初に言葉を発したのがカルーアだった。
「何なの? と言われてもな。普通だよな?」
 オレが皆に同意を求めると、皆肯定の頷きを返してくれる。
「むしろまだ甘い。今日見て確信したけど、やっぱりリンは私たちの中で一番弱い。今日は対戦相手に恵まれただけ」
 とマーチから厳しいお言葉が返ってくる。
「あれで、一番弱い?」
 マーチの言葉にカルーアがオレのクランメンバーをマジマジと見遣る。プレイヤーもいればNPCもいる。プレイヤーの中で一番弱い、なら理解できようが、弱いと言っているのはNPCのマーチだし、それに同意しているのもNPCの天使たちだ。自然とカルーアの顔は理解できないモノを見る目になっていた。
「辞退するなら今のうちだぜ?」
 オレの言葉にハッとしたカルーアは、
「ハッ、辞退? 冗談は止めてよね。やっと、本選が楽しみになってきたところよ!」
 変わらぬ強気ってことは、頭の中でそれなりの勝算を弾き出しているってことだろうか? 獅子堂くんも落ち着いてるし。
 とカルーアたちと話をしていると、ブーブーと会場からブーイングの嵐が巻き起こる。振り返れば、次の闘いがもう終わっていた。
 顎ヒゲがモミアゲと繋がった、まさに筋骨隆々といった感じのおっさんが、デカい大剣を持ってガッツポーズをしている。
「フンガアアアアア!!」
 よく分からんが、何故かこちらにアピールしている。何者だ? あのおっさん。
「ガンドール……。やつも出ていたのね」
 どうやらカルーアと獅子堂くんは知っているらしい。獅子堂くんに説明してくれ、と目で訴えると、
「先日の超巨大ヌシサマにトドメを刺したのが、あのガンドールですよ」
 へえ、それはありがたいことだな。にしては、
「なんだが嫌われているみたいだけど?」
「当然よ。何せこれはオレのモノだ、って倒したヌシサマの魔核を独り占めしたんだから」
 あらら、それは恨まれて当然だな。あれだけ巨大な主様の魔核なら、復興に一役貢献できたろうに。
「で、何であいつこっちにアピールしてんの?」
「さあ?」
「自己顕示欲が強いんじゃないですか?」
 皆で首を傾げていると、
「次はお前たちだ!」
 オレたちを指差して吠えるガンドール。なるほど、自己顕示欲が強そうだ。
 ガンドールは言うだけ言うと満足したのか、控え室の方へ去っていった。

 予選で残ったの、オレにマヤ、烈牙さん、カルーアに獅子堂くんとハーチェルとマホロバさんと言うマギノビオンのメンバー二人にガンドールの八人だ。
 その日のうちに抽選会が行われ、一回戦の組み合わせが決まった。

一回戦

第一試合 リンタロウ対ガンドール

第二試合 獅子堂 蔵之介対ハーチェル

第三試合 熱波 烈牙対マホロバさん

第四試合 マヤ対カルーア

 順当に行けば、準決で獅子堂くん、決勝でマヤか烈牙さんと当たりそうだ。
 マホロバさんやハーチェルの闘いを見たが、烈牙さんや獅子堂くんに勝てるようには見えなかったからなあ。恐いのはガンドールか。話に夢中で見てなかったのが悔やまれる。しかしあの主様を倒したと言うのなら実力はブラフではないだろう。
「ハァー、困ったなあ」
 と仮住まいでため息ついていると、マーチに、
「本当に困っているやつは椅子の背もたれに体をを預けてだらーんとなんてしない」
 と叱責を受けてしまった。
「でも明日の本選までやることないし」
「ハァー、烈牙もマヤも明日の本選に向けて精神を集中させるためにどこか行ったって言うのに、リンはいつも通りか」
 そりゃ、二人はバトルジャンキーだからねえ。大体オレの目的は自力の底上げであって、大会を勝ち抜くことじゃないからなあ。
 オレは起きててもマーチに小言を言われ続けると考え、明日に備えてもう寝ることにした。お休みなさい。

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