マグ拳ファイター!!

西順

127

「タン、タタタタ、タタタタ、タン、だ」
 部屋の向こう、この部屋を見事に通過したブルースが、オレにどうやったらこの部屋をを攻略できるか教えてくれている。
「タン、タタ、タタタン、タタタン?」
「違う! タン、タタタタ、タタタタ、タン、だ!」
 分かるかぁ! 自慢じゃないがオレは音楽の成績最低なんだぞ!
 だがそんなことを言ってはいられない。何せこの部屋をクリアできていないのはオレだけなのだから。
 ファラーシャ嬢やヤースープ公妃閣下、その精鋭にブルースマーチは分かるが、マヤにアキラ、オーロ王女までクリアしていて、向こうから応援している。
 この部屋は音楽に合わせて床材の一部が光るのだが、音楽に外れると床材が抜けて下の巨大針山にまっ逆さまだ。
 音楽を罠に仕掛けてくるとは、なんて凶悪なんだ外酷城!
「タン、タタタタ、タタタタタン」
「惜しい!」
 惜しいの? 何が正解で何が間違いなのかも分からない。
「タン、タタタタ、タタタタ、タン……?」
「それ!」
 向こうで皆がわいわい言っている。どうやら正解を引き当てたらしい。
 タン、タタタタ、タタタタ、タン。タンタタタタ、タタタタ、タン。
「よし! 行きます!」
 右手を上げてオレは部屋に流れる音楽に耳を澄ませる。向こう側も静まりかえっている。なんなら祈っている人までいる。
 よし! 今だ! というタイミングで光る床材にジャンプする。……崩れない。しかしホッとはしていられない床材が光っているうちに次の床材にジャンプしなければ、足場が崩れるのだから。
 次は四連続。タタタタ、とジャンプする、と皆が心配そうにこちらを見守っているのが目に入り、一瞬足場を踏み外しそうになった。
「ああ!」
 皆から声が上がるが、なんとか持ち直し、次のタタタタに繋げる。が、次何だっけ?
 こうなったら、と最後の足場を思っいきりジャンプするオレ。が態勢が整わずにジャンプしたせいだろう、オレのジャンプは後ちょっとだけ出口に足りず、オレの体はそのまま床材を壊して針山に、というところでガクンと手が何かに引っ掛かる感触。上を見れば、アキラとブルースがオレの手を握っている。オレはなんとか針山にダイブしないですんだようだ。
「大丈夫かリン!」
「うん、なんとか」
オレは二人に持ち上げられながら、
「なあ」
「なんだよ?」
「下にもう一つ通路があるんだが?」
「「何ぃ!?」」
 驚いた二人に手を離されるオレ。オレは空中でジタバタしながら、下方の通路にしがみついたのだった。

「なんと言うか、意地悪さもここまでくると立派に思えてくるな」
 皆で下方の通路に降りてくる。上方の通路にはレバーがあり、それを作動させると下方に降りれるようになっていたからだ。下方の通路には上に行ける仕掛けが無いことから、こちらが正解の道だと推察した。
 その通路を進んで行くと外に出た。橋がある。が中央に一本の支柱が付いているだけで他に支えが無い。支持できるものがない上に、下を見ればかなりの上空だ。どうやらこの先の部屋がこの城の突き当たり、天守閣のような場所のようだ。
「まあ、行くしかないよな」
 皆で顔を見合せ、ジャンケンをする。最初に行く一人を決める。負けたのはブックマンだ。
「何故僕が……」
 とぶつくさ言いながらもブックマンは橋に一歩踏み出す。すると横に動き出す橋。脇に支えがない橋が動く。見ているだけでゾッとする。ブックマンはその橋をハルバードを支えにゆっくりゆっくり歩いていく。真ん中の支柱にたどり着いたところで90度回転していた。そしてブックマンが橋の端にたどり着いたところで180度。
「お帰り」
「ただいま…戻りました」
 う~ん、真っ直ぐ行くと、丁度180度回転するらしい。
 その後、一人ずつ試してみるがダメだった。走って向こうまで行っても180度回転するし、途中で帰ってきても橋も元に戻ってくる。
「困ったなあ」
 と思案していると、
「ねえ、通れたんだけど?」
 とマーチが橋の向こうから声を掛けてきた。
 へ? どうやったの? やべぇ、見てなかった。
「マーチ、どうやって通ったんだ?」
「いや、普通に通れたけど?」
 ?? 訳分からんな。マーチと他の人と何が違うんだ? もしかして重量か? 人形が重量過多で何かしらの仕掛けに引っ掛かったのか? となると、
「マヤ」
「私が一番重いと思ってるのね」
「うん」
 蹴られた。でもマヤは橋を進んでいく。が普通に180度回転して戻ってきた。違うのか? もっと重量が必要なのか?
「オーロ王女」
「あなた、本当に失礼ですよね」
 オーロ王女は文句を言いながらもオレに背負われ、オレたちは橋を進む。すると、あっさり先に進めたのだ。回転は360度だった。なるほど。
「人数だな、多分」
「人数?」
「一人180度で二人で360度。多分マーチの人形は人としてカウントされたんだと思う」
 という訳で皆にそのことを説明し二人一組できてもらう。
 ファラーシャ嬢とヤースープ公妃閣下、アキラとブルース、マヤと神父。が、精鋭は五人なのだ。一人余る。どうしたものか。
「マーチ、人形背負ってオレと来てくれ」
 マーチとともに橋に乗る。精鋭の一人も乗る。これで橋に四人乗ったことになる。精鋭の一人にこちらに来てもらえば、720度回転で、最後の一人はオレたちの元にたどり着いたのだった。酔いました。

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