炎呪転生~理不尽なシスコン吸血鬼~
14節 私が若菜を連れ戻す
そうして麗菜、アノニム、七日は三手に別れてワカナを探すことにした。互いに背中を合わせて六日とハルカがいない三方向にそれぞれが歩いていく。迷わないように浮かぶことなく足を地に付けて真っ直ぐ歩く。
等間隔に足を広げて歩き、百歩歩いたら戻り、三人で合流する。そしたらまた同じ方向に二百歩歩き、戻る。三百、四百と百歩ずつ進む距離を増やして行き、ワカナを見つけるかこの空間の端に誰かが辿り着くまでそれを続ける。
地味で時間がかかる作業ではあるが、いずれは終わりが来て誰も迷わずに目的を達成できる。そう思えば文句もなく黙々とワカナを探しに歩くことができる。
「……見つけた? ワカナっぽい何か」
五百歩進んで戻り、七日が二人に尋ねた。
「全くだ。人っ子一人いやしない」
首を横に振りながらアノニムは答えた。
「六日の後ろにいるんじゃない? 何をしているかわからないけど、あゆが六日の相手をしている間に確認した方がいいんじゃない?」
少し離れたところに見えるハルカと六日の方に顔を向けながら麗菜が提案する。その二人がいる方向だけはまだ探していないし、六日とハルカの決着がいつつくかもわからない。
傍から見れば年下の六日をハルカが煽り倒しているようにしか見えないが、何か言い争いをしているようだ。今なら側を通ってもただの人間である六日には気づかれないだろう。
「そうだね。じゃ、三人であっちに真っ直ぐ行こう。……たぶんいる」
目を強く瞑り、六日の先に何かが二ついることを七日は確認した。しかし、その二つがワカナだとは限らない。それでも低い可能性にかけることは大事なことだ。
「いたら私が若菜を連れ戻すわ」
「麗菜が適任だよ。当然、私がおねーちゃんを連れ戻すのも手伝ってもらうけど」
麗菜がキャンディーを割らない程度に握り、言う。そして、その麗菜の顔を見ないまま七日が暗く低く言った。
そして、六日とは少し距離をとってその横を通りすぎる。
「……えっと……あの、その事なんだけどな、ナノ……」
アノニムが七日に気まずそうに話しかけようとした。話しかけ、言い終える前にその声は聞こえた。
「……ハハ…………アハハハハハ……アハ…………ハハハハハハ」
耳が痛くなるほど。耳から入ってそのまま脳を突き刺されるような高い声。この短時間で何度も聞いた。聞いている者を狂わせるほど高く、単調で耳を塞いでも眠っても気を失っても聞こえてくるような笑い声なのにどこか幸せそうにずっと笑っている。本来ならば喉が壊れるだろうが、意識だけのワカナはそんなこともなく笑い続ける。
「……近いね。でも、ちょっとだけ待って」
七日は二人にそう言って目を強く瞑り、先の様子を見る。よく見えないが、さっき見えた二人は近い。ワカナに見える者を止めるようにもう一人が押さえている。
「……あ、おにーちゃんだ。何でこんなとこにいるのさ」
「……イツカのことか? 何でまた」
「私、彼に良い思い出無いのよね。顔合わせたくないわ」
ボソリと七日が呟くと、アノニムと麗菜が各々その言葉に反応する。
「独り言に反応された……。ま、ここじゃ良く見えないし近寄ってみよっか」
七日が眉を顰めながら残念そうに言った。そして、開き直ったように目が痛くなる程赤い先に進まず目だけを向けた。
「何があったかわかんないけど、おにーちゃんからワカナを引き剥がさなきゃダメな気がする」
そして、またムスっとした顔に戻して七日がめんどくさそうに二人に言った。そして、今度はちゃんと前に進む。
等間隔に足を広げて歩き、百歩歩いたら戻り、三人で合流する。そしたらまた同じ方向に二百歩歩き、戻る。三百、四百と百歩ずつ進む距離を増やして行き、ワカナを見つけるかこの空間の端に誰かが辿り着くまでそれを続ける。
地味で時間がかかる作業ではあるが、いずれは終わりが来て誰も迷わずに目的を達成できる。そう思えば文句もなく黙々とワカナを探しに歩くことができる。
「……見つけた? ワカナっぽい何か」
五百歩進んで戻り、七日が二人に尋ねた。
「全くだ。人っ子一人いやしない」
首を横に振りながらアノニムは答えた。
「六日の後ろにいるんじゃない? 何をしているかわからないけど、あゆが六日の相手をしている間に確認した方がいいんじゃない?」
少し離れたところに見えるハルカと六日の方に顔を向けながら麗菜が提案する。その二人がいる方向だけはまだ探していないし、六日とハルカの決着がいつつくかもわからない。
傍から見れば年下の六日をハルカが煽り倒しているようにしか見えないが、何か言い争いをしているようだ。今なら側を通ってもただの人間である六日には気づかれないだろう。
「そうだね。じゃ、三人であっちに真っ直ぐ行こう。……たぶんいる」
目を強く瞑り、六日の先に何かが二ついることを七日は確認した。しかし、その二つがワカナだとは限らない。それでも低い可能性にかけることは大事なことだ。
「いたら私が若菜を連れ戻すわ」
「麗菜が適任だよ。当然、私がおねーちゃんを連れ戻すのも手伝ってもらうけど」
麗菜がキャンディーを割らない程度に握り、言う。そして、その麗菜の顔を見ないまま七日が暗く低く言った。
そして、六日とは少し距離をとってその横を通りすぎる。
「……えっと……あの、その事なんだけどな、ナノ……」
アノニムが七日に気まずそうに話しかけようとした。話しかけ、言い終える前にその声は聞こえた。
「……ハハ…………アハハハハハ……アハ…………ハハハハハハ」
耳が痛くなるほど。耳から入ってそのまま脳を突き刺されるような高い声。この短時間で何度も聞いた。聞いている者を狂わせるほど高く、単調で耳を塞いでも眠っても気を失っても聞こえてくるような笑い声なのにどこか幸せそうにずっと笑っている。本来ならば喉が壊れるだろうが、意識だけのワカナはそんなこともなく笑い続ける。
「……近いね。でも、ちょっとだけ待って」
七日は二人にそう言って目を強く瞑り、先の様子を見る。よく見えないが、さっき見えた二人は近い。ワカナに見える者を止めるようにもう一人が押さえている。
「……あ、おにーちゃんだ。何でこんなとこにいるのさ」
「……イツカのことか? 何でまた」
「私、彼に良い思い出無いのよね。顔合わせたくないわ」
ボソリと七日が呟くと、アノニムと麗菜が各々その言葉に反応する。
「独り言に反応された……。ま、ここじゃ良く見えないし近寄ってみよっか」
七日が眉を顰めながら残念そうに言った。そして、開き直ったように目が痛くなる程赤い先に進まず目だけを向けた。
「何があったかわかんないけど、おにーちゃんからワカナを引き剥がさなきゃダメな気がする」
そして、またムスっとした顔に戻して七日がめんどくさそうに二人に言った。そして、今度はちゃんと前に進む。
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