マグ拳ファイター!!

西順

9

 石で考えるから変な方向に話がいくんだ。
 手でいいじゃないか。…………いや、人間の身体は電気を通す。手が電磁石になって砂鉄を引き寄せる可能性があるんじゃないか?
 
 考えると頭がパンクしそうになってきたので、別に電磁力でもいいんじゃないかと思えてきた。
 電磁力が使える。…………うん、凄そうだ。

 ただやはりメインはテレキネシスで行きたいので、テレキネシスの練習をしていて、結果、電磁力になってしまったのなら仕方ない、という方向で。
 …………なんだか言い訳がましいな。何でゲームで誰かに言い訳しなきゃならないんだ。
 修正。両方覚える。これなら誰も文句言えまい。

 最初はやはりテレキネシスだ。だって電磁力の使い方習ってないし。う〜ん、また言い訳してるな。
 だがまあいい、電磁力はゲームを終わらせてから調べよう。
 でテレキネシスに戻すと、さっきの石と砂はいいと思う。
 石に砂をくっつける。まずはこれから始めよう。
 やるべきことはイメージ。石に砂を引き付けるイメージ。砂が段々と石に引き寄せられていくイメージ。
 そしてそれをパスで手に持っている石に伝える。伝わったと思ったらその石を地面スレスレに。
 …………しばらく待って石を確認してみる。
 あれ? ちょっと付いてるじゃないか。難しいと思ったが、意外といけるかもしれない。このまま継続してみよう。

 それは一息つくために、同じぐらいの量の砂が付いた石を地面に置いた時だった。
 手が離れた瞬間、今までくっついていた砂が一斉にほどけて落ちたのだ。
 最初オレは集中が切れたから落ちたのだと思ったが、違っていた。
 どれだけ少ない砂粒だったとしても、手から一ミリでも離れようものなら砂が落ちてしまうのだ。

 これがアキラが言っていたディメンションの難しさか。
 確かに手から離れた瞬間にディーの効力が切れてしまう。だがこれを乗り越えなければテレキネシスは覚えられない。
 オレはひたすら石に砂をくっつけては手から離すを繰り返す。

「はぁ、疲れたなぁ」
 ふと空を見上げれば、すでに夜。空は満天の星々と二つの月に彩られていた。
「綺麗だなぁ」
 純粋にそう思った。
 今日はもうやめよう。オレはログアウトした。
 HMDを脱いで時計を見たら、すでに深夜0時を過ぎていた。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品